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国際平和拠点ひろしま

(6) 原子力平和利用の透明性

(6) 原子力平和利用の透明性
A) 透明性のための取組
平和的目的の原子力活動が核兵器への転用を意図したものではないことを示すための措置には、IAEA 保障措置の受諾に加えて、自国の原子力活動及び今後の計画を明らかにするなど透明性の向上が挙げられる。IAEA 追加議定書を締結する国は、核燃料サイクルの開発に関連する10 年間の全般的な計画(核燃料サイクル関連の研究開発活動の計画を含む)をIAEA に報告することが義務付けられている。主要な原子力推進国も、原子力発電炉の建設計画をはじめとして、中長期的な原子力開発計画を公表している107。他方、原子力計画を公表していないものの核活動を行っている(と見られる)国(イスラエル、北朝鮮、シリア)、あるいは原子力計画を公表しているもののその計画にそぐわない核関連活動を行っていると疑われている国に対しては、核兵器拡散への懸念が持たれる可能性がある。
5 核兵器国、ベルギー、ドイツ、日本及びスイスは、1997 年に合意された「プルトニウム管理指針(Guidelines for the Management of Plutonium)」(INFCIRC/549)のもとで、共通のフォーマットを用いて、民生用分離プルトニウムなど(原子力平和利用活動におけるすべてのプルトニウム、並びに当該国政府によって軍事目的には不要だとされたプルトニウム)の量を毎年、IAEA に報告している。2018 年末時点での民生用分離プルトニウム量については、上記9 カ国のうち中国が2019 年末時点で報告を提出しなかった。フランス、ドイツ及び英国は、プルトニウムだけでなく民生用高濃縮ウラン(HEU)の量も併せて報告した。
日本がIAEA に提出した上記の報告は、2019 年7 月に原子力委員会が公表した「我が国のプルトニウム管理状況」に基づくものであり、そこでは分離プルトニウムの管理状況が詳細に記載されている108。日本は2018 年に「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を発表し、「我が国は…プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は…現在の水準を超えることはない」との指針を示した。後者については、「プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から照射までのプルトニウム保有量を必要最小限とし、再処理工場等の適切な運転に必要な水準まで減少させるため、事業者に必要な指導を行い、実現に取り組む」こと、並びに「事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む」ことなどの措置が挙げられた109。
豪州、オーストリア、ブラジル、カナダ、チリ、エジプト、イラン、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、南アフリカ、スウェーデン、トルコ及びUAEについても、核分裂性物質の保有量を公表しているか、あるいは少なくともIAEA に申告している核分裂性物質に関しては保障措置が適用されているという意味で、一定の透明性が確保されていると言える。

 

B) 核燃料サイクルの多国間アプローチ
非核兵器国が独自の濃縮・再処理技術を取得するのを抑制する施策の1 つとして、核燃料サイクルの多国間アプローチが検討されてきた。これまでに、オーストリア、ドイツ、日本、ロシア、英国、米国及びEU がそれぞれ、また6 カ国(フランス、ドイツ、オランダ、ロシア、英国、米国)は共同で提案を行った。
様々な構想のなかで具体的に進展しているのが核燃料バンクである。アンガルスク(ロシア)に設置された国際ウラン濃縮センターに続き、2017 年8 月には、核脅威イニシアティブ(NTI)、クウェート、ノルウェー、UAE、米国及びEU の拠出を得て110、カザフスタンにIAEA・LEU バンクが開設された。この核燃料バンクには、最大90t のLEU(1,000MWの軽水炉の運転に十分な量)が備蓄される。IAEA がLEU の購入及び搬送、装備品の購入などのコストを、カザフスタンがLEU貯蔵のコストをそれぞれ負担する111。IAEA は2019 年10 月17 日、フランスのオラノ・サイクル社から最初のLEU が到着し、この核燃料バンクが正式に運営を開始したと発表した。12 月には最終となる2 回目のLEU の搬入が行われた。


107 主要国の原子力発電を含む原子力開発の現状及び今後の計画については、世界原子力協会(World Nuclear Association)のホームページ(http://world-nuclear.org/)にも概要がまとめられている。。
108 内閣府原子力政策担当室「我が国のプルトニウム管理状況」2019 年7 月30 日、ttp://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2018/siryo27/2.pdf。
109 原子力委員会「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」2018 年7 月31 日、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/3-3set.pdf。
110 設立経費とその後20 年間の運営費として、計約1 億5,000 万ドルが拠出された。
111 “Kazakhstan Signs IAEA ‘Fuel Bank’ Agreement,” World Nuclear News, May 14, 2015, http://world-nuclear-news.org/UF-Kazakhstan-signs-IAEA-fuel-bank-agreement-14051502.html.

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