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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Round Table 20162016年度「ひろしまラウンドテーブル」及び「国際平和シンポジウム」の開催結果について

1 ひろしまラウンドテーブル

「国際平和拠点ひろしま構想」に掲げる「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた多国間協議の場として,「ひろしまラウンドテーブル」を開催した。

 

(1)日時

平成28年8月27日(土曜日)午後2時30分から午後6時00分まで
平成28年8月28日(日曜日)午前9時00分から午後6時00分まで 
平成28年8月29日(月曜日)午前10時00分から午後0時00分まで

 

(2)場所

グランドプリンスホテル広島(広島市南区)

 

(3)出席者(17名)

国名

氏名 経歴等
日本 秋山 信将 在ウィーン国際機関日本政府代表部公使参事官
阿部 信泰 元国連事務次長(軍縮担当),原子力委員会委員
川口 順子 元外相,前参議院議員,明治大学国際総合研究所特任教授
佐渡 紀子 広島修道大学法学部教授
戸崎 洋史

公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員

西田 充

外務省軍備管理軍縮課軍縮・不拡散専門官

藤原 帰一(議長) 東京大学大学院法学政治学研究科教授
向 和歌奈 東京大学政策ビジョン研究センター特任助教
湯崎 英彦 広島県知事
米国 アンドリュー・ウェーバー ハーバード大学ベルファーセンター上級フェロー,
元米国国防次官補(核・化学・生物防衛計画担当)
エイミー・ウルフ 米国議会調査局核兵器政策専門官
スコット・セーガン スタンフォード大学教授
ジェフリー・ルイス ミドルベリー国際大学モントレー校ジェームズ・マーティン不拡散研究センター
東アジア不拡散プログラム・ディレクター
中国 沈 丁立 復旦大学教授
樊 吉社 中国社会科学院主任研究員
李 彬 清華大学教授
韓国 千 英宇 元大統領外交安保上級秘書官

(4)内容

ア 協議事項

(ア)全体テーマ
「核兵器に関するグローバルな規範論的な議論を東アジアの文脈で検討する」

(イ)分科会テーマ
分科会1「(規範的・ユニバーサルな観点からの)核兵器の役割・存在意義」
分科会2「(地域安全保障の観点からの)東アジアにおける核兵器廃絶に向けたプロセス」

イ 総括

核兵器のない世界の実現に向けて,核抑止への依存を減らす方策等について意見交換を行い,
「議長サマリー」がとりまとめられた。

議長サマリーについてはこちらから

 

 [議長サマリーの主な内容]
 ・ひろしまラウンドテーブルは核兵器禁止条約の交渉を支持するグループと反対するグループの間の溝を埋める努力を促すとともに,この点に関し,東アジア地域の政府が指導的役割を果たすことを期待する。
 ・核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋め,核戦争のリスクを減らすための新たな交渉を開始するため,,核弾頭搭載型長距離巡航ミサイルの開発及び取得の禁止を提案する。
 ・米国オバマ政権が先制不使用宣言を含む核兵器の政策変更を検討しているとの報道を歓迎する。
 ・イランの核合意の確認やCTBTの支援などを通して,2020年のNPT運用検討会議の成功のため行動しなければならない。
 ・北東アジアにおける信頼醸成に向けて,少なくとも米国,中国,韓国及び日本の4か国が関与する地域対話を提案する。

 

議長サマリー全文(日本語仮訳)

 

  ひろしまラウンドテーブルは,「核兵器のない世界」という私たちの目的を達成するためにとられるべき手段について議論した。私たちは,核抑止への依存を減少させ,核軍縮を進めるものとして,次の取組を提案する。

 

1 私たちは,ノルウェー,メキシコ及びオーストリアにおいて核兵器使用の壊滅的な人道的結末をめぐって開始された国際的な議論が,国連オープンエンド作業部会における核兵器禁止条約の交渉提案に関し,対立を引き起こす議論に帰結してしまったことに,遺憾の意を表明する。核兵器保有国がこのような条約から距離をとる限り,核兵器禁止条約は,その意図する目的を果たすことはできない。ひろしまラウンドテーブルは,こうした交渉を支持するグループと反対するグループの間の溝を埋める努力を促したい。この点に関し,私たちは,この地域の政府に対し,そして特に核攻撃による被害を受けた最初で唯一の国である日本に対し,重要な指導的役割を果たすことを期待する。

 

2 核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋め,核戦争のリスクを減らすための新たな交渉を開始するため,私たちは,核弾頭搭載型長距離巡航ミサイルの開発及び取得の禁止について国際交渉が行われることを提案する。この種の運搬手段の廃棄を履行するに当たっては,通常弾頭搭載型巡航ミサイルとは異なる,核弾頭搭載型巡航ミサイルの検証が重要となる。検証に関する5核兵器国のワーキング・グループや核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)はこの問題に対処しうる。2016年10月13日に,国連総会第一委員会のサイドイベントとして,スウェーデンとスイスの代表団が,このような提案を支持する会合を開催予定である。

 

3 核兵器は使用されるべきではない。しかし,核兵器を廃絶するまでの間,核兵器は正戦ドクトリン,武力紛争法,そして国際人道法の諸原則に厳格に従わなければならない。「正当な軍事目標」の定義が,区別原則,均衡原則,そして特に必要性の原則の適切な適用に向け極めて重要である。文民は,通常兵器あるいは核兵器の標的とされるべきではなく,いかなる紛争においても文民への付随的被害を最小限に抑えるためのあらゆる努力が尽くされなければならない。抑止は無辜の文民を標的とするものではあってはならない。

 

4 私たちはまた,核兵器の使用が地球規模の気候に与える影響の重大さについても研究を続けなければならない。私たちは,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により行われた研究のような,この分野における客観的で専門的な研究が行われることを奨励したい。ひろしまラウンドテーブルは,このような研究を促進するトラック2会合の場を提供することができる。

 

5 広島訪問の後,オバマ大統領は,核兵器の先制不使用(NFU)宣言を含むいくつかの選択肢を検討していると報じられている。この政策は,核兵器の警戒態勢の緩和,必要とされる核弾頭数の削減,そして核兵器取得に対する誘因の低減を目的とするものである。私たちはこのオバマ大統領の取組を歓迎する。私たちは,このような政策変更が,米国が提供する拡大抑止に依存する同盟国の間に不安を引き起こす可能性について認識しているものの,この政策が,米国がその同盟国に提供してきた安全保証を弱めるものではないと考える。通常兵器への依存度を高めることにより,ほぼすべての状況下において,より信頼性の高い安全保証を提供することができる。中国が核兵器の先制不使用を宣言していること,また,米国が,核兵器以外の脅威に対して通常兵器による抑止で対応した後の最後の手段としてのみ核兵器を保有すると主張していることが想起されなければならない。米国とその同盟国との緊密な協議が,同盟国の不安を和らげることにつながるだろう。米国による当該政策〔核兵器の先制不使用〕の採用に加えて,他の核兵器保有国もまた当該政策を採用すべきである。

 

6 核軍縮と不拡散の礎石として核兵器不拡散条約(NPT)が重要であることを再確認する必要がある。2015年のNPT運用検討会議の失敗を受け,私たちは2020年NPT運用検討会議を成功させるために行動しなければならない。私たちは,核軍縮に関するNPT第6条の規定が,核兵器国のみならず,非核兵器国にも適用されることを重ねて表明する。核不拡散分野においては,イランの核合意が有する重要な価値が強調されなければならない。包括的核実験禁止条約(CTBT)は,既存の核実験モラトリアムの継続,条約の発効,国際監視制度(IMS)の強化,そして現在暫定的な機関であるCTBT事務局を恒常的機関とするといった措置を安全保障理事会が要請することによって補強することができる。機微技術であるウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理について対処する必要がある。中距離核戦力全廃条約(INF条約)のような既存の軍備管理条約・協定の継続的遵守が奨励されるべきである。地球規模で競って行われている核兵器とその運搬手段の近代化について懸念が表明された。

 

7 北朝鮮における核兵器及び運搬手段の開発は許しがたいものであり,北東アジアは現在,核拡散によって極度の安全保障への不安が生まれ,拡大核抑止への依存を強めかねない地域となっている。ここで私たちは,地域レベルでの信頼醸成に向けた取組の実施を提案する。それは将来起こりうる紛争を管理し,核戦力を基礎とした抑止への依存を減少させ,脅威認識や誤算の危険に対処することになるだろう。このような取組は核戦力を有する国々のみにゆだねられるべきではなく,核兵器保有国と非核兵器国の両方が北東アジア地域の信頼醸成に向け努めることが必要不可欠である。私たちは核軍縮に向けたグローバルな努力と北東アジアにおける地域の緊張の高まりとの間にある溝を埋めなければならない。

 

8 この観点から,私たちは,米国,中国,韓国,日本の少なくとも4ヵ国が関与する地域対話を提案する。北東アジア非核兵器地帯の案はこの文脈における提案として,つまり,当該地域の非核兵器国に対して消極的安全保証を提供する提案として議論されるべきである。そのような対話は,ASEAN地域フォーラム(ARF)や日中韓の3か国協議といった既存の枠組みを最大限に活用するべきである。これに関連して,北東アジアにおける中距離核戦力規制の提案が議論された。ひろしまラウンドテーブルは政府レベルの交渉を促進するトラック2会合としての役割を果たすことができる。

 

 このサマリーは,「ひろしまラウンドテーブル2016」の参加者の一般的な支持を受けて,議長によって作成された。

 

ひろしまラウンドテーブルの様子

 

 事後記者会見の様子

 

2 国際平和シンポジウム

「ひろしまラウンドテーブル」の参加者により,核軍縮を巡る現状や今後の展望等について,会議での議論等を分かりやすく伝えるため,「国際平和シンポジウム~核に頼る抑止をどう乗り越えるか~」を開催した。

 

(1)日時

平成28年8月29日(月曜日)午後3時15分から午後5時00分まで

 

(2)場所

広島国際会議場「コスモス」(広島市中区)

 

(3)パネルディスカッション

ア コーディネーター

 藤原 帰一(東京大学大学院教授)

 

イ パネリスト

 佐渡 紀子氏(広島修道大学教授)
 スコット・セーガン氏(スタンフォード大学教授(米国))
 李 彬氏(清華大学教授(中国))
 千 英宇氏(元大統領外交安保上級秘書官(韓国))

 

ウ 概要

 「ひろしまラウンドテーブル」での議論を紹介するとともに,核兵器に頼らない安全保障を実現するためには,どのような取組が必要とされるか等について,各国の立場を踏まえながら意見交換を行った。

国際平和シンポジウムパネルディスカッションの様子

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