1 全体概要
【場 所】 ニューヨーク(アメリカ)
【取組内容】
○ 県主催サイドイベントの開催
○ カザフスタン・キリバス政府主催サイドイベントへの登壇
○ ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)主催サイドイベントへの登壇
2 主な内容
「核兵器禁止条約第2回締約国会議」での働きかけ
核兵器禁止条約第2回締約国会議の本体会議における核兵器の非人道性に関するパネルディスカッションのパネリストとして登壇し、核抑止に依らない安全保障の構築と持続可能性の観点から、核兵器廃絶について発表しました。発表後の質疑応答では、締約国会議参加者から質問が相次ぎ、本県の取組について議論を深めました。
また、核兵器と持続可能性の関係性についてのサイドイベントを主催したほか、カザフスタン・キリバス政府主催のサイドイベント及びストックホルム国際平和研究所(SIPRI)主催のサイドイベントにもパネリストとして登壇し、核兵器廃絶に向けた議論に参加しました。
さらに、国連・各国政府関係者等に直接面会し、本県の取組への賛同を得るための働きかけを行ったほか、会場で、広島県/HOPeの取組を紹介するバナー展示を行いました。
本体会議への登壇
本体会議において行われた、核兵器の非人道性に関するパネルディスカッションに登壇し、各登壇者が10分程度のプレゼンテーションを行った後、政府関係者や市民社会グループからの質疑を受け、議論を行いました。
【日 程】令和5年11月28日(火)10:00~13:00
【場 所】Trusteeship Council(ニューヨーク国連本部)
【テーマ】核兵器の禁止を堅持していくために私達には何ができるか、新たな研究や革新的な政策が考えられる領域について
【登壇者】
・モリーツ・クット(核兵器禁止条約 科学諮問グループ)
・リチャード・レナエ(赤十字国際委員会)
・湯﨑 英彦 (広島県知事)
・カリーナ・レスター(ファースト・ネーションズ・オーストラリア)
・エレティ・テカバイワ(キリバス共和国観光局プログラム・オフィサー)
【参加者】政府関係者、市民社会団体等の参加者等
【広島県の主な発言】
- 核兵器廃絶に向けて「核抑止に依らない安全保障の構築」と「持続可能性の観点からの訴求」について提案したい。
- 「核抑止に依らない安全保障の構築」は、核抑止は核兵器により相手の行動を抑止できるという仮定に立っているが、それは破られる可能性があるため、安全保障において核兵器に頼らない安全保障システムの構築が必要であり、専門家と研究を行っている。核兵器禁止条約批准国を拡大するためにも、世界から広くこの議論に参加していただきたい。
- 「持続可能性の観点からの訴求」は、核兵器を廃絶することが地球の持続可能な未来と 繁栄のために必要であり、かつ、そのための原資にできるという考え方を核兵器コミュニティ以外の人にも認識してもらう必要があり、核兵器なき未来における平和と繁栄のあり方を考えることを主流化し、普遍化していきたい。
【広島県に対する主な質疑・コメント】
<<メキシコからの質問>>
分野を超えた議論には、様々な抵抗があると思うが、どのように進めていくのか?
(県からの回答)
地球温暖化が普遍化されたように、地球温暖化も科学的な研究から始まり、のちに市民社会、政策立案者の間で広まり、現在では普遍化している。我々は、次期国連開発目標に核兵器廃絶を盛り込む議論の過程において、熱い議論が行われ、その議論の内容が政策立案者やメディアからの注目を得て、普遍化されることを目指したい。
<<ニュージーランドからの質問>>
被爆80年に向けて何に注力するのか?
(県からの回答)
「核抑止に依らない安全保障の構築」と「持続可能性の観点からの訴求」に加え、2025年には、世界平和経済人会議を開催し、経済界の平和への貢献を求めたい。
<<ブラジルからのコメント>>
非核兵器地帯に属している国々にとっては、核抑止の研究は、喫緊の課題でないため、県が率先して取り組んでいることはとても励みになる。安全保障に関する関心が高くなっている今こそ、核抑止の替わりとなる安全保障の構築の研究が、非締約国の核兵器禁止条約への批准・署名につながる。
県主催サイドイベントの開催
核兵器の問題が「持続可能な未来」を考える上で避けて通れない重要課題であるという考え方を普遍化していくため、どうすれば核兵器の問題をこれまでの軍事・安全保障の枠を超え、社会、経済、環境分野などの持続可能性の観点から多角的に捉え直し、多様なステイクホルダーと共有できるかについて議論しました。
【日 程】令和5年11月29日(水)
【場 所】Conference Room A(ニューヨーク国連本部)
【テーマ】グローバル目標としての核兵器なき世界人類と安全保障と持続可能性の橋渡し
【登壇者】
モデレーター:島田 久仁彦(HOPeプリンシパル・ディレクター)
パネリスト:
・レベッカ・ギボンズ(サザンメイン大学准教授、核抑止を乗り越えるワーキンググループ共同議長)
・山口 忍(国連開発計画 対外関係アドボカシー局ジャパンユニット 上級顧問)
【参加者】44名(ICAN新事務局長を含む)
【主な議論】
- 核兵器の問題を持続可能性の観点から多角的に捉えなおす試みは、地学的な分断が起きている今、時宜を得ており、かつ重要である。
- 核兵器は、現行のSDGsすべてのゴールに関連性がある。例えば、TPNWの締約国会議でも議論が多く上がっているように、核は土地だけではなく、水中など、地球上にあるすべての生命に影響を与える。
- 核兵器産業には、多くの資源が投入されており、この資源を教育、衛生、飢餓、気候変動など地球の持続可能性を高めることができる分野に再配分することができれば、より公平で正義に基づく世界を築くことができる。
- 現行SDGs策定時には非国家主体や多様なステイクホルダーが活躍した。2045年を目標年とする、次期国連開発目標の策定においては広島県やHOPeに期待している。
- 核兵器は、人間の安全保障すべてに関わる問題であるにも関わらず、国連内で核兵器問題を扱っているのは、国連軍縮部(UNODA)と国連軍縮研究所(UNIDIR)のみであり、国連の他機関においても核兵器問題を取り扱う必要がある。そのためには、市民社会の声が必要である。〔質疑応答時のICAN事務局長のコメント〕
カザフスタン・キリバス政府主催サイドイベントへの登壇
第二次世界大戦後、多くの核実験の被害を受けたカザフスタン共和国及びキリバス共和国の主催により、核兵器禁止条約第6条「被害者援助と環境回復」及び第7条「国際協力及び援助」をテーマに開催されました。
政府関係者、研究者、実務家が登壇し、核被害者の援助及び国際協力の具体化に向けて、長年苦しんできた被害者の意見を取り入れること、また、医療的支援のみならず、被害者の尊厳の回復を目的にするべきなどの議論が行われました。
【日 程】令和5年11月27日(月)
【場 所】Trusteeship Council(国連ニューヨーク本部)
【テーマ】核兵器被害による被害者援助・環境回復・国際協力支援
【登壇者】
モデレーター:クリスチャン・N・チオバヌ(核兵器禁止条約キリバス代表部顧問、核時代平和財団政策・提言コーディネーター)
あいさつ:カザフスタン 副首相 ムラ・ヌトロ
パネリスト:
・湯﨑 英彦(広島県知事)
・ヴェロニカ・クリストリ(赤十字国際委員会国連代表部シニアアドバイザー)
・ボニー・ドシェルティ(ハーバード大学法科大学院武力紛争・国際人権クリニック講師)
・イヴァナ・ヒュー(核時代平和財団代表)
・ベネティック・カブア・マディソン(マーシャル教育イニシアティブ代表)
・イヴァナ・ニコリック・ヒューズ(核兵器禁止条約科学諮問グループ代表、核時代平和財団理事長)
【広島県の主な発言】
- 広島県は、国の法律に基づいて被爆者支援を実施する地方自治体という立場であるが、一方で被爆者とともに歩み、国へ制度拡充を要望してきた結果、法的枠組が次第に整備され、被爆50年の節目となる1995年に「被爆者援護法」が施行され、被爆者援護の充実が図られた。
- 国内の被爆者及び遺族をはじめ、世界の被ばく者に寄り添いながら、新たなヒバクシャを生むことがないよう、核兵器廃絶に向けた歩みを進めていく。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)主催サイドイベントへの登壇
軍縮教育の現状や課題、将来に向けた展望等について、専門家や実務家を交えた議論が行われました。
【日 程】令和5年11月27日(月)
【場 所】Conference Room A(国連ニューヨーク本部)
【テーマ】核軍縮はどう教えられているか
【登壇者】
モデレーター:ウィルフレッド・ワン(ストックホルム国際平和研究所 大量破壊兵器プログラム ディレクター)
パネリスト:
・レベッカ・ギボンズ(サザンメイン大学 准教授、核抑止を乗り越えるワーキンググループ共同議長)
・ゴーカー・ムハジャノヴァ(ウィーン軍縮不拡散センター ディレクター)
・湯﨑 英彦(広島県知事)
【広島県の主な発言】
- 広島県では、広島-ICANアカデミーをはじめとする若者を対象とした核軍縮教育を実施している。若者は、意欲、創造性、行動力があることから、核軍縮の重要性を認識してもらい、行動に移してもらうことが、長期的な変化につながる。
- 現在の軍縮教育において、国際安全保障環境が厳しさを増し、核の軍拡傾向が強まる中で、核抑止派と核軍縮派の分断が、軍縮教育の場でも起きていることは課題であり、研究と教育の場において、核政策の結果である被爆の実相を学ぶ機会をプログラムに取り入れながら、核軍縮につながる抑止を含めた研究・教育を行うことが大事だ。
国連及び各国関係者への働きかけ
核兵器禁止条約第2回締約国会議の運営に携わる幹部や国連・各国政府関係者と個別に面会し、持続可能性の観点から核兵器問題を提起する新しいアプローチについて説明を行い、次期国連開発目標アジェンダ策定への参画に協力を依頼しました。また、「グローバル・アライアンス「持続可能な平和と繁栄をすべての人に」」(通称GASPPA)の活動を紹介し、県の取組に対して理解や協力を求めた。併せて、核兵器を巡る国際情勢について意見交換を行い、しっかりと核軍縮の取組を進めてもらうよう、直接働きかけを行いました。
(ア)石兼 公博特命全権大使(国連日本政府常駐代表)との面会
広島県の核兵器禁止条約締約国会議での活動内容を紹介するとともに、日本政府のオブザーバー参加等を求めました。
また、核兵器を取り巻く国際情勢に関する今後の展望や、国連内の議論について意見交換を行ったほか、G7広島サミットで確認された「広島ビジョン」への日本政府からの後押しを依頼するとともに、広島県の取組を説明し、日本政府に協力を求めました。
(イ)イレイン・ホワイト大使(元コスタリカ大使)との面会
持続可能性の観点から核兵器問題を提起する新しいアプローチについて説明を行い、賛同を得ました。GASPPAの活動と政府関係者を対象としたフレンズ会合設置を目指していることを説明し、協力を求めました。ホワイト大使からは、国連交渉プロセスにおける豊富な経験をもとに、今後のプロセスの中で協力できることがないか、考えてみたいと約束していただきました。
(ウ) アナ・ヒメネス・デ・ラ・オス次席大使(スペイン政府国連代表部)との面会
持続可能性の観点から核兵器問題を提起する新しいアプローチについて、説明を行い、核兵器と持続可能性のつながりについて、賛同を得ました。昨今のウクライナ情勢を巡る核兵器問題については、大変憂慮しているとの説明を受けました。
(エ) フワン・ラモン・デ・ラ・フエンテ大使(核兵器禁止条約第2回締約国会議議長)との面会
広島県が本体会議で発表した、核兵器廃絶を持続可能性の観点から捉え、次期国連開発目標に位置付ける取組について、強い賛同を得ました。本県の取組を着実に進めていくために必要な手法や国連内の交渉プロセスについて、助言をいただきました。
NPT運用検討会議第2回準備委員会会場でのバナー展示
ジャマイカ政府の支援を得て、締約国会議会場にて、ひろしまイニシアティブやひろしまレポートの紹介を行うバナー展示を行いました。期間中、多くの方々に展示を見ていただき、ブースを訪れる人々へ取組の紹介を行いました。
3 成果
【核兵器禁止条約第2回締約国会議への貢献】
- 本体会議のパネルディスカッションへの登壇や県主催のサイドイベントの開催を通じて、核抑止に代わる安全保障政策づくりと持続可能性の観点から核兵器廃絶と核軍縮に取り組むことを訴え、これが、条約の普遍化にも資することを提案できました。
- パネリストとして登壇した、他団体主催のサイドイベントにおいて、広島県の被爆者支援の経験を共有したほか、核抑止派と核軍縮派、双方の歩み寄りの必要性を訴えることができました。
【賛同者の拡大】
持続可能性の観点から核兵器問題を提起する新しいアプローチについて、会議の発表者や参加者、また面会した国連関係者等から賛同や助言を得ることができ、今後、ポストSDGsに核兵器廃絶を位置づけていくための弾みとなりました。
【政策づくり】
核抑止に依らない安全保障政策づくりについて、本体会議のパネルディスカッションでの議論を通して、参加者の関心を喚起し、その必要性を政府関係者等に訴えることができました。
4 日程
月 日 | 項 目 | 場 所 |
11/26 (日) |
日本発/現地着 | ニューヨーク |
11/27 (月) |
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11/28 (火) |
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11/29 (水) |
広島県主催サイドイベント | |
11/30 (木) |
現地発(11/29深夜) |
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12/1 (金) |
日本着 |
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※日付表示は現地時間
※組織名称は一部略称使用