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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2018(3)IAEA保障措置(核兵器国及びNPT非締約国)

NPTは核兵器国に対して、IAEA包括的保障措置協定の締結を義務付けていない。しかしながら、NPTの不平等性を緩和するとの観点から、核兵器国は平和的目的だと申告した原子力施設及び核分裂性物質に対するIAEA保障措置の自発的適用を行ってきた。

2017年に公表された『2016年版IAEA年次報告』によれば、2016年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含む核兵器国の施設の数及び種類は下記のとおりであり38、前年から変化はない。IAEAは、保障措置が適用された核物質については平和的活動の下にあるとの結論を下している39。なお、IAEAは、査察の回数については公表していない。

  • 中国:発電炉1、研究炉1、濃縮施設1
  • フランス:燃料製造プラント1、再処理プラント1、濃縮施設1
  • ロシア:分離貯蔵施設1
  • 英国:濃縮施設1、分離貯蔵施設2
  • 米国:分離貯蔵施設1

5核兵器国は、いずれも追加議定書を締結している。このうち、フランス、英国及び米国のそれぞれの追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれ、米国はこれを受け入れた初めての核兵器国である。これに対して、中国及びロシアについては、上記の3核兵器国と比べると、原子力施設に対するIAEA保障措置の適用は限定的であり、また追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれていない。フランス及び英国は民生用核物質を、それぞれEURATOM及びIAEAとの三者保障措置協定の下に置いてきた。しかしながら、EUからの脱退を決めた英国は、今後EURATOMからも脱退することになる。2017年10月には、2019年のEURATOM脱退後の英国における保障措置システムの確立に関する国内法案が議会に提出された40。英国はIAEA総会で、英国の新たな保障措置体制下でも、EUR-ATOM保障措置と同様の国内保障措置を構築し、IAEAが英国内のすべての民生用原子力施設を査察する権利を維持すると言明した41。米国、ロシア及びIAEAは「三者イニシアティブ(Trilateral Initiative)」の下で1996~2002年にかけて、解体核兵器から回収された核分裂性物質のうち「軍事用として必要のない余剰核物質」への検証措置導入に係る検討を行ったが、いまだIAEAによる検証は実施されていない。

NPT非締約国のインド、イスラエル及びパキスタンは、いずれもINFCIRC/66型保障措置協定を締結しており、当該国が協定対象施設と申告した施設にはIAEAによる査察が行われてきた。また、2017年5月、中国がパキスタンに供与した2基の原子炉を対象にしたINFCIRC/66型保障措置協定が署名・発効した。『2016年版IAEA年次報告』によれば、2016年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含むNPT非締約国の施設の数及び種類は以下のとおりであり、前年から変化はない(査察回数などについては非公表)42。

  • インド:発電炉7、燃料製造プラント2、分離貯蔵施設2
  • イスラエル:研究炉1
  • パキスタン:発電炉5、研究炉2

2016年の活動について、IAEAは、これら3カ国の保障措置適用下にある核物質、施設及びその他の品目については平和的活動の下にあると結論付けている43。

追加議定書については、2014年7月にIAEA・インドの間で発効した。この追加議定書は、中国及びロシアのものに近い内容で、情報の提供や秘密情報の保護などの条項は含まれるものの、補完的なアクセスなどは規定されていない。イスラエル及びパキスタンは、依然として追加議定書に署名していない。

NPTに加盟する非核兵器国が包括的保障措置の受諾を義務付けられているのに対して、核兵器国にはそのような義務が課されていないとの不平等性を緩和すべく、非核兵器国はNPT運用検討会議などで、核兵器国に対して保障措置の一層の適用を提案してきた。NAM諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同様な内容の包括的保障措置を受諾するよう求めている44。


[38] IAEA Annual Report 2016, GC(61)/3/Annex, September 2017, Table A32(a). 核兵器国は 2015 年 NPT 運用検討会 議で、IAEA 保障措置の適用状況を報告している。その概要に関しては、『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。

[39] IAEA Annual Report 2016, September 2017, p. 96.

[40] “Nuclear Safeguards Bill Introduced Today,” Press Release, Gov.UK, October 11, 2017, https://www.gov.uk/ government/news/nuclear-safeguards-bill-introduced-today. 法案は、英議会のホームページ(https://services. parliament.uk/bills/2017-19/nuclearsafeguards.html)に掲載されている。

[41] “Statement by the United Kingdom,” IAEA General Conference, September 18-22, 2017, https://www.iaea.org/ sites/default/files/gc61-uk-statement.pdf.

[42] IAEA Annual Report 2016, GC(61)/3/Annex, September 2017, Table A32(a). [43] IAEA, IAEA Annual Report 2016 , September 2017, p. 92.

[44] NPT/CONF.2020/PC.I/WP.21, April 20, 2017.

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