10月27日(日)に行われた第4期グローバル未来塾inひろしまの研修について受講生からの報告書をお伝えします。講師はピースデポ 湯浅一郎氏です。
(受講生からの報告書を編集せず掲載しています。)
【報告書1】
講義名 核兵器廃絶に向けた市民の活動
研修講師名 湯浅一郎(ピースデポ)
報告者 広島高校 松室美卯
湯浅講師は、核兵器廃絶に向けて、市民の行動が大きな影響を及ぼしていることについて講義された。核は、人類の欲望が生み出した、もっとも非人道的な兵器である。この以前知らなかった欲望の出現をどのようにして克服していくのだろうか。非核化への動きを見せたのは、市民としての人類であった。彼らはまず、核兵器の脅威の現実を、広島、長崎、ビキニの体験を通じて知った。そして、署名活動などの行動をした。それは、日本国内にとどまらず、世界中の署名運動になった。
一つ目の事例は、ビキニ被災への市民の懸念が大気圏核実験を止めた事である。ビキニ被ばくが知られると、世界規模で市民の安全への懸念の声が上がった。署名活動も盛んになり、広まっていった。この市民の活動により、様々な条約が発表されていった。
二つ目の事例は、核兵器禁止条約の成立にICANなどのNGOが大きな役割を果たしたことである。政府代表も次々と、このNGO達には、感謝の気持ちを伝えたそうだ。NGOだけでなく、日本の市民社会も存在感をはなっていた。特に広島や長崎の被爆者の発言が世界から注目された。一方で日本政府は、禁止条約には比較的消極的であった。
三つ目の事例は、平昌オリンピックをきっかけに、朝鮮半島の非核化と平和への動きに改善が見られたことについてである。まず、朝鮮半島が戦争を行わないことを宣言した。それをきっかけに、シンガポールで米朝共同声明が発表された。同時に史上初となる、米朝首脳会談が行われた。この時、韓国は米国の核の傘依存をも辞めた。最近では、非核化合意履行・監視プロジェクトが発足され、監視がされている。
民主主義社会は、市民が勉強しなければ成り立たない。微力だけど無力ではない。民衆の思いと行動が常に人類社会の進展を生み出している。
今この問題を解決することを託されたのは、若い、私たちの世代である。それは、核兵器廃絶ということだけで泣くほかのことでも同じことが言える。人類が直面してしまう最大の問題の一つが生物多様性を壊し続けてしまっているということである。私たちは、人類の活動が、壊していることに気づき、生物多様性条約を作った。地球のような星はまだ発見されていない。一度壊してしまったら元に戻すことができないこの地球を大切にしなければならない。
私は、微力だけど、無力じゃないという言葉がとても気に入った。確かに私たち一人一人の声、ましてや、高校生であれば、その訴えがみんなの心に残るのは、とても難しい。しかしきっと誰かの記憶には残る。小さいことだけれどめげずにやろうと思った。
【報告書2】
AICJ高等学校
松村海里
ピースデポ・湯浅一郎氏の講義についての報告書
ピースデポとは
「平和の倉庫」。核兵器問題、沖縄の基地問題など、平和に関する系統的な情報・調査研究活動を通じて、草の根市民活動に貢献していこう、という目的で設立された市民団体。一次情報にもとづく正確で価値ある調査・分析・視点を提供していく、平和問題に関するシンクタンクをめざしている。
講義概要
核兵器を考える
核兵器を考えるうえで念頭に置くべきは核兵器の兵器の歴史、経過だ。人類は産業革命から二百年で今まで知らなかったことを驚異的なスピードで知るようになった。核もその一つである。核分裂を発見することは、太陽系の成り立っている仕組みと、その膨大なエネルギー量の発見することと同義だ。だが、皮肉なことにそれと同時に二次世界大戦がはじまる。六年後、アメリカが世界初の核兵器を使用。これらの過程を経て、非人道的な行為が行われたという認識をすることが重要だ。
核弾頭数の変遷
1945年は10発あるかないかだった原子爆弾がソ連との冷戦で増え、1986年には七万発弱存在した。ある国が軍事力で平和を作ろうとすると、相手国は核を増やすことで対抗し、それを抑えるためにまた核が増えるジレンマに陥っている。核弾頭数の変遷から、人類の愚かさがうかがえる。
核の被害
核兵器の大気圏実験を行うと、風によって放射能が世界一周し、汚染が進んだ。日本政府の調査でパナマでの核実験により、世界で初めて人口放射能が海から検出され、それが高濃度に生物の中で濃縮されていたことが分かった。さらに、放射能が黒潮に乗ったため、汚染マグロは日本近海で多く取れた。
核兵器廃絶に向けての動き
1967年よりカリブ海南アフリカ非核兵器地帯というのが半世紀以上続いている。ピースデポは核兵器をなくす前に、段階を踏んで、グローバルな核兵器廃絶に貢献することを目標としている。例えば、3+3構想(北東アジア非核兵器地帯構想)を推進している。この実現には二つ条件がある。一つは北東アジアの国々が比較三原則を守ること。もう一つは、非核兵器地帯周辺の核兵器保持国である中国やロシアなどが、北東地域には核兵器を使用しないと法の下で合意する消極的安全保障がこの構想実現には必須条件なのだ。
市民の行動の意義
日本政府は核兵器禁止条約に加盟していない。国際的な安全保障を考えると、今すぐ加盟はできないということだろう。それに比べて、日本のNPOなどの活動は国連の中で見ても特に目立っている。署名活動、高校生平和大使などが現在行われている活動の例である。特筆すべきは、これらの活動が実を結んでいるということだ。例えば、(PTBT)部分的核実験禁止条約の締結に一役買ったのは日本の小さな声だった。杉並区の主婦の小さな声が全国を動かし、政府を動かし、国連を動かし、そしてアメリカをも動かした。これが市民の力である。
他にも、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞した。これは、NGOの働きが条約締結にとても大きな役割を果たしたということが世界的に評価されたということだ。
講義を聞いて
私たちは,核兵器はダメなものだと漠然と思っている。その最たる理由は尊い命を一瞬で奪うからだろう。だが、それだけの知識で核兵器をなくそう、と声を上げることに意味があるのだろうか?今回の講義を聞いて、私は知識の重要さを再認識した。原爆による放射能汚染の実態、核兵器そのものの歴史、それに対する具体的な対応策。これらのことを知らなければ、たとえどんなに自分が平和を願っても、そのための具体的な解決策を編み出すことはできないだろう。それだけに湯浅氏の講義は大変意義があるものだったと思う。
グローバル未来塾inひろしまについては以下のURLからご覧ください。
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