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国際平和拠点ひろしま

ミドルベリー国際大学院モントレー校 対話・交流イベント

 11月13日(月)、アメリカ合衆国カルフォルニア州のミドルベリー国際大学院モントレー校を訪問し、大量破壊兵器と不拡散を専攻している学生たちと対話・交流イベントを行いました。

1 .ピース・キャラバン参加者からのプレゼンテーション

 ピース・キャラバン参加者から、「G7広島サミットと核軍縮における広島の役割」をテーマに、プレゼンテーションを行いました。

広島とG7広島サミットの紹介 

©CNS
  • 広島には、現在は宮島など美しい景色や牡蠣・お好み焼きなどおいしい食事などもあるが、原爆を初めて投下された街であり、1945年末までに14万人が亡くなり、2023年末時点で33万人以上の被爆者の方が亡くなっている。
  • G7広島サミットでは、核軍縮・不拡散、ウクライナ情勢、中国への対応、グローバルサウス等について、議論が行われた。
  • ウクライナのゼレンスキー大統領も来広し、スピーチで、被爆後の広島とウクライナの現状が似ており、広島のように復興できるよう、G7をはじめとする各国に支援を求めたこと、G7首脳らによる平和記念資料館訪問と献花が印象的であった。献花の様子は日本で何度も報道された。
  • 「広島ビジョン」は、G7首脳による核軍縮・不拡散に焦点をあてたサミット初の共同文書であり、核兵器がない世界は究極の目標であり、”realistic,pragmatic and responsible way”(安全が損なわれない形)で実現していくこと、また核兵器数を継続して減少させることが確認された。文書内の”realistic,pragmatic and responsible way” が核抑止論を肯定していると受け取られる点で、賛否が分かれている。

核軍縮における広島の役割

  • 広島では、広島平和記念資料館や、被爆者の証言を伝承することによって核による被害を後世に残す取組が行われている。また、広島ユースによる平和に向けた取組として、核廃絶に向けた署名のキャンペーンや核軍縮をはじめとする国際課題を学習するグローバル未来塾inひろしま、ひろしまジュニア国際フォーラムといった取組が行われている。
  • 被爆の実相やユースの取組を活用することが、大きく複雑な地球規模課題の解決には、重要ではないか。
  • 広島では、小学校から平和教育を行っているが、広島の原爆被害や核軍縮を中心とした内容となっており、大学で初めて、広島や核軍縮以外に焦点を当てた平和教育を提供している。ヨハン・ガルトゥング氏の平和の定義に広島の平和教育を当てはめると、消極的平和に焦点を当てている。広島は、平和教育のフロントラインに立ち、広島や核軍縮以外の国際問題も扱い、国際的視点を持ち、平和をより広義に捉えることができるユースを育成するべきだ。
©CNS
  • 他県では、平和をより広義に捉えているが、広島・長崎への原爆投下は歴史上の出来事として学習しているだけで、広島のように、核問題は取り扱っていない。広島で行われている核軍縮の教育を広めることは広島の役割だと考える。
  • さらに、広島からは、G7サミットを契機としたユースのレガシープロジェクトや、小さなコミュニティからでもいいので、次のG7に向けた提言を出すことができるのではないかと考える。

2. パネルディスカッション

 ピースキャラバン参加者からのプレゼンテーション後、ミドルベリー国際大学院モントレー校 の大学院生とパネルディスカッションを行い、核軍縮について、議論を深めました。

(1)G7広島サミットや「広島ビジョン」の成果と課題は何か

主な議論

  • 「広島ビジョン」において、核抑止論に肯定的と受け取られる内容になっている点は残念であったが、各国の首脳が広島を訪れたことにより、広島が注目を浴びた点はよかったと思う。
  • G7の中に核兵器国やアメリカの核の傘の下にいる国が含まれていることを考えると、「広島ビジョン」において核抑止論が肯定されるのは自然だと考える。厳しい国際情勢が続くなか、G7各国が核軍縮に向けた文書を発表したことは評価すべき点であり、スタートラインだと考える。
  • 「広島ビジョン」には具体性に欠ける部分もあると思うが、核軍縮に向けた一歩であると考える。
  • 核兵器を継続して減少させることが明記された点は評価できるが、核軍縮に向けたステップとして、中国、ロシア、北朝鮮だけが名指しされ、そのほかの核兵器国や核を保有する能力がある国に言及がなかったことは残念である。
  • G7サミットにおいて、議論すべき地球規模課題が数多くある中で核軍縮が議論されたのは評価できる。核軍縮の問題をより重要な課題として取り上げていくことが必要である。

(2)核抑止派と核軍縮派をどのように協調させるのか

主な議論

  • 広島では、核兵器廃絶を訴えるだけで、日本が核の傘の下にいることに対して無関心であったり、核抑止について、知識が少ないユースが多い。国際政治や国際関係など、教育で、より広い視点を養うことが必要であると考える。
  • ブラジルとアルゼンチンが核政策に対して意欲的であったにも関わらず、トラテロルコ条約( ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約 )に署名した事例から、多国間で取り組むことが重要であると考える。さらに、核兵器を使用することによる結果を教育することで、万が一、核政策を進めることになった時に、非人道性を思い出し、踏みとどまらさせることが重要である。
  • アメリカでは、ロシアや中国が核兵器を廃絶するのであれば、アメリカも核兵器を廃絶していいと考える人が多い。核兵器を今すぐ廃絶することが難しくても、大きい、小さいなど、場所を問わず、よりよい将来のために、核兵器がない世界に向けて議論を行うことが重要だと思う。非核兵器国が核兵器国に対してリスクを低減や誤使用を防ぐことを目的に、対話をすることも大切だろう。小さくてもいいので、議論を重ねることが、冷戦後にあったように、大きな変化に備えることができる。

3.講演等

 パネルディスカッション後、ミドルベリー国際大学院モントレー校及びジェームスマーティン不拡散研究所の教授・研究者に核軍縮・不拡散に関する講演をしていただきました。

 ハーバード大学・マッカーサー財団核抑止を乗り越えるワーキング・グループで核抑止に頼らない研究を行っているジェフ・クノフ教授から、現在、研究を進められている核抑止のリスクと危険性の考え方について、講演いただきました。

©CNS

 ジェフリー・ルイス教授とNew Tool チームから、衛星やSNS上の情報をもとに、ロシアのウクライナ侵略の初期の兆候に気がついた事例の発表をいただきました。

4.ピースキャラバン参加者の声

  • プレゼンテーションを通して、核兵器の脅威について、改めて考えてもらうきっかけを提供できてよかった。
  • 複雑な要因が絡み合った問題に対して、少なくとも後退することはなく活動し続けることが大切であると感じた。
  • 広島とは異なる視点で、核抑止を含めた核の問題に関する現実的な議論ができたと思う 。
  • 核廃絶の先の達成したい世界のあり方を考えることは必要不可欠だという意見を聞いて視野が広がった。
  • 衛星やSNS上の情報を基に軍事行動を推定した発表が興味深かった。

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