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国際平和拠点ひろしま

ヒロシマの心を継承し広く発信する力を育む
「ひろしま平和ノート」改訂の意義とは




広島市平和教育プログラムの一環として、市立小・中・高校で使用されている教材「ひろしま平和ノート」。2023(令和5年)年3月に改訂され、内容の約7割が一新されました。

平和教育プログラムや「ひろしま平和ノート」が導入された背景、今回の見直しに至った経緯や目的について、広島市教育委員会 学校教育部 指導第一課の高田尚志(たかた ひさし)課長に伺いました。

広島市では、1970(昭和45)年以来、「ヒロシマの被爆体験を原点として、生命の尊さと一人一人の人間の尊厳を理解させ、国際平和文化都市の一員として、世界恒久平和の実現に貢献する意欲や態度を育成する」という目標のもと、各学校の実態に即して平和教育が行われてきました。

しかし、2010(平成22)年の「平和に関する意識実態調査」では、原爆投下の年や日時を正確に答えられた割合は小学生33%、中学生56%、高校生66%にとどまるなど、児童生徒の被爆に関する知識や、被爆体験を継承しようとする平和への意識・意欲が希薄になってきている実態が浮き彫りとなりました。

危機感をおぼえた広島市は、平和教育の見直しに着手。児童・生徒の発達段階に合わせた目標と内容を設け、広島市立小・中・高校一貫のプログラムを策定することとなりました。その教材として、「ひろしま平和ノート」を活用しています。「ひろしま平和ノート」には、小学校低学年、小学校高学年、中学校、高等学校の4種類があり、各学年3時間の小単元を設定しています。

「ひろしま平和ノート」の活用が始まって10年が経過し、今年、2023(令和5)年春に「ひろしま平和ノート」は転機を迎えました。大きくその内容が改訂されたのです。


平和教育プログラムを見直し、「継承」と「発信」に力を入れたと語る高田課長


「この10年で、いろんなことが変わりましたよね。被爆者の高齢化が進み、世界情勢も大きく変わりました。また、オバマ前アメリカ大統領をはじめ、さまざまな方が広島を訪ねられました。こうした変化を受けて、子どもたちが被爆の実相に触れて理解し、自分で考えて発信できるようになるためにより良い教材が必要だと、改訂が決まりました。平和教育の根本にあるのは、『こんな思いを他の誰にもさせてはならない』という被爆者の訴え、いわゆる『ヒロシマの心』です。被爆者の思いを引き継ぐ子どもを育てるためには、どういう教材を、どのタイミングで使って、学び考えさせるのか。改訂の意図は、そこに尽きます」

各段階での目標と内容を設定する際、軸となったのは「継承と発信」でした。

自分ごととして捉えられるよう、例えば、低学年の児童には「大切なものが一瞬で消えてしまったできごと」という切り口で原爆投下について考え、宝物や家族などの自分に身近な内容から、学年が進むにつれて国際社会へと徐々に視点を広げていく内容となっています。発達段階に応じて、被爆の実相を学ぶとともに復興や世界平和について考える内容へとシフトし、小学校では学級や校外での発表、中学生以上は県外や海外の人に向けたメッセージ作成などを通して、自分の言葉で発信ができるようなプログラムが組まれています。

「クラスで平和について考えたことを発表したり、地域の方を呼んで平和集会を開き、学んだことを表現したりしている学校もあります。高校生は、演劇で表現するなどしている学校も。市としては、小学6年生を対象にした『こどもピースサミット』という取り組みを行い、平和をテーマにして書いた作文を毎年募集しています。意見発表会などを経て、2名の子ども代表が8月6日の平和記念式典で『平和への誓い』として発表するというのが、この取り組みのゴールです。中学生は『伝える HIROSHIMAプロジェクト』を通して、8月6日に各国駐日大使や海外の人々に向けて英語で平和メッセージを伝えます」

親や祖父母が被爆者で、戦争体験を身近に感じられた時代は過ぎ、家庭内に被爆体験を持つ人がいるケースはレアになりつつあるのが現状です。しかし、戦争が遠い過去になったとしても、二度と繰り返さないために「ヒロシマの心」を風化させないことが大切です。

「今、核が使用されていないのは被爆者の体験や思いがあるから。今はまだご自分で話してくださいますが、年月が過ぎれば、実際に経験された話を聴くことも難しくなります。どう引き継ぐかは教育の役割だと思います」


学年ごとにわかりやすく、さらに自分ごととして考えられるように改訂された「ひろしま平和ノート」


時代に即して内容や方法を改訂しながら、地道かつ着実に、途切れることなく続いている広島市の平和教育。その中で、重要な役割を果たしている「ひろしま平和ノート」は、広島市のウェブサイトで公開されています。

「どなたでも自由に使ってもらえるよう公開しています。ひろしま平和ノートは、ひとつの『きっかけ』。ここから広がる取り組みを意図して作られています。被爆の実相を知り、自分ごととして考えられるようになると、身の回りにあるあたりまえのこと、ものが意味を持ってきます。市外、県外でも教材として使っていただいて構いません。むしろ、どんどん使っていただきたいです」


【こどもたちの平和学習推進事業及び小・中・高校生によるヒロシマの継承と発信】

https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/education/16812.html




【お問い合わせ】

教育委員会 学校教育部 指導第一課・指導第二課
電話:082-504-2784・082-504-2487/Fax:082-504-2142

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