長崎県の平和への取り組み
世界で2つしかない原爆投下の惨禍に見舞われた街、広島と長崎。昨年以降、被爆地を抱えた自治体である広島県と長崎県の間で急速に連携が進んでいます。今回は平和関連事業を担当する長崎県国際課企画監の庄司貴繁(しょうじ・たかしげ)さんに、長崎県の平和への取り組みについて語ってもらいました。
●長崎県の平和への取り組みについて
長崎における被爆の実相の発信や被爆体験の継承については、主に長崎市が中心となって行ってきました。県では、市と連携を図りながら長崎市以外の市町の小中学校へ被爆体験講話者を派遣したり、県内留学生が日本人大学生と交流を持つ「長崎平和大学」を開催してきました。また、県と市と長崎大学が三位一体となって「核兵器廃絶長崎連絡協議会(PCU-NC)」を設立して、核兵器廃絶のための調査研究や市民講座を行っています。
長崎平和大学での被爆体験講話の様子
核兵器廃絶長崎連絡協議会ホームページ
https://www.pcu-nc.jp/
●広島県との連携について
もともと長崎県は県民向けの平和意識向上を中心に力を注いできましたが、昨年、大石賢吾新知事が就任したことをきっかけに、県外にも精力的に情報発信しようとする流れに変化しています。
まずは昨年、へいわ創造機構ひろしま(HOPe)が設立した国際市民社会グループ「グローバル・アライアンス『持続可能な平和と繁栄をすべての人に』(GASPPA)」に参加しました。GASPPAは核兵器の問題を安全保障としてのみ捉えるのではなく、環境、社会、経済など多方面に影響を及ぼす持続可能性の観点から捉え直し、国際社会に働きかけることを目的とするグループです。核兵器廃絶を2030年以降の次期国連開発目標(ポストSDGs)に加えてもらうため、現在24ヶ国の団体と共に活動しています。
また、2022年8月、ニューヨークの国連本部で行われた「核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議」に知事が初参加しましたが、その際にも広島県と共催で「核兵器と持続可能性」に関するサイドイベントを開催しました。このイベントに大石知事と湯﨑英彦広島県知事も参加し、著名な知識人・活動家の方々とGASPPAメンバーの間で議論を行いました。
核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議での共同コメント発表
(左:湯﨑知事、右:大石知事)
さらにG7広島サミットに向け、大石知事と湯﨑知事が共同で提言書「核兵器なき持続可能な未来の実現を目指して」を岸田首相や武井外務副大臣に手交しました。
また、今年広島では首脳会議が開催されますが、同時期に長崎では保健大臣会合が開催されます。それに合わせて核兵器を二度と使用しないというメッセージを出してほしいという要望書も岸田首相に手交しました。
岸田首相への提言
2023年に入ってからも「核兵器禁止条約(TPNW)締約国会議」の際に持続可能性に関連した声明を発表した国に、GASPPAの取り組みを紹介する書簡を両県知事の連名で提出しています。
●今後取り組みたいこと
令和5年度は、広島県が実施している「グローバル未来塾inひろしま」に長崎の高校生が参加し、逆に未来塾に参加している広島の高校生に長崎に来てもらって意見交換を行う計画を立てています。
連携することで、我々は広島県から学ぶことが数多くあり、また一方で、被爆者の高齢化は両県共通の課題です。両県とも「核兵器のない世界を作る」というゴールが同じなのは間違いないので、その目標に向けて今後も共に取り組んでいきたいと考えています。
お話を伺った
長崎県国際課 企画監
庄司貴繁氏
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