Hiroshima Report 2019第3章 核セキュリティ
第3章 核セキュリティ1
はじめに―2018年の核セキュリティを巡る全体的動向
テロリストにとって魅力的な、管理の緩い核兵器や核分裂性物質の安全確保が国際社会の重要な課題になって久しい。2016年に一連の協議を終了した核セキュリティサミットの成果と教訓を色褪せさせず、継続的な挑戦として、各国で政策的な優先順位を下げずに核セキュリティの水準強化に取り組む必要性は依然として高い。こうしたなか、核セキュリティサミットの終了からちょうど2年が経過し、かつ国際原子力機関(IAEA)が主催している3年ごとの核セキュリティに関する国際会議(次回は2019年を予定)が最後に開催された2016年からはや2年が過ぎて、2018年は核セキュリティを正面に据えた政治的にもハイレベルな参加者が参集する国際的なフォーラムが開催されない、いわば「狭間の年」であった。その結果、各国の核セキュリティの強化に関する個別の取組での透明性、あるいは対外的なアピールは相対的に減少する傾向が見られたのが実情である。しかしながら、こうした傾向が生じる理由として国の責任が問われる核セキュリティが既に各国で十分に内面化され、改めてその進捗状況を対外発信する必要性が薄れたためなのか、それとも核セキュリティへの関心の低下によるものなのかは明らかではなく、かかる問いへの回答は次回のIAEAによる核セキュリティに関する国際会議など、大規模な国際的フォーラムの開催を待つ必要があると言えよう。
他方、核セキュリティサミットの終了から時間が経過するなかで、改めて大規模な国際的フォーラムのもとで継続的に国際社会が核セキュリティに取り組むべきとの議論や、核軍縮や核不拡散との並びで、多国間での核セキュリティのあり方に向き合う重要性を訴えた議論も見られるようになってきた。たとえば、2018年4月に開催された2020年NPT運用検討会議準備委員会(以下、NPT準備委員会)では、数こそ少ないながらも、核セキュリティを核軍縮、核不拡散及び原子力平和利用の広範な枠組みのなかに位置付けるべきとの指摘があった2。このほか、同準備委員会では核セキュリティに関連した文書として、ウィーン10カ国グループ(Vienna Group of Ten、参加国は豪州、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイルランド、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン)による「ウィーン・イシューズ(Vienna Issues)」で核セキュリティが言及されたほか3、豪州、カナダ、スペインによる「NPTにおける核セキュリティ」4も発出された。特に後者はNPTとの関係性から改めて核セキュリティの位置付けを論じた文書であり、①技術進歩に伴う原子力分野の進歩や、新規技術に対する核テロ脅威を適切に削減すべきこと、②非国家主体も含めた核拡散や非対称的脅威の高まりによって核セキュリティが岐路に立っていること、③核不拡散レジーム自体の変革によって、ステークホルダーや手段がますます複雑かつ多様なものになっていることを踏まえ、NPTと核セキュリティとを関連付ける必要性を提起している5。また、2020年のNPT運用検討会議に向けて核セキュリティをNPTの4番目の柱とは見なさず、3つの柱の横断的な課題と位置付けた点6は注目される。
改正核物質防護条約運用検討会議に向けた様々な課題
こうして核セキュリティに対する新たな視点が提供される一方で、もう1つ脚光を浴びているのが2016年に発効した改正核物質防護条約とその枠組みであり、特に政治的なハイレベルでの注目を定期的に喚起するものとして、同条約をより一層グローバルな核セキュリティ強化の文脈で活用すべきとの議論7が散見されたことは特筆すべき点である。こうした議論は、2018年の第62回IAEA総会においても一部の締約国から提起されており、たとえばオランダは同条約に関して、2021年の運用検討会議8が条約の履行と適切性に関する評価をするうえで重要な機会になると指摘し、IAEA事務局に対して可及的速やかに準備プロセスに着手し、かつすべての締約国に積極的関与を促した9。
他方、新たな多国間での核セキュリティ強化の試みを求める動きと関連して、2016年に終了した核セキュリティサミット・プロセスの成果を見直すべきだとの踏み込んだ議論が顕在化してきたのも、2018年に見られた特徴的な動きの1つであった。2018年に米国軍備管理協会(ACA)と核分裂性物質作業部会(FMWG)によって発表された報告書「核セキュリティサミット:2010年から2016年にかけての国の行動と核テロリズムの抑制」では、核セキュリティサミットの成果も踏まえた多くの論点を述べるなかで、特に改正核物質防護条約に対するアセスメントとして、同条約は検証措置を備えていないため、IAEAの国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)はこうした検証の補完的なツールと位置付けるのに一定の妥当性があろうこと、また、懸案の放射性同位体に係る核セキュリティ(RIセキュリティ)について、現状では核テロ防止条約で非合法化されているのみであり、RIの物理的防護の枠組みが不十分であることなどを挙げ、今後、同条約の運用検討会議で全方位での手当てがなされることに期待が示されている10。
ほかにも核セキュリティサミットの遺産を再検討した議論の一例を挙げれば、サミット自体を「ミニラテラルな交渉フォーラム」に留めた同サミットの功罪を問うもの11や、あるいはそもそも同サミットで訴えられた核テロリズムの脅威そのものに踏み込み、現実には世界各地で通常型の爆弾テロが横行するなか、核テロリズム発生の蓋然性の低さを指摘するもの12など様々であった。また、後者の核テロリズムの蓋然性を巡る議論にも関連した興味深い論考として、核テロリズムのリスク低減のためのこれまでの取組と、核テロリズム発生のリスク要因を踏まえ、今後も核テロリズムが発生する蓋然性は増大しうるとしたうえで、新たな核セキュリティ強化のための方策を提案した、かつて『核テロ 今ここにある恐怖のシナリオ』(秋山信将、戸崎洋史、堀部純子(訳)、日本経済新聞社、2006年)を著して核テロリズムの脅威を国際社会に強調したアリソン(Graham Allison)の2018年の新たな評論文13も話題となった。
しかし、いずれにしても2016年のベルギーにおける核テロ未遂事案14の発覚や、2018年にメディアで大々的に報じられた原発施設へのドローンの不法侵入事案15のように、各国で継続的な核セキュリティの強化を促す要素は依然として存在している。無論、ベルギーの核テロリズム未遂事案はその後、同国の核施設に対する一層の妨害破壊行為(sabotage)対策や核物質防護の強化を促したと見ることもできよう。また、こうした事件の発生によって、深層防護が前提となっている原発施設へのドローンや航空機の突入リスクが再認識され、新たに対処を講じる契機に繋がるとも考えられる。後者について言えば、2018年に米国原子力エネルギー協会(NEI)が原発へのドローン突入リスク対処に具体的に言及する声明を発出した16事例も、かかる脅威認識や対策を打ち出すことで、潜在的な攻撃者に対して一定の抑止効果を期待するものだと考えられる。もちろん、潜在的リスクへの備えとして、核セキュリティが軽視されることのないよう、IAEAをはじめ関係各国や市民社会が世論やメディアの注目を惹起し続ける必要性があると言えようし、この点で改正核物質防護条約の運用検討会議には大きな期待がかけられている。
なお、核セキュリティの新たな技術的な側面について、IAEAに検討を求める声も上がっていることにも一言言及しておきたい。一例として、ノルウェーは第62回IAEA総会において、浮体原子力発電所や、小規模・中規模のモジュラー型原子炉の開発について、これら移動可能な原子炉若しくは移動可能な原子力発電炉(transportable reactors or transportable nuclear power plants: TNPPs)での原子力安全と核セキュリティ問題に対し、IAEAは集中的な考慮が必要であり、そしてIAEAは核セキュリティや原子力安全に係る既存の要請や手段の範囲、適用可能性について明らかにし、かつ検討すべきであるとし、2018年の第4四半期にTNPPsに関する包括的なブリーフィングを行うようIAEAに要請している17。
核セキュリティに対するIAEAの役割と期待
こうした核セキュリティの水準強化のためにIAEAが果たす役割は、全般的に見ても顕著に拡大してきており、IAEAへの各国の期待は高まる一方だと言ってよい。そして、各国での核セキュリティのための措置の履行に関して、国際評価ミッション(ピア・レビュー)を筆頭に、IAEAの取組の重要性への認識が高まっていることは、本レポートのバックナンバーでもこれまで指摘してきた18とおりである。また、実際の核テロリズム対策としても、IAEAは2012年のヨーロッパサッカーチャンピオンシップをはじめ、2016年のリオデジャネイロオリンピックなどの大規模イベントに協力してきたが、2018年2月には2年後に2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本に対して、IAEAが核セキュリティ分野での協力を行う旨合意した19。さらに、各国の核セキュリティの取組に影響を及ぼすものとして、2018年には「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」の補助的なガイダンスに位置付けられる文書20として、新たに「使用されていない放射線源の管理に関するガイダンス」21がIAEAから発出されている。
IAEAによる核セキュリティ関連の各種会合については後述する本章(3)項「核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組」でも個別に取り上げるが、以下にその他の主だった会合について言及したい。
- 輸送の安全:「輸送時の核物質及び他の放射性物質のセキュリティに関する技術会合」が7月にウィーンで開催された22。
- 原子力安全と核セキュリティ:「原子力安全と核セキュリティにおける技術的・科学的支援組織が直面する課題に関する国際会議:効果的で持続可能な専門技術の確保」が10月にベルギー・ブリュッセルで開催された23ほか、「安全とセキュリティのインターフェースに関する技術会合:様々なアプローチと各国の経験」が10月にウィーンで開催された24。
- 緊急事態対応:「緊急事態への備えと対応に係るワークショップ:所要措置とその実施」が12月にルクセンブルクで開催された25ほか、「地中海地域での緊急事態への備えと対応(EPR)計画テンプレートに関する地域ワークショップ」が12月にウィーンで実施された26。
このように、2018年も年間を通じてIAEAを中心に関係国が核セキュリティ関連のイベントに継続的に関与し、それぞれの国内で核セキュリティ体制の強化を進める動きが見てとれる状況は評価できようし、また数多くの地域ワークショップや国際会議の開催を通じて、国の責任で実施される核セキュリティへの認識や技術、文化をより多くのステークホルダーと共有する機会が設けられていることは、持続性のある核セキュリティへの取組を進めるうえでも重要な成果だと言える。他方、核セキュリティに対する今日的な脅威として、かねてよりサイバー攻撃(コンピュータセキュリティ)、無人のドローンによる妨害破壊行為、そして重大な課題と位置付けられて久しい内部脅威に警鐘を鳴らす議論が続いている。サイバー脅威を巡る議論の例で言えば、英エコノミスト誌27は核脅威イニシアティブ(NTI)が2018年に発表した第4版となる「核セキュリティ・インデックス」28を参照したうえで、多くの調査対象国で核セキュリティの水準向上への取組が進んだ一方で、サイバーセキュリティについては課題が残ると指摘し、具体的に2016年に3件、2017年に1件、核関連施設に対するサイバー攻撃事例があったことを報じた。サイバー脅威は核セキュリティ以外の一般的な文脈においても、そもそも被害が露見した件数が実数とはかけ離れた「氷山の一角」の可能性があるとされ、またサイバー攻撃を受けた当事者が自らの脆弱性を晒すことを忌避し、その事実の開示に消極的であることも懸念されている29。前述した2018年のNTIによるアセスメントでも、各国の核セキュリティ上のサイバー脅威への対処は適度な進展を見せているとする一方で、拡大するサイバー脅威に対する防御は危険なほど不十分であると警鐘を鳴らしている30。サイバー脅威への対処は、核セキュリティ水準の向上のなかで今後も優先順位を高めて追求される必要があろう。
注目される米国の核セキュリティ政策
各国別の核セキュリティの取組については後述するが、特にグローバルな核セキュリティ水準の向上に大きな役割を果たした核セキュリティサミット・プロセスの立役者である米国オバマ(Barack Obama)前政権との対比として、同国トランプ(Donald Trump)政権の核セキュリティ政策と、その実施の動向に注目が集まっている。2018年2月に発表された米国の「核態勢見直し(NPR 2018)」31では、核セキュリティという言葉自体、マティス(Jim Mattis)米国防長官による序文でたった一度言及されるだけであった一方で、オバマ政権期に発表されたNPR 2010とは異なり、NPR 2018では「対核テロリズム(Countering Nuclear Terrorism)」という言葉が多用され、核テロの抑止や報復について説明されている。もっとも、多国間協力や技術支援を推進したオバマ前政権と同様に、NPR 2018でも「核テロとの戦いのために同盟国、パートナー国及び国際機関との協力を強化する」と強調しているほか、「国際的な輸出管理や各国法執行機関との協力強化のもとに、核及び放射性物質の検知と阻止に係る情報共有を強化する」ことや、「他のパートナー国と共同で、60カ国での核兵器及び核物質の陸海空での不法移転に対する放射能検知技術の展開を維持する」といった方針を明らかにしている32。こうした米国の今日の核セキュリティ政策は、その名を「対核テロリズム」と改めたことからも、各国の核セキュリティ水準の向上を念頭においた従来のアプローチとは若干ニュアンスが異なるものであるようにも見受けられる。かかるニュアンスの変化を、6年に及んだ核セキュリティサミット・プロセスを経て、法令整備や高濃縮ウラン(HEU)の最小限化などが進展し、核セキュリティが新たな段階に入りつつあることの証左と見ることもできようし、あるいは前述した抑止や報復といったキーワードに象徴されるように、テロリズムとの戦いの一貫として核セキュリティを位置付け直したと捉えることもできよう。いずれにしても、これまで検討してきたように、核セキュリティサミットの成果が再検討され、政治的なハイレベルの関心を継続的に惹起できるような新たな多国間での核セキュリティのためのフォーラムの在り方が論じられるタイミングに、米国からこうした情報発信が行われたことは、今後の核セキュリティを巡る動向を読み解くうえで重要な意味を持つと言える。
これまで述べた核セキュリティを巡る昨今の動向に鑑み、本章では各国の核セキュリティ体制の評価にあたって、以下に掲げる項目を個別に調査し、その評価の指標とした。まず、核セキュリティのリスクを評価する指標として、調査対象国における核物質及び、その製造に関連する施設・活動の有無を調査した。次に、各国の核セキュリティ体制の指標として、核セキュリティに関連する国際条約及び勧告措置の署名・批准並びに国内実施の状況、さらに調査対象国での核セキュリティに関する声明などを活用することとした。
(1) 核物質及び原子力施設の物理的防護
2015年版のIAEA核セキュリティシリーズ用語集によれば、核セキュリティとは「核物質、その他の放射性物質、関連する施設、関連する活動を含むか、または指し向けられる犯罪または意図的な不正行為の防止、検知、及び対応」と定義される33。そして、核セキュリティ上の脅威とは、核物質、その他の放射性物質またはそれらに関連する施設及び活動に対する犯罪行為及び意図的な不正行為、並びに核セキュリティに悪影響をもたらすと国が判断する他の活動を行う動機、意図、能力を持つ個人または集団34を指す。核物質及び原子力施設に対する物理的防護要件は、区分Ⅰ核物質(表3-1参照)の不法移転及び、潜在的に深刻な放射線影響を生じる可能性のある核物質及び原子力施設への妨害破壊行為に対しては設計基礎脅威(DBT)を、そしてその他の核物質及び原子力施設については、国が核セキュリティ上の脅威評価か、あるいはDBTを用いて決定することとされている35。セキュリティの要件に関しても、密封線源、非密封線源、使用されていない線源や廃棄物であるか否かを問わず、すべからく適用されるべきとされ、これは輸送においても当てはまることとなっている36。
IAEAによって2011年に発表された「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)は、物理的防護について悪意ある行為を行う側にとっての「魅力度」、さらには核物質などの不法移転や、関連施設に対する妨害破壊行為がもたらす結果を考慮したうえで、リスク管理の原則のもとで等級別手法に基づき、国が必要な物理的防護を行うように勧告している37。こうした物理的防護のシステムは、無許可立ち入りと標的機器への接近を防ぎ、内部脅威者に与える機会を最小化し、スタンドオフ攻撃(標的となる原子力施設または輸送から距離を置いて実行され、敵対者は標的に直接触れる必要がないか、あるいは物理的防護システムを乗り越える必要のない攻撃方法)に対しても標的を防護できるよう設計される必要がある38とされる。国による核物質防護体制の目的とは、核物質及びその他の放射性物質が関与する悪意のある行為から、人や財産、社会や環境を防護することにあり、その防護の対象は不法移転、行方不明の核物質の発見と回収、妨害破壊行為及びその影響の緩和または最小化39だとされる。
表3-1が示すとおり、IAEAでは不法移転に対する物理的防護措置を決定付ける要素として、核物質の種類、同位体組成、物理的及び化学的形態、希釈度、放射性レベル及び数量に基づき、悪意ある行為を行う側にとって「魅力度」の高い順から、等級別手法の基礎としての位置付け40のもとに区分Ⅰから区分Ⅲへと分類している。
核兵器を製造しようというテロリストの視点からすれば、ウラン235の同位体比が20%以上のHEUや、同位体比が80%以上のプルトニウム239(核分裂性物質でないプルトニウム238の同位体濃度が80%を超える、魅力度が低いプルトニウムを除く)といった兵器利用可能な核分裂性物質は、いずれも非常に魅力的な存在になりうる。さらに、ウラン濃縮、並びにプルトニウム生産との関連で濃縮施設や再処理施設の存在自体も、テロリストにとって一定の「魅力度」を有するものと推測できる。そのため、核物質や原子炉、再処理施設の存在が必然的に国の核セキュリティ上のリスクを高めることにつながる可能性があることから、国には一層高いレベルでの防護措置を講じることが求められる。こうした防護措置は、各国の地政学上あるいは国内の治安状況によっても異なるものの、一般的に兵器利用可能な核物質の保有量並びにその貯蔵施設の数は、核セキュリティに係る取組の重要な評価対象となる。国際核分裂性物質パネル(IPFM)の推計や、NTIによる「民生用HEUダイナミックマップ(Civilian HEU Dynamic Map)」をはじめとする各種の公刊資料によれば、本報告書における調査対象国が保有する兵器利用可能な核物質の保有量は、表3-2に示すとおりである。
核兵器に換算すれば、全世界であわせて20万発近くに相当するHEU及びプルトニウムが存在している41ことになり、このうち米露2カ国で全世界の保有量の9割以上を占める状況が続いている。しかし、米露の保有するもの以外にも、テロリストにとって一定の「魅力度」を持つ核分裂性物質の保有国は依然存在している。こうした核分裂性物質の保有や分布は、市民社会も含めた国際社会の関心事項である一方で、核セキュリティの観点からすれば、一般的にそれらの詳細は各国で機微情報として位置付けられており、必ずしも対外的な透明性が確保されている訳ではない。
公開情報としてのこうした制限は厳然と存在するものの、表3-2で具体的に記載されていない、しかし国内で一定の核分裂性物質の保有が推定されている国として、以下の国々が挙げられる(2018年11月時点)42。
- 1トン以上のHEUを保有することが推測される国:カザフスタン(10,470~10,777kg)、カナダ(1,038kg)
- 1kg以上1トン未満のHEUを保有することが推測される国:豪州(2kg)、イラン(6kg)、オランダ(550~650kg)、ノルウェー(1~9kg)、南アフリカ(700~750kg、詳細不明)、シリア(1kg未満)
なお、かつてはHEUを保有していた国々で、近年、地球的規模脅威削減イニシアティブ(GTRI)の成果として完全にHEUを除去した旨の発表をするケースが目立っている。GTRIによる直接の成果を含めて、アルゼンチン、オーストリア、ブラジル、ブルガリア、チリ、コロンビア、チェコ、デンマーク、ジョージア、ガーナ、ギリシャ、ハンガリー、インドネシア、イラク、ジャマイカ、ラトビア、リビア、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、韓国、ルーマニア、セルビア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、トルコ、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナムなどがこうした完全なHEUの除去を達成した国として挙げられる43。また、本報告書の調査対象国ではないものの、2018年時点で国内に一定量のHEUを保有している国として、ベラルーシ(80~280kg)、イタリア(100~119kg)が挙げられる44。
核爆発装置の製造目的での不法移転の防止だけでなく、妨害破壊行為の防止という観点からすれば、ウラン235の同位体比が90%以上の兵器級HEUやプルトニウムを保有せずとも、ウラン濃縮施設並びにプルトニウム生産に関連する原子炉や再処理施設を設置していること自体、それぞれ「魅力度」を高める要因になると考えられようし、これは使用済燃料貯蔵も同様である。そのため、調査対象国におけるこれら施設の保有もまた、当該国としての核セキュリティ上のリスクに相応に影響する可能性がある。
IAEAが公開する最新の研究炉データベース(RRDB)45によれば、全世界857の研究炉のうち、稼働状態(Operational)にある研究炉が227基(先進国で140基、発展途上国で87基)、一時的に稼働停止(Temporary Shutdown)している研究炉が12基(先進国で8基、発展途上国で4基)、建設中(Under Construction)の研究炉が9基(先進国で4基、発展途上国で5基)、将来建設が予定されている(Planned)研究炉が14基(先進国で2基、発展途上国で12基)、閉鎖延期(Extended Shutdown)になった研究炉が13基(先進国で5基、発展途上国で8基)、運用停止(閉鎖)状態(Permanent Shutdown)にある研究炉が56基(先進国で42基、発展途上国で14基)、廃止・解体(Decommissioned)になった研究炉が443基(先進国で413基、発展途上国で30基)、解体中(Under Decomissioning)の研究炉が67基(先進国で63基、発展途上国で4基)、建設がキャンセルされた研究炉が16基(先進国で12基、発展途上国で4基)となっている。前年度比では研究炉全体が70基増加した一方で、運用停止(閉鎖)状態の研究炉が先進国で55基減少している。また、廃止・解体になった研究炉は全体で81基増大した。
一方、濃縮度が20%を超える使用済のHEU核燃料集合体の数は全世界で20,663体と昨年度から変化していない。濃縮度が90%以上のものも9,532体であり、これも昨年度と同じ数である46。使用済HEU核燃料集合体に関しては、アフリカ・中東地域に572体、アジア地域に3,492体、東欧地域に10,627体、西欧地域に4,273体、南米地域に85体、北米地域に1,614体となっており47、数値上も変化していないが、依然として東欧地域が過半数を占めている。こうした状況を踏まえれば、改めて核セキュリティ上のリスクとして、研究炉(原子炉)の稼働状況などにかかわらず、不法移転に加えて、施設に対する妨害破壊行為の防止措置の強化がいかに重要かは明らかだと言えよう。
以下、核爆発装置の製造の観点から一定以上の「魅力度」を有するものとして、本報告書の調査対象国における発電用原子炉、研究炉、ウラン濃縮施設及び再処理施設の保有状況と、核燃料サイクル関連活動を表3-3に取りまとめた。
上記との関連で、IAEAは国の判断によって核物質などの量、種類、組成、移動とアクセスの容易度、核物質やその他の放射性物質の特性に基づき、それぞれリスクを定めて盗取に対する防護措置を講じるように勧告している48。また妨害破壊行為についても、原子力施設、放射性物質取扱施設、核物質やその他の放射性物質を念頭に、国がそれぞれ受容できない放射線影響やリスク評価を行って、リスクを伴う物質、機器、機能を含む区域を枢要区域に特定するとともに、リスクに応じた防護措置を取るよう勧告している49。
他方、RIセキュリティについてもIAEAを中心とした取組が進んでいる。具体的には2009年と2011年にIAEAから「核セキュリティシリーズNo.11放射線源のセキュリティ」50と「核セキュリティシリーズNo.14放射性物質及び関連施設に関する核セキュリティ勧告」51が刊行されたほか、2016年のワシントン核セキュリティサミットでは有志国28カ国と国際刑事警察機構(INTERPOL)から高レベル密封放射線源へのセキュリティ強化に関するバスケット提案が提出された52。RIセキュリティに対する2018年の多国間での取組の例としては、4月に「第2回核セキュリティのための放射線源検知装置に係る技術会合:傾向、挑戦と機会」がウィーンで開催された53。同会合では、放射線検知システムの開発及び強化と、核セキュリティのためのそれらシステムの使用を主たるテーマとして、71カ国及び70を超える機器製造者・ベンダーから135名の参加のもとで、空輸貨物における放射線検知オペレーションや、それらシステムのメンテナンス上の課題、そしてドローンと人工知能(AI)の役割について議論を行った54。このほか、やはりIAEAで「放射線源のセキュリティに関する作業部会年次会合」が4月に開催された55。12月、IAEA主催による「放射線源のセキュリティに関する国際会議:防止と検知に向けた道のり」がウィーンで開催された。同会議では、規制当局の管理下に置かれて利用・輸送及び保管され、また管理から外れた物質を検知するシステムと措置などの放射線源のセキュリティを巡る慣習と経験について、知見の交換が行われた56。なお、同会議には15の国際機関及び100カ国以上のIAEA加盟国から550名にのぼる参加者があり、6つのパネルと25の技術セッションを通じて、放射性物質が望ましからぬ者の手にわたることを防止する取組や、遺失もしくは盗取されるなどした物質の検知に関連する議論が交わされた57。
(2) 核セキュリティ・原子力安全に係る諸条約などへの加入、参加、国内体制への反映
A) 核セキュリティ関連の条約への加入状況
核セキュリティ及び原子力安全に関する諸条約としては、核セキュリティサミットのコミュニケでもたびたび言及58されてきた核物質の防護に関する条約(核物質防護条約)と改正核物質防護条約、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロ防止条約)に加えて、原子力の安全に関する条約(原子力安全条約)、原子力事故の早期通報に関する条約(原子力事故早期通報条約)、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(放射性廃棄物等安全条約)、及び原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(原子力事故援助条約)などがある。これらの条約について、調査対象国の関与を軸に検討を行ったところ、各条約の概要については以下のとおりである。
- 核物質防護条約(1987年発効):2018年8月時点で締約国数157カ国59。同条約は平和的目的のために使用される核物質の国際輸送に際し、適切な防護措置を取ること、並びに適切な防護措置が取られない場合には核物質の国際輸送を許可しないことを締約国に求めるとともに、権限のない核物質の受領、所持、使用、移転、変更、処分または散布により、人的・財産的被害を引き起こすことや、核物質の盗取などの行為を犯罪化することを要求している。
- 改正核物質防護条約(2016年発効): 2018年7月現在、締約国数118カ国60。同条約の内容に関しては、2005年の核物質防護条約の改正により、防護措置の対象が国内の核物質や原子力施設にも拡大され、また法律に基づいた権限なしに行われる核物質の移動と、原子力施設に対する不法な行為が犯罪とされるべき行為に含められた。その結果、核物質防護条約に比べ、その適用範囲は大幅に広がった。改正核物質防護条約は核セキュリティに関して法的拘束力を有する唯一の存在となっており、そのために条約の発効後も引き続き未批准国への働きかけが求められている。
- 核テロ防止条約(2007年発効):2018年12月現在、締約国数114カ国61。同条約は悪意をもって放射性物質62または核爆発装置などを所持・使用する行為や、放射性物質の発散につながる方法による原子力施設の使用、または損壊行為を犯罪とすることなどを締約国に義務付けている。改正核物質防護条約とともに、今日の核セキュリティに関する法的枠組みを支える柱となっている。
- 原子力安全条約(1996年発効):2018年10月現在、締約国数85カ国63。同条約は原子力発電所の安全性の確保や安全性向上を目指す観点から、自国の原子力発電所の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、同条約に基づき設置される検討会への報告を実施し、また他の締約国の評価を受けることなどを締約国に義務付けている。
- 原子力事故早期通報条約(1986年発効):2018年9月現在、締約国数122カ国64。同条約は原子力事故が発生した際、IAEAに事故の発生事実や種類、発生の時刻や場所を速やかに通報し、情報提供することを締約国に義務付けるものである。
- 放射性廃棄物等安全条約(2001年発効):2018年8月現在、締約国数80カ国65。同条約は使用済燃料及び放射性廃棄物の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、同条約に基づいて設置される検討会への報告を実施し、また他の締約国の評価を受けることなどを義務付けている。
- 原子力事故援助条約(1987年発効):2018年9月現在、締約国数117カ国66。同条約は、原子力事故や放射線緊急事態に際して、事故や緊急事態の拡大を防止し、またその影響を最小限にとどめるべく、専門家の派遣や資機材提供などの援助を容易にするための国際的枠組みを定めている。
原子力安全条約以降の条約では、安全上の防護措置を課すことが定められている。こうした防護措置は核セキュリティ上の防護措置にも援用できることから、本報告書において核セキュリティに関連する国際条約とみなすこととする。以下、これらの国際条約について調査対象国の署名・批准状況を表3-4に示す。
B)「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」改訂5版(INFCIRC/225/Rev.5)
2018年時点で最新となる「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」は、2011年にIAEAが発表したINFCIRC/225/Rev.5である。これは、1999年に発表されたINFCIRC/225/Rev.467と比べて、核セキュリティ体制強化の観点から、勧告措置として多くの改善点が織り込まれた。主なポイントとしては、立入制限区域の設定、核物質に対する等級別手法と深層防護の強化、遠距離からのスタンドオフ攻撃や空からの脅威に対する防護措置、内部脅威者の脅威に対する防護措置及び、その対策の1つとしての核セキュリティ文化の醸成、中央警報ステーションの非常時における基本機能継続のための冗長性確保などが挙げられる。また、改正核物質防護条約への対応を明確化させ、不法移転や核物質の盗取、不法取得に対する防護、また妨害破壊行為に対する防護などを具体的に示した。さらに悪意ある行為の阻止のために、危機管理計画策定や対抗部隊による演習の評価などに言及したほか、個人の信頼性確認について国が方針を示すよう勧告した。そのほか、核セキュリティに係る危機管理計画と、原子力安全に係る緊急時の計画とを区分するなどの変更が行われている。
こうしたINFCIRC/225/Rev.5は核セキュリティサミットの開始と時期を前後して公開されたこともあり、同サミットの開催にあわせて、各国がINFCIRC/225/Rev.5の勧告措置に準拠した物理的防護措置の導入を対外的に宣言する傾向が生じた。そして、結果的にこうした傾向が2016年の最後の核セキュリティサミット(ワシントン)まで続いた68。
以上のような理由から、調査対象国における今日の核セキュリティ体制を評価するうえで、同指針の勧告措置の取り入れも重要な指標になり得る。本調査では主として2018年の第62回IAEA総会やNPT準備委員会などでの各国声明を参照して評価を行った。
INFCIRC/225/Rev.5の勧告措置適用に関する各国の状況
核セキュリティサミットの終了後、INFCIRC/225/Rev.5の勧告措置の導入や適用に関する情報発信の機会は相対的に減少している。前述したとおり、2018年は核セキュリティを正面に据えた主要な国際的なフォーラムが開催されない「狭間の年」であったことも勘案する必要があるが、同措置の導入に関する情報発信量の減少理由が、2011年の策定から8年あまりが経過したINFCIRC/225/Rev.5に関して新たにアピールすべき事項が少ないためなのか、それとも核セキュリティサミットなど情報発信のプラットフォームが縮小した結果、その適用状況に言及する機会自体が減っているからなのかは定かではない。そのなかで、調査対象国で直接的・間接的に同勧告措置への対応について言及のあった事項は以下のとおりである。
法令整備の分野について、インドネシアはIAEAの立法支援を受け、原子力安全、核セキュリティと保障措置、そして核テロ対策に関連する当局の捜査や訴追のための原子力エネルギーに係る第10法令(1997年)の改訂作業を行った69。ナイジェリアは同国の2018年から2023年までの国家計画枠組み(CPF)に核セキュリティを盛り込み、これが承認される見通しであると発表した70。サウジアラビアは既存の国際条約や議定書、最良慣行に則り、最高水準の原子力安全、核セキュリティ及び透明性に準拠する国家原子力エネルギー計画(National Atomic Energy Program)の実施を表明した71。スウェーデンは事業者が原子力安全、核セキュリティ、放射線防護に関連する規制をより理解できるよう、放射線防護法(Radiation Protection Act)や核関連活動法(Act on Nuclear Activities)をはじめとする原子力計画の法的枠組みについて、ヨーロッパ法規(Europan Legislation)の修正を考慮しつつアップデートを行っていると発表した72。
妨害破壊行為に対する物理的防護措置としては、ベルギーは国内の原子力関連施設のセキュリティ強化策として、軍による警備から、特殊な訓練を受けた武装警官隊による警備への置換を進めた73。ブラジルは国内での原子力安全・核セキュリティ関連演習を定期的に実施しつつ、IAEAによる緊急事態対応のための活動にも参加した74。オランダは、放射性物質への妨害破壊行為や核物質の盗取などの脅威に効果的に対処することを掲げた「核物質及び核関連施設における物理的防護のための地域ワークショップ」を10月にIAEAと共催した75。メキシコも「核施設及び核物質を妨害破壊行為などの悪意ある行為から守るための地域トレーニングコース」を8月にIAEAと共催し、ラテンアメリカ地域11カ国から専門家らの参加を得て、双方向的なセッション及び模擬施設を活用した研修を実施した76。
サイバーテロへの対応として、ドイツはサイバー及びコンピュータセキュリティに関して、IAEAの勧告文書で項目を設け、かつ能力構築支援にも踏み込むことを提案した77。
(3) 核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組
A) 民生利用におけるHEU及びプルトニウム在庫量の最小限化
2018年6月、ノルウェーはHEU最小限化に係る第3回国際シンポジウムをIAEAと共催し、さらなるHEU利用の最小限化のためには持続的な技術・財政・政治的な関与が必要であるとして、すべての加盟国に「民生利用における高濃縮ウランの最小化と削減に係る合同声明」(INFCIRC/912)への賛同と最小化・削減計画の公表を訴えた78。このようにHEUの最小限化は、今日の核セキュリティ強化の文脈において国際的にも大きな注目を集めるトピックとなっている。
まず、HEUは核爆発装置の製造にも用いることができるため、その存在自体が兵器用と民生用という「コインの表裏」であると言われている。そして、テロリストにとっての「魅力度」という観点からも、こうした核分裂性物質が国に対して、実際に相応の核セキュリティ上のリスクをもたらす可能性は否定しえない。歴史的な経緯から言えば、2001年の米国同時多発テロの勃発が、それまでの国家対国家の文脈での核拡散の懸念から打って変わって、こうしたテロリストを含む非国家主体への核分裂性物質の拡散の懸念を高める契機となった79。そして米国エネルギー省と国家核安全保障庁(NNSA)は、2004年に世界各国の民生用サイトで使用されている米露両国を起源としたHEUについて、それぞれ米露へと返還することを要請し、あわせてHEU炉の低濃縮ウラン(LEU)炉への転換を求めるGTRIを打ち出した。GTRIは、テロリストにとって魅力ある核分裂性物質に関して、それらが盗取されることへのリスクを国際社会に注意喚起し、具体的な行動をとるよう促すものであったと言えよう。
しかし、HEUに加えて、プルトニウム在庫量の最小限化が国際社会の取り組むべき核セキュリティ上の重要課題だと認知されるに至った大きな要因としては、やはり2009年の米国オバマ前大統領によるプラハ演説80のインパクトと、その後の取組が大きかった。民生利用でのHEU最小限化は早い段階から核セキュリティサミットの共同コミュニケに含まれていたが、プルトニウムについては合意に時間を要した経緯があった。HEUはほとんどが軍事利用であって民生用は少なく、その在庫量も確実に削減されている。その一方で、プルトニウムは民生用のものが過半数を占め、しかも在庫量は増加している。実際に、2010年以降の一連の核セキュリティサミット・プロセスでは、HEUの最小限化が最重要取組の1つに掲げられ、2014年のハーグ核セキュリティサミットでは、新たにプルトニウムについても各国の必要性に沿うかたちで、その在庫量を最小限にとどめることがコミュニケで謳われることになった81。2016年3月のワシントン核セキュリティサミットで米国が発表したファクトシート82は、30カ国、50施設でHEU及びプルトニウムが撤去され、あるいは低濃縮化が達成されたと表明した。そして、2017年にインドネシアが国内HEU撤去を完了した83結果、南米と中央ヨーロッパ諸国に続いて、東南アジアがリスクのある核物質が存在しない地域となった。そして、2018年に米国エネルギー省が発表した主だったGTRIとしての取組のリストでは、ナイジェリアにおけるHEU研究炉の転換や、オランダの放射性同位体製造施設の転換、HEUを使用しない初のモリブデン99(Mo99)製造施設の向こう30年程での建設、複数の国々からの325kgのHEUの撤去、蓄積された160トンに登る余剰HEUのダウンブレンディングなどが列挙されている84。
また、これらの取組との関連で、IAEAは2018年に南アメリカ諸国(ボリビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ)において、使用されなくなった27の高レベル放射線源の撤去支援を実施した。これはIAEAとして当該分野では過去最大規模の取組であり、医療目的で用いられていたこれら放射線源はリサイクルのためにドイツや米国に輸送されたほか、それらの一部を製造したカナダが要請に応じて、かかるIAEAの取組に対して出資を行った85。
なお、民生利用の範疇を超える論点ではあるものの、近年、軍事目的で利用される核物質にも高い水準の防護が施されていることを明らかにすべきとの議論があることに言及しておく必要があるだろう86。2018年においても、第62回IAEA総会でスイスが民生利用と非民生利用のすべての核物質に対する包括的な核セキュリティを奨励する旨の声明を発出した87。
こうした経緯を踏まえ、以下、第62回IAEA総会でのステートメントを中心に、民生利用におけるHEU及びプルトニウム在庫量の最小限化に資する取組に公に言及されたケースを列挙する。
- 中国:2017年にガーナに対する低濃縮化支援を完了した。中国ではかかる成功をふまえ、これをガーナモデルと呼んでいる88。
- ナイジェリア:HEU利用の最小限化について、IAEA、米国、中国、英国及びノルウェーといったパートナーとともに、同国実験炉の燃料をHEUからLEU利用へと転換中であると発表した89。
- オランダ:2018年に医療用アイソトープの製造に使用するHEUをすべてLEUへと転換完了した90。
- 日本:2018年に原子力委員会が「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を15年ぶりに改訂91し、「利用目的のないプルトニウムを持たない」という原則を堅持するとともに、プルトニウム保有量の削減政策を打ち出した。また、研究・開発に利用するプルトニウムについても「情勢の変化によって機動的に対応することとしつつ、当面の使用方針が明確でない場合には、その利用又は処分等の在り方についてすべてのオプションを検討する」と言及した92。他方、日本はプルトニウム利用及び管理の透明性を高め、IAEAによる厳格な保障措置を徹底しながら、プルサーマル発電を着実に実施すると表明した93。
B) 不法移転の防止
核検知、核鑑識、法執行及び税関職員の執行力強化のための新技術の開発、IAEA移転事案データベース(ITDB)への参加は、核物質の不法移転防止のための取組として重要である。特にITDBは、核物質及びその他の放射性物質の不法な所有、売買・取引、放射性物質の不法散布、行方不明の放射性物質の発見などに関係した事例を情報共有するためのデータベースとして、IAEAの核セキュリティ計画を支える要素94であるのみならず、核セキュリティ上の脅威の存在を現実のものとして広く受け止めるのにも役立つ統計的資料として、近年その存在感を一層高めている。
ITDB参加国数は136カ国(2017年12月末時点)であり95、本報告書執筆時点で最新となる2017年のIAEA年次報告書によれば、2017年には166件の事案がITDBに報告96されており、2016年の件数が189件97であったことと比べれば、報告件数上は23件の減少となっている。また、IAEAの2018年の核セキュリティ報告98によれば、1993年のITDB開始以来、2018年6月までに3,374件の事案が報告されており、2017年7月から2018年6月までの1年間に区切れば、127件の事案がITDBに報告されている。なお、2017年7月以前で、過去の報告でカバーされていなかったものを加えると、2017年から2018年までの同期間中に合計235件の事案が報告されたこととなる。当該区切りで新たに報告された235件の内訳として、まず移転に係る事案が3件、詐欺事案が4件であった。これらのいずれもHEUやプルトニウム、あるいはIAEAの原子力安全基準でカテゴリ1に分類された放射線源ではなく、また事案を報告した国で管轄権を有する当局によって、すべての放射性物質及び放射線源が押収されている。他方で、移転や悪意ある使用の意図が不明な事案は33件あり、その内訳としては放射線源の盗難が17件、許可を受けていない所持が4件、紛失が12件であった。これらのうち、上記基準におけるカテゴリ3の放射線源に係る1件を含む25件において、放射線源は元に戻っていない。このほかに規制を外れたものの移転や悪意ある使用、あるいは詐欺には該当しない核物質に係る事案として、125件が報告されている。これらの大半は、許可を受けていない廃棄や積み出し、そして過去に遺失した放射線源の予期せぬ発見などであったとされる。
IAEAの2018年版ITDBファクトシートによれば、1993年から2017年12月31日までの間にITDBに報告された事案の総件数は3,235件にのぼり、その内訳としては、グループⅠ(移転及び悪意ある使用に関する確認済みの事案、あるいはほぼ確実と思われる事案)が278件、グループⅡ(移転や悪意ある使用に関係するか否かを確定するための情報が不足している事案)が913件、そしてグループⅢ(移転や悪意ある使用に関連していない事案)が2,044件あった99。以上のとおり膨大な数の事案が登録されたITDBであるが、締約国の機微情報の保護という観点でITDBに報告される事案や不法な取引の詳細は公開されていない100。そのため、報告された事案や個別の対応などについて、各国の取組を直接評価することは実質的に不可能となっている。
こうした背景の下で、2017年から2018年にかけて公表された不法移転の防止措置、輸出管理を巡る法令整備、国境での放射性物質の検知装置設置、核鑑識に関する能力の強化(詳細は後述する)などに関する各種の取組は以下のとおりである。
- オーストリア:IAEAによる会合として、4月にウィーンで「第2回核セキュリティのための放射線検知装置に関する技術会合:トレンド、挑戦と機会と題する会合」を開催した101。また、6月にサイバーズドルフのIAEA実験施設において「国境監視に用いられる技術の試験評価ワークショップ」を開催し、欧州連合(EU)、米国とIAEAが協力する核及び放射性物質の不法移転検知のための国境監視作業部会の取組への支援の検討及び、車両やコンテナなどの越境時に放射線を検知・識別するハンドヘルド機材の試験評価を行った102。
- ナイジェリア:IAEAの支援の下で、経済的・技術的資源並びに核セキュリティ上のニーズや諸能力に対する包括的な評価に基づき、国家核セキュリティ検知機構ロードマップを開発した103。
- カザフスタン:安保理決議第1540号の完全な履行のもとに、核及び他の放射性物質の不法移転と戦うシステムを強化した104。
- 米国:港湾、国境及び国内各所に設置されたおよそ57,000台にのぼる放射能検知装置を維持・増強することで、核兵器及び核物質の不法移転の阻止を強化すると発表した105。
- インドネシア:インドネシア原子力エネルギー規制庁(BAPETEN)はIAEAに要請し、2018年8月から9月にかけて開催されたジャカルタ及びパレンバンにおける第18回アジア大会での核セキュリティ分野での支援のため、アジア大会全体のセキュリティ計画を巡ってトレーニングとアドバイスを得たほか、放射能検知装置の提供を受けた106。
他方、国際機関の取組にも目を向ければ、核テロ防止に関するデータ収集、捜査支援、各国法執行機関間の信頼醸成と協調のためのフォーラムを提供するINTERPOLでは、2018年1月にRADNUC(ラドナック)捜査調整ワークショップをジョージア・トビリシにて実施した。同ワークショップはアルメニア、アゼルバイジャン、ブルガリア、ジョージア、モルドバ、ルーマニア及びウクライナの法執行機関、税関、国境管理、諜報及び民間防衛関係者ら40名の参加のもとに、放射性物質及び核物質の不法移転に対する各国の捜査調整能力面でのギャップの同定・分析・提示を行った107。
以下の表3-6では、平和的目的のHEUを最小限化する取組、ITDBへの参加、及び核物質・その他の放射性物質の不法移転の防止のための措置の実施について、各種の公式声明において取組の意思表示があったケースを示した。
C) 国際評価ミッションの受け入れ
核物質防護の対象施設、及び輸送の物理的防護システムの評価に焦点を置く国際評価ミッションのIPPASとは、加盟国の要請に基づき、IAEA主導で各国の核物質防護専門家から構成されるチームが当該国の政府及び原子力施設を訪問し、施設の核物質防護措置の内容の確認、並びに政府関係者及び原子力事業者へのヒアリングなどを通して、IAEA核物質防護勧告(INFCIRC/225)に準拠した防護措置を実施するうえでの必要な助言などを行うものである。核セキュリティサミット・プロセスを通じて散見されたように、IPPASミッションの受け入れは、各国にとって核セキュリティ強化の取組に積極的であることを対外的にアピールできるとともに、国内の核セキュリティ体制強化という側面でも、国際規範に基づく第三者機関による外部評価という、ある種の公的認証を受けるのに等しい利点が指摘できる108。もちろん、IPPASミッションで得られた外部評価結果が、先々の国内における核セキュリティ強化の方向性を再検討する際に有用であることは言を俟たない。なお、2018年にIAEAが発表したところでは、国際評価ミッションに関わるイベント数は4件であった109。これは、前年度に同カテゴリのイベント数が14件であったことに鑑みると、大幅な減少となった。
IPPASミッションの実績に関して、2018年5月にスイスで2回目となるIPPASミッションが実施された110。また、3月にフランスで、そして11月に日本でIPPASフォローアップミッションが行われている111。調査対象国以外では3月にエクアドルでのIPPASミッションの完了が発表されている112。IAEAによれば、2019年は2月にレバノン、6月にベルギー、8月にマダガスカル、11月にウルグアイにそれぞれIPPASミッションを実施予定であるとされる113。
IAEAでは核セキュリティ体制整備・強化を支援するべく、IPPAS以外にも要請ベースで実施される国際核セキュリティ諮問サービス(INSServ)や統合核セキュリティ支援計画(INSSP)などを実施している。INSServとは、要請国に求められる核セキュリティ体制の要件全般を検討し、改善が必要な点をIAEAが助言するサービスである114。INSSPは、長期間にわたって持続可能な、核セキュリティに関連する作業のためのプラットフォームを提供しており、IAEA、関係国及び資金を提供するドナーがリソースを最適化し、重複を避け、技術的・財務上の観点からも核セキュリティ関連活動を可能にせしめるものである115。
これらの諮問サービスに関して、フィリピンは4月にINSSPのレビューを受けており、7月には同国核セキュリティ支援センターにてかかるアドバイスを反映させたことを報告した116。また、南アフリカはIAEAの支援のもとにINSSP計画のアップデートが進んでいることを発表した117。
D) 技術開発―核鑑識
核鑑識は2016年の閣僚宣言でその重要性が指摘されるなど118、核物質及び放射性物質が用いられた犯罪等に対して、当該物質の押収現場から分析ラボまでの切れ目ない管理を行うための技術と体制の整備に関し、IAEA等がガイダンスや研修を通じて各国を支援する重要な核セキュリティ技術となっている119。この背景には、2010年以降の核セキュリティサミット・プロセスにおいて、核鑑識能力の構築と多国間協力が推奨され120、2016年のワシントン核セキュリティサミットでも核鑑識に関するバスケット提案121に30カ国が名を連ねるなど、核セキュリティにおける技術開発上の取組として、核鑑識の重要性に対する認知度が高まってきたことが指摘できる。IAEAの「核セキュリティシリーズNo.2核鑑識支援(技術指針)改訂版」122では、核鑑識の位置付けを巡って不法移転され、捜査当局によって押収、採取された核物質及び放射性物質について、核物質、放射性物質及び関連する物質の組成、物理・化学的形態などを分析し、その物品の出所、履歴、輸送経路、目的を分析・解析する技術的手段であるとし、核テロに対する脅威認識が広まるなか、 こうした核鑑識が核セキュリティ強化の取組を補完するための重要な技術の1つとなっていると指摘する。実際の核鑑識を巡る取組においては、不法移転された核物質や放射性物質、あるいはその他の付随物の押収から始まり、それらの分析により核の属性・物質の特徴を明らかにして、製造元を割り出し、不法移転に至る経緯についても解析が行われることとなる123。
こうした核鑑識の多国間協力の取組として重要な位置付けにあるのが「核鑑識に関する国際技術ワーキンググループ(旧名称:核物質の不法移転に関わる国際技術ワーキンググループ、ITWG)」である。ITWGは冷戦集結後、核物質の不法移転に対処するべく、G8核不拡散専門家グループ(NPEG)の後援を受けて1996年に設立され、今日に至るまで20年以上にわたって活動を続けている。具体的には、各種の演習や訓練、各国の核鑑識能力を国際社会のなかで活用し、最良慣行を同定するための物質比較演習(CMX)や、規制から外れた核物質、あるいは放射性物質の起源の同定に役立つ各国の核鑑識ライブラリの実効性を明らかにするための演習などを実施してきた124。また、核物質、放射性物質や放射能汚染された物質の核鑑識分析のためのガイドラインの策定を通じて、核鑑識の最良慣行の共有を進めるとともに、「放射性物質及び核物質によって汚染された犯罪現場での証拠収集ガイドライン」(2011年)125や、「国内核鑑識ライブラリと国際的な登録に係る枠組みの提案」(2011年)126などを取りまとめてきた。実際に、2018年もITWG関連会合が多数開催された127。6月にITWG年次会合(ITWG-23)がスイスで、またフィンランドで「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」(GICNT)の履行及び評価グループ(IAG)会合が開催されたほか、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)と韓国原子力統制技術院(KINAC)の共催で、スウェーデンにて「第2回KINAC-SIPRI核不拡散・核セキュリティセミナー:各国の核鑑識ライブラリの履行」が実施された。9月には「豪州とニュージーランドでの境界なき鑑識科学会議」と、「IAEAによるスペイン語圏での核鑑識に関する導入レベル地域トレーニングコース」、さらに「第6回ITWG協同物質比較演習」がそれぞれ行われた。10月及び11月にはハンガリーで「IAEAの核鑑識に関する実務レベル初級国際トレーニングコース」が開催されたほか、同様に「IAEA核鑑識に関するフランス語圏での地域トレーニングコース」がセネガルで開催された。
核鑑識に係るもう1つの重要な多国間協力の枠組みが、GICNTのなかに設置された核鑑識作業部会(NFWG、議長国はカナダ128)である。多国間協力を通じた核鑑識能力の強化という観点で、NFWGにおいても多数のワークショップや机上演習が実施されている129。2018年2月には英国で核鑑識演習「Destiny Elephant(デスティニーエレファント)」が開催された130。この演習は2014年にGICNTで最良慣行を取りまとめ作成した文書「政策決定者のための鑑識の基礎(Forensics Fundamentals for Policymakers)」に則って行われた演習「Mystic Deer(ミスティックディアー)」の教訓を踏まえたものである。
核鑑識関連の新たな動向として、IAEAは2018年5月に様々な核鑑識能力を持つ国々が共同で、各国国内法のもとでの核鑑識の実施や捜査における協力促進などを目的とする核鑑識に係る協力プロジェクトの発足を発表しており131、今後の展開が注目される。なお、IAEAは加盟国の核鑑識科学能力の向上を図るべく、2018年10月にハンガリー国立核鑑識研究所と共同で「核鑑識に係る科学的能力強化のための実践的トレーニングコース」をハンガリー・ブダペストで開催した132。
各国の核鑑識関連の公開情報は限定的なものにとどまるため、近年のITWGでの活動報告に関する文献からとりまとめたITWG主催の物質比較演習CMX参加国・機関リストを表3-7に参考資料として掲載する133。この一覧表はあくまでも参加情報に過ぎないものの、各国の持つ核鑑識能力の参考になると考えられる。
E) キャパシティ・ビルディング及び支援活動
核セキュリティサミット・プロセスの開始に前後して、核セキュリティに係る国内でのトレーニングコースの設置といった教育・研修機能の強化、あるいは地域諸国の専門家を対象とした中心的拠点(COE)の発足など、多くの国や地域において核セキュリティに関するキャパシティ・ビルディング(人材育成)などの国際支援活動の取組が継続的に実施されてきた。2018年における一例を挙げれば、カナダはラテンアメリカ、アフリカ及び太平洋諸国における廃棄された密封放射線源の持続可能な管理を通じた核セキュリティ強化のために、核セキュリティ基金(NSF)への965万ドルの拠出を行った134。スウェーデンはベラルーシ、ジョージア、モルドバ、ロシア及びウクライナとの間で、長年にわたり原子力安全と核セキュリティ分野での技術協力を行っていることを報告した135。また、ノルウェーは2009年以来、IAEAの協力のもとにルーマニアの原子力安全・核セキュリティの規制インフラ強化に係るパートナーシップを実施してきたが、2018年9月に同パートナーシップを4年間延長し、核及び放射性物質を巡る事故や、悪意ある行為を防止するための能力構築に加えて、原子力及び放射性物質に係る事案や、緊急事態対応への準備態勢強化も進めることに合意した136。
他方、核セキュリティを基軸とする関係各国でのCOEの動向について、第62回IAEA総会における声明で言及があったものは以下のとおりである。
- 中国は、2016年に発足したCOEで100近くの研修コースを運営し、能力構築支援を実施した。これらの研修コースには2,000名近くの専門家が国内外から参加した137。
- インドは2010年に設置した原子力エネルギー協力グローバルセンター(GCNEP)での様々な取組として、原子力安全や核セキュリティ、保障措置、原子力施設での物理的防護、放射性物質散布装置を巡る緊急対処などの国際プログラムを実施したと発表した138。
- パキスタンはパキスタン核セキュリティCOE、国立原子力安全核セキュリティ研究所、そしてパキスタン工学応用科学研究所をIAEAの協力のもとで運営しており、これらの機関では国内・海外の専門家のために、原子力安全や核セキュリティ、計量管理、サイバーセキュリティ、信頼性確認プログラムなどの領域で研修を実施した139。
- インドネシアは核セキュリティと緊急対応のための中核的研究開発拠点、核セキュリティ文化評価センター、核セキュリティの大学院プログラム、アジア太平洋の核セキュリティのための地域教育施設を通じて核セキュリティ関連インフラの開発強化を続けると発表した140。
- 日本はIAEAと日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(JAEA-ISCN)との密接な協力のもとで、人材育成計画を通じた世界的規模での核セキュリティの進展に資する取組を進めてきた141。なお、JAEA-ISCNはその発足から2018年3月までに144のトレーニングコースとワークショップを開催し、75カ国と3つの国際機関の約3,800名に研修を実施してきた。また、中国、韓国及びアジア地域諸国の各COEとの連携を進め、情報の共有、トレーニング施設の相互訪問や地域トレーニングコースを共催してきた。
この他のキャパシティ・ビルディング関連の取組として、2018年4月、イタリア・トリエステで「統合ICTP・IAEA国際核セキュリティスクール」が開催された(ICTP: 国際理論物理学センター)142。5月、IAEAとスペイン原子力安全委員会との共催により「スペイン語圏における核セキュリティ技術に関するIAEA国際スクール」がスペイン・バルデモロに設けられ、初級レベルの専門家を対象に、核及びその他の放射性物質への輸送のセキュリティや脅威・リスク評価を含めた核セキュリティ関連の講義や実務研修を実施した143。また、6月には「中央アメリカ及びカリブ諸国における地域ワークショップ」がバルバドスとIAEAとの協力のもとで開催され、12カ国及び地域機構から20名の核セキュリティ専門家が参加し、各国の核セキュリティレジームの基本的要素の見直しと、IAEAによる核セキュリティ及び放射性物質のセキュリティ強化のための技術支援について研修が行われた144。
上記のような関係各国でのCOEの設置・運営及び国内外の専門家へのトレーニングの実施は、グローバルな核セキュリティに係るキャパシティ・ビルディングに大きく寄与すると考えられる。さらに、COEの設置された地域内の専門家や事業者、関係機関に対して核セキュリティの水準向上や核セキュリティ文化の浸透を喚起し、また最良慣行の共有や講師の相互派遣といった協力関係の構築など、数多くのメリットがある。それと同時に、核セキュリティサミットと前後して、各地域内で複数設置されるに至ったCOEの活動面での重複を避け、効率的な連携や情報共有の緊密化、そしてIAEAなどを軸としたより広範なネットワークの維持・拡大、国際支援を通じた教育・訓練の強化や意識啓発を図っていくことが、現在、そして今後の課題となっている。この関連で、2012年にIAEA主導で発足した「核セキュリティ支援センターネットワーク(NSSC Network)」は、各国COEの間での連携やネットワーク構築の基軸として重要な役割を担っている。2018年3月に52カ国及び2つのオブザーバー機関から77名の参加を得て茨城県東海村で開催されたNSSC Network年次会合においても、技術交流プログラムをはじめ、情報や最良慣行の共有、協力の促進などを含めてNSSC Networkとしての活動の拡大を一層奨励することで一致した145。このNSSC Networkと同様の取組としては、核セキュリティ教育に係る技術開発や情報共有を進め、卓越性をさらに強化するためのIAEA主催による国際核セキュリティ教育ネットワーク(INSEN)の存在がある。IAEAの核セキュリティ報告書によれば、2018年時点でINSENには締約国62カ国から170の教育機関が参加している146。
F) IAEA核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金
2018年12月現在、IAEAにおける4カ年ごとの「核セキュリティ計画」(Nuclear Security Plan)の最新版は「2018~2021年における第5次活動計画」147である。この「核セキュリティ計画」を実施するために、IAEAでは2002年に核テロリズムの防止、検知及び対処に係るNSFを設立し、以来、IAEA加盟国には自発的な資金の拠出が要請されている。本報告書執筆時点で最新となる2017年のIAEA年次報告書(2017年1月から12月までをカバーする)によれば、個別の国名は明らかにされていないものの、16カ国と欧州委員会がNSFへの財政的な関与を約束したとされ、同年度におけるNSFの歳入は4,410万ユーロであった148。これは前年度比で330万ユーロの減額となっている。
2018年の第62回IAEA総会での各国声明から明らかになった調査対象国のNSFへの具体的な関与表明の状況としては、英国が410万ポンドの拠出を表明149し、またドイツが2011年以来、500万ユーロ以上をNSFに拠出してきたと発表150した。
G) 国際的な取組への参加
核セキュリティの水準向上のための国際的な取組は、今日重層的な構造を形成している。こうした核セキュリティに係る国際社会の主だった取組としては、国連憲章第7章に基づき、加盟国に大量破壊兵器等の拡散を禁ずるための法的措置を講じ、厳格な輸出管理制度の策定などを求める不拡散に関する安保理決議第1540号(2004年)151をはじめとして、前述したINTERPOLによる核セキュリティ関連での各国法執行機関への支援や、IAEA主催による核セキュリティに関する国際会議のほか、各種の関連する会合やワークショップなどに象徴される国際機関におけるアプローチ、そして2016年に終了した核セキュリティサミット・プロセスといった多国間フォーラムが挙げられる。これらの取組に加えて、注目されるべき核セキュリティに係る多国間協力の枠組みにG8グローバル・パートナーシップ(G8GP)と、GICNTという2つのアプローチがある。
2002年6月のカナナスキスサミットでの合意を起点とするG8GPは、当初、ロシア及びその他の地域における各種の不拡散プロジェクトに向こう10年間にわたって、米国が100億ドル、その他のG7諸国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)が併せて100億ドルを拠出する(10 plus 10 over 10)152こととされた。その後、G8メンバー国(G7+ロシア)に加えて、EUとドナー参加国である豪州、韓国、スウェーデン、スイスなどの協力を得て、化学兵器の破壊、退役した原子力潜水艦の安全な解体及び輸送、核及び放射性物質の検知能力の向上、過去に大量破壊兵器(WMD)に携わった科学者や技術者の民生分野への就業支援、カザフスタンからの核物質の安全な除去と移転など、主としてロシアにおける非核化支援事業を中心に、各種の不拡散プロジェクトが推進されてきた。また、核セキュリティとの関連では原子力安全及び核セキュリティグループ(NSSG)を立ち上げ、核セキュリティサミットやIAEAによる核セキュリティ関連の国際会議などと連携してきた経緯がある。しかし、2014年3月のロシアによるクリミア併合を受けて、G7首脳の合意による懲罰的措置としてロシアを排除することが決定153され、その結果、G7GPとの呼称に変更154されるに至っている。G8GP(G7GP)の最近の動向として、その核及び放射性物質のセキュリティ作業部会(NRSWG)が2018年10月にウクライナでの協力枠組みで合意した核及び放射性物質のセキュリティ計画のもとでの情報共有イニシアティブへの支持を表明した。また、グローバルな核セキュリティ及び放射線源に対するセキュリティを強化するべく、NRSWGは核及び放射性物質を保管する施設の物理的防護、放射線源のセキュリティ(すべての過程を管理)、不法移転の防止と規制外物質の検知及び対応、核セキュリティ研修及び訓練支援センターを含む核セキュリティ文化、核セキュリティに関わる国際法的枠組み、核鑑識、情報及びコンピュータセキュリティ、輸送の安全、核物質の処分と転換を主な重点領域として定めた155。
G8GP(G7GP)の2018年の外相会合コミュニケにおける不拡散及び軍縮ステートメント156では、核セキュリティについて、「(パラグラフ27)我々は核物質の利用あるいは民生利用での原子力計画に着手する国で最高水準での原子力安全、核セキュリティ、そして核不拡散のもとで進められるよう促進し、こうした国々において原子力安全と核セキュリティ、保障措置、サイバー脅威のインターフェースを考慮した原子力ガバナンス文化が発展するよう奨励する」としている。さらに、「(パラグラフ28)我々は核テロ及び放射性物質によるテロを行うための物質をテロリストや悪意あるものが入手できないように警戒を緩めず、その文脈で共有されたワールドワイドでの核セキュリティの強化というコミットメントを継続的に履行することへの核セキュリティコンタクトグループの取組を支援するとともに、GICNTによる活動を促進する。また、88ものパートナー国と5つの公式のオブザーバー機関の広範にわたる技術専門家と政策決定者らが参集し、GICNTは核テロというグローバルに共有された脅威に取り組む重要なフォーラムを提供し続けている」と明記している(ここで言及されている核セキュリティコンタクトグループとは、核セキュリティサミットにおいて、アジェンダセッティング他で重要な役割を担ったシェルパ会合を実質的に継承した有志国グループのことを指す157)。このほか、「(パラグラフ29)我々は核テロ防止条約(ICSANT)と2005年の改正核物質防護条約の普遍化を促進し、これらの鍵となる重要な核セキュリティ上の文書の未加盟国に加盟を促してゆく」としている。また、「原子力安全条約、放射性廃棄物等安全条約、そしてこれらの効果的で持続可能な履行に向けた取組を促進する」とし、具体的にこれらの条約に未加盟で発電用原子炉を運用する唯一の国としてイランの名を挙げ、加盟を呼びかけるとしている。
他方、もう1つの核セキュリティ分野での重要な国際的取組に挙げられるものとして、2006年のG8サンクトペテルブルクサミットで、米露主導で合意されたGICNTの存在がある。核鑑識の分野でのGICNTの取組については前述したとおりであるが、あくまでも自発的な国際協力の枠組みとして、GICNTには2018年6月の時点で豪州、中国、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、韓国、パキスタン、ロシア、スウェーデン、スイス、英国、米国など88カ国のパートナー国に加えて、2018年は新たに国連テロ対策委員会(UNOCT)の参加を得て、IAEA、INTERPOLなど6つの国際機関がオブザーバーとして名を連ねる状況にある158。GICNTでは核物質その他の放射性物質の物理的防護措置の改善、民生用原子力施設におけるセキュリティの向上、不法移転の検知能力の改善、テロリストに対する財政的支援の防止などを含む8原則のもと、「GICNTの原則に関する声明(SOP)」を発出し、核セキュリティに係る目標として、抑止、防止、検知及び対応を目指した活動を行っている159。GICNTは2010年に設置された履行及びアセスメントグループ(IAG、議長国フィンランド)において、優先的な検討課題と位置付けられた核検知・核鑑識・対応及び緩和の各項目に関して、それぞれ核検知作業部会(NDWG、議長国英国)、前述した核鑑識作業部会(NFWG、議長国カナダ)、そして対応と緩和作業部会(RMWG、議長国アルゼンチン)を設置し、分野ごとの検討を実施している160。
GICNTに関する個別の取組としては、2018年4月にハンガリーが放射性物質の盗取の試み及び実際の盗取への対応を巡る「Fierce Falcon(フィアースファルコン)」ワークショップを主催した161のを皮切りに、5月にメキシコが核及び放射性物質によるテロ攻撃への刑事訴追措置を強化し、かつ緊急緩和対応、放射性物質を用いた犯罪現場管理、核鑑識とコミュニケーションプロトコルに係る「Black Jaguar(ブラックジャガー)」野外演習を主催した162。6月には前述したとおりフィンランド・ヘルシンキでGICNTのIAG会合が開催され、米国、ロシアの共同議長のもとに総勢140名以上の参加を得て、3つの作業部会から活動報告などが行われた163。8月にはGICNTとIAEAとの共催でマレーシアにおいて地域ワークショップが開催され、マレーシア、インドネシア、フィリピンからの参加者によって沿岸及び海洋での核セキュリティイベントへの検知及び対応能力強化を目指した机上演習が実施された164。
これまでに述べた核セキュリティに関するIAEA諮問ミッション(本報告書ではIPPASミッションを基準に評価)の各国受入れ状況、核鑑識への対応、核セキュリティ分野でのキャパシティ・ビルディング及びその支援活動などは、いずれも核セキュリティに関連するパフォーマンスの向上に裨益し、調査対象国の核セキュリティ体制強化の取組を示す指標になると考えられる。また、NSFへの貢献や、G8GP(G7GP)、GICNTへの参加も、こうした核セキュリティ体制の整備に向けたコミットメントを示すものとして評価できる。かかる前提に基づき、以下の表3-8では、上記の各項目(核セキュリティ・イニシアティブ)への各国の参加・取組状況を示した。
[1] 第3章「核セキュリティ」は、一政祐行により執筆された。
[2] Statement by South Africa on the Draft Chair’s Summary at the NPT Second Prepcom, May 4, 2018, http://statements.unmeetings.org/media2/18559906/south-african-npt-statement-on-the-chairs-summary.pdf.
[3] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.5.
[4] NPT/CONF.2020/PC.II/WP.14.
[5] Ibid., p. 2.
[6] Ibid., pp. 3-4.
[7] 一例としては以下がある。Jonathan Herbach and Samantha Pitts-Kiefer, “More Work to Do: A Pathway for Future Progress on Strengthening Nuclear Security,” Arms Control Today, October 2015, https://www.armscontrol.org/ACT/2015_10/Features/More-Work-to-Do-A-Pathway-for-Future-Progress-on-Strengthening-Nuclear-Security.
[8] 改正核物質防護条約第16条に基づき、同条約発効日(2016年5月8日)から5年後に運用検討会議が開催される予定である。Based on Article 16 of the CPPNM Amendment, a review conference will be held five years after the effective date of the Convention (May 8, 2016).
[9] Statement by Ms. Anke ter Hoeve-van Heek, Deputy Permanent Representative of the Kingdom of the Netherlands to the IAEA, September 19, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-netherlands-final-statement.pdf.
[10] Kees Nederlof, “The Amended Convention on the Physical Protection of Nuclear Materials (CPPNM): What has been Achieved and What Remains to be Done,” in Sara Z. Kutchesfahani, Kelsey Davenport, and Erin Connolly, “An Arms Control Association and Fissile Materials Working Group Report The Nuclear Security Summits: An Overview of State Actions to Curb Nuclear Terrorism 2010-2016,” Arms Control Association website, July 2018, https://www.armscontrol.org/sites/default/files/files/Reports/NSS_Report2018_digital.pdf, pp. 10-14.
[11] Leah Matchett, “The controversial legacy of the Nuclear Security Summit,” The Bulletin of the Atomic Scientists website, October 4, 2018, https://thebulletin.org/2018/10/the-controversial-legacy-of-the-nuclear-security-summit/.
[12] “Commentary Georgetown Security Studies Review: Is the Threat of Nuclear Terrorism Distracting Attention from More Realistic Threats?,” RAND Cooperation website, July 27, 2018, https://www.rand.org/blog/2018/07/is-the-threat-of-nuclear-terrorism-distracting-attention.html.
[13] Graham Allison, “Nuclear Terrorism: Did We Beat the Odds or Change Them?” PRISM, Volume 7, No. 3, May 15, 2018, https://cco.ndu.edu/News/Article/1507316/nuclear-terrorism-did-we-beat-the-odds-or-change-them/.
[14] Patrick Malone and Jeffrey Smith, “A Terrorist Group’s Plot to Create a Radioactive “Dirty Bomb”: ISIS was Looking for Nuclear Materials, and Belgium was a Smart Place to Hunt,” The Center of Public Integrity website, February 2016, https://publicintegrity.org/national-security/a-terrorist-groups-plot-to-create-a-radioactive-dirty-bomb/.
[15] “Greenpeace Activists ‘Crash’ Drone into French Nuclear Plant,” AFP, July 3, 2018, https://www.yahoo.com/news/greenpeace-activists-crash-drone-french-nuclear-plant-134507827.html; Michael Shellenberger, “If Nuclear Plants Are So Vulnerable to Terrorist Attack, Why Don’t Terrorists Attack Them?” Forbes, July 6, 2018, https://www.forbes.com/sites/michaelshellenberger/2018/07/06/if-nuclear-plants-are-so-vulnerable-to-terrorist-attack-why-dont-terrorists-attack-them/#5842d0645877.
[16] Richard Mogagero, “4 Reasons Why U.S. Nuclear Power Plants Are Safe from Drones,” NEI website, August 6, 2018, https://www.nei.org/news/2018/4-reasons-us-nuclear-plants-safe-from-drones.
[17] Norway’s National Statement at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-norway-statement.pdf.
[18] 『ひろしまレポート2015年版』、83頁。
[19] “IAEA to Cooperate with Japan on Nuclear Security at 2020 Olympic Games in Tokyo,” IAEA website, February 15, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-to-cooperate-with-japan-on-nuclear-security-at-2020-olympic-games-in-tokyo.
[20] Matt Fisher, “IAEA Guidance on Managing Disused Radioactive Sources Now Available,” IAEA website, July 5, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-guidance-on-managing-disused-radioactive-sources-now-available.
[21] Guidance on the Management of Disused Radioactive Sources (IAEA/CODEOC/MGT-DRS/2018), IAEA, 2018, https://www-pub.iaea.org/books/IAEABooks/13380/Guidance-on-the-Management-of-Disused-Radioactive-Sources.
[22] “Technical Meeting on Security of Nuclear and other Radioactive Material in Transport,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/technical-meeting-on-security-of-nuclear-and-other-radioactive-material-in-transport.
[23] “International Conference on Challenges Faced by Technical and Scientific Support Organizations (TSOs) in Enhancing Nuclear Safety and Security: Ensuring Effective and Sustainable Expertise,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/challenges-faced-by-technical-and-scientific-support-organizations-conference-2018; Nathalie Mikhailova, “Technical and Scientific Support Key for Strong Nuclear Safety and Security: IAEA Conference Opens,” IAEA website, October 16, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/technical-and-scientific-support-key-for-strong-nuclear-safety-and-security-iaea-conference-opens.
[24] “Technical Meeting on the Safety and Security Interface – Approaches and National Experiences,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/EVT1802553.
[25] “Workshop on Emergency Preparedness and Response ? Requirements and Practical Implementation,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/workshop-on-emergency-preparedness-and-response-requirements-and-practical-implementation.
[26] “Regional Workshop to Review the Template of the Mediterranean Regional EPR Plan,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/regional-workshop-to-review-the-template-of-the-mediterranean-regional-epr-plan.
[27] “Nuclear Security is Improving Almost Everywhere: Cyber-Security is a Growing Concern,” The Economist, September 6, 2018, https://www.economist.com/graphic-detail/2018/09/06/nuclear-security-is-improving-almost-everywhere.
[28] “NTI Nuclear Security Index Theft?Sabotage: Building a Framework for Assurance, Accountability, and Action (Fouth Edition),” NTI website, September 2018, https://ntiindex.org/wp-content/uploads/2018/08/NTI_2018-Index_FINAL.pdf.
[29] Caroline Baylon, Roger Brunt and David Livingstone, “Chatham House Report Cyber Security at Civil Nuclear Facilities: Understanding the Risks,” Chatham House website, September 2015, https://www.chathamhouse.org/sites/files/chathamhouse/field/field_document/20151005CyberSecurityNuclearBaylonBruntLivingstone.pdf.
[30] Ernest J. Moniz, “Forward,” in “NTI Nuclear Security Index Theft?Sabotage: Building a Framework for Assurance, Accountability, and Action (Fouth Edition),” NTI website, September 2018, https://ntiindex.org/wp-content/uploads/2018/08/NTI_2018-Index_FINAL.pdf, p. 4.
[31] U.S. Department of Defense, Nuclear Posture Review, February 2018, pp. XV-XVI.
[32] Ibid., p. 67.
[33] Nuclear Security Series Glossary Version 1.3 (November 2015), Updated, International Atomic Energy Agency, http://www-ns.iaea.org/downloads/security/nuclear-security-series-glossary-v1-3.pdf, p. 18.
[34] IAEA Nuclear Security Series No.20, “Objective and Essential Elements of a State’s Nuclear Security Regime,” 2013, http://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/Pub1590_web.pdf.
[35] IAEA Nuclear Security Series No.13, “Nuclear Security Recommendations on Physical Protection of Nuclear Material and Nuclear Facilities (INFCIRC/225/Revision 5),” 2011, p. 13.
[36] IAEA Nuclear Security Series No.14, “Nuclear Security Recommendations on Radioactive Material and Associated Facilities,” 2011, p. 14.
[37] INFCIRC/225/Rev.5, paragraph 3.37.
[38] Ibid., paragraph 5.14.
[39] Ibid., paragraph 2.1.
[40] Ibid., paragraph 4.5.
[41] Zia Mian and Alexander Glaser, “Global Fissile Material Report 2015: Nuclear Weapon and Fissile Material Stockpile and Production,” NPT Review Conference, May 8, 2015, http://fissilematerials.org/library/ipfm15.pdf.
[42] NTI, “Civilian HEU Dynamic Map,” Nuclear Threat Initiative website, November 2018, https://www.nti.org/gmap/other_maps/heu/index.html.
[43] Ibid; Chuck Messick, et.al., “Global Threat Reduction Initiative: U.S.-Origin Nuclear Fuel Removals,” U.S. Department of Energy website, https://www.energy.gov/sites/prod/files/em/GlobalThreatReductionInitiative.pdf.
[44] Ibid.
[45] IAEA, Research Reactor Data Base, IAEA website, https://nucleus.iaea.org/RRDB/RR/ReactorSearch.aspx?rf=1.
[46] IAEA, Worldwide HEU and LEU assemblies by Enrichment, IAEA website, https://nucleus.iaea.org/RRDB/Reports/Container.aspx?Id=C2.
[47] IAEA, Regionwise distribution of HEU and LEU, IAEA website, https://nucleus.iaea.org/RRDB/Reports/Container.aspx?Id=C1.
[48] IAEA Nuclear Security Series No. 14, “Nuclear Security Recommendations on Radioactive Material and Associated Facilities,” 2011, http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1487_web.pdf.
[49] Ibid., p. 14.
[50] IAEA Nuclear Security Series No. 11, “Security of Radioactive Sources,” 2009, http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1387_web.pdf.
[51] IAEA Nuclear Security Series No. 14.
[52] “Joint Statement Strengthening the Security of High Activity Sealed Radioactive Sources (HASS),” 2016 Washington Nuclear Security Summit, March 11, 2016, https://static1.squarespace.com/static/568be36505f8e2af8023adf7/t/57050be927d4bd14a1daad3f/1459948521768/Joint+Statement+on+the+Security+of+High+Activity+Radioactive+Sources.pdf.
[53] Second Technical Meeting on Radiation Detection Instruments for Nuclear Security: Trends, Challenges and Opportunities, IAEA website, April 16-20, 2018, https://www.iaea.org/events/second-technical-meeting-on-radiation-detection-instruments-for-nuclear-security-trends-challenges-and-opportunities.
[54] Catherine Friedly, “IAEA Meeting on Radiation Detection Instruments Highlights Role of Science, Technology and Engineering in Nuclear Security,” IAEA website, April 24, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-meeting-on-radiation-detection-instruments-highlights-role-of-science-technology-and-engineering-in-nuclear-security.
[55] Catherine Friedly, “IAEA Working Group on Radioactive Source Security Fosters Experience Sharing to Enhance Nuclear Security,” IAEA website, May 11, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-working-group-on-radioactive-source-security-fosters-experience-sharing-to-enhance-nuclear-security.
[56] “International Conference on the Security of Radioactive Material: The Way Forward for Prevention and Detection,” IAEA website, December 3-7, 2018, https://www.iaea.org/events/security-of-radioactive-material-conference-2018.
[57] Inna Pletukhina, “Cooperation, Coordination, and Communication Key to Securing Radioactive Material: IAEA Conference,” IAEA website, December 14, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/cooperation-coordination-and-communication-key-to-securing-radioactive-material-iaea-conference.
[58] “Nuclear Security Summit 2016 Communiques,” 2016 Washington Nuclear Security Summit, April 1, 2016.
[59] Multilateral agreements in nuclear energy II. Non-proliferation and nuclear security: Convention on the Physical Protection of Nuclear Material (CPPNM), OECD NEA website, August 6, 2018, https://www.oecd-nea.org/law/multilateral-agreements/convention-protection-material.html.
[60] Amendment to the Convention on the Physical Protection of Nuclear Material, July 25, 2018, https://www-legacy.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/cppnm_amend_status.pdf.
[61] “Status of Treaties: International Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism,” United Nations Treaty Collections website, https://treaties.un.org/Pages/ViewDetailsIII.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=XVIII-15&chapter=18&Temp=mtdsg3&lang=en.
[62] International Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism, United Nations, 2005, https://treaties.un.org/doc/db/terrorism/english-18-15.pdf, Article 1.
[63] “Convention on Nuclear Safety,” IAEA website, July 3, 2018, http://www-legacy.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/nuclearsafety_status.pdf.
[64] “Convention on Early Notification of a Nuclear Accident,” IAEA website, September 17, 2018, https://www-legacy.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/cenna_status.pdf.
[65] Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste Management, IAEA website, August 16, 2018, https://www-legacy.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/jointconv_status.pdf.
[66] Convention on Assistance in the Case of a Nuclear Accident or Radiological Emergency, IAEA website, September 17, 2018, https://www-legacy.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/cacnare_status.pdf.
[67] “The Physical Protection of Nuclear Material,” IAEA website, https://www.iaea.org/publications/documents/infcircs/physical-protection-nuclear-material.
[68] “Highlights of National Progress Reports,” 2016 Washington Nuclear Security Summit, April 5, 2016, http://www.nss2016.org/news/2016/4/5/highlights-from-national-progress-reports-nuclear-security-summit.
[69] Statement by Dr. Darmansjah Djumala, Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary, Permanent Representative of the Republic of Indonesia at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-indonesia-statement.pdf.
[70] Nigeria’s Country Statement Delivered by his Excellency Mr. Ibrahim Usman Jibril, Honourable Minister of State for Environment at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-nigeria-statement.pdf.
[71] Statement of the Head of Delegation of The Kingdom of Saudi Arabia H.E. Khalid A. Al-Falih, Minister of Energy, Industry, and Mineral Resources at the IAEA 62nd General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-saudi-arabia-statement_en.pdf.
[72] Sweden Statement by H.E. Ambassador Mikaela Kumlin Granit at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-sweden-statement.pdf.
[73] S.E. Pieter De Crem, Secretaire d’Etat au Commerce exterieur, Declaration Nationale De La Belgique 62eme Session De La Conference Generale De L’aiea, Septembre 18, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-belgium-statement.pdf.
[74] Statement by H.E. Ambassador Marcel Biato, Permanent Representative of Brazil to the IAEA and PrepCom-CTBTO at the 62nd IAEA General Conference, September 17-21, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-brazil-statement.pdf.
[75] Statement by Ms. Anke ter Hoeve-van Heek, Deputy Permanent Representative of the Kingdom of the Netherlands to the IAEA, September 19, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-netherlands-final-statement.pdf.
[76] Nanako Kogiku, “IAEA Training for Latin American Countries Focuses on Protection of Nuclear Facilities and Material Against Sabotage,” IAEA website, September 13, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-training-for-latin-american-countries-focuses-on-protection-of-nuclear-facilities-and-material-against-sabotage.
[77] Statement by Thorsten Herdan, Director General Federal Ministry for Economic Affairs and Energy at the 62nd General Conference of the IAEA, September 18, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-germany-statement.pdf.
[78] Statement by the Norwegian Delegation at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-norway-statement.pdf.
[79] “Past and Current Civilian HEU Reduction Efforts,” Nuclear Threat Initiative website, December 20, 2017, http://www.nti.org/analysis/articles/past-and-current-civilian-heu-reduction-efforts/.
[80] Remarks by President Barack Obama in Prague as Delivered, The White House Office of the Press Secretary, April 5, 2009, https://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-barack-obama-prague-delivered.
[81] “Hague Communique,” 2014 Hague Nuclear Security Summit, March 25, 2014.
[82] The White House Office of the Press Secretary, “Fact Sheet: The Nuclear Security Summits: Securing the World from Nuclear Terrorism,” March 29, 2016, https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2016/03/29/fact-sheet-nuclear-security-summits-securing-world-nuclear-terrorism.
[83] NTI, “Civilian HEU Dynamic Map,” Nuclear Threat Initiative website, December 2017, http://www.nti.org/gmap/other_maps/heu/index.html.
[84] U.S. Department of Energy National Nuclear Security Administration, “Prevent, Counter, and Respond-A Strategic Plan to Reduce Global Nuclear Threats FY2019-FY2023 Report to Congress,” October 2018, https://www.energy.gov/sites/prod/files/2018/10/f57/FY2019%20NPCR.pdf.
[85] “IAEA Helps Remove Highly Radioactive Material from Five South American Countries,” IAEA website, April 30, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-helps-remove-highly-radioactive-material-from-five-south-american-countries.
[86] 『ひろしまレポート2017年版』、93-94頁;『ひろしまレポート2018年版』、92頁。
[87] Statement by Mr Benoit Revaz, State Secretary and Director of the Swiss Federal Office of Energy at the 62nd Session of the IAEA General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-switzerland-statement_en.pdf.
[88] Statement by the Chinese Delegation, 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-china-statement.pdf.
[89] Nigeria’s Country Statement Delivered by his Excellency Mr. Ibrahim Usman Jibril, Honourable Minister of State for Environment at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-nigeria-statement.pdf.
[90] Statement by Ms. Anke ter Hoeve-van Heek, Deputy Permanent Representative of the Kingdom of the Netherlands to the IAEA, September 19, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-netherlands-final-statement.pdf.
[91] Japan Atomic Energy Commission, “The Basic Principles on Japan’s Utilization of Plutonium,” July 31, 2018, http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/3-3set.pdf.
[92] Ibid.
[93] Statement by Minister of State Masaji Matsuyama at the 62nd General Conference of the IAEA, September 17, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-japan-statement.pdf.
[94] IAEA, “ITDB: Incident and Trafficking Database,” https://www.iaea.org/sites/default/files/16/12/16-3042_ns_to_itdb_web-20160105.pdf.
[95] IAEA, “IAEA Incident and Trafficking Database (ITDB) Incidents of Nuclear and Other Radioactive Material Out of Regulatory Control,” IAEA website, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/12/itdb-factsheet-2018.pdf.
[96] IAEA Annual Report 2017, GC(62)/3, https://www.iaea.org/sites/default/files/publications/reports/2017/gc62-3.pdf, p. 85.
[97] IAEA Annual Report 2016, GC(61)/3, https://www.iaea.org/sites/default/files/publications/reports/2016/gc61-3.pdf, p. 86.
[98] IAEA, Nuclear Security Report 2018, GOV/2018/36-GC(62)/10, Augut 6, 2018, https://www-legacy.iaea.org/About/Policy/GC/GC62/GC62Documents/English/gc62-10_en.pdf, pp. 2-3.
[99] IAEA, IAEA Incident and Trafficking Database (ITDB) Incidents of Nuclear and Other Radioactive Material out of Regulatory Control 2017 Fact Sheet, https://www.iaea.org/sites/default/files/17/12/itdb-factsheet-2017.pdf, p. 2.
[100] Ibid., p. 1.
[101] “Second Technical Meeting on Radiation Detection Instruments for Nuclear Security: Trends, Challenges and Opportunities,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/second-technical-meeting-on-radiation-detection-instruments-for-nuclear-security-trends-challenges-and-opportunities.
[102] Catherine Friedly, “Workshop Aids Nuclear Security Experts in Testing and Evaluating Technology Used for Border Monitoring,” IAEA website, July 24, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/workshop-aids-nuclear-security-experts-in-testing-and-evaluating-technology-used-for-border-monitoring.
[103] Nigeria’s Country Statement Delivered by his Excellency Mr. Ibrahim Usman Jibril, Honourable Minister of State for Environment at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-nigeria-statement.pdf.
[104] Statement by the Minister of Energy of Kazakhstan Kanat Bozumbaev at the 62nd Session of the IAEA General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-kazakhstan-statement.pdf.
[105] Office of the Secretary of Defense, “Nuclear Posture Review 2018,” U.S. Department of Defense website, February 2018, https://media.defense.gov/2018/Feb/02/2001872886/-1/-1/1/2018-NUCLEAR-POSTURE-REVIEW-FINAL-REPORT.PDF, p.67.
[106] Catherine Friedly, “IAEA Helped Indonesia Implement Nuclear Security at the 2018 Asian Games,” IAEA website, October 25, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-helped-indonesia-implement-nuclear-security-at-the-2018-asian-games.
[107] “News and Events: RADNUC Investigation and Coordination Workshop in Tbilisi,” INTERPOL website, https://www.interpol.int/Crime-areas/CBRNE/News-and-Events.
[108] 『ひろしまレポート2017年版』、99頁。
[109] “Meetings, Conferences and Symposia: Meetings on Nuclear Safety and Security,” IAEA Website, http://www-ns.iaea.org/meetings/default.asp?tme=ns&yr=2017&s=10&l=79&submit.x=7&submit.y=7.
[110] Peer Review and Advisory Services Calendar, IAEA website, https://www.iaea.org/services/review-missions/calendar?type=3170&year%5Bvalue%5D%5Byear%5D=&location=All&status=All; Statement by Mr Benoit Revaz, State Secretary and Director of the Swiss Federal Office of Energy at the 62nd Session of the IAEA General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-switzerland-statement_en.pdf.
[111] “Peer Review and Advisory Services Calendar,” IAEA website, https://www.iaea.org/services/review-missions/calendar?type=3170&year%5Bvalue%5D%5Byear%5D=&location=All&status=All; “IAEA Completes Nuclear Security Advisory Mission in Japan,” IAEA website, December 7, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-completes-nuclear-security-advisory-mission-in-japan.
[112] “Peer Review and Advisory Services Calendar,” IAEA website, https://www.iaea.org/services/review-missions/calendar?type=3170&year%5Bvalue%5D%5Byear%5D=&location=All&status=All.
[113] Ibid.
[114] “International Nuclear Security Advisory Service (INSServ),” IAEA website, https://www.iaea.org/services/review-missions/international-nuclear-security-advisory-service-insserv.
[115] “Integrated Nuclear Security Support Plan (INSSP),” IAEA website, http://www-ns.iaea.org/security/inssp.asp?s=4.
[116] Statement of the Philippines by H.E. Ambassador Maria Cleofe R. Natividad at the 62nd Regular Session of the IAEA General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-philippines-statement.pdf.
[117] Statement by the Republic of South Africa Delivered by Deputy Minister of Energy, Ambassador Thembisile Majola, MP on the Occasion of the 62nd Session of the IAEA General Conference, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-south_africa-statement.pdf.
[118] GC(61)/24: Nuclear Security Plan 2018-2021, September 14, 2017, https://www-legacy.iaea.org/About/Policy/GC/GC61/GC61Documents/English/gc61-24_en.pdf, p. 4.
[119] Ibid., p. 14.
[120] The White House, Office of the Press Secretary, “Work Plan of the Washington Nuclear Security Summit,” April 13, 2010.
[121] “Joint Statement on Forensics in Nuclear Security,” 2016 Washington Nuclear Security Summit, April 5, 2016, http://www.nss2016.org/document-center-docs/2016/4/1/joint-statement-on-forensics-in-nuclear-security.
[122] IAEA Nuclear Security Series No.2-G (Rev.1), “Nuclear Forensics Support,” 2006, http://www-pub.iaea.org/books/IAEABooks/10797/Nuclear-Forensics-in-Support-of-Investigations.
[123] Ibid., p. 3.
[124] “EU-US Nuclear Forensics International Technical Working Group (ITWG) Joint Statement,” 2016 Washington Nuclear Security Summit, April 1, 2016, http://www.nss2016.org/document-center-docs/2016/4/1/eu-us-nuclear-forensics-international-technical-working-group-itwg-joint-statement.
[125] ITWG “Guideline,” ITWG website, http://www.nf-itwg.org/sites/default/files/pdfs/ITWG_Guideline_for_RN_Evidence_Collection_FINAL.pdf.
[126] “Nuclear Forensics Libraries,” ITWG website, http://www.nf-itwg.org/sites/default/files/pdfs/National_Nuclear_Forensic_Libraries_TOR_FINAL.pdf.
[127] GC(61)/24: Nuclear Security Plan 2018-2021, September 14, 2017, http://www.nf-itwg.org/newsletters/ITWG_Update_no_7.pdf.
[128] “Fact Sheet,” GICNT website, June 2018, http://www.gicnt.org/documents/GICNT_Fact_Sheet_June2018.pdf.
[129] “Key Multilateral Events and Exercises,” GICNT website, http://www.gicnt.org/documents/GICNT_Past_Multilateral_Events_July2018.pdf.
[130] Ibid., p. 16.
[131] David Kenneth Smith and Timofey Tsvetkov, “NEW CRP: Applying Nuclear Forensic Science to Respond to a Nuclear Security Event (J02013),” IAEA website, May 7, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/new-crp-applying-nuclear-forensic-science-to-respond-to-a-nuclear-security-event-j02013.
[132] Inna Pletukhina, “Crime Scene to Court Room: Implementing Nuclear Forensic Science,” IAEA website, October 29, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/crime-scene-to-court-room-implementing-nuclear-forensic-science.
[133] Jon M. Schwantes, et al., “State of practice and emerging application of analytical techniques of nuclear forensic analysis: highlights from the 4th Collaborative Materials Exercise of the Nuclear Forensics International Technical Working Group (ITWG)” J Radioanal Nucl Chem, DOI 10.1007/s10967-016-5037-5 (published online 16 Sep. 2016).
[134] Canadian Statement by Ambassador Heidi Hulan, Permanent Representative of Canada to the International Organizations in Vienna at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-canada-statement-en.pdf.
[135] Sweden Statement by H.E. Ambassador Mikaela Kumlin Granit at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-sweden-statement.pdf.
[136] Miguel Santini, ”Norway and Romania Extend IAEA-supported Partnership to Strengthen Nuclear and Radiological Safety and Security,” IAEA website, October 2, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/norway-and-romania-extend-iaea-supported-partnership-to-strengthen-nuclear-and-radiological-safety-and-security.
[137] Statement by the Chinese Delegation, 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-china-statement.pdf.
[138] Statement by Dr. Sekhar Basu Chairman, Atomic Energy Commission and Secreatary, Department of Atomic Energy at the 62nd General Conference of the IAEA, September 19, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-india-statement.pdf.
[139] Statement by the Leader of the Pakistan Delegation, 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-pakistan-statement.pdf.
[140] Statement by Dr. Darmansjah Djumala, Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary/Permanent Representative of the Republic of Indonesia at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-indonesia-statement.pdf.
[141] Statement by Minister of State Masaji Matsuyama at the 62nd General Conference of the IAEA, September 17, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-japan-statement.pdf.
[142] “Joint ICTP-IAEA International School on Nuclear Security,” IAEA website, https://www.iaea.org/events/joint-ictp-iaea-international-school-on-nuclear-security.
[143] Matt Fisher, “Nuclear Security Skills Strengthened at IAEA Course in Spain,” IAEA website, June 19, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/nuclear-security-skills-strengthened-at-iaea-course-in-spain.
[144] Brunelle Battistella, “IAEA Regional Workshop Helps Raise Awareness of Nuclear Security in Central America and the Caribbean,” IAEA website, July 18, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-regional-workshop-helps-raise-awareness-of-nuclear-security-in-central-america-and-the-caribbean.
[145] Susanna Loof, “IAEA Network Fosters International Cooperation That Strengthens Nuclear Security, Members Agree at Annual Meeting,” IAEA website, April 10, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-network-fosters-international-cooperation-that-strengthens-nuclear-security-members-agree-at-annual-meeting.
[146] GOV/2018/36-GC(62)/10: Nuclear Security Repot 2018, https://www-legacy.iaea.org/About/Policy/GC/GC62/GC62Documents/English/gc62-10_en.pdf, p. 17.
[147] GC(61)/24: Nuclear Security Plan 2018-2021, September 14, 2017, https://www.iaea.org/About/Policy/GC/GC61/GC61Documents/English/gc61-24_en.pdf.
[148] IAEA, “IAEA Annual Report 2017,” https://www.iaea.org/sites/default/files/publications/reports/2017/gc62-3.pdf, p. 85.
[149] UK National Statement at the 62nd General Conference of the IAEA, September 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-uk-_statement.pdf.
[150] Statement by Thorsten Herdan, Director General Federal Ministry for Economic Affairs and Energy at the 62nd General Conference of the IAEA, September 18, 2018, https://www.iaea.org/sites/default/files/18/09/gc62-germany-statement.pdf.
[151] Joint Statement on Promoting Full and Universal Implementation of UNSCR 1540 (2004), 2016 Washington Nuclear Security Summit, April 5, 2016, http://www.nss2016.org/document-center-docs/2016/4/1/joint-statement-on-1540-committee.
[152] NTI, “Global Partnership Against the Spread of Weapons and Materials of Mass Destruction (“10 Plus 10 Over 10 Program”),” June 20, 2017, http://www.nti.org/learn/treaties-and-regimes/global-partnership-against-spread-weapons-and-materials-mass-destruction-10-plus-10-over-10-program/.
[153] Ibid.
[154] “G7 Global Partnership Against the Spread of Weapons and Materials of Mass Destruction,” G7 2017 Italia website, http://www.g7italy.it/it/node/190.
[155] “Nuclear & Radiological Security,” GPWMD website, https://www.gpwmd.com/nrswg.
[156] “2018 G7 Statement on Non-Proliferation and Disarmament,” G7 website, https://g7.gc.ca/en/g7-presidency/themes/building-peaceful-secure-world/g7-ministerial-meeting/g7-foreign-ministers-joint-communique/2018-g7-statement-non-proliferation-disarmament/.
[157] “Joint Statement on Sustaining Action to Strengthen Global Nuclear Security Architecture,” Nuclear Security Contact Group website, April 5, 2016, http://www.nscontactgroup.org/.
[158] “Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism Partner Nations List,” June 2018, http://www.gicnt.org/documents/GICNT_Partner_Nation_List_June2018.pdf.
[159] “Overview,” GICNT website, http://www.gicnt.org/index.html.
[160] “Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism Fact Sheet,” GICNT website, June 2018, http://www.gicnt.org/documents/GICNT_Fact_Sheet_June2018.pdf.
[161] Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism (GICNT), NTI website, September 30, 2018, https://www.nti.org/learn/treaties-and-regimes/global-initiative-combat-nuclear-terrorism-gicnt/.
[162] Ibid.
[163] 瀬谷道夫「2-2 GICNT(Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism)-IAG(実施評価(Implementation Assessment Group))会合参加報告」国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)『ISCNニューズレター』No.0257、August 2018、https://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0257.pdf, pp. 16-23。
[164] Catherine Friedly, “IAEA Holds Table Top Exercise to Strengthen Detection and Response Capabilities in Maritime Nuclear Security Events,” IAEA website, October 3, 2018, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-holds-table-top-exercise-to-strengthen-detection-and-response-capabilities-in-maritime-nuclear-security-events.
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