Hiroshima Report 2019第2章 核不拡散
第2章 核不拡散1
(1) 核不拡散義務の遵守
A) 核兵器不拡散条約(NPT)への加入
2018年末時点で、核兵器不拡散条約(NPT)には191カ国(北朝鮮、並びに国連加盟国ではないバチカン市国及びパレスチナを含む)が加入している。国連加盟国(193カ国)のうち、非締約国は、2011年7月に独立して国連に加盟した南スーダン(核兵器は保有していない)、1998年に核実験を実施し、核兵器の保有を公表したインド及びパキスタン、並びに核兵器を保有していると広く考えられているイスラエルの4カ国である。また、北朝鮮は、1993年及び2003年の2回にわたってNPTからの脱退を宣言し、国連安全保障理事会決議などで求められている「NPTへの早期の復帰」に応じていない。なお、NPT締約国全体としては北朝鮮の条約上の地位に関する解釈を明確にしていない。
NPTが2018年に署名開放50周年を迎えたのを機に、その共同提案国(ロシア、英国及び米国)が共同声明を発表し、核軍縮・不拡散におけるNPTの重要性を再確認した2。
B) NPT第1条及び第2条、並びに関連安保理決議の遵守
北朝鮮
NPT成立以降、締約国の中で第1条または第2条の義務に違反したとして、国連を含め国際機関から公式に認定された国はない3。しかしながら、NPT脱退を宣言した北朝鮮に関しては、脱退が法的に無効であるとすれば、あるいは脱退の効力発生前に核兵器を保有していたとすれば、その核兵器の取得は第2条に違反する行為となる。米国務省が公表してきた軍縮・不拡散条約の遵守状況に関する累次の報告書には、北朝鮮が、「2003年にNPTからの脱退を通告した時に、NPT第2条及び第3条、並びに国際原子力機関(IAEA)保障措置協定に違反していた」4との判断が明記されてきた。
北朝鮮に対する国連安全保障理事会決議1718(2006年10月)では、国連憲章第7章の下での決定として、「北朝鮮が、すべての核兵器及び既存の核計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄すること、核兵器の不拡散に関する条約の下で締約国に課される義務、及び国際原子力機関(IAEA)保障措置協定(IAEA INFCIRC/403)に定める条件に厳格に従って行動すること、並びに、これらの要求に加え、透明性についての措置(IAEAが要求し、かつ、必要と認める個人、書類、設備及び施設へのアクセスを含む。)をIAEAに提供すること」5と規定された。弾道ミサイルについても、その「計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを決定」した。北朝鮮に対する累次の安保理決議でも、北朝鮮に対して同様の義務が課されている。しかしながら、北朝鮮は、安保理決議の決定を無視して核兵器及び弾道ミサイルに係る活動を積極的に継続し、2017年9月には6回目の核爆発実験を実施した。
しかしながら、2018年になると北朝鮮は一転して、韓国、さらには米国との対話モードに舵を切った。金正恩朝鮮労働党委員長は2018年1月の「新年の辞」で、核抑止力の保持を誇示する一方、韓国に対して、「南北は軍事的緊張を緩和し、平和的環境を構築するために共に努力すべきである。韓国は、北朝鮮を核戦争の標的とするための無謀な動きで米国に加担することで状況の悪化を誘発するのではなく、緊張緩和のための我々の真摯な努力に積極的に対応すべきだ」と述べ、米国との軍事演習の中止を求めつつ、関係改善を呼びかけた6。韓国もこれに呼応し、北朝鮮に南北高官級会談の開催を提案するとともに、米韓が2018年2?3月の平昌オリンピック・パラリンピックの期間に米韓合同軍事演習を行わないことで合意したと明らかにした。北朝鮮は韓国の提案を受け入れ、2018年1月9日に南北高官級会議が開催され、その「共同発表文」では、北朝鮮による平昌オリンピックへの参加、軍事的緊張状態の緩和、並びに南北問題の韓国及び北朝鮮による解決が合意事項として記載された。
そして韓国及び北朝鮮は4月27日、南北首脳会談(2007年10月以来、3回目)を韓国側の板門店で開催した。両首脳が発表した「板門店宣言」では、特に核問題との関係では以下のような点が盛り込まれた7。
- 朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とし、積極的に努力をすること
- 休戦状態の朝鮮戦争の終戦を2018年内に目指して停戦協定を平和協定に転換し、恒久的な平和構築に向けた南・北・米3者、または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進すること
- 過去の南北宣言とあらゆる合意の徹底的な履行
さらに、6月12日にはシンガポールで、トランプ大統領及び金委員長により米朝初の首脳会談が開催された。会談終了後に両首脳が署名した共同声明では、「トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係や朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制を構築すべく、包括的、徹底的かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証(security guarantees)を提供すると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に対する確たる約束を再確認した」8。そのうえで両首脳は、以下の点に合意した。
- 米朝は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。
- 米朝は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。
- 2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
- 米朝は、朝鮮戦争の捕虜・行方不明兵の遺骨回収、既に身元が判明している遺体の帰還に取り組む。
9月18~19日の南北首脳会談で合意された「平壌宣言」では、「両者は朝鮮半島を核兵器と核脅威がない平和の地にしなければならず、この目的に向けた実質的な進展が迅速になされなければならないとの認識を共有した」とし、以下のような具体的措置が明記された9。
- 北朝鮮はまず、東倉里(トンチャンニ)のエンジン試験場とミサイル発射台を関係国専門家の立ち会いの下に永久に廃棄することにした。
- 北朝鮮は米国が6・12朝米共同声明の精神に沿い、相応の措置を取れば、寧辺の核施設の永久的廃棄などの追加措置を引き続き講じる用意があると表明した。
- 南北は朝鮮半島の完全な非核化を推進していく過程で緊密に協力していくことにした。
2018年4月、北朝鮮は核兵器開発を終了したとして、核実験及び中・長距離弾道ミサイル発射実験を実施する必要はなくなったと述べ、その翌月には、外国のジャーナリストを招いて核実験場の坑道を爆破した。また7月には、西海の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射施設の解体作業を開始し10、液体燃料やその貯蔵施設も撤去した11。これらの措置は、国際的な監視・検証の下でなされたわけではない。また米国務省は、10月のポンペオ国務長官と金正恩委員長との会談で、「不可逆的に解体したことを確認できるよう、豊渓里(プンゲリ)核実験場に査察官らを招待する」12意向を金委員長が示したことを明らかにした。さらに、2018年に北朝鮮は核実験及びミサイル実験を実施しなかった。
これに対して、トランプ大統領は6月の米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習の中止を発表した。これを受けて、8月に予定されていた米韓合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン(Ulchi Freedom Guardian)」をはじめ合同軍事演習が中止された。11月にはマティス(James N. Mattis)国防長官が、2019年春に実施される米韓合同軍事演習「フォールイーグル(Foal Eagle)」についても、「外交に影響を及ぼさないレベルに維持するためにやや再編成されている」13と述べ、規模を縮小する方針を示した。また、米国は北朝鮮が反発してきた北朝鮮による「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」ではなく、「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」という表現を用い始めた。
しかしながら、北朝鮮の非核化に向けた一層の進展は、2018年中には見られなかった。8月には米国が北朝鮮に対して、核兵器の廃棄に向けたスケジュール案を提示し、6~8か月以内に北朝鮮の核弾頭の60~70%を米国または第三者に引き渡すよう求めたが、北朝鮮はこうした提案を拒否した14。
北朝鮮は、非核化には制裁の緩和、あるいは朝鮮戦争の終結が必要であるにもかかわらず、米国はそれらを実施しようとせず、また米国の国務省・財務省・議会は「完全な非核化」が実現するまで制裁を続けると唱えているとして、厳しく批判した15。また、李容浩(Ri Yong Ho)北朝鮮外相は8月、イランのラリジャニ(Ali Larijani)国会議長との会談で、「米国に対応するのは難しい。朝鮮半島全域の全面的な軍縮が我々の大きな目標であるならば、米国も約束を果たす必要がある。それにもかかわらず、これを拒否している。…米国は我々への敵意を捨てないことは分かっているので、我々は核技術を保持するであろう」と述べたとされる16。
さらに、北朝鮮の国営通信社である朝鮮中央通信(KCNA)は論評で、「我々が『朝鮮半島の非核化』に言及する時、それは南北だけではなく、半島を標的にするすべての近隣地域から核の脅威のすべての源を除去することを意味している。…朝鮮半島の非核化は、北朝鮮の核抑止力を廃絶する前に『朝鮮に対する米国の核の脅威を完全に廃絶すること』を定義すべきである」17とし、北朝鮮が果たして非核化の真剣な意図を有しているか、あるいは米国により日韓に提供される拡大核抑止の終了を企図したものか、改めて疑念を呼び起こした。
イラン
2015年7月14日にE3/EU+3(中、仏、独、露、英、米、欧州連合(EU)上級代表)とイランが合意した「包括的共同作業計画(JCPOA)」18について、その検証・監視を実施するIAEAは、イランによる合意遵守状況を累次の報告で明らかにしてきた。このうち、2018年8月の報告で言及された主要なポイントは下記のとおりである19。
- ナタンツの燃料濃縮プラント(FEP)には5,060基以下のIR-1型遠心分離機が設置されている。
- イランの全濃縮ウラン保有量は、ウラン235の濃縮度が3.67%以下のUF6 300kgを超えるものではない。300kgのUF6中のウラン量は202.8kgである。
- ウラン235の含有率が3.67%以上の濃縮ウランを保有していない。
- 重水の保有量は122.9トンであった。報告対象期間を通して、130トンを超える重水は保有されなかった。
- IAEAにオンラインの濃縮モニターおよび電子封印の使用を認めている。これにより設置されたIAEAの測定記録を自動的にIAEAは入手可能となる。
- IAEAに対してすべてのイラン精鉱への継続した監視を認めている。この監視によりIAEAはイラン国内で精製された、あるいはエスファハン・ウラン転換工場に移動された他の原料から得られたウラン精鉱の量を知ることができる。
- イランは追加議定書の暫定的適用を継続しており、IAEAは、訪問が必要なイランのすべてのサイト及び他の箇所(いずれも複数)に補完的なアクセスを実施してきた。
- JCPOA附属書ⅠセクションD、E、S及びT(核兵器開発に関係する特定の活動を禁止したものだが、JCPOAはそれらの禁止をいかに検証するかについては言及していない)に定められたイランの核関連のコミットメントに対するIAEAの検証・監視は継続している。
他方、米新政権の動向はJCPOAの将来に対する懸念を高めてきた。トランプ大統領は選挙期間中からJCPOAを批判し、2016年3月には「イランとの悲惨なディールを破棄することが最優先課題だ」とも述べていた。2018年1月には、対イラン制裁再発動を見送るものの、1)イランのすべてのサイトへの迅速な査察を可能にすること、2)イランが核兵器保有に決して近づかないよう確実なものとすること、3)イランが実施する措置の失効日をなくすこと、4)長距離ミサイル及び核兵器計画を分割せず、ミサイル開発・実験も厳格な制裁の対象とすることが法案に盛り込まれなければ、JCPOAから離脱すると警告した20。
議会はそうした法案を策定せず、米国とE3(英、仏、独)との交渉による打開を待ったが、トランプ大統領は5月8日、JCPOAを「決して締結すべきでない、一方的でひどい合意」などと改めて非難したうえで、「イラン核合意から離脱することを宣言する。この直後に、核に関連したイラン制裁の再発動に関する大統領令に署名する。最高レベルの経済制裁を制定する。核兵器を模索するイランを助けるいかなる国に対しても、米国の強力な制裁が科され得る」とし、「同盟国と協力してイランの核脅威に対する真の、包括的かつ永続的な解決を目指す。これは、イランの弾道ミサイル開発の脅威を排除し、世界中でのテロ活動を中止させ、中東に脅威をもたらす行動を阻止するための努力を含むものである」と述べた21。米財務省は同日、90~180日の移行期間終了後に、イランの石油セクターや中央銀行との取引、同国への航空機輸出や金属取引、イラン政府によるドル取得などを対象とする対イラン経済制裁を再開すると発表した22。米国は上記の決定に従い、8月7日にはイランに対する自動車、金、鉄鋼その他金属関連製品の移転の禁止を、また11月5日にはエネルギー分野に関する制裁措置をそれぞれ再発動した。これらには、イランと取引する国に対する二次制裁(secondary sanction)が含まれる。 JCPOA離脱発表から2週間後には、ポンペオ米国務長官が、以下の12項目が満たされるのであればイランとの交渉に応じるとの方針を明らかにした23。
- イランは過去の核開発の軍事的側面に関する全容をIAEAに申告し、そうした活動を恒久的かつ検証可能な形で放棄しなければならない。
- イランはウラン濃縮を停止し、プルトニウム再処理を決して追求してはならない。ここには重水炉の閉鎖も含まれる。
- イランはIAEAに、国内のすべての施設に無条件のアクセスを提供しなければならない。
- イランは弾道ミサイルの拡散を止め、核弾頭搭載可能なミサイルシステムの発射や開発を停止しなければならない。
- イランは誤った嫌疑で拘束しているすべての米国とその同盟国の市民を解放しなければならない。
- イランはヒズボラ、ハマス、パレスチナ・イスラーム聖戦を含む、中東のテロ集団への支援を停止しなければならない。
- イランはイラク政府の主権を尊重し、シーア派民兵の武装解除、動員解除、社会復帰を認めなければならない。
- イランはフーシ派民兵への軍事支援を停止し、イエメンの平和的政治解決に努力しなければならない。
- イランはシリア全域からイランが指揮するすべての部隊を撤退させなければならない。
- イランはアフガニスタンと中東地域におけるタリバン及び他のテロリストへの支援を停止し、アルカイダ指導部を匿うことを止めなければならない。
- イランは革命防衛隊のコッズ部隊によるテロリストや軍事パートナーへの支援を停止しなければならない。
- イランは、近隣諸国に脅威を与える行為を停止しなければならない。これには、イスラエル壊滅の威嚇、並びにサウジアラビアやUAEに対するミサイル発射が含まれる。また、国際航路への脅威や破壊的なサイバー攻撃も含まれる。
10月15日には、13番目の要求として、イランに人権状況の大きな改善を要求した24。
トランプ大統領のJCPOA離脱表明に対して、イランのロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は5月8日、「必要であれば、いかなる制限もなく産業レベルの濃縮を開始できる。…この決定の実施までの間、我々は数週間程度待ち、友好国や同盟国、また核合意の他の署名国と協議を行う。すべては国益に依拠する」25と述べ、当面はJCPOAにとどまる意図を明らかにした。他方でイランは、合意の維持には、米国の対イラン制裁再発動後もイランの原油輸出や銀行、投資、保険に関連するイランの権利が、とりわけ欧州3カ国により明確な形で保証される必要があると強調した26。またイランは、5月24日に最高指導者のハメネイ(Ally Khamenei)師がJCPOA残留の要件を27、また6月20日にはザリフ(Mohammad Javad Zarif)外相が米国に対する15の要求を明らかにした28。
英仏独の首脳は、米国のJCPOA離脱表明当日に共同声明を発表し、イランとの核合意を維持するために取り組むことを明らかにした29。イランによる離脱を防止すべく、欧州企業が米制裁に従うのを阻止する「ブロッキング規則(blocking regulation)」の準備を開始し30、8月7日に効力が発生した31。また、米国を除くJCPOA合意国は9月24日の閣僚級会合で、原油を含むイランとの貿易維持に向けた仕組み作りに引き続き取り組むことで合意し、「参加国は早急に目に見える成果を出す必要性に留意し、イランの原油を含む輸出に関する支払いを容易にする特別目的事業体(SPV)を設置する構想をはじめ、決済手段の維持・構築に向けた現実的な提案を歓迎した」と表明した32。
米国はJCPOA離脱表明後、イランとの新たな合意に向けて首脳会談の開催などによる交渉の用意があることを繰り返し述べたが33、イランは国連総会などでこれを明確に拒否した。9月26日にトランプ大統領が主催した「大量破壊兵器の不拡散政策」に関する国連安保理会合では、トランプ大統領が改めてJCPOAを厳しく批判したのに対して、他の理事国首脳は合意維持の必要性を主張した。
イランは、米国によるJCPOA離脱、並びに二次制裁を含む対イラン制裁の再開にもかかわらず、2018年にはJCPOAから離脱せず、合意内容の遵守を継続した。同時に、米国の動向に対する牽制と受け取れる行動も見られた。たとえば6月には、イランはIAEAに、UF4及びUF6の生産、並びに遠心分離機のローターの製造を開始すると通告した34。また9月には、最新の遠心分離機を生産する施設が完成したと報じられた35。これらに先立つ1月には、イランが将来、原子力を使った船舶の推進装置を建設することを決定したとIAEAに通告した36。
それとは別に、イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は4月30日に、イスラエルはイランの核(兵器)開発に関して入手したとする55,000ページの文書―多くの情報はIAEAが保有する文書と合致するもの37―を公表し38、イランがある国から核兵器の詳細な設計情報を入手し、15年前の時点で爆弾製造技術の獲得直前であったこと、このなかには金属ウランの製造技術や、連鎖反応を起こすために大量の中性子を発生させる装置の実験が含まれていたことなどを主張した39。これに対してイランは、イスラエルが窃取したという核関連文書を否定した40。
脱退問題
NPT第10条1項は条約からの脱退について規定しているが、そのプロセスは明確性に欠けるところがある。北朝鮮による上述のようなNPT脱退宣言以降、日本、韓国及び他の西側諸国は、NPT締約国が条約に違反して核兵器(能力)を取得した後にNPTから脱退するのを防止すべく、NPT脱退の権利が濫用されないようにすること、あるいは締約国である間に取得された核物質が核兵器に使用されないようにするための施策を講じることなどを行うべきだと主張してきた。
2018年のNPT準備委員会では、「ウィーン10カ国グループ」が作業文書で、2020年NPT運用検討会議に向けた提案の1つとして、条約脱退に関して、不拡散努力へのリスクをもたらし、国際の平和及び安全を脅かしかねないものだとして、この条約の対象である事項に関連する異常な事態に直面したときにのみ行使すること、脱退前の違反には責任を有すること、IAEA保障措置を含め脱退前に条約の履行を通じて形成された他国との権利・義務に影響を与えないこと、脱退の決定を再考するよう説得するためのすべての外交努力がなされるべきであること、脱退前に取得したすべての核物質、設備及び技術は脱退後もIAEA保障措置下に置かれること、原子力供給国グループ(NSG)は脱退に際しての返還条項を行使するよう促すことといった原則によってなされるべきだと提言した41。またドイツは、条約脱退にいかに効果的に対応するか、共通の理解に達する必要があると発言した42。
2015年のNPT運用検討会議でなされた議論をみると43、西側諸国は、締約国の脱退の権利を認めつつ、その行使にあたっては様々な要件が勘案されなければならないとして厳格化を求めているのに対して、中国及びロシアは必ずしも積極的ではない。また非核兵器国のなかには、ブラジルや非同盟運動(NAM)諸国を中心に、NPT脱退を規定した条約第10条を変更する必要はなく、脱退は締約国の権利であるとして、その厳格化に批判的な主張も根強い。
C) 非核兵器地帯
非核兵器地帯条約は、これまでにラテンアメリカ(ラテンアメリカ及びカリブ地域における核兵器の禁止に関する条約〔トラテロルコ条約〕:1967年署名、1968年発効)、南太平洋(南太平洋非核地帯条約〔ラロトンガ条約〕:1985年署名、1986年発効)、東南アジア(東南アジア非核兵器地帯条約〔バンコク条約〕:1995年署名、1997年発効)、アフリカ(アフリカ非核兵器地帯条約〔ペリンダバ条約〕:1996年署名、2009年発効)、中央アジア(中央アジア非核兵器地帯条約:2006年署名、2009年発効)で成立し、いずれも発効している。またモンゴルは、1992年に国連総会で自国の領域を一国非核兵器地帯とする旨宣言し、1998年の国連総会ではモンゴルの「非核の地位」に関する宣言を歓迎する決議44が採択された。ラテンアメリカ、東南アジア及び中央アジアの非核兵器地帯条約に関しては、域内のすべての非核兵器国が締約国となっている。
中東に関しては、2010年NPT運用検討会議で合意された中東非大量破壊兵器(WMD)地帯に関する国際会議(以下、「中東会議」または「ヘルシンキ会議」)が開催できないまま2015年NPT運用検討会議を迎え、そこでも中東会議を巡り最終文書のコンセンサス採択に失敗した。2018年NPT準備委員会ではNAM諸国が作業文書で、2020年より前に中東会議を開催するよう求めた45。これに対して、米国は作業文書で、「中東非WMD地帯の設置は地域諸国によって追求されるべき地域的任務」であること、設置に向けては地域諸国間の信頼の欠如、不拡散義務の不遵守、地域安全保障問題、並びに地域諸国間の政治的意思の欠如といった問題を抱えていること、NPT運用検討サイクルは中東非WMD地帯進展や地域紛争解決のための主たるメカニズムではないこと、2010年NPT運用検討会議でなされた中東に関する勧告は、この問題に関する行動の適切な基礎ではないと考えていることなどを挙げて、NPT運用検討プロセスで(特に米国を含む1995年中東決議の共同提案国が責任を負う形で)中東問題が取り上げられることに反対した。
そして国連総会第一委員会では、アラブ連盟が提案した決定案「中東非WMD地帯に関する会議の開催」が提出された。決定案では、国連事務総長は2019年より遅れることなく中東非WMD地帯設立に関する1週間の会議を国連本部で開催すること、並びに中東非WMD地帯を設置する法的拘束力のある条約が締結されるまでの間、国連本部で1週間の年次会議を開催することが求められた46。決定案は賛成103、反対3、棄権71で総会に送付され、総会では賛成88、反対4(イスラエル、米国など)、棄権75(豪州、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、フランス、インド、日本、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、韓国、スウェーデン、スイス、トルコ、英国など)で辛うじて採択された47。
国連総会では毎年、「中東地域における非核兵器地帯の設置」決議が1980年以来、投票無しで採択されてきたが、2018年には採決がなされ、その投票結果は賛成171、反対2(イスラエル、米国)、棄権5(英国など)となった48。イスラエルは反対票を投じた理由に、上述した中東非WMD地帯に関する国際会議の開催について、アラブ諸国がコンセンサスを破って決議を提案したことをあげた49。
北東アジア及び南アジアにおける非核兵器地帯の設置については、研究者などから提案される一方で政府間では具体的な動きは見られない。なお、北東アジアに関しては、モンゴルが2015年NPT運用検討会議に提出した報告で、「北東アジア非核兵器地帯設置の構想を促進する積極的な役割を果たすであろう」50と記載するなど、関心を時折表明している。
(2) 国際原子力機関(IAEA)保障措置(NPT締約国である非核兵器国)
A) IAEA保障措置協定の署名・批准
核物質が平和的目的から核兵器及び他の核爆発装置へと転用されるのを防止・検知するために、NPT第3条1項で、非核兵器国はIAEAと包括的保障措置協定を締結し、その保障措置を受諾することが義務付けられている。2018年末の時点で、NPT締約国である非核兵器国のうち、12カ国51が包括的保障措置協定を締結していない。
また、NPT上の義務ではないが、IAEA保障措置協定追加議定書の締結については、NPT締約国である非核兵器国のうち、2018年12月時点で128カ国が批准している。イランは未批准だが、追加議定書の暫定的な適用を2016年1月に開始した。
包括的保障措置協定及び追加議定書の下での保障措置を一定期間実施し、その結果、IAEAによって「保障措置下にある核物質の転用」及び「未申告の核物質及び原子力活動」が存在する兆候がない旨の「拡大結論(broader conclusion)」が導出された非核兵器国(2017年末時点で70カ国)については、包括的保障措置協定と追加議定書で定められた検証手段を効果的かつ効率的に組み合わせる統合保障措置(integrated safeguard)が適用される。2017年には65カ国で統合保障措置が実施された52。
本調査対象国のうち、NPT締約国である非核兵器国に関して、包括的保障措置協定及び追加議定書の署名・批准状況、並びに統合保障措置への移行状況は、表2-1のとおりである。なお、EU諸国は欧州原子力共同体(EURATOM)による保障措置を受諾してきた。また、アルゼンチン及びブラジルは二国間の核物質計量管理機関(ABACC)を設置し、両国、ABACC及びIAEAによる四者協定に基づく査察を実施している。
2018年9月のIAEA総会で採択された決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」53では、NPT締約国で小規模な原子力活動しか実施していない国である少量議定書(SQP)締結国に議定書の改正ないし改訂を求めるとともに、2018年9月時点で57カ国について改正が発効したことが記された。原子力導入の意図を表明している国のなかで、サウジアラビアは依然としてSQP の改正を受諾していない。
B) IAEA保障措置協定の遵守
『2017年版IAEA年次報告』によれば、2017年末時点で、包括的保障措置及び追加議定書の双方が適用される127カ国(追加議定書を暫定適用するイランを含む)のうち、IAEAは、70カ国についてはすべての核物質が平和的活動の下にあると結論付け、57カ国については未申告の核物質・活動がないことに関して必要な評価を続けている。また、包括的保障措置協定を締結し追加議定書未締結の46カ国について、IAEAは、申告された核物質が平和的活動の下にあると結論付けた54。
IAEA保障措置協定の遵守状況について注視されてきたのは、北朝鮮、イラン及びシリアの動向である。
北朝鮮
北朝鮮がIAEA保障措置の適用を長年にわたって拒否するなか、2018年8月のIAEA事務局長報告「北朝鮮への保障措置の適用」では、衛星画像などを通じて把握した北朝鮮の核関連施設などの状況を概観したうえで、寧辺の黒鉛減速炉の稼働が続いているとの兆候が見られたこと、再処理施設である放射化学研究所の稼働が確認されたが、その稼働時間は再処理完了には満たない長さにとどまっていたこと、ウラン濃縮施設が使用された兆候があったことなどが記載された55。
また、同報告では、北朝鮮における検証活動が実施できないなかで、IAEAが有する北朝鮮核計画の知見は限定的で、低下しつつあるとしながらも、2017年8月に保障措置局内に発足した「北朝鮮チーム」が衛星情報を活用して北朝鮮核計画の監視を強め、北朝鮮における実施が要請され得るいかなる活動にも即時に対応するための準備を強化してきたとした56。
イラン
IAEAは、イランによる保障措置協定およびJCPOAの履行に関して検証・監視活動を行ってきた。その実施状況をまとめたIAEA事務局長報告が四半期毎に理事会に提出され、2018年もイランによる不遵守は検知されなかったことが明らかにされた。2018年IAEA総会でも天野事務局長は、「イランはJCPOA下での核関連コミットメントを履行している。…IAEAは保障措置協定下でイランにより申告された核物質の未転用の検証を継続している。イランに未申告の核物質および核活動がないとの評価を継続している」57と述べた。また、天野事務局長は3月に、IAEAが「JCPOA履行日以来、(追加議定書の下での)補完的なアクセスを60回以上実施し、190棟以上の建屋を訪問してきた」58ことも明らかにした。IAEA報告でも、「訪問が必要なイランのすべてのサイト及び場所に、追加議定書の下での補完的なアクセスが実施されてきた」59とした。
トランプ政権は、2018年5月のJCPOA離脱表明の際にも同大統領が言及したように、JCPOAがIAEAに軍事施設への無条件の査察を行う権利を与えておらず、イランの核開発を防止する制度になっていないと批判してきた60。これに対してIAEAは、イランに対しては世界最高水準の査察を実施しており、また疑惑がない中での軍事施設への査察は非現実的だとも主張している61。他方でイランは、米国のJCPOA離脱を受けて、この問題が解決するまでIAEA査察への協力拡大に応じる用意はなく62、米国の行動によってはIAEAとの協力を低下させ得るとも発言した63。
シリア
2007年のイスラエルによる空爆で破壊されたシリアのダイル・アッザウル(Dair Alzour)のサイトが、IAEAに未申告で秘密裏に建設されていた原子炉だったと疑われ、IAEAもその可能性が高いと評価している。IAEAはシリアに、未解決の問題について十分に協力するよう求めているが、シリアは依然として対応していない64。
(3) IAEA保障措置(核兵器国及びNPT非締約国)
NPTは核兵器国に対して、IAEA包括的保障措置協定の締結を義務付けていない。しかしながら、NPTの不平等性を緩和するとの観点から、核兵器国は自国の平和的目的の原子力施設及び核物質に対し、自発的な保障措置協定(VOA)をIAEAと締結し、保障措置を受け入れてきた。
2018年に公表された『2017年版IAEA年次報告』によれば、2017年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含む核兵器国の施設の数及び種類は下記のとおりである65。IAEAは、保障措置が適用された核物質については平和的活動の下にあるとの結論を下している66。なお、IAEAは、査察の回数については公表していない。
- 中国:発電炉2(前年は1)、研究炉1、濃縮施設1
- フランス:燃料製造プラント1、再処理プラント1、濃縮施設1
- ロシア:分離貯蔵施設1
- 英国:濃縮施設1、分離貯蔵施設2
- 米国:分離貯蔵施設1
5核兵器国は、いずれも追加議定書を締結している。このうち、フランス、英国及び米国のそれぞれの追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれ、米国はこれを受け入れた初めての核兵器国である。これに対して、中国及びロシアについては、上記の3核兵器国と比べると、原子力施設に対するIAEA保障措置の適用は限定的であり、また追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれていない。
フランス及び英国は民生用核物質を、それぞれEURATOM及びIAEAとの三者保障措置協定の下に置いてきた。しかしながら、英国は2019年3月のEU脱退予定に伴い、EURATOMからも脱退する。英国は2017年のIAEA総会で、英国の新たな保障措置体制下でも、EURATOM保障措置と同様の国内保障措置を構築し、IAEAが英国内のすべての民生用原子力施設を査察する権利を維持すると言明した67。2018年6月、英国とIAEAは、英国・IAEA・EURATOMの三者間の保障措置協定及び追加議定書に代わる新たな保障措置協定及び追加議定書に署名した。
NPT非締約国のインド、イスラエル及びパキスタンは、いずれもINFCIRC/66型保障措置協定を締結しており、当該国が協定対象施設と申告した施設にはIAEAによる査察が行われてきた。『2017年版IAEA年次報告』によれば、2017年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含むNPT非締約国の施設の数及び種類は下記のとおりである(査察回数などについては非公表)68。
- インド:発電炉8(前年は7)、燃料製造プラント2、分離貯蔵施設2
- イスラエル:研究炉1
- パキスタン:発電炉6(前年は5)、研究炉2
2017年の活動について、IAEAは、これら3カ国の保障措置適用下にある核物質、施設及びその他の品目については平和的活動の下にあると結論付けている69。
追加議定書については、2014年7月にIAEAとインドの間で発効した。この追加議定書は、中国及びロシアのものに近い内容で、情報提供や秘密情報保護などの条項は含まれるものの、補完的なアクセスなどは規定されていない。イスラエル及びパキスタンは、依然として追加議定書に署名していない。
NPTに加盟する非核兵器国が包括的保障措置の受諾を義務付けられているのに対して、核兵器国にはそのような義務が課されていないとの不平等性を緩和すべく、非核兵器国はNPT運用検討会議などで、核兵器国に対して保障措置の一層の適用を提案してきた。NAM諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同様な内容の包括的保障措置を受諾するよう求めている70。
(4) IAEAとの協力
IAEA保障措置の強化策として最も重視されているものの1つが、追加議定書の普遍化である。本調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE、英国及び米国は、包括的保障措置に加えて、IAEA追加議定書の下での保障措置が、現在のIAEA保障措置システムのスタンダード、あるいは「一体不可分な部分(integral part)」だと主張している71。
これに対して、NAM諸国は、追加的な措置は、非核兵器国の権利に影響を与えてはならず、法的約束と自発的な信頼醸成措置(CBM)とを明確に区別すべきだと主張する72。また、ブラジルは2018年NPT準備委員会で、「追加議定書はNPT下での保障措置のスタンダードではない。非核兵器地帯に属している国―NPTの包括的保障措置、並びに追加的な不拡散義務及び検証・説明責任のシステムにコミットしている―にとって、追加議定書は不必要である」73と述べ、従来以上に明確に追加議定書の受諾を拒否した。しかしながら、一部のNAM諸国は追加議定書を締結し、上述のように追加議定書が保障措置スタンダードだとするものもある。また、南アフリカは、追加議定書は自発的措置であるとしつつ、追加議定書を「未申告の核物質・活動がないことに関して、信頼を構築し、信頼できる保証を提供することを可能にする不可欠の手段である」74と論じた。ロシアは、やはり追加議定書の署名を「純粋に自発的なもの(purely voluntary)」だと述べたうえで、「世界的に認識された検証スタンダードとなるべきである」75とした。
2018年のIAEA総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」では、上述のような意見の相違を踏まえつつ、追加議定書に関しては、前年の決議と同様に下記のように言及された76。
- 追加議定書の締結はIAEA加盟国の主権的な決定だが、いったん発効すれば追加議定書は法的義務となることに留意しつつ、追加議定書の締結・発効を行っていない加盟国に対して、可能な限り早期に締結・発効すること、並びに発効までの間は暫定的に履行することを奨励する。
- 効力を持つ追加議定書によって補完される包括的保障措置協定を有するIAEA加盟国のケースでは、これらの措置は、強化された検証スタンダードを受諾していることを意味する。
IAEA保障措置の強化・効率化に関して、IAEAは、各国の原子力活動について幅広い情報を検討し、これに従って各国において保障措置活動を調整するという「国レベルの保障措置概念(SLC)」の検討を続けている。2018年のIAEA総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」77には、前年に続き、SLCに関して以下の重要な保証がなされたことを歓迎すると記された。
- SLCが追加の権利と義務を伴わず、既存の権利と義務の解釈を変更することもない。
- SLCはすべての国に適用しうるが、各国の保障措置協定の枠内にとどまる。
- SLCは追加議定書を代替するものではなく、追加議定書によって提供される情報及びアクセスを追加議定書なしにIAEAが獲得する手段としては考案されない。
- SLCの開発と実施は、締約国及び地域共同体の計量管理制度(SSAC/RSAC)との緊密な協議を必要とする。
- 保障措置関連情報は、対象国との協定に基づく保障措置実施の目的にのみ使用される。
また、IAEAの報告によれば、IAEAは2018年6月末時点で、拡大結論を得ている67カ国、包括的保障措置協定及び追加議定書を発効するものの拡大結論を得ていない34カ国、包括的保障措置協定は発効させているものの追加議定書については未発効の29カ国(うち28カ国はSQP国)、VOA及び追加議定書を発効している1カ国について国レベルの保障措置アプローチ(SLA)を開発・承認した78。
保障措置技術の研究開発に関しては、IAEAの長期プラン79の下で、当面の計画として「核検証のための開発・実施支援計画2018~19年」が実施され、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、英国、米国など20カ国と欧州委員会(EC)が参加している80。
(5) 核関連輸出管理の実施
A) 国内実施システムの確立及び実施
核関連輸出管理に関する国内実施システムの確立・実施状況に関して、2018年に顕著な変化を見せた国はなかった。「ひろしまレポート2017年版」で述べたように、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、英国及び米国は、NSGを含む4つの国際的輸出管理レジーム81に参加し、いずれも国内実施制度(立法措置及び実施体制)を整備し、リスト規制に加えて、リスト規制品以外でも貨物や役務(技術)がWMDや通常兵器の開発、製造などに使用されるおそれがある場合に適用されるキャッチオール規制を実施するなど、原子力関連の輸出管理を着実かつ適切に実施してきた。
こうした国々は、輸出管理の強化に向けた活動も活発に行ってきた。たとえば、日本は2018年2~3月、アジア及び国際的な不拡散の取組を促進すべく、アジア諸国や域外主要国を招き、第25回アジア輸出管理セミナーを開催した。
上記以外の本調査対象国のなかで、NSGメンバー国はブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコである。これら7カ国も、キャッチオール規制の実施を含め、核関連の輸出管理に係る国内実施体制を確立している。
NSGメンバー以外の本調査対象国に関しては、UAE及びフィリピンが国内輸出管理制度の整備を進めているのに対して、エジプト、インドネシア、サウジアラビアでは適切な輸出管理制度・体制の構築に至っていない。
NPT非締約国のインド、イスラエル及びパキスタンは、いずれもキャッチオール規制の実施を含む輸出管理制度を確立している82。NSGではインドのメンバー国化に関する議論が続いているが、後述する経緯により2018年もNSGメンバー国によるコンセンサスには至らなかった。また、パキスタンもNSGへの参加を模索しているとされる。他方、米国は2018年3月、パキスタンの7企業が米国の指定する制裁リストに記載された企業に資機材を輸出したとして制裁を課した83。
北朝鮮、イラン及びシリアといった拡散懸念国が、輸出管理の実効的な国内実施体制を整備していることを示す報告や資料を見出すことはできなかった。これらの国の間では、後述するように、少なくとも弾道ミサイル開発に係る協力が行われてきたと見られている。また北朝鮮は、シリアの黒鉛減速炉建設に関与したと疑われている。
米国のシンクタンクは、核兵器禁止条約(TPNW)採択に賛成した122カ国のうち、24%(29カ国)しか適切な輸出管理法制を制定していないと指摘しており84、そうした国による輸出管理の強化が求められている。
B) 追加議定書締結の供給条件化
NPT第3条2項では、「各締約国は、(a)原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は(b)特殊核分裂性物質の処理、使用若しくは生産のために特に設計され若しくは作成された設備若しくは資材を、この条の規定によって必要とされる保障措置が当該原料物質又は当該特殊核分裂性物質について適用されない限り、平和的目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する」ことが規定されている。また2010年NPT運用検討会議の最終文書では、多国間で交渉・合意されたガイドライン及び了解事項を自国の輸出管理の発展に活用することが奨励された。NSGガイドライン・パート1では、パート1品目(核物質や原子炉などの原子力専用品・技術)の供給条件にIAEA包括的保障措置の適用を定め、さらに濃縮・再処理に係る施設、設備及び技術の移転に関しては、2011年6月に合意された改訂版で、「供給国は、受領国が、包括的保障措置協定を発効させており、かつ、モデル追加議定書に基づいた追加議定書を発効させている(又は、それまでの間、IAEA理事会により承認された適切な保障措置協定(地域計量・管理取極を含む。)を、IAEAと協力して実施している)場合にのみ、この項に従って、移転を許可すべきである」85(第6項(c))としている。
軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)やウィーン10カ国グループなどは、これまでに、包括的保障措置協定及び追加議定書がIAEA保障措置の現在のスタンダードであり、これを非核兵器国との新しい供給アレンジメントの条件にすべきだと主張してきた86。日本や米国がそれぞれ締結した最近の二国間原子力協力協定には、核関連物質を供給する要件として、相手国によるIAEA追加議定書の締結を含めるものが見られる。これに対してNAM諸国は、包括的保障措置協定の当事国に対する核関連資機材、物質、技術の移転にいかなる制限も課すべきではないと主張している87。
二国間原子力協力協定における濃縮・再処理の取り扱い
核兵器拡散の観点から最も機微な活動の1つであるウラン濃縮、及び使用済燃料の再処理に関して、平和的目的であり、IAEA保障措置が適用される限りにおいて、非核兵器国であってもNPTの下では禁止されていない。他方で、その技術の拡がりは、核兵器を製造する潜在能力をより多くの非核兵器国が取得することを意味しかねない。上述のように、NSGではIAEA保障措置協定追加議定書の締結を濃縮・再処理技術の移転の条件に含めた。
また、米国がUAEと締結した原子力協力協定では、UAEが濃縮・再処理活動を実施しないことが義務として明記されており、「ゴールド・スタンダード」と称されて注目された。しかしながら、2014年のベトナムとの協定など、米国がその後に締結・更新した他国との原子力協力協定では、米台協定を除き、同様の義務は規定されていない88。2018年7月に期限を迎えた日米原子力協力協定については、日本による再処理活動などに与えられてきた包括的同意の取り扱いが注目された。協定の期限の6カ月前までに日米のいずれも協定の終了や再交渉を通告せず、自動延長が確定した。
近年注視されてきたのは、米・サウジアラビアの原子力協力協定交渉の動向である。サウジアラビアは、今後25年間に16基の発電用原子炉を建設する計画を有している。その目的は、自国のエネルギー供給と、これによる石油の輸出量増加であり、厳密に民生用であるとしている。しかしながら、イランと対立関係にあるサウジアラビアは、「核兵器を取得したいとは考えていないが、もしイランが核兵器を開発すれば、疑いなく我々も可及的速やかにこれに続く」89と、サルマン(Prince Mohammed bin Salman)皇太子などが繰り返し公言しており、サウジアラビアの原子力開発が核兵器拡散の可能性を高めることへの懸念も論じられている。米前政権は協定交渉にあたり、サウジアラビアによる濃縮・再処理活動の放棄を求めたが、サウジアラビアはこれに応じなかった。トランプ政権の方針は必ずしも明らかではないが、12月、米・サウジアラビア原子力協力協定発効に上下両院の承認を条件とする法案が上下両院に提出された(未採択のまま会期末で廃案)。現行法では、議員の過半数が不承認の共同決議を採択しなければ、二国間原子力協力協定が発効する規定になっている90。
C) 北朝鮮及びイラン問題に関する安保理決議の履行
北朝鮮核問題との関連では、国連安保理決議で、すべての国連加盟国に対して、核兵器を含むWMD関連の計画に資する品目及び技術の移転防止が義務付けられている。北朝鮮の履行状況に関しては、安保理制裁委員会専門家パネルが毎年、報告書を公表してきた。イラン制裁委員会及び専門家パネルは、JCPOA成立後、イランの主張により終了し、その後は安保理が監視の責任を担っている91。
北朝鮮
北朝鮮の核・ミサイル活動に対しては、その停止を求めるとともに厳しい非軍事的制裁措置を課す累次の国連安保理決議が2017年までに採択されてきた。2018年に入ると、上述のように北朝鮮の非核化に向けた期待が高まり、南北関係及び米朝関係にも改善がみられたが、北朝鮮による核・ミサイルの放棄に関する具体的なプロセスが依然として合意に至っておらず、対北朝鮮制裁も緩和されなかった。
安保理決議の履行状況については、北朝鮮制裁委員会専門家パネルが2018年3月に報告書を公表した92。報告書では、以下のような点などが指摘された。
- 北朝鮮は世界の石油サプライチェーン、共謀関係にある外国人、オフショア会社、国際銀行システムを悪用し、直近の安保理決議も無視している。
- 専門家パネルは、石油の不法な瀬取りについて調査した。
- 2017年1~9月の間に、決議で禁止されたほぼすべての品目の輸出を継続し、2億ドル近くを稼いだ。
- 中国、韓国、マレーシア、ロシア、ベトナムの港への不法な石炭の輸出を継続した。産地を偽った書類を用いるなどその手法が巧妙化している。
- 弾道ミサイル協力が続くシリアやミャンマーを含め、アフリカからアジア太平洋に至る地域で禁止された軍事協力プロジェクトに関与している。
- 北朝鮮の外交官は、禁止された計画や活動などに依然として重要な役割を果たしている。
- 北朝鮮の金融機関の代表者30人以上が中東やアジアを自由に往来し、銀行口座を保持するなど違法な金融取引を続けている。
専門家パネルは同年8月に、中間報告書をとりまとめた。しかしながら、北朝鮮が安保理決議に違反し、「瀬取り」により石油精製品の年間上限量を超えて密輸していたと指摘したことに対して、ロシアが強く反発して修正を要求し、専門家パネルは安保理に報告書の最終案を提出できない事態となった93。
9月に開催された安保理での北朝鮮制裁履行に関する公開会合では、ヘイリー(Nikki Haley)米国連大使が、北朝鮮による石油精製品の瀬取りについて、米国は2018年1~8月の間に少なくとも148回確認し、北朝鮮が得た総量は80万バレルに上っており、制裁決議が定めた年間50万バレルの上限を160%上回っていると指摘した94。また、ヘイリー大使は、ロシアに対して、制裁違反が組織的であること、あるいは専門家パネル報告書に変更を加える圧力を加えていることなどを挙げて批判した95。ロシアのネベンジャ(Vasily A. Nebenzya)国連大使は、米国の主張を否定した。この中間報告書は、2018年末時点で依然として公表されていない。
北朝鮮による違法活動の全容は依然として明らかではないものの、北朝鮮は国外のネットワークを駆使するなどして、核兵器開発を支援するための外貨獲得など様々な活動を試みている。2018年には以下のような事例が報道された。
- ドイツ情報機関の連邦憲法擁護庁のマーセン(Hans-Georg Maassen)長官は、北朝鮮が核・ミサイル開発に必要な資機材・技術の調達のため、ベルリンの在ドイツ北朝鮮大使館を利用していると言明した96。
- 北朝鮮はビットコインを駆使して、米国の制裁を回避している97。
- 韓国税関当局によると、3つの企業が制裁に違反して北朝鮮から石炭を輸入した。3社はロシア産と偽り、2017年4月から10月の間に3万5,000トンの石炭を66億ウォンで輸入したとされる98。
- ロシアは国連安保理決議で禁止されて以来、北朝鮮の労働者1万人以上を新規に受け入れている99。
対北朝鮮制裁において、なかでも動向が注目されてきたのが北朝鮮と緊密な関係にある中国である。依然として中国の取組が不十分だとの指摘も少なくないが、2018年には以下のような対北朝鮮制裁の履行・強化策を講じた。
- 中国商務省は1月、北朝鮮に対して原油、石油精製品、鉄鋼などの金属類の輸出を制限すると発表100
- 中国商務省は4月8日、2017年9月に採択された安保理決議に基づく措置として、北朝鮮への輸出が禁止されるWMD開発に利用可能な32の「軍事転用可能品」を公表101
他方、中国及びロシアは、北朝鮮問題を巡る状況の好転を受けて、対北朝鮮制裁の緩和を提起している。米朝首脳会談後の2018年6月28日には、中国が米朝首脳会談の開催を受けて、北朝鮮が安保理決議を遵守していることを踏まえ、対北朝鮮制裁・政策を調整する意思を表明するとした報道声明案を安保理に配布したが、米国などが反対して発表には至らなかった102。中露は9月27日の安保理閣僚級会合でも、南北関係及び米朝関係の改善を受けて、また北朝鮮の譲歩を引き出すために前向きなシグナルを送る時だとして、制裁が緩和されるべきだと主張した。さらに10月には、中国、ロシア及び北朝鮮の次官級協議で、対北朝鮮制裁の緩和を求める共同声明を発表した103。中露に加えて韓国も、北朝鮮が非核化を進展させる場合には人道支援の提供や制裁の緩和が必要であると発言している。しかしながら、米国など多くの西側諸国は、北朝鮮が非核化に向けて具体的かつ実質的な行動を取ることが必要だとして、現時点での制裁緩和に反対している。
北朝鮮に対しては、安保理決議の下での制裁に加えて、日米韓、並びにEUなどが独自制裁―北朝鮮の核・ミサイル開発に関係する団体及び個人(北朝鮮のみならず中国やロシアなども含まれる)への資産凍結の拡大など―を課してきた。2018年には米国が、北朝鮮の違法な金融活動に関与した北朝鮮やロシアなどの銀行、あるいは北朝鮮の交易に関与した中国、ロシア、シンガポール、トルコなどの企業をはじめとして、安保理決議に違反する活動に従事する北朝鮮内外の企業、個人、船舶などを特定し、資産凍結などの制裁措置を随時課してきた104。
北朝鮮による瀬取りなど海上での国連安保理決議に違法する活動に対して、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が2017年12月から、日本海や黄海で警戒監視活動にあたっており、瀬取りの様子を外務省ホームページに掲載している105。警戒監視活動には、日米に加えて、豪州、カナダ、ニュージーランドが参加している106。
イラン
JCPOAに基づき、イランによる原子力関連資機材の調達は、JCPOAの下で設置された調達作業部会の承認を得なければならない。2017年12月15日から2018年6月15日までの半年間に、調達作業部会に13件の新規提案がなされ、このうち8件が承認、2件が提案撤回、3件が検討中という結果であったことが報告された107。また、2018年6月15日から12月11日までの半年間には、調達作業部会に5件の新規提案がなされ、このうち4件が承認、1件が検討中という結果であったこと、並びにこの報告期間より前に提出された提案に関して、2件の提出が取り下げられ、また1件が承認されなかったことが報告された108。
懸念国間の取引
北朝鮮とイランは、核・ミサイル開発で協力関係にあるとの懸念が指摘されてきた。弾道ミサイル協力については広く知られており、2016年には両国のミサイル関連協力に対して米国の制裁も課された109。他方で、核分野での協力関係に関しては公開された証拠等に乏しく、そうした主張は立証されていない110。
北朝鮮を巡っては、新型の中距離弾道ミサイル(IRBM)火星12型やICBM火星14型に使用されたエンジンがロシアのSS-18・ICBMなどに使用された「RD250」を改良したものである可能性、あるいはこれがロシアあるいは(製造企業があった)ウクライナの組織から北朝鮮に流出した可能性が指摘された(両国ともに自国からの流出を否定)111。
国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネル報告書は、北朝鮮の国防科学院の傘下にある弾道ミサイル開発の技術者グループが2016年11月にシリアを訪問したこと、化学兵器の開発に関与する「シリア科学研究調査センター」と北朝鮮との間で2012~2017年に40件以上の取引が判明したことなどが記載され112、WMDおよび弾道ミサイルに関する二国間の協力関係が強く示唆された。
D) 拡散に対する安全保障構想(PSI)への参加
米国が2003年5月に提唱した「拡散に対する安全保障構想(PSI)」に関しては、オペレーション専門家会合に参加する豪州、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ロシア、トルコ、英国、米国など21カ国に、ベルギー、チリ、イスラエル、カザフスタン、フィリピン、サウジアラビア、スイス、スウェーデン、UAEなどを加えた106カ国が、PSIの基本原則や目的に対する支持を表明し、その活動に参加・協力している113。
PSIの実際の阻止活動については、インテリジェンス情報が深く絡むこともあり、明らかにされることは多くはないが、北朝鮮やイランが関係するWMD関連資機材などの移転を阻止したケースなどが時折報道されてきた。加えて、PSIの下では、阻止訓練の実施・参加、あるいはアウトリーチ活動の実施を通じて、阻止能力の強化が図られてきた。2018年7月には、日本主催の阻止訓練「Pacific Shield 18」が開催され、訓練には6カ国(豪州、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、米国)、またオブザーバーとして19カ国114が参加した115。
2018年1月には、北朝鮮による密輸行為など対北朝鮮安保理決議に違反する活動に対して、決議に基づき、公海上で制裁決議違反の物資を輸送していると疑われる船舶を発見した際は、旗国の同意を得て検査を実施すること、ならびに自国の船舶が北朝鮮籍の船舶と海上で積み荷を移転するのを禁止することなどを確認した共同声明を発表した116。
E) NPT非締約国との原子力協力
2008年9月、NSGにおいて「インドとの民生用原子力協力に関する声明」がコンセンサスで採択され、NSGガイドラインの適用に関するインドの例外化が合意された。その後、インドとの二国間原子力協力協定が、豪州、カナダ、フランス、カザフスタン、日本、韓国、ロシア及び米国との間で締結されてきた。他方、インドと原子力協力協定を締結した国々によるインドとの実際の原子力協力は、フランス、ロシア及びカザフスタンからのウランの輸入、並びに豪州(2017年7月、インドに最初のウランを輸出した)、カナダ、モンゴル、アルゼンチン及びナミビアとの同様の合意を除き117、必ずしも進んでいるわけではない。
インドを巡っては、NSGメンバー国化に関する議論が続いているが、2018年も中国などの反対により、合意には至らなかった。中国は、インドがNPT締約国でないとの原則論に加えて、インドの参加を認めるのであればパキスタンの参加も認めるべきだと主張してきたとされる118。パキスタンも、原子力安全と核セキュリティに関して模範的な行動をしているとしてNSGに参加する資格があると主張してきた。NSGでは、NPT非締約国のメンバー化に関するガイドラインの策定が検討されており、2016年12月にメンバー国に示された案では、保障措置・軍民分離、核実験モラトリアム、多国間不拡散・軍縮レジームの支援・強化が要件に挙げられていたとされる119。
パキスタンに関しては、中国によるパキスタンへの2基の原子炉輸出がNSGガイドラインに違反するのではないかと依然として批判されている。中国は、NSG参加以前に合意された協力には適用されないという祖父条項(grandfather clause)によりNSGガイドライン違反ではないと主張している。中国はまた、それらの原子炉で用いる濃縮ウランも供給している120。2013年2月には、チャシュマ(Chashma)に3基目の原子炉を建設することで中国とパキスタンが合意に達したと報じられた121。とりわけこの合意が、祖父条項によりNSGの下で認められるかは、先の2基の原子炉供与以上に疑わしい。
NAM諸国は、インド、イスラエル及びパキスタンというNPT非締約国との原子力協力に批判的であることを強く示唆しており、包括的保障措置を受諾していない国への核技術・物質の移転を慎むべきであるとの主張を繰り返している122。
(6) 原子力平和利用の透明性
A) 透明性のための取組
平和的目的の原子力活動が核兵器への転用を意図したものではないことを示すための措置には、IAEA保障措置の受諾に加えて、自国の原子力活動及び今後の計画を明らかにするなど透明性の向上が挙げられる。IAEA追加議定書を締結する国は、核燃料サイクルの開発に関連する10年間の全般的な計画(核燃料サイクル関連の研究開発活動の計画を含む)をIAEAに報告することが義務付けられている。主要な原子力推進国も、原子力発電炉の建設計画をはじめとして、中長期的な原子力開発計画を公表している123。他方、原子力計画を公表していないものの核活動を行っている(と見られる)国(イスラエル、北朝鮮、シリア)、あるいは原子力計画を公表しているもののその計画にそぐわない核関連活動を行っていると疑われている国に対しては、核兵器拡散への懸念が持たれる可能性がある。
5核兵器国、ベルギー、ドイツ、日本及びスイスは、1997年に合意された「プルトニウム管理指針(Guidelines for the Management of Plutonium)」(INFCIRC/549)の下で、共通のフォーマットを用いて、民生用分離プルトニウムなど(原子力平和利用活動におけるすべてのプルトニウム、並びに当該国政府によって軍事目的には不要だとされたプルトニウム)の量を毎年、IAEAに報告している。2017年末時点での民生用分離プルトニウム量については、上記9カ国のうち中国、フランス、英国及び米国が2018年末時点で報告を提出しなかった。ドイツは、プルトニウムだけでなく民生用高濃縮ウラン(HEU)の量も併せて報告した124。また、日本がIAEAに提出した上記の報告は、2018年7月に原子力委員会が公表した「我が国のプルトニウム管理状況」に基づくものであり、そこでは分離プルトニウムの管理状況が詳細に記載されている125。
日本は同時に、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を発表し、「我が国は…プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は…現在の水準を超えることはない」との指針を示した。後者については、「プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から照射までのプルトニウム保有量を必要最小限とし、再処理工場等の適切な運転に必要な水準まで減少させるため、事業者に必要な指導を行い、実現に取り組む」こと、並びに「事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む」ことなどの措置が挙げられた126。
豪州、オーストリア、ブラジル、カナダ、チリ、エジプト、イラン、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、南アフリカ、スウェーデン、トルコ及びUAEについても、核分裂性物質の保有量を公表しているか、あるいは少なくともIAEAに申告している核分裂性物質に関しては保障措置が適用されているという意味で、一定の透明性が確保されていると言える。
B) 核燃料サイクルの多国間アプローチ
非核兵器国が独自の濃縮・再処理技術を取得するのを抑制する施策の1つとして、核燃料サイクルの多国間アプローチが検討されてきた。これまでに、オーストリア、ドイツ、日本、ロシア、英国、米国及びEUがそれぞれ、また6カ国(フランス、ドイツ、オランダ、ロシア、英国、米国)は共同で提案を行った。
様々な構想のなかで具体的に進展しているのが核燃料バンクである。アンガルスク(ロシア)に設置された国際ウラン濃縮センターに続き、2017年8月には、核脅威イニシアティブ(NTI)、クウェート、ノルウェー、UAE、米国及びEUの拠出を得て、カザフスタンにIAEA低濃縮ウラン(LEU)バンクが開設された。この核燃料バンクには、最大90トンのLEU(1,000MWの軽水炉の運転に十分な量)が備蓄されるが127、IAEAがLEUの購入及び搬送、装備品の購入などのコストを、カザフスタンがLEU貯蔵のコストをそれぞれ負担する128。天野事務局長は2018年6月の理事会で、IAEAはLEUの調達を進めており、2019年内にLEUを核燃料バンクの貯蔵施設に搬送する予定であること、その輸送契約に関して中国、カザフスタン及びロシアと交渉を進めていることを明らかにした129。そしてIAEAは11月、燃料調達に関してフランス及びカザフスタンの事業者と、またLEU輸送に関してカザフスタン及びロシアの事業者とそれぞれ契約を締結したことを発表した130。
[1] 第2章「核不拡散」は、戸﨑洋史により執筆された。
[2] “Joint Statement by the Foreign Ministers of the Depositary Governments for the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons,” U.S. Department of State, 28 June, 2018, https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2018/06/283593.htm.
[3] IAEAによるNPT第3条(非核兵器国による包括的保障措置の受諾)の遵守に係るものを除き、どの国際機関もNPTの各条項の遵守を評価する明示的な権限は与えられていない。
[4] U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation, and Disarmament Agreements and Commitments,” April 2017, https://www.state.gov/t/avc/rls/rpt/2017/270330.htm.
[5] S/RES/1718, October 14, 2006. 2009年4月の北朝鮮による核実験に対して採択された安保理決議1874(2009年6月)でも、「北朝鮮に対し、関連する安全保障理事会決議(特に決議第1718号(2006年10月))の義務を直ちにかつ完全に遵守すること」などが要求された。
[6] “Kim Jong Un’s 2018 New Year’s Address,” January 1, 2018, https://www.ncnk.org/node/1427.
[7] “Panmunjom Declaration for Peace, Prosperity and Unification of the Korean Peninsula,” April 27, 2018.
[8] “Joint Statement of President Donald J. Trump of the United States of America and Chairman Kim Jong Un of the Democratic People’s Republic of Korea at the Singapore Summit,” June 12, 2018, https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-president-donald-j-trump-united-states-america-chairman-kim-jong-un-democratic-peoples-republic-korea-singapore-summit/.
[9] “Pyongyang Declaration,” the Inter-Korean Summit Meeting in Pyongyang, September 18-20, 2018, https://www.koreatimes.co.kr/www/nation/2018/09/103_255848.html.
[10] Joseph S. Bermudez Jr., “North Korea Begins Dismantling Key Facilities at the Sohae Satellite Launching Station,” 38 North, July 23, 2018, https://www.38north.org/2018/07/sohae072318/.
[11] Joseph S. Bermudez Jr., “More Progress on Dismantling Facilities at the Sohae Satellite Launching Station,” 38 North, August 7, 2018, https://www.38north.org/2018/08/sohae080718/. ICBM開発に重要だと考えられてきた施設の破壊は重要な信頼醸成措置(CBM)であると捉えられる一方で(Bermudez Jr., “North Korea Begins Dismantling Key Facilities.”)、核実験場を含め、北朝鮮にとって核・ミサイル開発にもはや必要性の低い施設が廃棄されているだけではないか、あるいは短期間で修復・再使用が可能ではないかといった見方もなされている(Ankit Panda, “US Intelligence: North Korean Engine Dismantlement at Sohae Reversible ‘Within Months,’” Diplomat, July 25, 2018, https://thediplomat.com/2018/07/us-intelligence-north-korean-engine-dismantlement-at-sohae-reversible-within-months/)。
[12] Office of the Spokesperson, “Secretary Pompeo’s Meetings in Pyongyang, Democratic People’s Republic of Korea,” U.S. Department of State, October 7, 2018, https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2018/10/286482.htm.
[13] Corey Dickstein, “US, South Korea to Scale Back Foal Eagle Exercise This Spring,” Stars and Stripes, November 21 2018, https://www.stripes.com/news/us/us-south-korea-to-scale-back-foal-eagle-exercise-this-spring-1.557571.
[14] Alex Ward, “Pompeo Told North Korea to Cut Its Nuclear Arsenal by 60 to 70 Percent,” Vox, August 8, 2018, https://www.vox.com/2018/8/8/17663746/pompeo-north-korea-nuclear-60-70.
[15] “U.S. Will Get Nothing with Its “Pressure Diplomacy”: Rodong Sinmun,” KCNA, August 6, 2018, http://www.kcna.co.jp/item/2018/201808/news06/20180806-07ee.html.
[16] Oliver Hotham, “N. Korea Will Retain “Nuclear Science” Following Disarmament: Foreign Minister,” NK News, August 10, 2018, https://www.nknews.org/2018/08/n-korea-will-retain-nuclear-science-following-disarmament-foreign-minister/.
[17] “North Korea Media Says Denuclearization Includes Ending ‘U.S. Nuclear Threat,’” Reuters, December 20, 2018, https://ca.reuters.com/article/topNews/idCAKCN1OJ0J1-OCATP.
[18] “Joint Comprehensive Plan of Action,” Vienna, July 14, 2015, http://www.state.gov/e/eb/tfs/spi/iran/jcpoa/. 2015年7月20日には、JCPOAに従って、JCPOA実施のための厳格な監視メカニズム及びタイムテーブルを設定した国連安保理決議2231(S/RES/2231, July 20, 2015)が全会一致で採択された。
[19] GOV/2018/33, August 30, 2018.
[20] Donald Trump, “Statement by the President on the Iran Nuclear Deal,” January 12, 2018, https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/statement-president-iran-nuclear-deal/.
[21] “Remarks by President Trump on the Joint Comprehensive Plan of Action,” May 8, 2018, https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-joint-comprehensive-plan-action/.
[22] “Statement by Secretary Steven T. Mnuchin on Iran Decision,” Department of Treasury, May 8, 2018, https://home.treasury.gov/news/press-releases/sm0382 などを参照。
[23] Mike Pompeo, U.S. Secretary of State, “After the Deal: A New Iran Strategy,” The Heritage Foundation, Washington, DC, May 21, 2018, https://www.state.gov/secretary/remarks/2018/05/282301.htm.
[24] Michael R. Pompeo, “Confronting Iran: The Trump Administration’s Strategy,” Foreign Affairs, October 15, 2018, https://www.state.gov/secretary/remarks/2018/10/286751.htm.
[25] Nasser Karimi and Amir Vahdat, “Iran President: Uranium Enrichment May Resume If Deal Fails,” Associated Press, May 8, 2018, https://www.apnews.com/b9487a3c9dd64fdd8a5fed11b86d6717.
[26] “Without Definite Guarantee of 3 EU Countries, We Won’t Stick with JCPOA,” Khamenei.ir, May 9, 2018, http://english.khamenei.ir/news/5654/Without-definite-guarantee-of-3-EU-countries-we-won-t-stick; Patrick Wintour and Julian Borger, “EU Rushes to Arrange Crisis Meeting with Iran over Nuclear Deal,” Guardian, May 9, 2018, https://www.theguardian.com/world/2018/may/09/eu-moves-to-protect-european-firms-from-us-sanctions-on-iran.
[27] “Ayatollah Khamenei Sets Seven Conditions for Europe to Save Nuclear Deal,” Teheran Times, May 25, 2018, https://www.tehrantimes.com/news/423907/Ayatollah-Khamenei-sets-seven-conditions-for-Europe-to-save-nuclear.
[28] “Zarif’s Response to Pompeo’s 12 Demands,” Iran Daily, June 20, 2018, http://www.iran-daily.com/News/217019.html.
[29] “Joint Statement from Prime Minister May, Chancellor Merkel and President Macron following President Trump’s Statement on Iran,” May 8, 2018, https://www.gov.uk/government/news/joint-statement-from-prime-minister-may-chancellor-merkel-and-president-macron-following-president-trumps-statement-on-iran.
[30] European Commission, “Updated Blocking Statute in Support of Iran Nuclear Deal,” https://ec.europa.eu/fpi/what-we-do/updated-blocking-statute-support-iran-nuclear-deal_en.
[31] Ibid. そうした取組にもかかわらず、米国がEUからの対イラン制裁免除要請を拒否するなかで、米国で操業する欧州企業の中には、イランとの取引、投資、操業を停止するものも出てきていると報じられた。Ted Regencia, “What Sanctions Will the US Reimpose against Iran on Tuesday?” Al Jazeera, August 6, 2018, https://www.aljazeera.com/news/2018/08/sanctions-iran-snap-tuesday-180804193910915.html.
[32] “Implementation of the Joint Comprehensive Plan of Action: Joint Ministerial Statement,” September 24, 2018, https://eeas.europa.eu/headquarters/headquarters-homepage/51036/implementation-joint-comprehensive-plan-action-joint-ministerial-statement_en.
[33] “Brian Hook’s Written Remarks,” Hudson Institute, September 19, 2018, https://www.hudson.org/research/14577-brian-hook-s-written-remarks; “Iran Dismisses U.S. Offer of Talks, Says Washington Broke Last Deal,” Reuters, September 20, 2018, https://www.reuters.com/article/us-iran-nuclear-zarif-usa/iran-dismisses-u-s-offer-of-talks-says-washington-broke-last-deal-idUSKCN1M01XN.
[34] “Iran Tells UN It Plans to Boost Uranium Enrichment Capacity,” Associated Press, June 5, 2018, https://globalnews.ca/news/4253294/iran-un-uranium-enrichment-capacity/.
[35] “Iran Completes Facility to Build Centrifuges: Nuclear Chief,” Reuters, September 10, 2018, https://www.reuters.com/article/us-iran-nuclear-salehi/iran-completes-facility-to-build-centrifuges-nuclear-chief-idUSKCN1LP0RE.
[36] GOV/2018/7, February 22, 2018.
[37] Jeffrey Lewis, “Bibi’s Infomercial for the Iran Deal,” Foreign Policy, May 1, 2018, http://foreignpolicy.com/2018/05/01/netanyahus-informercial-for-the-iran-deal/.
[38] “Nuclear Deal: Netanyahu Accuses Iran of Cheating on Agreement,” Guardian, 30 April 2018, https://www.theguardian.com/world/2018/apr/30/netanyahu-accuses-iran-cheating-nuclear-deal.
[39] Joby Warrick, “Papers Stolen in Daring Israeli Raid on Tehran Archive Reveal Extent of Iran’s Past Weapons Research,” Chicago Tribune, July 15, 2018, https://www.chicagotribune.com/news/nationworld/ct-iran-israel-nuclear-weapons-20180715-story.html. また、イスラエルが入手したとするイラン核問題関係の新たな資料に含まれていたものをまとめたものとして、David Albright, “What is New in the Iran Nuclear Archive?” Institute for Science and International Security, June 6, 2018, http://isis-online.org/conferences/detail/what-is-new-in-the-iran-nuclear-archive#When:15:26:00Z. イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は9月の国連総会でも、イランがテヘラン市内に核兵器用の放射性物質15kgを隠匿しており、IAEAは直ちに査察官を派遣して調査すべきだとも主張した。John Irish and Arshad Mohammed, “Netanyahu, in U.N. Speech, Claims Secret Iranian Nuclear Site,” Reuters, September 28, 2018, https://www.reuters.com/article/us-un-assembly-israel-iran/israel-accuses-iran-of-concealing-nuclear-material-for-weapons-program-idUSKCN1M72FZ.
[40] “Iran Calls Israel’s Reported Theft of Nuclear Trove ‘Laughably Absurd,’” New York Times, July 18, 2018, https://www.nytimes.com/2018/07/18/world/middleeast/iran-israel-nuclear-denial.html.
[41] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.5, March 7, 2018.
[42] “Statement by Germany,” Cluster II, the 2018 NPT PrepCom, April 27, 2018.
[43] 2015年NPT運用検討会議における調査対象国の主張や提案に関しては、『ひろしまレポート2016年版』を参照。
[44] 53/77D, December 4, 1998.
[45] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.16, March 22, 2018.
[46] A/C.1/73/L.22/Rev.1, October 17, 2018.
[47] United Nations, “General Assembly Adopts 16 Texts Recommended by Fifth Committee, Concluding Main Part of Seventy-Third Session,” Meeting Coverage, December 22, 2018, https://www.un.org/press/en/2018/ga12117.doc.htm. この決議案に反対した米国は、非WMD地帯設置に係るコンセンサスを放棄するものであり、安全保障問題に関する中東諸国間の対話を阻害するものだと主張した。
[48] A/RES/73/28, December 5, 2018.
[49] Alicia Sanders-Zakre, “UN Body Seeks Mideast WMD-Free-Zone Talks,” Arms Control Today, Vol. 48, No. 10 (December 2018), https://www.armscontrol.org/act/2018-12/news/un-body-seeks-mideast-wmd-free-zone-talks.
[50] NPT/CONF.2015/8, February 25, 2015.
[51] 2015年にNPTに加盟したパレスチナを含む。その12カ国は、いずれも少量の核物質しか保有していないか、原子力活動を行っていない。
[52] IAEA, IAEA Annual Report 2017, September 2018, p. 15.
[53] GC(62)/RES/10, September 21, 2018.
[54] IAEA Annual Report 2017, September 2018, p. 90.
[55] GOV/2018/34-GOV(62)/12, August 20, 2018.
[56] Ibid.
[57] “Director General’s Statement to Sixty-second Regular Session of IAEA General Conference,” September 17, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/statements/director-generals-statement-to-sixty-second-regular-session-of-iaea-general-conference.
[58] Francois Murphy, “Collapse of Iran Nuclear Deal Would be ‘Great Loss’, IAEA Tells Trump,” Reuters, March 5, 2018, https://www.reuters.com/article/us-iran-nuclear/collapse-of-iran-nuclear-deal-would-be-great-loss-iaea-tells-trump-idUSKBN1GH1I9.
[59] GOV/2018/33, August 30, 2018.
[60] “Remarks by President Trump on the Joint Comprehensive Plan of Action.” また、米国のヘイリー(Nikki Haley)国連大使は2017年8月、イランがJCPOAで禁止された活動、とりわけJCPOAのセクションTの下で禁止された核兵器関連活動を隠匿していないことを確実にすべく、イランの軍事施設に対するIAEAによるアクセスを検討すべきだと主張した(“Nuclear Inspectors Should Have Access to Iran Military Bases: Haley,” Reuters, August 26, 2017, https://www.reuters.com/article/us-iran-nuclear-usa-haley-idUSKCN1B524I)。
[61] 「IAEA:『イランに世界最高水準の査察実施』米の批判に」『毎日新聞』2018年5月9日、https://mainichi.jp/articles/20180510/k00/00m/030/016000c。
[62] “Iran Says in no Mood to Go Extra Mile on Nuclear Inspections,” Reuters, June 6, 2018, https://www.reuters.com/article/us-iran-nuclear-iaea/iran-says-in-no-mood-to-go-extra-mile-on-nuclear-inspections-idUSKCN1J21E0.
[63] Bozorgmehr Sharafedin, “Iran Threatens to Cut Cooperation with Nuclear Body after Trump Move,” Reuters, July 4, 2018, https://uk.reuters.com/article/uk-iran-oil-sanctions/iran-threatens-to-cut-cooperation-with-nuclear-body-after-trump-move-idUKKBN1JU1DM.
[64] IAEA Annual Report 2017, September 2018, p. 92.
[65] IAEA Annual Report 2017, GC(62)/3/Annex, Table A36(a). 核兵器国は2015年NPT運用検討会議で、IAEA保障措置の適用状況を報告している。その概要に関しては、『ひろしまレポート2017年版』を参照。
[66] IAEA Annual Report 2017, September 2018, p. 90.
[67] “Statement by the United Kingdom,” IAEA General Conference, September 18-22, 2017, https://www.iaea.org/sites/default/files/gc61-uk-statement.pdf.
[68] IAEA Annual Report 2017, GC(62)/3/Annex, Table A36(a).
[69] IAEA Annual Report 2017, September 2018, p. 90.
[70] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.23, March 26, 2018.
[71] 2018年のNPT準備委員会及びIAEA総会における各国の演説などを参照。
[72] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.21, March 23, 2018. NAM諸国は、2017年のTPNW交渉会議でも、締約国の義務にIAEA追加議定書の締結を含めることに反対し、結果として条約では、核兵器を保有していない締約国に対して、包括的保障措置協定の締結のみを義務付けた。
[73] “Statement by Brazil,” Cluster 2, 2018 NPT PrepCom, April 27, 2018.
[74] “Statement by South Africa”, Cluster 2, 2018 NPT PrepCom, April 27, 2018.
[75] “Statement by Russia”, Cluster 2, 2018 NPT PrepCom, April 27, 2018.
[76] GC(62)/RES/10, September 21, 2018.
[77] Ibid.
[78] IAEA, “Strengthening the Effectiveness and Improving the Efficiency of Agency Safeguards,” GC(62)/8, July 31, 2018.
[79] IAEA, “IAEA Department of Safeguards Long-Term R&D Plan, 2012-2023,” January 2013.
[80] IAEA, “Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification 2018-2019,” January 2018.
[81] NSGに加えて、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、及びワッセナー・アレンジメント(WA)。
[82] このうち、整備が遅れていたパキスタンの状況に関しては、Paul K. Kerr and Mary Beth Nikitin, “Pakistan’s Nuclear Weapons,” CRS Report, August 1, 2016, pp. 25-26を参照。
[83] Drazen Jorgic, “U.S. Sanctions Pakistani Companies Over Nuclear Trade,” Reuters, March 26, 2018, https://www.reuters.com/article/us-pakistan-usa-sanctions/u-s-sanctions-pakistani-companies-over-nuclear-trade-idUSKBN1H20IO.
[84] David Albright, Sarah Burkhard, Allison Lach and Andrea Stricker, “Most Nuclear Ban Treaty Proponents are Lagging in Implementing Sound Export Control Legislation,” Institute for Science and International Security, September 27, 2017, http://isis-online.org/isis-reports/detail/most-nuclear-ban-treaty-proponents-are-lagging-in-implementing-sound-export.
[85] INFCIRC/254/Rev.12/Part 1, November 13, 2013.
[86] たとえば、NPT/CONF.2020/PC.II/WP.5, March 7, 2018。
[87] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.20, March 23, 2018.
[88] 米・メキシコが5月に締結した原子力協力協定では、メキシコが機微な原子力活動を実施しないことが前文に記載されている(シルバー・スタンダード)。
[89] “Saudi Crown Prince Says Will Develop Nuclear Bomb If Iran does: CBS TV,” Reuters, March 15, 2018, https://www.reuters.com/article/us-saudi-iran-nuclear/saudi-crown-prince-says-will-develop-nuclear-bomb-if-iran-does-cbs-tv-idUSKCN1GR1MN. この他に、サウジアラビア外相なども、同様の発言をしている。Nicole Gaouette, “Saudi Arabia Set to Pursue Nuclear Weapons If Iran Restarts Program,” CNN, May 9, 2018, https://edition.cnn.com/2018/05/09/politics/saudi-arabia-nuclear-weapons/index.html.
[90] Timothy Gardner, “U.S. Lawmakers Seek Oversight Over Any Saudi Nuclear Power Deal,” Reuters, December 20, 2018, https://www.reuters.com/article/us-usa-saudi-nuclear-congress/u-s-lawmakers-seek-oversight-over-any-saudi-nuclear-power-deal-idUSKCN1OI2IM.
[91] David Albright and Andrea Stricker, “JCPOA Procurement Channel: Architecture and Issues,” Institute for Science and International Security, December 11, 2015, http://isis-online.org/uploads/isis-reports/documents/Parts_1_and_2_JCPOA_Procurement_Channel_Architecture_and_Issues_Dec_2015-Final.pdf.
[92] S/2018/171, March 5, 2018.
[93] Hamish Macdonald, “Report Originally Blocked by Russia in August, Subsequently Released to the UNSC,” NK News, September 14, 2018, https://www.nknews.org/2018/09/russia-pressured-un-panel-to-alter-north-korea-sanctions-report-haley/.
[94] Nikki Haley, U.S. Permanent Representative to the United Nations, U.S. Mission to the United Nations, “Remarks at a UN Security Council Briefing on Nonproliferation and the Implementation and Enforcement of UN Sanctions on North Korea,” September 17, 2018, https://usun.state.gov/remarks/8613.
[95] Ibid.
[96] “German Spy Chief Alleges North Korea Uses Berlin Embassy for Procurement,” Reuters, February 3, 2018, https://www.reuters.com/article/us-germany-northkorea/german-spy-chief-alleges-north-korea-uses-berlin-embassy-for-procurement-idUSKBN1FN0J2.
[97] Alex Ward, “How North Korea Uses Bitcoin to Get Around US Sanctions,” Vox, February 28, 2018, https://www.vox.com/world/2018/2/28/17055762/north-korea-sanctions-bitcoin-nuclear-weapons.
[98] Hyonhee Shin, “Three South Korean Firms Imported North Korean Coal in Breach of Sanctions – Customs Service,” Reuters, August 10, 2018, https://uk.reuters.com/article/uk-northkorea-southkorea-coal/three-south-korean-firms-imported-north-korean-coal-in-breach-of-sanctions-customs-service-idUKKBN1KV0EL.
[99] Ian Talley and Anatoly Kurmanaev, “Thousands of North Korean Workers Enter Russia Despite U.N. Ban,” Wall Street Journal, August 2, 2018, https://www.wsj.com/articles/russia-is-issuing-north-korean-work-permits-despite-u-n-ban-1533216752.
[100] He Huifeng, “China Tightens Crude Oil Supplies to North Korea in New Sanctions,” South China Morning Post, January 6, 2018, https://www.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2127058/china-tightens-crude-oil-supplies-new-sanctions-north.
[101] “China Bans Exports of ‘Dual Use’ Items to North Korea,” Reuters, April 9, 2018, https://uk.reuters.com/article/uk-northkorea-missiles-china/china-bans-exports-of-dual-use-items-to-north-korea-idUKKBN1HF11I.
[102] 「中国、北朝鮮制裁の緩和声明案 安保理に配布 米は反対」『朝日新聞』2018年6月30日、https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5DZ1L6YUHBI021.html。
[103] “Russia, China, North Korea Call for Review of Sanctions against Pyongyang,” Tass, October 10, 2018, http://tass.com/world/1025315.
[104] Matthew Lee, “Nuke Talks Uncertain, US Hits Shippers with NKorea Sanctions,” Associated Press, August 16, 2018, https://apnews.com/3d8c9433ecd94399bad982660ccf9622/US-sanctions-shipping-firms-over-North-Korea-trade; U.S. Department of Treasury, “Treasury Targets Russian Bank and Other Facilitators of North Korean United Nations Security Council Violations,” Press Release, August 3, 2018, https://home.treasury.gov/news/press-releases/sm454.
[105] Ministry of Foreign Affairs of Japan, “Suspicion of illegal ship-to-ship transfers of goods by North Korea-related vessels,” November 30, 2018, https://www.mofa.go.jp/fp/nsp/page4e_000757.htmlなどを参照。
[106] 「『瀬取り』を含む違法な海上活動に対する関係国による警戒監視活動」外務省、2018年9月7日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_000257.html。また、本件に関して米国は、「北朝鮮の非合法の船舶活動に対する国連安保理決議の履行に関する国際協力」と題するプレス・ステートメントを発出した。Department of State, “International Efforts to Implement UN Security Council Resolutions on DPRK’s Illicit Shipping Activities,” Prese Statement, September 22, 2018, https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2018/09/286140.htm.
[107] S/20187/624, June 21, 2018.
[108] S/20187/1106, December 11, 2018.
[109] U.S. Department of Treasury, “Treasury Sanctions Those Involved in Ballistic Missile Procurement for Iran,” January 17, 2016, https://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/jl0322.aspx.
[110] John Park and Jim Walsh, Stopping North Korea, Inc.: Sanctions Effectiveness and Unintended Consequences (Cambridge, MA: MIT Security Program, 2016), p. 33; Paul K. Kerr, Steven A. Hildreth and Mary Beth D. Nilitin, “Iran-North Korea-Syria Ballistic Missile and Nuclear Cooperation,” CRS Report, February 26, 2016, pp. 7-9.
[111] Michael Elleman, “The Secret to North Korea’s ICBM Success,” IISS Voices, August 14, 2017, https://www.iiss.org/en/iiss%20voices/blogsections/iiss-voices-2017-adeb/august-2b48/north-korea-icbm-success-3abb. ウクライナ政府による調査結果の報告書は、“Repot of Secretary of the National Security and Defense Council of Ukraine, Head of the Working Group Oleksandr Turchynov on Investigation of the Information Stated in the Article of The New York Times,” National Security and Defense Council of Ukraine, August 22, 2017, http://www.rnbo.gov.ua/en/news/2859.html.
[112] S/2018/171, March 5, 2018.
[113] Bureau of International Security and Nonproliferation, U.S. Department of State, “Proliferation Security Initiative Participants,” June 9, 2015, http://www.state.gov/t/isn/c27732.htm. 2018年12月にパラオが新たに参加した。
[114] オブザーバーとして、オペレーション専門家グループ(OEG)から8カ国(カナダ、フランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ロシア)、PSIに参加するアジア太平洋諸国から6カ国(ブルネイ、カンボジア、フィリピン、タイ、マレーシア、ベトナム)、PSIに参加していないアジア太平洋諸国から5カ国(インド、ラオス、モルディブ、ミャンマー、パキスタン)が参加した。
[115] “Proliferation Security Initiative (PSI) Maritime Interdiction Exercise “Pacific Shield 18” Hosted by Japan,” Ministry of Foreign Affairs of Japan, August 13, 2018, https://www.mofa.go.jp/dns/n_s_ne/page25e_000216.html.
[116] “Joint Statement from Proliferation Security Initiative (PSI) Partners in Support of United Nations Security Council Resolutions 2375 and 2397 Enforcement,” January 12, 2018, https://www.psi-online.info/psi-info-en/aktuelles/-/2075616. 発表当初は17カ国が署名。その後、2018年末までに署名国は42カ国となった。このうち『ひろしまレポート』調査対象国は、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国、米国。
[117] Adrian Levy, “India Is Building a Top-Secret Nuclear City to Produce Thermonuclear Weapons, Experts Say,” Foreign Policy, December 16, 2015, http://foreignpolicy.com/2015/12/16/india_nuclear_city_top_secret_china_pakistan_barc/.
[118] “China and Pakistan Join Hands to Block India’s Entry into Nuclear Suppliers Group,” Times of India, May 12, 2016, http://timesofindia.indiatimes.com/india/China-and-Pakistan-join-hands-to-block-Indias-entry-into-Nuclear-Suppliers-Group/articleshow/52243719.cms.
[119] Kelsey Davenport, “Export Group Mulls Membership Terms,” Arms Control Today, Vol. 47, No. 1 (January/February 2017), p. 50.
[120] “Pakistan Starts Work on New Atomic Site, with Chinese Help,” Global Security Newswire, November 27, 2013, http://www.nti.org/gsn/article/pakistan-begins-work-new-atomic-site-being-built-chinese-help/.
[121] Bill Gertz, “China, Pakistan Reach Nuke Agreement,” Washington Free Beacon, March 22, 2013, http://freebeacon. com/china-pakistan-reach-nuke-agreement/.
[122] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.20, March 23, 2018. また、NPT/CONF.2020/PC.II/WP.1, March 6, 2018も参照。
[123] 主要国の原子力発電を含む原子力開発の現状及び今後の計画については、世界原子力協会(World Nuclear Association)のホームページ(http://world-nuclear.org/)にも概要がまとめられている。
[124] “2017 Civilian Plutonium Declarations Submitted to IAEA,” IPFM Blog, September 19, 2018, http://fissilematerials.org/blog/2018/09/civilian_plutonium_infcir.html.
[125] 内閣府原子力政策担当室「我が国のプルトニウム管理状況」2018年7月31日、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2018/siryo27/2.pdf。
[126] 原子力委員会「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」2018年7月31日、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/3-3set.pdf。米国が日本に、貯蔵するプルトニウムを削減するよう求めていたとも報じられている。“US Demands Japan Reduce its Plutonium Stockpiles,” Nikkei, June 10, 2018, https://asia.nikkei.com/Politics/International-Relations/US-demands-Japan-reduce-its-plutonium-stockpiles.
[127] IAEA, “IAEA and Kazakhstan Sign Agreement to Establish Low Enriched Uranium Bank,” August 27, 2015, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-moves-ahead-establishing-low-enriched-uranium-bank- kazakhstan.
[128] “Kazakhstan Signs IAEA ‘Fuel Bank’ Agreement,” World Nuclear News, May 14, 2015, http://world-nuclear-news.org/UF-Kazakhstan-signs-IAEA-fuel-bank-agreement-14051502.html.
[129] Yukiya Amano, “IAEA Director General’s Introductory Statement to the Board of Governors,” IAEA, June 4, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-generals-introductory-statement-to-the-board-of-governors-4-june-2018.
[130] “IAEA Director General’s Introductory Statement to the Board of Governors,” IAEA, November 22, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-generals-introductory-statement-to-the-board-of-governors-22-november-2018.
このページに関するお問い合わせ先
平和推進プロジェクト・チーム
住所:〒730-8511 広島県広島市中区基町10-52(県庁本館3階)
Tel:082-513-2366
Fax:082-228-1614