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国際平和拠点ひろしま

2021世界平和経済人会議ひろしま 概要

 

2021年9月8日(水),9日(木)の2日間にわたり開催した,「2021世界平和経済人会議ひろしま」における議論の概要をご報告します。

 

 

基調講演

講演者:船橋 洋一 氏(一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)

 

 

○ 「平和あってこその経済」,「経済あってこその平和」。この善循環が機能しなくなってきている。グローバル化が行き過ぎると経済自体が武器化し,デカップリング(平和と経済の分離)が生じ,平和そのものを壊しかねない。

○ 現代は,軍事的な脅威だけでなく,非軍事的な脅威(気候変動,パンデミック,テロ,サイバーなど)に対して,国民が当事者意識をもって安全保障に参画するパートナーシップが必要。

○ 経済人がすべきことは,率先し,リスクをとって有事に備えた取組を始めること,また,ポピュリズムやナショナリズムに対して声をあげること。

 

 

セッション1  気候変動対策のために企業ができること:脱炭素社会に向けたエネルギー転換とイノベーション

 

モデレーター

御立 尚資 氏(ボストンコンサルティンググループ シニア・アドバイザー)

パネリスト

木田 一哉 氏(大崎クールジェン株式会社代表取締役社長)

竹内 純子 氏(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員,U3InnovationsLLC 共同創業者・代表取締役,東北大学特任教授)

兵頭 誠之 氏(住友商事株式会社代表取締役 社長執行役員 CEO)

水野 弘道 氏(革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使)

 

 

○ SDGsの17目標のうち気候変動の達成度合いに他の目標の達成度合いも左右される。民間の役割は重要で,そのために資金供給,投資が必要。

○ エネルギーはあらゆる経済活動の根本。投資の設計,社会インフラ全体の効率性,省エネ社会の構築に合わせて取り組まなければ,脱炭素を進めることはできない。政府・民間が連携してビジネスモデルを構築する必要がある。

○ 一番の課題は移行期で,ゴールにどう向かうかのビジョンを持つことが大事。ビジョンを示すことが企業に求められる大きな役割。社会はビジネスによって変わる。

 

 

セッション2  エッセンシャルな医療物資を誰もが必要な時に手に入れることのできる世界のために

 

モデレーター
柏倉 美保子 氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表)

パネリスト
黒川 清 氏(東京大学・政策研究大学院大学名誉教授,東海大学特別栄誉教授)
武見 敬三 氏( 参議院議員,世界保健機関(WHO)UHC担当親善大使)
中谷 比呂樹 氏(慶應義塾大学医学部訪問教授,グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)会長・代表理事)
柳川 範之 氏(東京大学大学院経済学研究科教授)

 

○ 健康危機が経済危機にもなり,国の独立や自立に影響を与える安全保障となった。今後の危機に対応するためにはしなやかなレジリエンス概念が必要。

○ 日本は,グローバルマインドを持った政策を打ち出さなければ,本当のグローバルヘルスにつながらない。グローバルな人材の育成,コミュニティの形成が必要。

○ 大きな価値観の変化にどう経済・産業が対応するか。中長期的なグローバルな視点に立つことが産業界のメリットになるような政策が必要。

 

 

セッション3  米中対立時代におけるビジネスの地政学的リスクへの向き合い方

 

モデレーター

村田 晃嗣 氏(同志社大学法学部教授)

パネリスト
川口 順子 氏(武蔵野大学客員教授)
髙島 誠 氏(三井住友銀行頭取CEO)
三浦 瑠麗 氏(株式会社山猫総合研究所代表)

 

○ 利益のみ追及する企業は将来性がない。優先度を把握・分析し,詳細の定義をする。

○ 通訳ではなく,解釈を加えて意思疎通を促す「翻訳」に,日本の役割がある。譲れないものは譲らないでいいが妥協できるところは妥協する。

○ 価値観についての共有がない場合も,利益の共有がある。日本は国益を考え,中長期的な視野をもっていかなければならず,その議論が必要。

 

 

セッション4  行き過ぎた自由競争主義の是正:貧富の差をなくし,安定した経済と民主主義を保つために 企業ができることと は

 

モデレーター

井手 英策 氏( 慶應義塾大学経済学部教授)

パネリスト
大槻 奈那 氏(マネックス証券株式会社専門役員チーフ・アナリスト)
渋澤 健 氏(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役,コモンズ投信株式会社取締役会長)
隅 修三 氏(東京海上日動火災保険株式会社相談役)

 

 

○ 新しい産業に安心して転職できる社会にするには,政府の役割が大きい。社会人が学び直しできるリカレント教育に力を入れること,雇用の流動性が確保される社会,セーフティネットが確保されることを求めたい。

○ フリーランサーの増加は経済の原動力として期待もしたいが,リスキリング(職業能力の再開発・再教育)のモチベーションを与え,人材を社会の財産として成長させていくことがひいては企業にとっても利益になる社会を期待している。

○ 完全な平等ではないが,どんな出自でも才能を生かすことができるのが健全な社会。結果平等でなく,機会平等がもっと強調されていい。

○ 健全な社会は,労働者の流動や世代交代が活発で,新陳代謝が高まっている社会であると考えられる。新陳代謝を高めるには労働制度の見直しが必要ではないか。

 

 

セッション5  平時と戦時の境界があいまいな時代におけるデュアルユース技術の扱い

 

モデレーター

神保 謙 氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)

パネリスト

坂本 幸雄 氏(紫光集団高級副総裁,エルピーダメモリ株式会社元代表取締役社長)
平野 未来  氏(シナモンAI代表取締役社長CEO)
村井 純 氏(慶應義塾大学教授)

 

 

○ 個人情報については,イノベーションの阻害要因になってはいけないが,何かしらの規制は必要。デジタル庁の役割に期待。

○ 制約により技術の停滞が始まるため,ルールは最低限に。

○ 多様なエキスパートが集まり,経済や安全保障へのインパクトを含めて議論し意思決定できるチームのような体制を日本も作るべき。

○ 使い手がどう判断するのかが重要。デュアルユース(軍民両用の技術)に対して経済的合理性とは異なる点でサプライヤーを選ぶなどの目線が,社会全体で育ってくることが重要。

 

セッション6  ポストコロナ時代におけるダイバーシティ&インクルージョンの促進のため経済人にできること

 

モデレーター
末松 弥奈子 氏(株式会社ジャパンタイムズ代表取締役会長兼社長)

パネリスト
大日方 邦子 氏(株式会社電通パブリックリレーションズダイバーシティ&インクルージョンセンター長)
柄澤 康喜 氏(MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社取締役会長 会長執行役員)
杉山 文野 氏(NPO法人東京レインボープライド 共同代表理事,JOC理事)

 

○ 次世代の持続可能性のためには,マルチステークホルダー資本主義への移行が必要。多様性によるプロセスイノベーションで生産性を上げることが必要。

○ 多様化が進む中,「普通」を見直さなければ働き手を失う。障がい者が自分の特性を生かせる分野で貢献できる,そこまで持っていくのが企業・社会・スポーツ界の責任。

○ 誰もが暮らしやすいためには,平等よりも公平が大事。格差の分断はなくならない。いろんな方法で誰もが暮らしやすいということを考えなければならない。

 

 

セッション7  コモンズが開く経営と平和の融合

 

モデレーター

吉川 成美 氏(県立広島大学大学院経営管理研究科教授)
パネリスト
江戸 克栄 氏(県立広島大学大学院経営管理研究科専攻長/教授)
ホー・チー・ズン 氏(ピープルワン・ジョイントストック・カンパニー研究・開発部門長)
マルク・アンベール 氏(レンヌ大学名誉教授(政治経済学),経済活動に関する政治的・倫理的な知識の構築を目的としたPEKEA共同設立者,International Convivialist共同創設者)
横山 禎徳 氏(県立広島大学大学院経営管理研究科研究科長)

 

○ 金融や資本を活用し,抽象的な平和を具体的なマーケットとしてマネージする社会システムのデザインを考えるべき。コモンズ(様々な共有資源,公共財)も含めて,思想から実践に動く時期である。

○ 企業は,雇用を提供することで発展していくだろう。労働者に雇用を提供し,彼らの生活の質を担保し環境を保護し法的要件を満たすことで,ステークホルダーとの争いを回避できる。

○ 社会的な責任としてのソーシャルマーケティングを発展させる形で貧困や労働や環境,さらには平和に取り組むという視点が重要。

 

 

総括セッション  今年度の会議を振り返って

 

パネリスト

加治 慶光 氏(シナモンAI取締役会長兼チーフ・サステナブル・デベロプメント・オフィサー,日立Lumada Innovation Hub Senior Principal,鎌倉市スマートシティ推進参与)
御立 尚資 氏(ボストンコンサルティンググループ シニア・アドバイザー)
湯﨑 英彦 氏(広島県知事)

 

 

○ 「2021広島アピール」は,昨年策定した「2020広島宣言」をベースに,今年の会議の議論を踏まえてアップデートしたもの。

○ 大きな意味で人間の安全保障としての平和はビジネスをする上での前提であり,企業人自体が,守って強くしていかないといけないものである。取組を進めていかなければいけないが一方で,SDGsとしての取組に結びつき,進んでいるものもある。

○ アピールをそれぞれがどのように実現するか,平和な状態となり,経済発展が進み,よい果実を得ていけるよう取組を強めていかなければならない。

○ 功利主義というのは,自らの利を実現するには他者の利を追求する必要があり,これが真の功利主義であり,ビジネスがとる長期的な視点ではないか。

 

 

 

 

 

広島アピール

https://hiroshimaforpeace.com/hiroshimabusinessforumforglobalpeace2021/2021hiroshimaappeal/

 

 

 

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