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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2018(4)IAEAとの協力

IAEA保障措置の強化策として最も重視されているものの1つが、追加議定書の普遍化である。本調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE、英国及び米国は、包括的保障措置に加えて、IAEA追加議定書の下での保障措置が、現在のIAEA保障措置システムのスタンダード、あるいは「一体不可分な部分(integral part)」だと主張している45。これに対して、ブラジルなどは、追加議定書の不拡散における重要性を認めつつも、その適用はあくまでも自発的になされるべきだとしている46。また、追加議定書は自発的措置であるとしつつ、南アフリカは追加議定書をIAEAが信頼できる保証を提供する不可欠の手段だと論じ47、ロシアも未締結国は可能な限り早期に締結することを求めるとした48。NAM諸国は、追加的な措置は、非核兵器国の権利に影響を与えてはならず、法的約束と自発的CBMとを明確に区別すべきだと主張する49。2017年の核兵器禁止条約交渉会議でも、スウェーデンは締約国の義務にIAEA追加議定書の締結を含めるよう提案したものの、NAM諸国などが多数を占める交渉会議参加国はこれに反対し、結果として条約では、核兵器を保有していない締約国に対して、包括的保障措置協定の締結のみを義務付けた。

2017年のIAEA総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」では、上述のような意見の相違を踏まえつつ、追加議定書に関しては、前年の決議と同様に下記のように言及された50。

  • 追加議定書の締結はIAEA加盟国の主権的な決定だが、いったん発効すれば追加議定書は法的義務となることに留意しつつ、追加議定書の締結・発効を行っていない加盟国に対して、可能な限り早期にそのようにすること、並びに発効までの間は暫定的に履行することを奨励する。
  • 効力を持つ追加議定書によって補完される包括的保障措置協定を有するIAEA加盟国のケースでは、これらの措置は、その国にとって、強化された検証スタンダードを受諾していることを意味する。

IAEA保障措置の強化・効率化に関して、IAEAは、国の核活動について幅広い情報を検討し、これに従って各国において保障措置活動を調整するという「国レベルの保障措置概念(SLC)」の検討を続けている。2017年のIAEA総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」51では、前年に続き、SLCに関して以下の重要な保証がなされたことを歓迎すると記された。

  • SLCが追加の権利と義務を伴わず、既存の権利と義務の解釈を変更することもない。
  • SLCはすべての国に適用しうるが、各国の保障措置協定の枠内にとどまる。
  • SLCは追加議定書を代替するものではなく、追加議定書によって提供される情報及びアクセスを追加議定書なしにIAEAが獲得する手段としては考案されない。
  • SLCの開発と実施は、国家及び地域共同体の計量管理制度との緊密な協議を必要とする。
  • 保障措置関連情報は、対象国との協定に基づく保障措置実施の目的にのみ使用される。

また『2016年版IAEA年次報告』では、IAEAは2016年、統合保障措置下にある53カ国のうち残りの国への「国レベルの保障措置アプローチ(SLA)」の更新を完了したこと、また拡大結論を得た8カ国、拡大結論を得ていないが包括的保障措置協定及び追加議定書双方を受諾する2カ国、並びに自発的保障措置協定及び追加議定書が発効している1カ国についてSLAを開発したことを報告した52。

保障措置技術の研究開発に関しては、IAEAの長期プラン53のもとで、当面の計画として「核検証のための開発・実施支援計画2016~17年」が実施され、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、英国、米国など20カ国と欧州委員会(EC)が参加している54。


[45] 2017 年の NPT 準備委員会及び IAEA 総会における各国の演説などを参照。中国は、包括的保障措置協定と追加議 定書の普遍化の促進が必要だとの立場を明らかにしていたが、2017 年の NPT 準備委員会や IAEA 総会でのステートメ ントではそうした発言は見られなかった。

[46] “Statement by Brazil,” Cluster 2, First Session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference, May 8, 2017.

[47] “Statement by South Africa,” General Debate, First Session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference, May 3, 2017.

[48] “Statement by Russia,” Cluster 2, First Session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference, May 8, 2017.

[49] NPT/CONF.2020/PC.I/WP.21, April 20, 2017. [50] GC(61)/RES/12, September 21, 2017.

[51] Ibid.

[52] IAEA Annual Report 2016, September 2016, p. 96.

[53] IAEA, “IAEA Department of Safeguards Long-Term R&D Plan, 2012-2023,” January 2013.

[54] IAEA, “Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification 2016-2017.”

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