核兵器廃絶と世界恒久平和の 実現に向けて
© オーストラリア国立海洋博物館提供
広島市と長崎市が共同で開催する「ヒロシマ・ナガサキ原爆・平和展」。被爆の実相を伝え、核廃絶を訴えるため1995年(平成7年)からスタートし、これまで19か国54都市で開催され、今夏はオーストラリア・シドニーで開催されています(写真1枚目、3枚目)。企画を担当する広島平和記念資料館・副館長の細田益啓さんと同・啓発課の和田香穂里さんにお話を伺いました。
「これまで原子爆弾が投下された都市は、広島と長崎の2カ所だけです。原爆の威力、被害の実相を二都市が共に訴えることで、より伝わるものが大きいと思っています。広島は原爆が投下された最初の都市ですが、長崎を最後の都市にとの思いで取り組んでいます」(細田さん・写真右)
© オーストラリア国立海洋博物館提供
「ヒロシマ・ナガサキ原爆・平和展」を開催する都市は、平和首長会議に加盟する核廃絶に熱心な都市や核保有国などから選定。2020年(令和2年)にはアメリカ・ハワイ真珠湾に浮かぶ、戦艦ミズーリ記念館での開催が実現しました。展示では、原爆で亡くなった方が身につけていたものや溶けたガラス、食べられないまま黒く焦げた弁当箱のレプリカなどを展示するとともに、被爆者が現地を訪れ生の声を伝えてきました。しかし、コロナ禍により、渡航が難しくなったことから、今夏のシドニーでは証言者の梶本淑子さんがオンラインで開会行事に出席し、被爆体験証言を行ったほか(写真4枚目)、被爆者8人の証言をビデオで上映し、体験記を資料として配布するという形で開催することになりました。
「幅広い年齢の方たちに訪れていただいています。原爆が投下された事実はみなさんご存じですが、きのこ雲の下がどんな惨状だったのかは、海外ではほとんど伝えられていません。『初めて被爆の実相を知った』『こんなことは二度と繰り返してはならない』というメッセージをいただくことが多いです。海外まで渡航して被爆体験を語ってくださる被爆者の方には『わざわざここまで来てくれてありがとうございます』『勇気ある行動だと思います』などと感謝の声をいただきます」(和田さん・写真2枚目左)
© 広島平和記念資料館提供
お二人とも「被爆者の生の声が一番インパクトがある」と声を揃えます。被爆者の高齢化が進む中で、その言葉を伝え、思いを受け継ぐ被爆体験伝承者の育成にも力を入れており、現在148人が登録されています。
「原爆・平和展はこれからもずっと続けていきます。原爆の非人道性を訴えかける資料を海外で展示し、証言者の声を聞いていただく。原爆の悲劇を遠い国の昔の出来事と思わず、身近なこととして捉えてくれる人が一人でも多くなればと思います。アメリカでは核兵器の正当性を訴える人もいますが、若い世代では『必要ない』という意見の人が増えています。それは広島市と長崎市が長年にわたり訴え続けてきた、一つの成果だと感じています」(細田さん)
今夏は東京オリンピックの開催に合わせて、国内でも東京都文京区、同千代田区、埼玉県飯能市での開催を予定。コロナ禍で平和記念公園や平和記念資料館へ訪れる人が少なくなっている今だからこそ、多くの人の目に留まる機会にと期待されています。
ヒロシマ·ナガサキ原爆·平和展
TEL 082-242-7828(広島平和記念資料館)
HP http://hpmmuseum.jp/modules/info/index.php?action=PageView&page_id=179
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