脱炭素・循環型エネルギーの追求を中心に気候変動に対応(住友商事)
2021年9月に開催された「2021世界平和経済人会議ひろしま」では、「2021年・国際社会のカムバックとより良い復興-パンデミック・差別と格差・自国中心主義の克服のために」をテーマに,経済人たちが議論を行った。参加企業の中から,住友商事株式会社の取り組みについて,サステナビリティ推進部長の大野氏に話を伺った。
セッションのテーマ「気候変動対策のために企業ができること」に関連する取り組みとして、当社では、2050年に当社グループのカーボンニュートラル化を目指すと共に、ビジネスパートナーや公共機関等と協力した取り組みや提言を通じて、社会のカーボンニュートラル化に貢献することを宣言しました。
総合商社として、幅広い取り組みがある中でも、とりわけ環境に与える影響が大きい発電事業については、環境負荷の低い発電ポートフォリオ(発電方式の割合)へのシフトの加速を明確にしています。石炭火力発電については、2035年までにCO2排出量を6割以上削減(2019年比)し、2040年代後半にはすべての石炭火力発電事業から撤退する計画です。更に、一般炭鉱山開発では、今後新規の権益取得をおこなわず、2030年に持分生産量ゼロを目指すこととしています。
また、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築を新たな事業機会と捉え、カーボンニュートラル社会の実現に資する次世代事業の創出に向け、社内の専門的な知財や人材などの経営資源を集約した組織『エネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative、EII)』を2021年4月に新設しました。喫緊の課題である気候変動問題がもたらす事業環境変化の中で、社内のさまざまな取り組みを横断的・複合的に集約・連携することで、新たなビジネスを実現する狙いがあります。
具体的には、水素・アンモニアなどのカーボンフリーエネルギー事業に加え、蓄電池、分散電源等の新たなエネルギーサービス事業、また豊富な実績を持つ森林事業などCO2の吸収・固定・利活用を3つの重点分野と位置付け、住友商事グループの次世代エネルギー事業の創出、拡大をEIIがリードしていきます。
官民連携により公益との調和を実現
「2021広島アピール」では、「真の功利主義」実践の必要性が説かれましたが、これに共通する理念を当社も大切にしてきました。
私たち住友グループの企業が400年の歴史を超えて受け継いできた住友の事業精神を伝える言葉の一つに「自利利他公私一如」があります。「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」と、公益との調和を強く求めるもので、当社の企業活動における価値判断の拠り所となっています。社員には、様々な研修の機会を通じてこうした理念を共有し、事業活動の中で実践しながら、社会に貢献する姿勢を未来につないでいくように努めています。
このように、当社では、以前から事業を通じた社会課題の解決を意識した経営を行ってきました。その一つの在り方として、官民連携の取り組みの中で公益との調和を追求していくことにも力を入れています。
2021年1月には、東広島市および広島大学と、脱炭素など新たな社会の構築に向けた包括連携協定を結びました。これは、産官学が連携し、AI(人工知能)など先端技術を活用して課題解決を目指す「Society(ソサエティー)5.0」や、IoTなどで最適に管理・運営が図られる持続可能な「スマートシティ」を実現し、さらにはイノベーション創出を目指す取り組みです。
当社が持つ知見や経験を活かし、健全な事業活動を通じて社会に貢献するべく、引き続き取り組んでまいります。
真の平和づくりへ“No One Left Behind”をめざす
会議では“Well-being(幸福)”がキーワードの一つでしたが、地球規模で活動している当社では、SDGsで謳われる“No One Left Behind(誰一人取り残さない)”の実現も決して忘れてはならないと考えています。
持続可能な社会を作るために脱炭素は必ず実現しなくてはならない目標ですが、これを追求する過程で、誰かが発展から取り残されたり、格差が生まれたりしては、真の幸福な社会の実現にはつながりません。
当社は、世界のさまざまな国、国内のさまざまな地域でビジネスを展開していく際に、それぞれの国や地域が策定した発展のためのマスタープランを円滑に実現できるようサポートすることで、人々の暮らしの基盤づくりや生活水準の向上に貢献してきました。例えば、ベトナムでの工業団地事業においては、ホスト国の経済発展のために、日本企業の進出から現地の方々の雇用創出まで、地元政府と二人三脚での事業展開が現在も発展的に進んでいます。
総合商社である当社の強みは、課題の解決に向けた多様な引き出しがあることです。日本国内はもとより、世界中のあらゆる地域の特質を考えながら、その社会とのつながりをしっかり構築することを基本動作にしたビジネスを創出することで、社会の持続可能性と経済の発展が両立した社会の実現をこれからも目指してまいります。
住友商事株式会社
サステナビリティ推進部長
大野茂樹
この記事に関連付けられているタグ