東京朝日の閉鎖
2020年は広島・長崎に原子爆弾が投下され75年目となります。
「広島県史 原爆資料編」に掲載されている原爆に対する国際的反応:海外の新聞論調を紹介します。1945年8月6日に広島,8月9日に長崎に投下された原子爆弾について海外の新聞はどのように報じたのでしょうか。
本県が進めている国際平和拠点ひろしま構想の趣旨と合致しない論調も含まれますが,原子爆弾投下を海外でどのように伝えたか知っていただくため 「広島県史 原爆資料編」に掲載されている新聞論調をそのまま掲載しています。
東京朝日の閉鎖
昭和20.9.19 ニューヨーク・タイムズ紙
[国立国会図書館蔵]
マッカーサー,東京の新聞,朝日を閉鎖
わが方の書いた残虐性記事に対し,あざけり批判を出したため,48時間の発刊停止を命ず
同調した罪をもとがめる
敵の社説は,原爆使用が非人道的という——他の新聞も強調する
ニューヨーク・タイムズ入電
東京,9月18日
ダグラス・マッカーサー元帥は,東京の一流日刊紙,朝日が,「巧みに扇動的な見出し」,および連合軍の政策に反した特別な記事を掲載したため,本日48時間の発刊停止を命じた。彼は,日本の全新聞に,同盟通信の1日の発刊停止処分に関して,刺激的な報道をせぬよう警告していた矢先だけにこの処置をとった。
9月15日,朝日は,アメリカは,「正義と力」の標語の上に立っていると主張した記事を発行した。
その記事は,「したがって,原爆の使用と病院船の攻撃は,毒ガスの使用にもまして国際法の違反であることは否定することができない。そのようなものこそが,戦争の中味なのである」と解説している。9月17日,朝日紙上に,第8軍のバージェス大佐は,「日本の現状にかんがみて,アメリカから食糧を取り寄せるから,心配することはいらない。」といったが,20日以上も経過したのに,一つも変わっていないという記事を載せた。
同日同紙には,今一つ社説が出て論調している。「アメリカ軍は,その報道の内容は確かな筋から入ったもので,必要あらばその証拠を提示することができると主張する。実際日本人はみなその報道を読んで,日本人の残虐性についてはほとんど信ずることができない」。
東京,9月19日 水曜日 (AP電)
新聞,アメリカを告発
日本のインテリには高く評価されている朝刊紙朝日は,扇動的な記事をあくまで発刊することを固執したため,東京事務所に移った検閲官の怒りを買った,日本で最初の新聞である。昨日の朝日は,朝刊に,日本が無力の捕虜に対して,残念にも行なった残虐行為を報道し,また戦争を始めたことに対する軍閥の責任を追及する記事を載せ,他の各紙の先頭に立った。しかし,3日前から,マッカーサー元帥総司令部は,朝日が残虐行為に関してあざけったり,米国が原爆を投下したことは国際法に違反していると非難しているとして,朝日を告発した。
朝日は,その社説のなかの一つで,その残虐行為の報道は,日本の新聞が報道した日本で米兵が犯した暴行をごまかすために出されたものだと論説している。米軍当局は,かかる報道の裏付けを見つけることができず,それは宣伝であるといっている。
朝日はまた,日本人はその軍人には常に道徳的人格を何より強調してきたため,その残虐行為の報道は信じがたいと言明した。さらに日本人は家庭にあって,とても良い父であり,息子であった者が,フィリッピンその他の土地で,武装しない大衆にあのような残虐なことを犯したとは信じられない。もし日本が暴行を行ったために,フィリッピン人に勝利するチャンスを失ったとすると,この点こそ今,日本に進駐している連合軍にもまた適用することであるともつけ加えている。
これらのすべて宣伝臭い見出しと,曲げられた外国のニュースとは,虚偽の記事,破壊的批評,公共の秩序を乱す記事であるとし,命令に違反したかどで,告発された。
(小倉 馨訳)
出典 広島県史 原爆資料編
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