当サイトを最適な状態で閲覧していただくにはブラウザのJavaScriptを有効にしてご利用下さい。
JavaScriptを無効のままご覧いただいた場合には一部機能がご利用頂けない場合や正しい情報を取得できない場合がございます。

国際平和拠点ひろしま

(9) 核戦力、兵器用核分裂性物質、核戦略・ドクトリンの透明性

2010 年NPT 運用検討会議で採択された最終文書で、核兵器国は、核軍縮に向けた具体的な措置の進展に関して、2014 年NPT 準備委員会で報告するよう求められた(行動5)。最終文書では、これに加えて、核兵器国を含む締約国に対して、累次の運用検討会議で合意された核軍縮措置の実施にかかる定期報告の提出(行動20)、並びに信頼醸成措置として報告の標準様式への合意など(行動21)が求められた。これらを受けて核兵器国は、2014 年NPT 準備委員会及び2015 年運用検討会議に、「共通のフレームワーク」及び「共通のテーマ・カテゴリー」を用いて、NPT の三本柱(核軍縮、核不拡散、原子力平和利用)にかかる自国の実施状況をそれぞれ報告した。2017 年及び2018 年のNPT 準備委員会にそうした報告を提出した核兵器国はなかったが、2019 年NPT 準備委員会には、中国212及び英国213が提出した。また非核兵器国についても、NPT の履行状況に関する報告を2019 年NPT 準備委員会に提出したのは、わずかに7 カ国(豪州、オーストリア、カナダ、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド)214であった。
2020 年には、上述のようにフランス及びロシアがそれぞれ核政策を公表したが、それらを除いて核保有国の核戦力、兵器用核分裂性物質、核戦略・核ドクトリンの透明性に関して、2020 年には前年から特段の進展はなかった。
核兵器国のなかでは、現在に至るまで米国の透明性が最も高いと評価されてきた。しかしながら、近年、特にトランプ政権下において、米国から公開される情報が減少傾向にある。上述のように、これまで公表してきた核弾頭の保有数や廃棄数について、国防総省は民間シンクタンクからの情報公開請求に対して、これを公表しないとの決定を発表した。また、爆発に至らない核兵器関連の実験の状況についても2015 年第1四半期を最後に更新されず、2018 年以降は過去の情報についての掲載も確認できなかった。
また中国は、透明性が低いとの米国の批判に対して、核兵器の先行不使用や非核兵器国への安全の保証などを挙げつつ、中国の核戦略と意図はより透明性が高く、予測可能であると反論した215。
NPDI が2012 年NPT 準備委員会に提出した作業文書「核兵器の透明性」には、大別して、核弾頭、運搬手段、兵器用核分裂性物質、核戦略・政策について報告を行うためのテンプレート案が添付されている216。このテンプレートを用いて核保有国の透明性に関する動向をまとめると、概ね表1-7のようになる。


212 NPT/CONF.2020/PC.III/8, April 29, 2019.
213 NPT/CONF.2020/PC.III/7, April 25, 2019.
214 このうち、2018 年NPT 準備委員会にも提出していたのは、豪州、オーストリア、カナダ、日本、ニュージーランド。
215 Gu Liping, “Fu Cong: China Has Transparent and Defensive Strategy, It’s Not a Nuclear Threat,” CGTN, October 16, 2020, http://www.ecns.cn/news/politics/2020-10-16/detail-ihaazqys6709048.shtml.
216 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.12, April 20, 2012.

< 前のページに戻る次のページに進む >

 

目次に戻る