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国際平和拠点ひろしま

(3) IAEA 保障措置(核兵器国及び NPT 非締約国)

(3) IAEA 保障措置(核兵器国及び NPT非締約国)
NPT は核兵器国に対して、IAEA 包括的保障措置協定の締結を義務付けていない。しかしながら、NPT の不平等性を緩和するとの観点から、核兵器国は自国の平和的目的の原子力施設及び核物質に対し、自発的な保障措置協定(VOA)をIAEA と締結し、保障措置を受け入れてきた。
2019 年に公表された『2018 年版IAEA 年次報告』によれば、2018 年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含む核兵器国の施設の数及び種類は下記のとおりである63。IAEA は、保障措置が適用された核物質については平和的活動のもとにあるとの結論を下している64。なお、IAEA は、査察の回数については公表していない。
➢ 中国:発電炉 1(前年は2)、研究炉1、濃縮施設1
➢ フランス:燃料製造プラント1、再処理プラント1、濃縮施設1
➢ ロシア:分離貯蔵施設1
➢英国:濃縮施設 1、分離貯蔵施設2
➢ 米国:分離貯蔵施設 1
5 核兵器国は、いずれも追加議定書を締結している。このうち、フランス、英国及び米国のそれぞれの追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれ、米国はこれを受け入れた初めての核兵器国である。これに対して、中国及びロシアについては、上記の3 核兵器国と比べると、原子力施設に対するIAEA 保障措置の適用は限定的であり、また追加議定書には補完的なアクセスに関する規定が含まれていない。
フランス及び英国は民生用核物質を、それぞれEURATOM 及びIAEA との三者保障措置協定のもとに置いてきた。英国は、EU から脱退すればEURATOMからも脱退することになるが、EURATOM 保障措置と同様の国内保障措置を構築し、IAEA が英国内のすべての民生用原子力施設を査察する権利を維持すると言明しており、2018年6 月に英国とIAEA は、英国・IAEA・EURATOM の三者間の保障措置協定及び追加議定書に代わる新たな保障措置協定及び追加議定書に署名した。
NPT 非締約国のインド、イスラエル及びパキスタンは、いずれもINFCIRC/66 型保障措置協定を締結しており、当該国が協定対象施設と申告した施設にはIAEA による査察が行われてきた。『2018 年版IAEA 年次報告』によれば、2018 年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含むNPT 非締約国の施設の数及び種類は下記のとおりである(査察回数などについては非公表)65。なお、2018 年の活動について、IAEA は、これら3 カ国の保障措置適用下にある核物質、施設及びその他の品目については平和的活動のもとにあると結論付けている66。
➢ インド:発電炉 9(前年は8)、燃料製造プラント2、分離貯蔵施設2(前年は1)
➢ イスラエル:研究炉 1
➢ パキスタン:発電炉 7(前年は6)、研究炉2
追加議定書については、2014 年7 月にIAEA とインドの間で発効した。この追加議定書は、中国及びロシアのものに近い内容で、情報提供や秘密情報保護などの条項は含まれるものの、補完的なアクセスなどは規定されていない。イスラエル及びパキスタンは、依然として追加議定書に署名していない。
NPT に加盟する非核兵器国が包括的保障措置の受諾を義務付けられているのに対して、核兵器国にはそのような義務が課されていないとの不平等性を緩和すべく、非核兵器国はNPT 運用検討会議などで、核兵器国に対して保障措置の一層の適用を提案してきた。NAM 諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置を受諾すること、核軍縮ステップを監視・検証するための常設委員会を2020年NPT 運用検討会議で設置することを求めた67。


63 IAEA Annual Report 2018, GC(63)/5/Annex, Table A38(a).
64 IAEA Annual Report 2018, September 2019, p. 100.
65 IAEA Annual Report 2018, GC(63)/5/Annex, Table A38(a).
66 IAEA Annual Report 2018, p. 100.
67 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.14, March 21, 2019.

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