広島-ICANアカデミー参加者インタビュー
広島県と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は2019年度より「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー(以下「アカデミー」という。)」を開講している。今年度のアカデミーに参加した浅野さんに、その体験について語ってもらった。
●アカデミーに応募したきっかけは?
僕は高校3年の時、授業の平和学習で戦争で原爆が使用された歴史を学び、自分も核兵器のない世界を作るために何かできないかと思うようになりました。それで今は大学院でヒバクシャ研究をしています。大学院ではヒロシマやナガサキ、さらに核兵器の実験で被曝した太平洋のマーシャル諸島の人々の歴史を研究し、こういう人たちを二度と生み出してはいけないと思う一方、核兵器の廃絶が進まない現状にもどかしさを感じていて。それに対して世界各国の若者がどんな意見を持っているか知りたくて、今回応募しました。
●どんなことをアカデミーで行ったのですか?
アカデミーでは教授や被爆者の講義を聞き、世界中から参加しているメンバーとオンライン上でディスカッションしました。今年のテーマは「核兵器による人道的な影響」「核兵器と安全保障」「核兵器廃絶に向けて市民社会が果たせる役割」……など。全4回のメニューの最後にはICAN事務局長のベアトリス・フィンさん、国連事務次長(軍縮担当上級代表)の中満泉さん、広島県知事の湯﨑英彦さんによるパネルディスカッションもありました。
アカデミーの参加メンバーはアメリカ、ロシア、中国、カメルーン、アルゼンチン、パキスタン……など世界中から30歳以下の若者30人程度が集まりました。時差の都合上、開始時間が毎回バラバラなのが面白かったです(笑)。
●アカデミーで感じたことは?
心に残ったのは核兵器と安全保障についての議論の際、アメリカやロシアといった核保有国の若者たちも「核兵器は自国の安全に役立っていないので、なくしていくべき」と話していたことです。もちろん広島県とICAN共催のアカデミーなので、そういう主張が出るのは当然ですが、彼らは感情ではなくロジックでそうした結論を導いていました。核保有国の中で核廃絶を願う彼らと連帯を築いていくことの重要性を感じました。
また、日本人参加者は僕ともうひとりだけということもあって、ディスカションでは「日本はどうして戦争で核兵器による悲劇を経験したのに、核兵器禁止条約に参加しないの?」という質問もたくさん受けました。国際的に日本の動向が注目されていることを感じたし、自分も日本人のひとりとしてどういうメッセージを発信していくべきか考えさせられました。
さらに僕が今回知ったのは、さまざまな形で平和活動をしている人たちの存在です。僕はこれまで核兵器廃絶に対して学術的にアプローチしていたのですが、世界には芸術を通して核兵器の悲惨さを伝える人たちがいたり、中高生の修学旅行の教育プログラムを作ることで平和に貢献しようとしている人たちがいました。自分の視野を広げるためにも、こうした運動に取り組んでいる人たちの話を聞くことは重要だと感じました。
↑「核軍縮に向けて市民社会が果たすことのできる役割は何か」というテーマについてのブレインストーミングの様子
●これからの夢を教えてください
アカデミーに参加して、2つの想いを持ちました。1つは世界各地で行われている運動にもっと関わっていきたいということ。先々月から「核兵器廃絶日本NGO連絡会」にインターンとして参加していますが、もっといろんな団体の活動に参加していきたいです。
もう1つは、自分は学生でもあるので、現在取り組んでいる学術的研究をさらに掘り下げていくこと。将来は東アジアの核兵器問題の専門家として、核兵器をなくすための施策を発信できる人物になりたいと思います。
■プロフィール
浅野英男(あさの・ひでお)さん。1996年生まれ、茨城県出身。創価大学国際教養学部で国際政治学を勉強し、神戸大学大学院国際協力研究科に進む。現在は博士後期課程1年。2022年9月より軍縮および核兵器の不拡散の専門校と呼ばれているミドルベリー国際大学院モントレー校に進む予定。
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