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国際平和拠点ひろしま

世界平和を自分ごととして考え、学び、実行する 平和活動サークル「S2」

 広島市立大学で、「世界が平和になるため、人々の笑顔を増やすために、自分たちに何ができるのかを考え、学び、実行する」をテーマに平和活動を行っている学生サークル「S2(エスツー)」。「S2国内」と「TFT」の2グループに分かれて、2022年度は総勢26名が活動しています。今回は「S2国内」の活動内容を中心に話を聞いてきました。

「S2」は「Smile×Smile」の略で、被爆地・広島や戦争のことをより多くの人に伝えて考えることを目標とした「S2国内」と、日本や欧米など先進国の食生活改善の促進と開発途上国への寄付などを行う「TFT(TABLE FOR TWO)」に分かれて活動しています。

グループを兼任し、S2全体の部長を務める近藤理沙さん(こんどう・りさ、2年)は徳島県の出身。幼少の頃からテレビなどで紛争地域の子どもたちの姿や生活を見て、平和活動に関心を寄せていたといいます。「テレビに映る子どもたちと、自分が暮らす環境はあまりにも違う。何かできることがあるのなら」という思いを長く持っていました。

S2部長の近藤理沙さん

 またS2国内で副部長を務める東莉子さん(ひがし・りこ、2年)は和歌山県出身で、小学生の時に訪れた広島平和記念資料館の見学が、平和に関心を持つようになったきっかけ。

「もっと平和について学びたい」と、広島市立大学の国際学部に入学し、S2に入部したそうです。

S2国内副部長の東莉子さん

 S2国内の活動は、県外から訪れる修学旅行生への平和記念公園のガイドや、平和にまつわるイベントへの出展、フィールドワークの実施など多岐にわたります。特に修学旅行生に向けたガイドには力を入れていて、どうすれば広島の歴史や平和への歩みをうまく伝えられるか、各自勉強を重ねています。

「会話形式でガイドを行った方が、子どもたちの心により残ると気づきました。例えば原爆の子の像を案内する時に、『原爆による白血病で亡くなった佐々木禎子さんは、当時いくつだったと思う? みんなと同じ小学校6年生だったんだよ』というように、一方的に説明するのではなく、質問を交えながらガイドを進めています。」と、東さん。

修学旅行生へのガイドの様子

 さらにガイドを務めることで、自分たちの知識も深まり、伝えたいと思う事柄が増えているそうです。近藤さんは、「学校の平和学習などである程度の知識を持って来られていますが、まだまだ知られていないことも多いです。『原爆ドーム付近に設置されているベンチの中には、原爆投下のときに爆風で吹き飛ばされた石を使ったものもあるんだよ』と伝えると、かなり驚かれます。」と話します。教科書に載っていないような事実を伝えることで、戦争と平和をリアルに感じ、関心の幅を広げてほしいというのが願いです。「平和記念公園を訪れてもらえるのはうれしいですが、それだけで被爆地・広島を知ることができたと満足してしまわず、もっと街に息づく被爆の爪痕にも注目してもらいたいですね。」

勉強のため行ったサークルメンバーでのフィールドワーク


 2022年8月6日には、平和記念式典に参加後、平和大通りを抜けて比治山まで歩くというフィールドワークを実施。「原爆が落とされたあの日、比治山から見下ろす街が一面火の海だった」という被爆証言から、実際に平和記念公園から比治山まで歩いたらどれほどの距離なのか、比治山からは街がどのように見えるのか、自分たちの目と体とで体感してみようと考えたのだそうです。ウオーキングの際には既存の地図アプリを使用し、マップ上に当時の建物の倒壊率や死亡者数を表示させながら、戦争の悲惨さと愚かさをかみしめて歩きました。

 ほかにも、広島市が開催する「市民平和文化イベント」に参加し、活動報告を行うと共に、佐々木禎子さんが薬包紙で折っていたとされるサイズの折り鶴を折る体験型ワークショップを開催。年代性別問わず、幅広い層の世代に平和について訴求をしました。

2021年に参加した平和文化イベントの様子

 また、一方のTFTで副部長を務める森舞衣子さん(もり・まいこ、2年)は、「S2国内とTFTは“広島”というキーワードと“食”というキーワードが違うけれど、目指す平和は同じ。困っている人や苦しんでいる人に寄り添い、自分にできることは何なのか、たとえそれが小さな一歩でも踏み出すことが大事です。」と、言葉に力を込めて話してくれました。

TFT副部長の森舞衣子さん

 最後に、東さんは「この活動をしていて一番驚いたのが、韓国人の慰霊碑を目にしたこと。他国の人も犠牲になったのだと気づかされました。県外から両親や友人が遊びに来ることもあるので、学んだことをまずは身近にいる大切な人に伝えたいです。」近藤さんは、「サークルの卒業生には、社会に出て、教育機関や平和活動を行うNGOなどで働いている方もいます。そんな先輩たちから刺激を受けることも多く、今年3年生になって引退が近づく私たちは、次の後輩たちへバトンをつないでいかなければと思っています。」と話してくれました。

 今後の展望としては、これまで行ってきた修学旅行生へのガイドをもっと広めるとともに、身近にいる人にこそ、平和を伝えたいと意気込みます。また、2023年3月には長崎への研修旅行を企画し、広島で得た学びと視野を持って、長崎という土地に刻まれた“戦争と平和”を自らの目で確かめに行くそうです。

 平和について学ぶことに対して、時々『過去の出来事なのに今さらどうして』というような声を耳にすることがあります。しかし、現在・未来の平和を築くためには、過去を知ることが必要です。学び続けること、考え続けること、伝え続けることで真の平和につなげることができるのではないでしょうか。

【DATA】

平和活動サークル S2

問合せ:広島市立大学

082-830-1500(代)

Instagram 【S2国内】@s2_kokunai 【TFT】@s2_tft

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