三世代で考え、継承していくこと『第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展』
東京在住の20~30代を中心に「戦争を知らない世代が次の世代へ継承していく方法を探る」というテーマで活動している『第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展』。
この団体が立ち上がったきっかけは代表者で広島出身である久保田涼子さんが、2014年(平成26年)に原爆投下後の広島を舞台にした朗読劇「父と暮せば」の方言指導を頼まれたことでした。
多くの若い世代が参加する『第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展』について話を伺いました。
「方言指導の仕事をするまで、私は原爆についてそれほど関心もなかったのですが、平和学習を受けて育ってきたので、それなりに知っているつもりでいました。ですが、朗読劇の原作である小説を読んだ時に、まだまだ知らないことが多いという気づきがありました。それに出演される、広島出身ではない女優さんが熱心に広島について勉強をしているのに、何もしていなかった自分が恥ずかしいとも思いました。そこで「私も何かしたい」という思いで仲間に声をかけたのです。それが2015年(平成27年)で被爆70年の節目の年でした」
継ぐ展の企画展示は、祖父母、親、子の三世代が自由に参加できるさまざまなプログラムが準備されている。
「まず取り組んだのは『平和学習のやり直し』です。賛同してくれたメンバーと広島へ行き、平和記念公園、広島平和記念資料館と、その周辺にある袋町小学校平和資料館、本川小学校平和資料館、旧日本銀行広島支店を一緒に回りました。次に、私たちが見たり聞いたりしたことを共有できる場所を作ろうということになり、企画展を行うことにしました。8月6日の出来事、被爆者の証言などの展示のほか、親子で参加して平和学習ができるスペースも作りました。私たちが行う企画展で気をつけているのは、入りやすくて、共感されやすい場所作り。難しいことだとか、自分には関係ないことだとは思わずにフラッと立ち寄れるような雰囲気を作ることだと考えています」
2015年(平成27年)から続けられているプロジェクト「オンライン灯ろう流し」。2020年(令和2年)8月6日にも世界中から広島や核廃絶、平和についての思いが込められた灯ろうが、オンラインで流された
「2020年は新型コロナウイルス感染防止のため企画展を行わず、オンラインでの発信を充実させました。毎年行ってきた『オンライン灯ろう流し』は、平和に込めたメッセージをオンライン上で流すというものですが、今年は旧広島市民球場跡地で投影することができました。元安川での灯ろう流しが中止になったことで、そちらに毎年参加していたという年配の男性も会場に来てくださいました。行き場のなかった思いを流すことができたのは、とても嬉しく思いました。オンラインだから初めて参加したという若い方や、国内だけでなく海外からも多くの方にご参加いただきました」
継ぐ展では、被爆者の方々からの話の聞き取りや(「語り」継ぐ)、平和に関して活動している方々のインタビュー(「受け」継ぐ)も行っている
「私たちの活動は“種まき”のようなものだと思います。これまで5年ほど活動をしてきて、少しずつ芽が出はじめている実感があります。もちろんすぐに芽が出なくてもよくて、子どもの頃に展示に来てくれた子が大人になった時に思い出して、広島を訪れるようなことがあれば嬉しいなと思います。
継ぐ展の名前の中に空白の“かぎかっこ”を入れていますが、それには、情報をただ受け取るだけでなく自分の意思で考えてほしいという思いが込められています。受け取った方がそれぞれの方法で“ヒロシマ”を未来へと継いでほしいと思っています」
久保田涼子
第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展代表。祖母が被爆者である被爆三世。
本業はWebデザインをはじめとしたクリエイター。
第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展
ヒロシマを伝え、自分たちで考える企画展をこれまで東京、神奈川、仙台、広島など各地で開催。被爆者インタビュー、ヒロシマを考える自由研究ツール、企画展の予定などをHPでも発信している。
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