START:Strategic Arms Reduction Talks戦略兵器削減交渉(START)開始
1982年6月29日にジュネーブにおいて戦略兵器削減交渉(START:Strategic Arms Reduction Talks)が開始されました。
これは,アメリカとソ連が1982年に開始した交渉であり,この交渉の結果,第一次戦略兵器削減条約(START-I:Strategic Arms Reduction Treaty)を生み出しました。
戦略兵器削減条約について,ひろしまレポート2013年版には次のように記載されています。
核兵器の廃絶という目標に向けた最も重要な措置の一つは、当然ながら既存の核兵器を削減してい くことである。現在、法的拘束力のある条約の下で核兵器の削減を実施しているのは、米国及びロシ アである。両国は、配備戦略核弾頭を6,000発の規模に削減することを定めた戦略兵器削減条約 (START、1991年7月署名、1994年12月発効)、同じく3,000〜3,500発の規模への削減を定めた STARTⅡ(1993年1月署名、未発効)並びに(実戦)配備戦略核弾頭数を1,700〜2,200発の規模と する戦略攻撃能力削減条約(SORT、2002年5月署名、2003年6月発効)を経て、2010年4月に新 STARTに署名した。新STARTは2011年2月に発効した。米露は新STARTの下で、条約発効から7年 後の2018年までに、それぞれの配備戦略(核)運搬手段(大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発 射弾道ミサイル(SLBM)及び戦略爆撃機)を700基、配備・非配備戦略(核)運搬手段を800基、配 備戦略(核)弾頭を1,550発の規模に削減するとの義務を負っている。この上限を超える戦略(核) 運搬手段については廃棄が義務付けられているが、核弾頭については過去の米露(ソ)核軍備管理条 約と同じく、廃棄・解体についての義務は規定されていない。
ひろしまレポート2013年版
米露の核兵器保有数はSTART等の法的拘束力のある条約の下で削減されてきました。
2021年に条約の期限を迎える新STARTに注目が集まっており,ひろしまレポート2020年版では,新STARTについて次のように記載されています。
2021年2月に条約の期限を控える新STARTの重要な課題が、その後の二国間核軍備管理のあり方である。トランプ大統領は2017年1月の就任前から新STARTに批判的で、条約に基づき5年間延長するとのロシアの提案に対しても、消極的な態度を隠さなかった。2019年4月になると、ロシアだけでなく中国を含め、また戦略核戦力だけでなく他の核戦力や運搬手段をも規制する新たな合意に向けて、米政府内で協議が開かれていると報じられた。5月15日の上院公聴会では、トンプソン(Andrea Thompson)国務次官が、新START延長問題に関してはいかなる決定も下されておらず、検討を要する事項として、ロシアの戦略戦力近代化、ロシアによる軍備管理条約違反の歴史、米国及び同盟国の安全保障の必要性、中国の透明性の欠如を挙げた。
https://hiroshimaforpeace.com/hiroshimareport/report-2020/page-8/
こうした米国の主張に対して、ロシアは、新STARTの期限延長を米国に求めている。また、条約対象外の核戦力・運搬手段については、新STARTとは分けて議論すべきだと述べる一方、ロシアは戦略防衛兵器にかかる米国の動向に大きな関心を有しているとして、米国を牽制した。
米露は5月の外相会談で、新START延長問題に関して協議を進めることで一致した。米国は、トランプ大統領が条約延長の是非に関して2020年に判断するとの見通しを示している。これに対してロシアは11月24~26日、新STARTのもとで初めて米国の査察官に、12月の配備に先立ち新型の極超音速滑空飛翔体のアバンガルド(Avangard)を視察させた。これについて、ロシア戦略ロケット軍前参謀総長は、「新STARTで想定される標準的な手続きである。米国に条約延長への追加的な刺激を与えるものだ」と述べた。また11月27日、ロシアのリャブコフ(Sergei Ryabkov)外務次官は、米国に対して新STARTの5年間延長を正式に提案し、米国が5年間の延長を望まない場合は、短期間の延長も検討すると述べた。12月にはプーチン(Vladimir Putin)大統領が、「年内できるだけ早い時期に前提条件なしで新STARTを延長する用意がある」とも発言した。しかしながら、米国側からは前向きな反応はなく、2019年中には条約延長問題に関して、明確な方向性は合意されなかった。
2019年中に新START延長問題に明確な方向性が合意されなかったことで,米露の二国間核軍備管理のあり方に更に注目が集まっています。
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