1 全体概要
【訪問場所】 ジュネーブ(スイス)
【取組】
「2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会」での働きかけ
2 主な内容
「2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会」での働きかけ
準備委員会の場で、2つのサイドイベントの開催及び在ジュネーブの国連大使や各国政府代表部を対象とした説明会を行うとともに、県/HOPeの取組を紹介するバナー展示を実施しました。また、準備委員会の主要な関係者に直接面会し、本県の取組への賛同を働きかけました。
主催サイドイベントの開催【7月24日(水)】
核兵器なき世界の実現を目指すには、核抑止に頼らずとも成り立つ安全保障システムが必要となるため、県/HOPeが、世界的研究機関とともに進めている核抑止に頼らない安全保障研究のこれまでの研究成果を踏まえ、専門家とともに、代替案について議論しました。
【日 程】2024年7月24日(水)10:15~11:45
【場 所】Room XXIII(国連ジュネーブ事務所)
【主 催】広島県/HOPe
【テーマ】「核抑止の代替案:核兵器なき世界に向けた提案」
【登壇者】
モデレーター:秋山 信将(一橋大学国際・公共政策大学院 教授)
パネリスト:
・ティティ・エラスト(ストックホルム国際平和研究所 上級研究員)
・ルーカシュ・クレッサ(英国王立防衛安全保障研究所 ディレクター)
・ポリーナ・シノヴェツ(オデーサ不拡散センター 所長)
【参加者】71名(県議会団22名を含む。)
【主な議論】
- 核の拡大抑止の下にある米国同盟国(いわゆる傘の国)の安全保障上の懸念と各国の安全保障政策との整合性、現在の通常兵力を含めた戦力を評価したところ、核兵器への依存を高める必要はなく、先制不使用政策など、傘の国が依存低減のためにできることは多くある。
- 核兵器の役割は核攻撃の抑止だけにとどまらず、通常兵器による大規模攻撃の抑止や同盟国への安心供与、国際的地位や威信を与えたりしている。核兵器の安全保障上の中心的役割を小さくし、与えているとされる威信を低下させていくことが必要だ。
- ロシアのウクライナ侵略で、ロシアは核兵器を巧みに利用している。第三国の介入を防ぎ、NATO諸国の武器供与を牽制してきた。軍事的、政治的、そして恐怖の心理も利用して、相手国を抑止したり、強制したりしている。この戦争がどのように終わるかによって、核抑止の有効性の評価が決まる。
- 核抑止は多くの仮定に基づいた理論であるので、核抑止が機能しているという政治的なナラティブに対しては、敵対国に実際にどのような影響を与えているのかという明確な説明を求め、説明させることが重要だ。
共催サイドイベントの開催【7月24日(水)】
核兵器のない持続可能な世界を実現するために、実務家、若者、国連などの様々な関係者により、安全保障、人道、持続可能性の観点から議論しました。この中で、知事からは、本県の被爆者支援の状況と持続可能性の観点から核兵器廃絶に取り組むことの重要性を訴えました。
【日 程】2024年7月24日(水)13:15~14:30
【場 所】Room XXII(国連ジュネーブ事務所)
【主 催】オーストリア政府
【共 催】ユニタール・広島県・長崎県
【テーマ】「グローバル目標としての核兵器なき世界の推進」
【登壇者】
モデレーター:ニキル・セス 総代表(ユニタール)
パネリスト:
・デジレ・シュヴァイツァー 大使(在ジュネーブ国際機関オーストリア政府常駐代表)
・湯﨑 英彦 知事(広島県/HOPe代表)
・樋川 和子 教授(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長)
・ヴァネッサ・キャノラ 氏(「ユース非核リーダー基金」プログラム1期生)
【参加者】84名(県議会団22名を含む。)
【主な議論】
- 危険な核軍拡競争の力学が目前で展開されている現在、核兵器禁止条約(TPNW)は、核兵器から脱却するための道筋と説得力のある根拠を提供するものである。オーストリア政府が委託して、前回の準備委員会で発表された研究では、核兵器とその影響分野における最新の研究を概観し、核兵器の人道的影響とリスクに焦点を当てており、複雑な結果やリスクに対する理解を深め、外交活動を事実に基づいた科学的な基礎の上に置くことを目的としたものである。
- 核兵器、分断、紛争、環境破壊のような私たちが直面している、全ての問題は、私たちの社会が、競争と利益追求システム、経済システムに基づいているから引き起こされており、社会で、人間の尊厳、連帯、民主主義、社会的・生態学的持続可能性といった共通の価値観を大切にすることで、社会を変え、全ての問題の解決を促進することができる。
- 今、存亡の危機に瀕している未来を、若者を交えて決める必要がある。若者が成長し、一歩踏み出す機会を提供することが促されるべきであり、若者の可能性を育み、彼らの視点を有意義に取り入れることが肝要である。そのためには、若者の声を聞き、純粋に評価する環境を整えることが必要だ。
各国政府関係者を対象とした説明会の開催【7月23日(火)】
長崎県と共催で、軍縮を担当する各国の在ジュネーブ国連大使や政府代表部に持続可能性と核兵器の関連性について説明し、理解と協力を求めました。
【日 程】2024年7月23日(火)16:30~17:30
【場 所】Room XXVI(国連ジュネーブ事務所)
【テーマ】「グローバル目標としての核兵器なき世界の推進」
【登壇者】
・湯﨑 英彦 知事(広島県/HOPe代表)
・馬場 裕子 副知事(長崎県)
・島田 久仁彦 HOPeプリンシパル・ディレクター
・樋川 和子 教授(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長)
【参加国数】13か国
【主な議論・質疑】
- 平和を希求する人々の間でこのような共通の目標を提唱し続けることが重要である。
- 人道的側面に関する認識を高めることが、核抑止とリスク削減のための科学的根拠の一つになるのではないか。
- 提示されたビジョンだけでなく、より具体的な目標や2045年までの目標やステップ、更なる発展を想定したアプローチが必要である。
2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会会場でのバナー展示
【7月22日(月)~26日(金)】
期間中、会場に集まった多くの方が通る通路において、県/HOPeの取組を紹介するバナー展示を行いました。
バナーの前で、高村正大外務大臣政務官に面会し、直接、県/HOPeの取組を説明しました。
国連及び各国関係者への働きかけ【7月23日(火)~7月26日(金)】
滞在期間中、2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会の運営に携わる幹部や各国関係者と個別に面会し、県/HOPeが進める核兵器廃絶に向けた3つのアプローチについて説明し、賛同を求めるとともに、今会議において、しっかりと核軍縮の取組を進めてもらうよう、直接、働きかけを行いました。
(ア) 市川とみ子 特命全権大使(軍縮会議日本政府代表部常駐代表)との面会
核兵器を取り巻く国際情勢の今後の展望や、NPTの会議の様子などについて、意見交換を行いました。大使からは、国際情勢が悪化している分、核兵器のもたらす悲劇について、耳を傾けてもらえる機会が増えているものの、各国の軍縮・不拡散分野の担当者にも冷戦期や被爆の実態を知らない人が多くなってきているので、外交官の広島・長崎への訪問を促していきたいとの話がありました。
(イ)ブルース・ターナー 大使(軍縮会議米国政府代表部常駐代表)との面会
核兵器を取り巻く国際情勢、とりわけ核兵器保有国間の現状について、意見交換を行いました。大使からは、米国の政策やリスク低減に向けた取組について説明がありました。その上で、核廃絶を実現するために、米ロ間、米中間の合意と透明性が必要になるとの認識が示されました。
(ウ)アカン・ラフメトゥリン カザフスタン外務副大臣(2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会議長)との面会
本県の取組について賛同を得るとともに、核兵器を取り巻くNPTでの議論の状況などについて、意見交換を行いました。議長からは、現在二極化している状況だが、今回のNPTでは、成果を出せるように尽力しているとの説明がありました。また、本県が設置を目指しているフレンズグループについては、多様な国の意見や価値観を踏まえる重要性について、助言がありました。
(エ) トーマス・ゲーベル 大使(軍縮会議ドイツ政府代表部常駐代表)との面会
ドイツの核軍縮に対する政策や、国内世論、NPTを中心とした核兵器に対する捉え方などについて意見交換しました。大使からは、ロシアによるウクライナ侵略後、ドイツ国内ではロシアを抑止しなければならないという意見が多くなったとの説明がありました。一方で、核兵器の脅威について、明確な理解を進めるために、リーダーや若者を被爆地に連れて行くことはとても重要であるとの認識を共有しました。
(オ) フランシスカ・エリザベス・メンデス・エスコバル 大使(在ジュネーブ国際機関メキシコ政府常駐代表)
持続可能性の観点から核兵器廃絶を目指す取組について、賛同を得るとともに、意見交換を行いました。大使からは、広島もメキシコも同じ考えを共有していると確信しているとのお話があり、今後も協力していくことを確認しました。
(カ)クリスチャン・ギュイラメト・フェルナンデス 大使(在ジュネーブ国際機関コスタリカ政府常駐代表)との面会
本県の核兵器廃絶に向けた取組を紹介し、理解を得ました。大使からは、核兵器の問題と持続可能性をつなげる取組は重要であり、包括的なアプローチであるとの評価をいただきました。また、多国間協力における地方自治体の役割の重要性についても、意見交換しました。
(キ) キャロリン・メラニー・レジムバル 代表(国連軍縮部ジュネーブオフィス代表)との面会
本県の核兵器廃絶に向けた取組を説明し、賛同を得るとともに、国連での議論の状況などについて、意見交換を行いました。代表からは、国連の最終的な目標は核軍縮であり、核戦争には勝者はおらず、戦ってはならず、それを実践的に進める必要があるとの認識を示しました。核軍縮において、大きな前進は難しいが、NPTへの貢献、リスク削減などを少しずつ進めていく重要性を共有しました。また、若者の活動を支援していくことの必要性についても、意見交換しました。
(ク) ニキル・セス 国連事務次長補兼ユニタール総代表への表敬訪問
広島県議会欧州訪問団及び広島県議会スイス・リトアニア・オランダ行政視察団とともに、ユニタール本部にニキル・セス国連事務次長補兼ユニタール総代表を表敬訪問しました。また、在ジュネーブ国際機関日本政府次席常駐代表の本清耕造大使が臨席されました。知事から、優れた研修を提供し続けるユニタールの取組に対して敬意を表するとともに、核兵器のない世界の実現と持続可能な社会の構築に向け、今後も一緒に取り組んでいただくよう挨拶しました。
(ケ) アンドラス・ソレニ シニアポリシーアドバイザー(グローバル シティズ ハブ)との面会
持続可能性の観点から核兵器廃絶を目指す取組について、説明し、今後の活動方法に向けた助言と協力を求めました。ソレニ氏からは、国連が進めている、多様なアクターの参加について、地方自治体の存在は重要で、SDGsの推進にも地方自治体の取組が必要であるとの認識が示され、本県の取組について理解を得ることができました。
3 成果
【2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会への貢献】
- NPT運用検討会議に向けて、準備委員会での議論も厳しい状況にある中、サイドイベントで専門家の議論や政府関係者を対象とした説明会を通して、持続可能性と核兵器に頼らない安全保障という2つの観点から、多面的に核兵器廃絶と核軍縮の重要性を訴えることができました。
【賛同者の拡大】
- 持続可能性の観点から核兵器問題を提起するアプローチについて、多くの若者を含むサイドイベント参加者や会議関係者等から賛同を得ることができ、今後、ポストSDGsに核兵器廃絶を位置づけていくための活動に向けた具体的な助言を得ることができました。
【政策づくり】
- 核抑止に替わる安全保障政策づくりについて、大使等と直接面会し、方向性や必要性について理解や賛同を得ることができ、率直な意見交換ができました。
【被爆地からの発信力強化】
- 被爆県である本県と長崎県が、昨年に引き続き、協力してサイドイベントを開催し、また、NPT運用検討会議第2回準備委員会の運営関係者との面会も一緒に行うことで、会議関係者に対し、核兵器廃絶と核軍縮の進展の重要性を力強く示すことができました。
県議会団の派遣は、本県が進める、核兵器のない平和な世界の実現に向けた取組について、自治体を挙げて取り組んでいる姿勢を発信することができ、大きな意義がありました。
4 日程等
月 日 | 項 目 | 場 所 |
7/22 (月) |
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ジュネーブ |
7/23 (火) |
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7/24 (水) |
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7/25 (木) |
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7/26 (金) |
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※日付表示は現地時間
※組織名称は一部略称使用