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国際平和拠点ひろしま

(10) 核兵器削減の検証

核軍縮に関する検証は現在、米露二国間の新START のもとで、両国による戦略核戦力削減に対して実施されており、両国は条約発効以来、条約で規定された回数の現地査察を毎年実施してきた217。しかしながら、前述のように、2020 年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、査察官の相手国への入国が難しく、実施可能な上限を大きく下回る回数しか現地査察を実施できなかった。
米国が2014 年に立ち上げた核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)では、28 の参加国(並びに欧州連合(EU)及びバチカン市国)218により、核弾頭の解体、並びに解体された核弾頭に由来する核物質の検証方法・技術に焦点を当てた検討が続けられている。
2020 年に開始されたIPNDV のフェーズ3 では、「現在の作業方法に立脚し、シナリオベースの議論、実践的演習、技術実証を含むさらなる実地活動に従事する」219とし、以下のような活動が例示された。

➢ 想定される核保有国(X 国)とその核事業体を対象とした代表的な国内事例研究に基づくシナリオベースのアプローチを用いて、フェーズ1 及びフェーズ2 で開発された全体的な検証「ツールキット」の概念やその他の要素がどのようにして実施できるかを実証する。
➢ 不可逆性、透明性、及び核兵器の非生産などの検証設計に関する課題を深掘りし、時間をかけて信頼性を高めていく。
➢ 核兵器関連物質の有無の検出、情報バリアの概念や技術など、フェーズ1 及び2 で特定されたギャップ領域に対処する。
➢ 政治指導者や核軍縮検証の専門家コミュニティを巻き込むためのアウトリーチ活動を実施し、核軍縮検証に焦点を当てた活動を維持する。

フェーズ3 の最初の会合は2020 年3 月にジュネーブで開催される予定であったが、新型コロナウイルスにより中止となり、これ以降のIPNDV にかかる会合はオンラインでの実施となった。
この間、4 月にはフェーズ2 の3 つの作業部会(作業部会4:核兵器に関する申告についての検証、作業部会5:兵器の削減についての検証、作業部会6:検証の技術的課題)から、議論の結果を取りまとめたレポートなどが公表された220。このうち、作業部会6 の報告書では、現存せず開発が必要な技術・方法論として、密閉容器内の非破壊的な爆発物の検出、密閉容器内の爆発物の閾値質量の定量化、大規模施設やビルの特定箇所で歩行または運転しながら核兵器を検出する方法、密閉容器内のウラン同位体及び閾値質量のパッシブ測定(passive measurement of uranium isotopics and threshold mass in a closed container)、並びにHEU のスイープ測定及び不在測定(sweeping and absence measurements for HEU)を挙げた。また、現存するがさらなる開発などが必要な技術・方法論として、離れた場所から室内の爆発物を検出する方法、放射線ベースの方法に加えて追加の核兵器テンプレート法( nuclear weapons template methods)、様々なモニタリング方法と併用可能な情報バリア法(information barrier methods)、解体前後の潜在的な核兵器の固有シグネチャ(potential nuclear weapon intrinsic signatures)の評価が挙げられた221。
核軍縮検証については、ノルウェーが2019 年NPT 運用検討会議準備委員会で、IPNDV など核軍縮検証に関連する活動に関心を持つすべての国の参加を確保すべく、国連軍縮部のもとに核軍縮検証基金の設置を呼び掛けた222。また、NAM諸国は、核兵器計画から除去される核分裂性物質に適用される検証措置の発展などについて、IAEA の関与を求めた。NAM 諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置を受諾すること、核軍縮ステップを監視・検証するための常設委員会を2020 年NPT 運用検討会議で設置することを求めた223。


217 The U.S. Department of State, “New START Treaty Inspection Activities,” https://www.state.gov/new-starttreaty-inspection-activities/.
218 3 核兵器国(フランス、英国及び米国)のほか、アルゼンチン、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、イタリア、日本、ヨルダン、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE。中国及びロシアはフェーズ1 にはオブザーバー参加していたが、フェーズ2 には参加しなかった。
219 IPNDV, “Phase III Programme of Work,” https://www.ipndv.org/wp-content/uploads/2020/06/IPNDV_Phase_III_Programme_of_Work.pdf.
220 レポートなどは、IPNDV のサイトに掲載されている(https://www.ipndv.org/reports-analysis/)。
221 IPNDV Working Group 6, “Technology Gaps Identified,” April 2020.
222 “Statement by Norway,” General Debate, 2019 NPT PrepCom, May 1, 2019.
223 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.14, March 21, 2019.

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