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国際平和拠点ひろしま

原子爆弾

2020年は広島・長崎に原子爆弾が投下され75年目となります。

「広島県史 原爆資料編」に掲載されている原爆に対する国際的反応:海外の新聞論調を紹介します。1945年8月6日に広島,8月9日に長崎に投下された原子爆弾について海外の新聞はどのように報じたのでしょうか。

本県が進めている国際平和拠点ひろしま構想の趣旨と合致しない論調も含まれますが,原子爆弾投下を海外でどのように伝えたか知っていただくため 「広島県史 原爆資料編」に掲載されている新聞論調をそのまま掲載しています。

原子爆弾

昭和20.8.7 サン・フランシスコ・クロニクル紙

[カリフォルニア州・ベイ・マイクロフィルム社蔵]

原子爆弾については一般的事柄のほかは全くわからない今,その使用の結果を待って,原爆が持つその実際の能力について知ることになろう。実際には,現段階でのその説明たるや信じられないほどいいことばかりである。たとえば,この種の爆弾の最初の実験の際のある報告には,「宇宙のエネルギーを放出するよう,少量の物質がつくりかえられた」とのべられている。この意味するものは宇宙の全エネルギーのうち一少部分ということだろうけど,説明によるとかなり大きいもののようにうかがえる。しかし,トルーマン大統領の声明に照らしてみると,ある新奇で不可思議なことが成し遂げられたことには疑いない。ドイツ人が早くやりとげなかったことはわが国にとって幸いである。ドイツ人がこの方面の開発に従事していたことは相当確かな証拠がある。ドイツ人が成功していたかも知れないことは認めなければならないだろう。もともと彼らは科学的,技術的能力においては人後に落ちない。ただ彼らに充分な時間がなかったにすぎない。

そしてこのことは,もしドイツ人がわが国の科学者が成就したものと同じ方向に向っていたものとすれば,かかる発明,発見は,それを何と呼ぶにしても,永久に秘密にしておくことはできないことを意味する。巨額の金と,莫大な資源が,この原子爆弾の開発に投入されたようである。したがって,世界にとり危険を招くかも知れない地域に,これと同様な装置を容易に準備することはなかなかできない。このことが一つの防止策になるかも知れぬことは,せめてもの慰めになるかも知れない。しかしこれとてわれわれがそう自信を持つことはできない。いったんその鍵がわかれば,より簡単にその製造装置を準備できるかも知れない。

かくして,私たちの思うには,そのような破壊的な力を準備する知識なるものは,世界にとってきわめて危険なものであるということに多くの人々が気づくことになろう。大統領の発想で,議会が委員会を設け,その委員会にこの国におけるかかる原子力の運用を厳重に管理させることにしたことは,卓越した識見と思われる。それはさらに拡大され,もしできることならば,世界的な委員会が招集され,すでに説明されているような潜在するエネルギーの開発を監視していくべきであろう。それがたとえ有用な目的のために新しい動力源に利用されるとしても,またそうなることと思われるが,それと同時に,大変動をもたらす悪い方面に使用される可能性もあることをあわせ考えておくべきであろう。

しかし,われわれはこれら実験家がこの丸い地球を吹き飛ばすだろうと恐れたりはしない。もしそうなれば,そもそも何が起こったかすらわからないだろう。事件そのものが新聞に報道されることがないであろうから。

ここで言えることは,大量破壊の装置であるといわれているかかる爆弾が存在する上は,文明が生きながらえるためには,戦争はやめなければならないということである。しかし,この点についてはすでに論じたところで,原爆にしろ,その他いかなる破壊力をもつものにしろ,この議論の助けにはあまりならない。ただ問題は,次に来る試練において,人類が過剰な知識でもって自分自身を破壊するかどうか,はっきり態度で示さなければならぬことがいよいよ明白になったことである。

その間,日本で何が起こったかを見守ることとしよう。日曜日,広島に落とされた一発の原子爆弾が,陸軍のもっているたった一つのものでないことを希望する。またそれがポツダムの最後通牒の力の重さを,日本人に強く印象づけるための離れ業であった,ということに終るのでなければ良いと思う。最初の実験が,わずか3週間前7月16日,ニューメキシコで行なわれたことに着目しなければならない。大統領は,この爆弾が目下生産中であり,さらに大きく性能の良いものが後に続くのだといっている。

(小倉 馨訳)

出典 広島県史 原爆資料編

 

 

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