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国際平和拠点ひろしま

Governor's Message核兵器のない未来は可能だ(知事メッセージ)

令和5(2023)年7月21日、全米で映画「オッペンハイマー」が公開されました。

第二次世界大戦中に原爆の開発を主導した米国の科学者の生涯を描いた映画です。(日本での公開は、未定)
映画公開にあたり、核兵器のない世界の実現に向けて、湯﨑知事のメッセージが、米国の日刊新聞「サンフランシスコ・クロニクル」に掲載されました。

 

知事メッセージ(仮訳)


核兵器のない未来は可能だ

 

1945年に米国がわが国に対して使用した原子爆弾の製造プロジェクトの中心人物である科学者を描いた待望の超大作『オッペンハイマー』が、あと数日で世界中の映画館で上映される。

 

この映画における広島・長崎の惨禍、および日本への原爆投下の是非に関わる描かれ方、議論等は不明であるが、原爆製造を主導した男の胸に迫る物語を観るにあたって、観客たちには核兵器がいかに4分の3世紀以上にわたって地球とそこに住む人々を人質にしてきたか、そして核兵器がもたらすリスクが今日、かつてないほど高まっているかも考えてほしい。

 

広島と長崎の人々にとって、核兵器の破壊的な威力はわざわざ思い出させられる必要はない。何世代も経った今でも、私たちは自分たちの都市に投下された原爆の影響を感じている。また、オッペンハイマーはすでに過去の歴史とされているが、核兵器は現在にもまだ続いているのである。

 

現在、9カ国が核兵器を保有している。冷戦時代と比べるとその数は大幅に減少しているが、それでも地球上には1万3000発の核兵器が存在し、その約90%をロシアと米国が保有している。その量は,人類を何度も殺戮するに充分な量である。

 

「小規模な」核兵器の使用でさえ、地球環境に壊滅的な影響を与えるだろう。最近のある研究では、インドとパキスタンの間で「限定的な」核戦争が起きた場合の地球規模の影響を評価している。核兵器による火災は、太陽の光が何年にもわたって弱まるほどの灰を発生させ、「核の冬」をもたらし、世界中の30億人以上に影響を与える飢饉を引き起こす可能性がある。

 

ロシアは最大の核兵器国であるが、最近の軍事的暴動や現在進行中の政情不安は、ロシア政府が核兵器の一部を管理できなくなる可能性があるという背すじの凍る見通しを提起している。しかし、ロシアがウクライナ戦争で前例のない危険な核の脅しをかけている今、政府の管理はそもそも安心できるものではない。

 

同時に、中国との緊張が高まる中、終わることのない三つ巴の核軍拡競争が過熱している。

 

今日の世界では、抑止力はもはや核兵器の使用を防ぐための信頼できる戦略ではない。私たちはまた、苦労して結ばれた軍備管理条約が破棄され、サイバー攻撃やテロには脆弱なデジタル化された核兵器システムが新たに開発されるのを目の当たりにしている。

 

不安定な指導者や恐ろしい誤算が私たちの生活を永遠に変えてしまうことー1945年に私たちの愛する人々がそうであったようにーを、誰も恐れる必要はないはずだ。しかし、核兵器が存在する限り、人類の未来は危険にさらされている。

 

これが私達にとっての必然の道ではない。

 

私たちは、そのことをすでに分かっている。活動家たちがたゆまず活動し、世界の核兵器在庫の削減を進め、核兵器の使用に反対する世界的規範を維持するために、多くを成し遂げてきたのだから。

 

わが国の岸田首相は5月、バイデン大統領をはじめとするG7首脳とともに広島で核兵器のない世界へのコミットメントを再確認した。コミットしたことは前進であるが、その言葉が行動と一致することを望んでいることを、私たち全員が指導者たちに示す必要がある。

 

広島と長崎へ原爆が投下された8月6日と9日を今年もまた迎えるにあたり、世界は岐路に立っている。分かれ道の一方の道では、ウクライナでの戦争が核の瀬戸際に立たされ、私たちも保健や教育、そして気候変動への迅速な対応に必要なリソースをむしり取る、新たな核軍拡競争の崖っぷちに立たされている。もうひとつの道は、人々と地球が繁栄し、核兵器の役割が存在しなくなった、より安全で自由な未来に続いている。

 

私たちは皆、世界をより良い道へと導く役割を担っているのだ。

 

佐々木禎子という少女は、折り鶴というシンボルでクラスメートを、そして世界を勇気づけた少女であり、大きな変化は小さな一歩から始まるということを例証している。毎年8月、核兵器のない世界への支持を示すために、人々は厳粛な記念日の前後に折り鶴を折り、分かち合う。あなたにも、この最初の一歩を踏み出すよう、私たちは呼びかける。一枚の紙を自分のその手で美しいものに変えるように、私たちは、愛する人のため、そして未来の世代のために、核兵器のない、より希望に満ちた平和な未来への道を切り開くことができるのです。

 

ロバート・オッペンハイマーは原子時代の幕を開けたが、その幕引きは、人類の未来の行き先と共に、私たち自身にかかっている。

 

 

 

 広島県知事 湯﨑 英彦

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