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国際平和拠点ひろしま

(12) 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携

軍縮・不拡散における市民社会との連携は、TPNW 策定過程に象徴されるように一層深化してきた。2020 年は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、軍縮・不拡散についても多くの対面での会合がキャンセルとなったが、多くのオンラインでの会合が開催された。国連総会第一委員会のサイドイベントもオンラインで実施された。イベントの数は前年に比べて減少し、またサイドイベントを開催した本報告書調査対象国もなかったが、国連本部外からの参加が可能になった。そうした多くの会議に、政府関係者、専門家及びNGO など市民社会が参加し、活発な議論が行われた。他方で、対面での会議が開催できないことで、市民社会と政府の間の交流に少なからぬ制約が生じていることは否めない。
2017〜19 年に「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」を開催した日本は、2019年10 月に同会議議長がそこでの議論を取りまとめた「議長レポート」230を提出したことを受けて、2020 年3 月に「核軍縮の実質的な進展のための1.5 トラック会合」を開催した。この会合には、核兵器国と非核兵器国を含む9 カ国の政府関係者、並びに国内外の民間有識者9 名が出席し、透明性,核リスク低減及び核軍縮・不拡散教育という3 つの具体的な核軍縮措置の重要性に焦点を当てた議論が行われた。また、2020 年の国連総会第一委員会ではインドが、「軍備管理、軍縮及び国際安全保障教育の推進に高い優先順位を置いている。これに関連して、2019 年に開始されたインドの年次軍縮・国際安全保障フェローシップは、様々な加盟国、特に若い世代の外交官に好評を博している」231と発言した。
2020 年の国連総会では、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、ドイツ、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、トルコ、英国、米国などが共同で提案した決議「軍縮・不拡散教育」232が無投票で採択された。また、日本及びNAC 提案の核軍縮に関するそれぞれの国連総会決議でも、軍縮・不拡散教育の重要性が言及された。
「市民社会との連携」に関しては、各国政府が核軍縮・不拡散に関する情報をどれだけ国内外の市民に向けて提供しているかも判断材料となる。調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、英国、米国といった国々のホームページ(英語版)では、(核)軍縮・不拡散に関するセクションが設けられ、程度の差はあるものの他国と比べて充実した情報が掲載されている。
近年の動きとして、核兵器の開発・製造などに携わる組織や企業などへの融資の禁止や引揚げ(divestment)が提案され、実際にこれを定める国が出始めている。ICAN が2019 年6 月に公表した報告書によれば、主要な核兵器製造企業18 社に対して、325 の金融機関が2017 年1 月から2019 年1 月の間に7,480 億ドル以上を投資した233。また、ICAN が2019 年5 月に公表した報告書によれば、フランス、インド、イタリア、オランダ、英国及び米国などの民間企業が少なくとも1,160 億ドルの契約を結んでいること、中国の核兵器製造関連の国営企業が資金調達のための債券を発行していること、ロシア、イスラエル、パキスタン及び北朝鮮の動向は不透明であることなどが明らかにされた234。また、2019 年10 月に公表した報告書では、77 の金融機関が、核兵器製造者への投資を制限するポリシーを制定しているとの調査結果を明らかにした235。スイス及びルクセンブルクでは、核兵器のための投資を制限する国内法が制定された。また、ノルウェー及びスウェーデンの公的年金基金は、核兵器開発・製造に関与する企業を投資先から除外している236。


230 “Chair’s Report of the Group of Eminent Persons for the Substantive Advancement of Nuclear Disarmament,” October 2019, https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000529774.pdf.
231 “Statement by India,” UNGA First Committee, October 14, 2020.
232 A/RES/75/61, December 7, 2020.
233 ICAN and PAX, Shorting Our Security- Financing the Companies that Make Nuclear Weapons, June 2019.
234 ICAN and PAX, Producing Mass Destruction: Private Companies and the Nuclear Weapons Industry, May 2019.
235 ICAN and PAX, Beyond the Bomb: Global Exclusion of Nuclear Weapon Producers, October 2019.
236 IKV Pax Christi and ICAN, Don’t Bank on the Bomb: A Global Report on the Financing of Nuclear Weapons Producers—2018, March 2018. 日本では、りそなホールディングスと九州フィナンシャルグループが同種の表明を行っている。2020 年には、メガバンクを含む日本の16 の銀行が、核兵器を運搬するミサイルの製造などに携わる企業への投融資を自制する指針を定めていることが報じられた(「銀行が核兵器関連企業へ投資自制」『福井新聞』2020 年5 月3 日、https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1080130)。また、三菱UFJ フィナンシャル・グループ(MFG)は、企業に対する投融資指針を改定し、核兵器の製造への融資を禁止すると明記した(「核兵器製造への融資禁止」『共同通信』2020 年6 月7 日、https://jp.reuters.com/article/idJP2020060701001280)。さらに12 月には、生命保険主要4 社が核兵器製造・関連企業への投融資を自制していると報じられた(“Major Japan Life Insurers Shun Investing in Nuke Weapon-Linked Firms,” Kyodo News, December 12, 2020, https://english.kyodonews.net/news/2020/12/e6fc3a6e00ab-major-japan-life-insurers-shun-investing-in-nuke-weapon-linkedfirms.html)。

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