核兵器不拡散条約(NPT)締約国へ広島県知事の書簡を送付しました。
令和4年7月26日,広島県は,8月1日からニューヨークで開催されるNPT運用検討会議の参加各国に対して,以下のとおり、同会議における具体的進展への期待と将来の広島訪問を求める広島県知事の書簡を送付しました。
来月,度重なる延期を経て,第10回NPT運用検討会議が開催されることを心より歓迎します。
前回の2015年の運用検討会議は,最終文書に合意することができず,COVID-19による会議の延期も重なり,丸7年以上にわたって,私たちは,核軍縮・不拡散に向けた具体的な指針を失うこととなりました。
その間,核兵器禁止条約が2017年7月に国連総会で採択され,2021年1月に発効したことは,核軍縮の進展を求める多くの非核兵器国が歓迎するところであります。その一方で,世界の核弾頭数の90%以上を保有する米露二国間の軍縮枠組みについては,2019年にINF条約(中距離核戦力全廃条約)は失効し,2021年2月の失効直前に5年間の延長を合意した新START条約(新戦略兵器削減条約)が,唯一有効な条約として残っているのみです。
また,今年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略と,その中で核兵器による威嚇が行われたことは極めて遺憾です。さらに,ロシアが,核兵器による恫喝を加えながら,通常兵器で侵略戦争を公然と続けていることにより,法や規範に基づく国際秩序は大きく毀損しており,実戦で核兵器が使用される可能性は否定できません。
加えて,一連の侵略行為により,核抑止の有効性への信頼性が高まることで,いくつかの国において,拡大核抑止への依存を高める動きがあるなど,核不拡散体制に対する新たな圧力になっています。
戦争による犠牲者や住む場所を奪われ大変な困難を強いられているウクライナの人々については言うに及ばず,この侵略戦争は,食料価格の高騰とともに,アフリカ諸国を中心に食糧危機を引き起こし,人々の生活苦にさらなる追い打ちをかけるなど,地球規模で深刻な影響を及ぼしています。
このような極めて困難な状況の中,本県は,核軍縮に向けた多国間協議の場である「ひろしまラウンドテーブル」を先日開催しました。世界中から参加した国際政治や安全保障の専門家が,「核兵器を乗り越えた世界を構想する」をテーマに議論を行い,4つの行動を呼びかける議長声明をとりまとめました。同議長声明を同封しますので是非ともご一読ください。
核兵器の存在は地球の持続可能性への最大の脅威です。この被爆地広島からの呼びかけを真摯に受け止め,今回のNPT運用検討会議の成功に向けて具体的に貢献することを要望するとともに,近い将来,ぜひとも被爆地広島を訪問し,被爆の実相に触れ,核兵器のない平和な国際社会の実現に向けて新たな一歩を踏み出していただくことを期待しています。
敬具
広島県知事
へいわ創造機構ひろしま 代表 湯﨑 英彦
この記事に関連付けられているタグ