格差を是正するリスキリングと「雇用の流動性」創出のススメ(マネックス証券)
2021年9月に開催された「2021世界平和経済人会議ひろしま」では、「2021年・国際社会のカムバックとより良い復興-パンデミック・差別と格差・自国中心主義の克服のために」をテーマに,経済人たちが議論を行った。登壇者の中から,マネックス証券株式会社専門役員チーフ・アナリストの大槻奈那氏にお話を伺った。
厳しさが増す日本の経済状況にあって、ますます格差が拡大し、コロナ禍という新しい環境がこれを助長する可能性もあります。そんな中で、各企業が格差是正に向けてできることとして社員教育や雇用があります。
なかでも近年、各企業がデジタル化などにより成長を目指す過程で必要となるのが、新しい領域の業務に対する社員のスキルや知識の習得を企業が支援する「リスキリング」です。当社でも、リスキリングをはじめとする社員教育の質の向上のため、積極的に検討を重ねているところです。
また、人材を自社で抱え込まず、社会的な財産として外に送り出す、解雇というネガティブな形ではなく積極的な意味での「雇用の流動性」の創出も、各企業内に多様性を生み、さまざまなイノベーションを促す可能性もあり、今後社会全体で検討すべき課題ではないかと考えています。
この面では、より専門的な仕事を専門家に短時間・単発で依頼する「ギグワーク」の活用が各企業で少しずつ増えており、雇用の流動化を促しています。当社でも、一部署においてギグワーカーを受け入れていますが、まだ少数であり、これからの全社的な課題となっています。
社会と企業の対話を支援する取り組みに注力
「2021広島アピール」で提示された「真の功利主義」の実践に向けて企業に求められるのは、社会との対話ではないでしょうか。具体的には、社会が企業に求めるサステイナビリティへの対応や,株主や消費者をはじめとするステークホルダーとの対話です。自らの資金を投資している多くの個人が企業に提案や意見をおこなっていくことが、企業にとって建設的で良い刺激になるとの考えのもと、当社では、「対話」を支援するさまざまな取り組みをおこなっています。
2019年に立ち上げた「マネックス・アクティビスト・フォーラム」は、個人投資家と企業のコミュニケーションの活性化を目指す活動です。これは、個人投資家が主体的に企業に向き合いアクティビスト(もの言う投資家)として日本のマーケットを活性化する存在となることを応援するための取り組みで、ウェブサイトや新しいプラットフォーム、イベントなどを通じてさまざまなコンテンツを提供しています。
また、「マネックス・アクティビスト・ファンド」は、国内企業のみ組み入れるファンドで、変革を願う企業の可能性を最大限に引き出し、成長の後押しをするもので、日本経済の底上げから、ひいてはより良い日本の未来を築くことを目指しています。当ファンドでは、個人投資家のみなさんと企業(経営陣や取締役会メンバー)との対話を、マネックスがリードしていきます。
さまざまなESG活動を通じて社会の持続的成長を
真に平和で持続可能な社会の実現に向けては、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動が当社事業とは不可分であることから、かねてよりESG 活動を推進してきました。近年では、サステナブルファイナンス部を設立し、ESG 課題の大きな柱である環境問題等の解決に貢献することを目指しています。
そうしたESG活動の中でも、とりわけダイバーシティ&インクルージョンをステークホルダーへのインパクトが大きい事業として位置付けています。全ての人々の多様性を尊重し、あらゆる人々が安心して幸せに生活できるための真の金融インフラの構築や、個人が必要とする最良の金融サービスの提供を通じて、社会の持続的成長につながる取り組みを展開することとしています。
創造性豊かな金融サービスを通じた平和への貢献
2005年に設けた「マネックス・ユニバーシティ」も将来の資産形成により個々の未来がより豊かで幸せなものとなることを目指した取り組みのひとつです。個人の金融リテラシーの向上が、資産運用だけでなく、人生設計そのものの柱であると考え、さまざまな講座やイベントの開催など、インタラクティブなコミュニケーションを主体にした活動を継続的におこなっています。
上場企業としての責任を果たすため、こうした多様な取り組みを通じて、リソースを結集し問題と向き合い、先進的なサステナブルファイナンスを通じて,これからも「地球へのソリューション」に大きく貢献し続けてまいります。
国連が発表する幸福度ランキング(World Happiness Report)、その2021年版で日本は56位。世界との幸福度格差が指摘されています。平和であることの証として、皆が幸せであることを、従来の枠組みを超えた新しい発想や視点に基づき「金融サービス」の面からこれからも追求していきたいと考えています。
マネックス証券株式会社
専門役員チーフ・アナリスト兼マネックス・ユニバーシティ長
大槻奈那
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