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国際平和拠点ひろしま

100年愛される広島初の洋菓子店
お菓子で笑顔を届けていく




広島初の洋菓子店として1923(大正12)年に誕生した『BOSTON(ボストン)』。看板商品のアップルパイや名物のスティックケーキ、広島レモンを使った広島レモンケーキなどで知られています。県内で直営店を12店舗展開し、日々のティータイムや大切な人へのギフトなどに広く用いられてきました。そんな身近な存在の同店が、2023(令和5)年9月に創業100周年に。広島の歴史と共に歩みながら、地域に愛され続ける同店の軌跡を、代表の栗栖一典(くりす かずのり)さんに伺いました。


お話を伺ったBOSTON 4代目の栗栖一典さん


BOSTONの創業者は、一典さんの曽祖父にあたる栗栖百三郎(くりす ひゃくさぶろう)さん。ハワイに移住していた兄を頼って自身も同地に渡り、コック見習いなどをしていたといいます。その後はアメリカ各地で飲食業に携わり、一時期はレストラン経営もしていたそうです。いずれは故郷でと考えていたことから、帰郷後の1923(大正12)年、中区北榎町(現・中区榎町)で前身となる店『朝日ドーナツ』を開店しました。当時は珍しかった舶来の菓子は評判を呼び、従業員を複数人雇うほど繁盛していたといいます。


栗栖百三郎さんが創業した『朝日ドーナツ』。創業当時の写真はBOSTONの本店内に飾られている


その後、広島一の繁華街と呼ばれていた中島本町(現・平和記念公園)に、『カフェ・アキヅキ』という喫茶店を開業。ワッフルやあんみつを出すこちらの店も人気を博しましたが、コレラ流行などが重なり1938(昭和13)年に閉店しました。


カフェ・アキヅキの当時の様子を映した写真をカラーで再現したポストカード


時を同じくし、第二次世界大戦の不穏な空気が日本にも押し寄せていました。戦中に疎開していた栗栖家は被災を逃れましたが、広島は原爆で一面の焼け野原となってしまいました。「先代が築いたものを何とか復活させたい」と、二代目の正美(まさみ)さんが、バラック建ての工房を中区に再建。『栗栖洋菓子店』として、当初はスポンジケーキなどの卸売りを、その後は材料をかき集めてロールケーキといった洋菓子を作って販売。終戦後は砂糖が少ない状況だったため、甘いものを求めていた人たちに大いに歓迎されました。

「現代の洋菓子のように凝ったものではない、スポンジにジャムを塗っただけのような簡素な菓子だったと聞いています。缶詰めのシロップを最後の一滴まで使い切り、一人でも多くの人に商品がいきわたるような工夫もしていたそうです。“お菓子で笑顔を届ける”という理念は、この頃から変わっていません」と一典さんは話します。

病弱だった二代目に代わり、早くから店の経営に携わるようになった三代目の昭夫(あきお)さん。「よりお客様に接することのできる電車通りに店を出し、流行をつかみたい」と、1980年代に現在の土橋電停前に店を移しました。移転前にはデザイナーと共に、店の原点であるアメリカへと渡り視察を行ったそうです。「そこで出合ったアップルパイが、店の看板商品となりました。アメリカのママンが作るホームメイドの味というのが、店のコンセプトにぴったりきたようです。アメリカで最も古い都市のひとつであるボストンから店名をもらい、ロゴにはりんごのマークをかたどりました」。


看板商品のアップルパイは今でも人気の商品。今年は創業100周年を記念した特別なアップルパイを販売する 

※繁忙期(12月~1月もしくは2月末頃)は販売休止の可能性あり


2000年代に入ってからは、「私たちの出発点をお客様に知ってほしい」という気持ちで朝日ドーナツを復刻して発売。現代人の嗜好に合わせたヘルシーな焼きドーナツにリニューアルして提供しています。また、四代目である一典さんが「手を汚さずにすむように」と考案したスティックケーキは、店の一番人気として多くの客の心をつかんでいます。


現在販売している朝日ドーナツ。プレーン、チョコ、抹茶、広島レモンの4種


「長く店を続ける中で、お客様から『おばあちゃんの法事の際には、大好きだったボストンさんのお菓子を必ず用意しているんです』という話を聞いたり、『先代さんにはいつも良くしてもらったんですよ』と声をかけてもらう場面があり、店がいかに愛されてきたかを感じてきました」と一典さん。

これまで、8月6日の灯篭流しのイベントの際にスポンサーとして協力したり、東日本大震災の時には菓子組合と協働して現地で菓子をふるまうボランティアを行ってきたのも、「皆さんのために何か役に立てることがあるのなら」という思いからなのだそうです。

「昨今では、世界の各地で戦争や民族紛争の動きが見られ、決して平和とは言えない状況が続いています。お菓子で戦争を止めることはできませんが、お菓子で笑顔を届けることはできます。平和の構築は、争いを生むその前に、互いが互いを分かり合おうとする話し合いをもうけることが大事です。そんな話し合いの場や、人と人が向き合うシーンに、お菓子が空気をやわらげるものとして存在し、笑顔をもたらしてくれたらうれしいですね」。

BOSTONが作る温もりたっぷりのお菓子は、これからも広島の真ん中で、人と人とをつなげる役割を担っていくのかもしれません。


BOSTON(ボストン)本店

広島市中区堺町2-6-3

082-292-9665

10:00~20:00

不定休

https://www.boston-apple.jp/

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