「グローバル未来塾inひろしま」(第5期生) 参加者インタビュー
広島県では世界平和を実現する人材を育成するため、2016年度から高校生世代を対象にした「グローバル未来塾inひろしま」を開催している。これは半年以上かけて英語力や核軍縮・紛争解決などの国際課題を学び、さらに海外の高校生たちとディスカッションする「ひろしまジュニア国際フォーラム」への参加も含んだプログラム。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行によって中止となったが、2021年は2年ぶりに開塾。今回は第5期生として2022年2月に修了証書を受け取った久保日向太さんと中村心美さんに、活動を終えての感想を聞いた。
●参加したきっかけは?
久保:僕はもともと国際問題に興味があったんです。中3のときから貧困問題を研究していて。グアテマラに住む子どものマンスリーサポーターになって、寄付をしながらその子と文通をしていました。「グローバル未来塾」はそうした僕の活動を知っている学校の先生が教えてくれて。世界で同じ関心を持っている同世代の人とディスカッションできる機会などめったにないので応募しました。
中村:私は高校でいろんな国際問題について学ぶ「グローバル・イシューズ」という授業を選択しています。ただ、ここ何年かはコロナ禍で学校内の活動も海外との交流もできない状態が続いていて。そんな中、学校で「グローバル未来塾」のポスターを見つけたんです。そこには私の憧れていた先輩が「ためになった」「成長を感じた」というコメントを寄せていて。「私も先輩みたいに輝きたい!」と思ってチャレンジしました。
●印象に残ったことは?
久保:2つのことが印象に残っています。1つは海外の学生とオンラインでディスカッションした「ひろしまジュニア国際フォーラム」。とにかく英語力が全然足りなくて。“月とスッポン”どころか“月とザリガニ”(笑)。改めて自分の語学力のなさを痛感しました。もう1つは、これまで自分が考えていた答えのその先まで見ることができる瞬間があったこと。たとえばテロリズムについての授業があったんですけど、僕は「テロ=100%悪」と思ってて、だけど「テロリストを生む社会もその一端を担っているのでは?」という意見が出て。そのとき「これまで自分は物事の一側面しか見てなかったな」と気付かされたんです。自分の固定観念が壊されたのは非常に有意義な経験でした。
中村:私は緊急人道支援についての立教大学・渡部真由美先生の講義に衝撃を受けました。先生はメディアの影響で支援物資の配給に偏りが起こり、現場で混乱が生じたことを話されたんです。メディアで報道しないと災害の状況を伝えることはできないのに、それによって必要な場所に支援物資が届かなくなる事態が発生する……こうしたジレンマを受けて、私たちはメディアやSNSをどう使いこなしていくかというディスカッションを行いました。この問題については
もっと深く勉強したいと思います。
●未来塾で学んだことは?
久保:「いま私たちがすべきは議論ではなく対話」ということは強く感じました。未来塾ではたくさんのディスカッションを行いましたが、その中で自分も含めて、相手を論破するための議論だったり、自分の意見が正しいと証明するための議論に陥っている瞬間が多々あったんです。大事なのは議論の勝ち負けではなく、互いのことを理解して問題の解決策を探ること。対話することによって賛成派、反対派とも違う“第3の選択肢”が生まれると思うんです。たとえば未来塾のような場にこそ「核兵器賛成」という意見の人を呼んで、対話することで問題の本質を捉えられるような気がしました。
中村:特に海外の生徒の柔軟性に刺激を受けました。彼らはディスカッションの中で「それ、いい意見だね」と思ったら、すぐに自分の中に取り入れるんです。反対意見の人の話に耳を傾けて、いい部分を素直に取り入れていく姿勢はカッコいいと思いました。あと、彼らは自分の意見を自信を持って発信するんです。だから説得力があるし、他の人の心を変えていく力を持つ。私もグローバルな状況で自分の意志を堂々と表現できる人になりたいと思いました。
●久保日向太(くぼ・ひなた)さん。加計高等学校2年生。将来なりたいのは社会学・人類学の分野で研究を行いつつ、問題解決にも尽力するアクティビスト。趣味はお菓子作りで、バレンタインはもらうよりあげる方が多いとか。
●中村心美(なかむら・ここみ)さん。広島女学院高等学校2年生。中国のインターナショナルスクールに3年間通った経験があり、そこで広島という街の重要性や平和教育に興味を持つ。趣味はマンガ、特に少女漫画を読むこと。
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