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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024(13) 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携

軍縮・不拡散教育、並びに軍縮・不拡散における市民社会との連携や多様性・包摂性の重要性は、ますます重視されてきた。

日本はNPT準備委員会に提出した作業文書で、軍縮・不拡散教育に関する自国のこれまでの様々な取組を紹介するとともに274、「被爆の実相を世界に伝えることは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点である。私たちは被爆者の方々とともに、『核兵器のない世界のためのユースリーダー基金』をはじめ、世代を超えて核兵器使用の実態を伝え続けていく」275とした。また、日本は2023年3月、「核兵器国、非核兵器国の双方から未来のリーダーを日本に招き、広島及び長崎において被爆の実相に触れてもらい、我が国を含め、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークを作ることを目的として、我が国として拠出するもの」として「ユース非核リーダー基金」を立ち上げ、国連軍縮部(UNODA)に対し1,000万ドルを拠出した276。このプログラムへの参加者の募集が同年5月に開始され277、第1期のプログラムが12月中旬から始まった。

NPT準備委員会では、NPDI、韓国、スウェーデンなども核軍縮・不拡散教育の重要性を強調した。また、豪州、カナダ、メキシコ、ノルウェー、スウェーデンなどが作業文書「NPTにおけるジェンダー主流化の取組を前進させるために」278を提出した。このほかにも主として西側諸国が、ジェンダー問題の重要性を会合で指摘した。

TPNW第2回締約国会議で採択された「宣言」では、「条約のジェンダー条項を再確認し、核軍縮には女性と男性の平等で完全かつ効果的な参加が不可欠であることを確認する」とした。また、前回会合に続いて、会期間に条約のジェンダー条項の実施を支援するジェンダー・フォーカル・ポイントを設置することが合意された。

国連総会では、軍縮・不拡散教育や若者の関与のさらなる促進を求める決議「若者、軍縮及び不拡散」が無投票で採択された279。また、日本提案の核軍縮決議では、軍縮・不拡散教育について、以下のように記載された。

核軍縮・不拡散教育は、核兵器のない世界を実現するために、NPTの目標を前進させる有用かつ効果的な手段であり、特に、対話の場、メンタリング、インターンシップ、フェローシップ、奨学金、モデルイベント、ユースグループ活動などを通じて、若い世代が積極的に参加できる取組であり、また核兵器使用の現実に対する認識を高めるため、特に、指導者、青少年、その他の人々による、国籍や出身にかかわらず核兵器使用に苦しめられた被爆者を含む地域社会や人々への訪問や交流を通じて、その経験を次世代に伝えることを歓迎し、この点に関する具体的な措置、特に、5核兵器国の学会のヤング・プロフェッショナル・ネットワーク、Youth4Disarmamentイニシアティブ、「軍縮教育:学習のためのリソース」、「核兵器のない世界のためのユースリーダー基金」を歓迎する。

2023年に開催されたNPT準備委員会280、TPNW締約国会議281、及び国連総会第一委員会282では、非政府組織(NGO)などが参加するサイドイベントも開かれ、一部の参加国が会合を主催した。また、前回に続いてTPNW第2回締約国会議には、NGOなども数多く参加しただけでなく、(会期を通じて特定の1セッションでのみNGOなどの演説が認められるNPT運用検討会議とは異なり)各セッションで発言枠が設けられ、政府代表団とともに発言・議論ができるなど、市民社会の参加をより強く印象づけた。

「市民社会との連携」に関しては、各国政府が核軍縮・不拡散に関する情報をどれだけ国内外の市民に向けて提供しているかも判断材料となる。調査対象国のうち、豪州、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、英国、米国といった国々のホームページ(英語版)では、(核)軍縮・不拡散に関するセクションが設けられ、程度の差はあるものの他国と比べて充実した情報が掲載されている。

近年の動きとして、核兵器の開発・製造などに携わる組織や企業などへの融資の禁止や引揚げ(divestment)が提案され、実際にこれを定める国が出始めている。他方で、ICANが2023年6月に公表した報告書では、以下のようにとりまとめられた。

2022年に、9核保有国は829億ドルを核兵器に支出し、そのうち民間部門は少なくとも290億ドルを得た。…核兵器に関する未払いの契約は少なくとも2,786億ドルあり、そのうちのいくつかは何十年も期限切れにならない。2022年には、少なくとも159億ドルの新たな核兵器契約が締結された。核兵器製造を受注した企業は政府へのロビー活動に投資し、米国とフランスで1億1,300万ドルを費やした。核兵器製造企業、核保有国政府、そして核同盟国企業・政府は、核保有国の核兵器について研究・執筆している最も著名なシンクタンク10社に、合わせて2,100万ドルから3,600万ドルの資金を提供している283。


274 NPT/CONF.2026/PC.I/WP.3, June 5, 2023.
275 “Statement by Japan,” First PrepCom for the 11th NPT RevCon, July 31, 2023.
276 「『ユース非核リーダー基金』設立のための国連軍縮部(UNODA)に対する資金拠出』外務省、2023年3月14日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_001101.html。
277 「『ユース非核リーダー基金』プログラム参加者の募集開始」外務省、2023年5月18日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009715.html。
278 NPT/CONF.2026/PC.I/WP.25, July 27, 2023.

279 A/RES/78/31, December 4, 2023.

280 豪州、オーストリア、フランス、ドイツ、日本、カザフスタン、韓国、オランダ、ノルウェー、南アフリカ、スイス、英国、米国などがサイドイベントを主催した。
281 オーストリア、カザフスタンなどがサイドイベントを主催した。
282 オーストリア、エジプト、フランス、ドイツ、カザフスタン、韓国、オランダ、ノルウェー、パキスタン、英国、米国などがサイドイベントを主催した。

283 ICAN, Wasted: 2022 Global Nuclear Weapons Spending, June 2023, p. 4.

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