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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023(4) IAEA との協力

IAEA保障措置の強化策として最も重視されているものの1つが、追加議定書の普遍化である。本調査対象国のうち、豪州、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、英国及び米国は、包括的保障措置に加えて、IAEA追加議定書のもとでの保障措置が、現在のIAEA保障措置システムの標準、あるいは「一体不可分な部分(integral part)」だと主張している。
これに対して、NAM諸国(一部の国を除く)は、「保障措置に関する追加的な措置は、核兵器の不拡散をすでに約束し、核兵器オプションを放棄した非核兵器国たる締約国の権利を損なったり、条件を付けたり、あるいはいかなる形であれ悪影響を及ぼしたりしてはならない」としたうえで、「法的義務と自主的な信頼醸成措置とを明確に区別することが基本であり、そのような自主的な約束が法的保障措置の義務になってはならないことを強調」した117。ブラジルも、追加議定書の締結は自発的措置であるとして、IAEA保障措置システムの標準とすることに反対している118。他方で、2002年に追加議定書を締結している南アフリカは、追加議定書の締結は自発的措置であるとしつつ、その普遍化は支持している。
NPT運用検討会議の最終文書案では、「追加議定書の締結は国の主権的決定であるが、いったん発効すれば追加議定書は法的義務になることに留意する」とし、また「追加議定書を締結していないすべての締約国に対して、追加議定書を締結し発効させ、追加議定書の遵守を広く奨励するIAEAの努力を支持するよう奨励する」と記述された。
2022年のIAEA総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」では、追加議定書に関して、前年の決議と同様に下記のように言及された119。

➢ 追加議定書の締結はIAEA加盟国の主権的な決定だが、いったん発効すれば追加議定書は法的義務となることに留意しつつ、追加議定書の締結・発効を行っていない加盟国に対して、可能な限り早期に締結・発効を行うこと、並びに発効までの間は暫定的に履行することを奨励する。
➢ 効力を持つ追加議定書によって補完される包括的保障措置協定を有するIAEA加盟国のケースでは、これらの措置は、強化された検証標準を受諾していることを意味する。

IAEA保障措置の強化・効率化に関して、IAEAは、各国の原子力活動について幅広い情報を検討し、これに従って各国において個別の(tailor-made)保障措置活動を調整するという「国レベルの保障措置概念(SLC)」に基づき、「国レベルの保障措置アプローチ(SLA)」を開発・承認してきた。
IAEAの報告書「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」によれば、IAEAは2022年6月末時点で、拡大結論を得た70カ国、包括的保障措置協定及び追加議定書を発効させているものの拡大結論を得ていない37カ国、包括的保障措置協定は発効させているものの追加議定書については未発効の26カ国についてSLAを開発・承認した120。また、同報告書によれば、VOA及び追加議定書を発効している2カ国(フランス及び英国)に対してSLAを開発した121。
保障措置技術の研究開発に関しては、IAEAの長期プラン122のもとで、当面の計画として「核検証のための開発・実施支援計画2022~23年」が実施され、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、スイス、英国、米国など22カ国と欧州委員会(EC)が参加している123。
2022年9月にIAEAが公表したデータによれば、調査対象国でIAEAへの2021年の分担金を未支払いなのは、ブラジル及びイランである124。

 


117 Ibid.

118 “Statement by Brazil,” Cluster 2, 2019 NPT PrepCom, May 3, 2019. ブラジルはアルゼンチンとの間でABACCという国際機関による相互監視を受諾しており、この監視が追加議定書に代替するものだとしている。
119 GC(66)/RES/10, September 2022.
120 GC(66)/136, August 3, 2022.
121 Ibid.
122 IAEA, “IAEA Department of Safeguards Long-Term R&D Plan, 2012-2023,” January 2013.
123 IAEA, “Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification 2022-2023,” January 2022.

124 GC(66)/INF/9, September 23, 2022.

 

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