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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023評点及び評価基準

本「評価書」は、核軍縮、核不拡散及び核セキュリティの各分野における調査対象国の取組状況について、調査・分析の結果を取りまとめた「報告書」をもとに、これを評価し、数値化することを試みたものである。

これらの分野における各国の取組状況を評価すると言っても、核兵器国と非核兵器国とでは、核兵器への関わり方が異なることからも分かるように、様々な立場にある調査対象国すべてを同一のものさしで評価することは困難である。

そこで、『ひろしまレポート』では、次の表のとおり,調査対象国を一定のグループに区分し、そのグループごとに配分される評点やそれを合計した最高評点自体が異なる方法を採った。

そのうえで、各分野における各国の取組状況の相対性を表すための手法の1つとして、調査対象国の評点率(評点/最高評点)を算出し、その結果を分野ごとにグラフ化した。

また、各分野の評価項目について、評点及び評価基準を次ページの一覧のとおりに設定した。

【核軍縮】

評価項目 評点 評価基準
1. 核兵器の保有数(推計) -20  
核兵器の保有数(推計) (-20) -5(~50発); -6(51~100発); -8(101~200発); -10(201~400発);-12(401~1,000発); -14(1,001~2,000発); -16(2,001~4,000発);-17(4,001~6,000発); -19(6,001~8,000発);-20(8,001発~)
(非核兵器国については評価せず)
2. 核兵器のない世界の達成に向けたコミットメント 9  
A) 日本、NAC及びNAMがそれぞれ提案する核軍縮に関する国連総会決議への投票行動 (6) 3つの決議のそれぞれについて、0(反対);1(棄権);2(賛成)
B) 重要な政策の発表、活動の実施 (3) 「核兵器のない世界」への国際的な機運に大きなインパクトを与えた政策、提案、会議の開催、その他イニシアティブにつき各1点を加点(最高3点)
C) 核軍縮に逆行する行動 (-3) 核軍縮に逆行する行動(他の項目で評価される行動を除く)について、1~3点を減点
3. 核兵器の非人道的結末 5  
A) 国連総会決議への投票行動 (2) 2つの決議のそれぞれについて、0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
B) 国際会議や共同声明への参加 (1) 核兵器の非人道的結末に関する国際会議及び共同声明への参加について、それぞれ0.5点
C) 被害者援助、環境回復 (2) 被害者援助・環境回復の実施、及び取組のイニシアティブについて、それぞれ1点
4. 核兵器禁止条約(TPNW) 10  
A) TPNW署名・批准 (7) 0(未署名);3(未批准);7(批准)
未署名国については、会議へのオブザーバー参加の場合に1点
B) TPNWに関する国連総会決議への投票行動 (1) 0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
C) 核兵器の法的禁止に関する国連総会決議への投票行動 (2) 2つの決議のそれぞれについて、0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
5. 核兵器の削減 22  
A) 核兵器及び核兵器を搭載可能な運搬手段の削減 (15) ・核兵器保有数を公表している場合、前年度からの削減率×10により、1~10点を加点;保有数を公表していない場合、「(前年の保有数(推計値)-最新の保有数(推計値))÷保有数(前年)」で削減率を算出し、これを10倍して得点に加点 ・過去5年間に核兵器の削減に従事している場合は1点、法的拘束力のある核兵器削減条約などの締約国である場合には1点、調査対象の年に新たに一層の削減を打ち出し、実施した場合には1点を、それぞれ加点 ・保有する核兵器を全廃した場合には満点(15点)を付与 ・核兵器保有数が過去5年間に増加し、削減されていない場合には、1点減点
(非核兵器国については評価せず)
B) 核兵器の一層の削減に関する具体的計画 (3) 0(削減計画・構想に関する表明なし);1(おおまかな削減計画・構想の表明);2(削減規模に関する計画・構想の表明);3(具体的かつ詳細な削減計画の表明)
(非核兵器国については評価せず)
C) 核兵器能力の強化・近代化の動向 (4) 0(核兵器削減に逆行するような核戦力近代化・強化);2~3(核兵器の数的強化はもたらさない可能性のある近代化・強化);4(強化・近代化せず)
(非核兵器国については評価せず)
6. 国家安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の低減 12  
A) 国家安全保障戦略・政策、軍事ドクトリンにおける核兵器の役割及び重要性の現状 (-8) 国家安全保障を核兵器に依存する国として-6点;核兵器を用いた恫喝などの行為について-2点
(非核兵器国については評価せず)
B) 先行不使用、「唯一の目的」、あるいは関連ドクトリンに関するコミットメント (3) 0(いずれの政策も採用せず);2(類似の政策の表明、または将来的にいずれかの政策を採用する意思を表明);3(いずれかの政策の表明)
コミットメントに反する行動については2点減点、コミットメントを疑わせるような言動については1点減点
(非核兵器国については評価せず)
C) 消極的安全保証 (2) 0(表明せず);1(条件付きで表明);2(無条件で表明)
コミットメントに反する行動はついては2点減点、コミットメントを疑わせるような言動については1点減点
(非核兵器国については評価せず)
D) 法的拘束力のある非核兵器国への安全の保証に関する国連総会決議への投票行動 (1) 0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
E) 非核兵器地帯条約議定書への署名・批准 (3) 1つの議定書への批准につき0.5点加点;すべての議定書に批准している場合は3点
(核兵器国以外については評価せず)
F) 拡大核抑止への依存 (-5) (核兵器国及びNPT非締約国については評価せず)
(非核兵器国にのみ適用)核の傘のもとにあり、かつ核シェアリングを行っている国は-5点;核の傘に安全保障を依存する国は-3点;核の傘のもとにない国は0点
G) 核リスク低減 (3) 核兵器国・NPT非締約国:核リスク低減に関する具体的措置の実施について1~2点、提案やイニシアティブについて1点
非核兵器国:提案やイニシアティブに関して1点
H) 核リスクを高める行動 (-3) 核リスクを高める行動について3点減点
7. 警戒態勢の低減、あるいは核兵器使用を決定するまでの時間の最大限化 4  
警戒態勢の低減、あるいは核兵器使用を決定するまでの時間の最大限化 (4) 0~1(高度な警戒態勢の維持);2(高度ではないものの一定の警戒態勢の維持);3(平時における警戒態勢解除);警戒態勢(低減)の信頼性を示すための措置の実施については1点加点
(非核兵器国については評価せず)
8. 包括的核実験禁止条約(CTBT 12  
A) CTBT署名・批准 (4) 0(未署名);2(未批准);4(批准)
B) CTBT発効までの間の核爆発実験モラトリアム (3) 0(なし);2(宣言);3(宣言し、核実験場を閉鎖)
(非核兵器国については評価せず)
C) CTBTに関する国連総会決議への投票行動 (1) 0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
D) CTBTO準備委員会との協力 (2) 0(なし、情報なし);1~2(分担金の負担、会合への積極的な参加、発効促進へ向けた積極的なアウトリーチ活動の展開など)
E) CTBT検証システム構築への貢献 (2) 1 (IMS設置・稼働状況);1 (検証の強化に関する議論への参加)
F) 核実験の実施 (-3) -3(過去5年間に核爆発実験を実施);-1(核爆発を伴わない実験を実施、あるいは実施状況は不明);0(核兵器にかかる実験を実施せず)
(非核兵器国については評価せず)
9. 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT) 10  
A) FMCTに関する即時交渉開始に向けたコミットメント、努力、提案 (4) 1(コミットメントの表明);1(促進への積極的な取組);1~2(交渉開始にかかる具体的提案)
B) FMCTに関する国連総会決議への投票行動 (1) 0(反対);0.5(棄権);1(賛成)
C) 兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム (3) 0(なし);1(宣言はしていないものの生産せず);2(宣言);3(宣言を裏付ける措置の実施)
(非核兵器国については評価せず)
D) 検証措置の開発に対する貢献 (2) 0(なし、情報なし);1(検証措置の研究に関する提案);2(検証措置の研究開発の実施)
10. 核戦力、兵器用核分裂性物質、核戦略・ドクトリンの透明性 6  
核戦力、兵器用核分裂性物質、核戦略・ドクトリンの透明性 (6) 1~2(核戦略・ドクトリンの公表);1~2(核戦力に関する公表);1~2(兵器用核分裂性物質に関する公表)
(非核兵器国については評価せず)
11. 核軍縮検証 7  
A) 核軍縮検証の受諾・実施 (3) 0(受諾・実施せず);2(限定的な検証措置の受諾・実施);3(包括性、完全性を伴う検証措置の受諾・実施);-2~-1(受諾するものの実施状況に問題がある場合、あるいは不遵守の場合)
(非核兵器国については評価せず)
B) 核軍縮検証措置の研究開発 (1) 0(実施せず、または情報なし);1(研究開発の実施)
C) 軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質に対するIAEA査察の実施 (3) 0(実施せず);1(限定的な実施);3(実施);既に実施(3点)している場合を除き、実施及び実施状況の強化に向けた取組を行っている場合には1点加点
(非核兵器国については評価せず)
12. 不可逆性 7  
A) 核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施または計画 (3) 0(なし、情報なし);1(実施していると見られるが明確ではない);2~3(実施)
(非核兵器国については評価せず)
B) 核兵器関連施設などの解体・転換 (2) 0(なし、情報なし);1(一部について実施);2(広範に実施)
(非核兵器国については評価せず)
C) 軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質の廃棄や平和的目的への転換など (2) 0(なし、情報なし);1(一部について実施);2(広範に実施)
(非核兵器国については評価せず)
13. 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携 4  
軍縮・不拡散教育、市民社会との連携 (4) NPT運用検討プロセスなどでの言及、共同声明への参加;ジェンダー問題に関する言及、共同声明への参加;軍縮・不拡散教育の実施;市民社会との連携(最高4点)
14. 広島・長崎の平和記念式典への出席状況 1  
広島・長崎の平和記念式典への参列 (1) 0(不参加);0.5(調査対象年は不参加ながら、過去3年間に1回以上の参加);1(いずれかに参加)

 

【核不拡散】

評価項目 評点 評価基準
1. 核不拡散義務の遵守 20  
A) NPTへの加入 (10) 0(未署名);3(未批准);10(発効);加入後、脱退を表明した国は0
0(NPT第1条または第2条違反);3~4(NPT違反には至らないものの拡散懸念を高める行動、または関連核問題について採択された国連安保理決議への違反);5(不遵守問題の解決に向けた具体的措置の実施);7(遵守)
B) NPT第1条及び第2条、並びに関連安保理決議の遵守 (7) NPT非締約国に関しては、当該核問題に関する国連安保理決議を遵守していない場合は2点、それ以外の場合は3点(3点満点)
C) 非核兵器地帯 (3) 非核兵器地帯条約への署名には1点、批准には3点
D) 核不拡散に反する行動 (-4) NPT違反ではないものの、核不拡散に反する行動について、1~4点を減点
2. IAEA保障措置(NPT締約国である非核兵器国) 18  
A) 包括的保障措置協定の署名・批准 (4) 0(未署名);1(未批准);4(発効)
B) 追加議定書の署名・批准 (5) 0(未署名);1(未批准);3(暫定適用);5(発効)
C) 統合保障措置への移行 (4) 0(なし);2(拡大結論);4(移行)
D) IAEA保障措置協定の遵守 (5) 0(違反及び未解決);2(不遵守問題の解決に向けた具体的取組);5(遵守)
3. IAEA保障措置(核兵器国及びNPT非締約国) 7  
A) 平和的目的の施設に対するIAEA保障措置の適用 (3) 0(なし);2(INFCIRC/66を適用);3(自発的保障措置協定〔VOA〕を適用)
B) 追加議定書の署名・批准・実施 (4) 0(未署名);1(未批准);3(発効);発効し、原子力活動に広く適用されている場合には1点加点
4. IAEAとの協力 4  
A) IAEAとの協力 (4) 検証技術の開発への貢献(1);追加議定書普遍化の取組(1~2);その他(1)
B) IAEA保障措置を阻害する行動 (-2) IAEAの活動を阻害するような行動について1~2点減点
5. 核関連輸出管理の実施 15  
A) 国内実施システムの確立及び実施 (5) 0(国内実施法・体制なし);1(不十分ながらも国内実施法・体制を整備);2(一定の国内実施法・体制を整備);3(キャッチオールの導入などを含む国内実施法・体制を整備);一定期間にわたって適切な輸出管理を実施している場合には1~2点加点;適切な実施がなされていない場合には1~2点減点
B) 追加議定書締結の供給条件化 (2) 0(なし、情報なし);1(一部について実施、あるいは実施すべきと主張);2(実施)
C) 北朝鮮及びイラン問題に関する安保理決議の履行 (3) 0(なし、情報なし);2(実施);3(積極的な実施);多くの違反の指摘がある場合には1~3点減点
D) PSIへの参加 (2) 0(未参加);1(参加);2(積極的な参加)
E) NPT非締約国との原子力協力 (3) 0(積極的な実施・検討);1~2(協力対象国による追加的な核軍縮・不拡散措置の条件化を通じた実施、または実施の検討);3(慎重または反対)
6. 原子力平和利用の透明性 4  
A) 平和的目的の原子力活動の報告 (2) 0(なし、情報なし);1(不十分ながらも報告);2(報告)
B) プルトニウム管理に関する報告 (2) 0(なし、情報なし);1(報告);2(ウランについても報告);報告の義務はないが、プルトニウム保有量について高い透明性が確保されている国は1点加点

 

【核セキュリティ】

評価項目 評点 評価基準
1. 兵器利用可能な核物質の保有量及び関連施設の保有 -15  
A) 兵器利用可能な核物質の保有量 (-13) ・HEU:-5(100t以上);-4(50t以上);-3(10t以上);-2(1t以上);-1(1t未満で保有) ・軍事用分離Pu:-5(50t以上);-4(20t以上);-3(5t以上);-2(1t以上);-1(1t未満で保有) ・非軍事用分離Pu:-3(70t以上);-2(30t以上);-1(30t未満で保有)
B) 深刻な放射線影響をもたらしうる施設の保有 (-2) ・実用炉:-1
・再処理施設:-1
保有数ではなく保有の有無。建設段階のものは含まない。
2. 核セキュリティ・原子力安全にかかる諸条約などへの加入及び国内体制への反映 20  
A) 核物質防護条約及び改正条約 (3) 0(条約未署名);1(条約未批准);2(条約発効、改正条約未批准);3(改正条約発効)
B) 核テロ防止条約 (2) 0(未署名);1(未批准);2(発効)
C) 原子力安全条約 (2) 0(未署名);1(未批准);2(発効)
D) 原子力事故早期通報条約 (2) 0(未署名);1(未批准);2(発効)
E) 使用済み燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約 (2) 0(未署名);1(未批准);2(発効)
F) 原子力事故援助条約 (2) 0(未署名);1(未批准);2(発効)
G) 国内実施のための法・制度の確立 (3) 0(国内実施法・体制なし)
1: CPPNM国内実施当局の設置
1: A/CPPNM履行のための国内法制定
1: 14条1項に基づく情報提出
H) IAEA核物質防護勧告 (INFCIRC/225/Rev.5) (4) 0(なし、情報なし)
・NTI 核セキュリティ・インデックス2020年版の「セキュリティ・管理措置」及び「施設の防護」の項目の平均スコアを利用
・80点以上:4
・60点以上:3
・50点以上:2
・35点以上:1
・35点未満:0
3. 核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組 17  
A) 民生利用におけるHEUの最小限化 (4) 0(なし、情報なし);1(限定的な実施:過去に取組あり);3(積極的な実施);さらなる強化のコミットメントには1点加点
3(積極的な実施)の内訳:
2:評価対象期間の削減または過去に完全除去
1:継続的な取組(技術開発の取組を含む)
B) 国際評価ミッションの受け入れ (4) 0(なし、情報なし)
2:評価対象期間のミッション受け入れ(1:ミッション受け入れの表明)
1:過去5年以内のミッションの受け入れ若しくは過去2度以上の受け入れ
1:ミッション報告書の一部開示
C) 技術開発―核鑑識 (2) 0(なし、情報なし);1(実施:ITWG、CMX、INFCIRC/917などへの参加);2(積極的な実施:評価対象期間中の主だった活動の実施あるいは発表)
D) 人材育成・能力構築及び支援活動 (2) 0(なし、情報なし);1(実施:COE、関連機関設置、訓練コース、ワークショップなどへの参加、地域・国際支援活動);2(新たな実施:評価対象期間中の主だった新たな活動)
E) IAEA核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金 (2) 0(なし、情報なし);1(実施: 評価対象期間に拠出あり);2(積極的な実施:継続的な拠出(※評価対象期間に拠出が確認できなくとも継続性がある場合には加点))
F) 国際的な取組への参加
G7GP、GICNT、INFCIRCイニシアティブ、ITDB、二国/多国間支援など
(3) 0(参加せず);1(2つ以上に参加);2(4つ以上に参加);積極的に貢献している場合には1点加点
4.国家がもたらす核セキュリティ上の脅威への対応 -2  
A) 平和目的の原子力施設攻撃禁止の国際規範へのコミットメント、取組強化 (1) 0(なし、情報なし);1(コミットメントの表明、提案等
B) 原子力施設に対する攻撃 (-3) 0(なし);-3(原子力施設に対する攻撃)

 

 

評価については、項目ごとに可能な限り客観性に留意した評価基準を設定し、これに基づいて各国の取組や動向を採点した。本事業の研究委員会は、各国のパフォーマンスを採点する難しさ、限界及びリスクを認識しつつ、優先課題や緊急性についての議論を促すべく核問題への関心を高めるために、そうしたアプローチが有益であると考えた。

各具体的措置には、それぞれの分野(核軍縮、核不拡散、核セキュリティ)内での重要性を反映して、異なる配点がなされた。この「重要性」の程度は、本事業の研究委員会による検討を通じて決定された。他方、それぞれの分野に与えられた「最高評点」の程度は、他の分野との相対的な重要性の軽重を意味するものではない。つまり、核軍縮(最高評点109点)は、核不拡散(最高評点61点)あるいは核セキュリティ(最高評点38点)の2倍程度重要だと研究委員会が考えているわけではない。

「核兵器の保有数」(核軍縮)及び「兵器利用可能な核分裂性物質の保有量」(核セキュリティ)については、より多くの核兵器、または兵器利用可能な核分裂性物質を保有する国は、その削減あるいはセキュリティ確保により大きな責任があるとの考えにより、多く保有するほどマイナスの評価とした。研究委員会は、「数」あるいは「量」が唯一の決定的な要因ではなく、核軍縮、核不拡散及び核セキュリティにはミサイル防衛、生物・化学兵器、あるいは通常兵器の不均衡などといった他の要因も影響を与えることを十分に認識している。しかしながら、そうした要因は、客観的(無論、相対的なものではあるが)な評価基準の設定が難しいこともあり、これらを評価項目には加えなかった。また、『ひろしまレポート2013年版』に対して寄せられた意見を受け、『ひろしまレポート2014年版』からは、国家安全保障の核兵器への依存、及び核実験の実施に関しては、その程度によってマイナスの評価を行うこととし、『ひろしまレポート2019年版』以降は同様の評価手法を採っている。

なお、『ひろしまレポート2018年版』より、核兵器禁止条約(TPNW)の署名開放を受けてこれへの署名・批准状況を新たに評価項目に加えた。また、『ひろしまレポート2019年版』より、広島だけでなく長崎の平和記念式典への出席状況を評価項目に加えた(当該項目の最高評点は変化なし)。『ひろしまレポート2020年版』より、核兵器保有数が過去5年間に増加して削減されていない場合、並びに評価項目ではカバーされないものの核軍縮及び核不拡散に明らかに逆行する行動については、それぞれマイナスの評価を行うこととした。さらに、『ひろしまレポート2021年版』より、核不拡散に反する行動への減点の幅を大きくした。国際原子力機関(IAEA)核物質防護勧告(INFCIRC/225/Rev.5)の実施状況の評価基準の幅を拡大し、内部脅威やサイバーセキュリティ対策の実施についてプラスの評価を行うこととした。また、国内実施のための法・制度の確立の評価項目についても評価基準の幅を拡大した。さらに、各国による2021年の取組のみならず、従来の取組で今回の調査の結果判明した取組についても評点を与えることとした。
『ひろしまレポート2023年版』では、核問題を取り巻く新たな動向や2022年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議及びTPNW第1回締約国会議の開催などを踏まえ、状況の変化を反映させるべく評価項目及び評価基準の見直しを行った。変更点は以下に挙げたとおりである。また、前年までの評価項目・基準との対照表を巻末に添付する。
核兵器国については、核軍縮の分野における6つのポイントを掲げ、各ポイントに対応する項目の評価を整理し、レーダーチャート(クモの巣グラフ)の形で示すことにより、より多角的な分析を行った。

『ひろしまレポート2023年版』での調査項目・評価基準の見直し

核軍縮

➢ 核兵器のない世界の達成に向けたコミットメント:「重要な政策の発表、活動の実施」における評価基準の1つとしていた「核軍縮に逆行する行動」を、独立した中項目にし、評点は変更しないものの、評価基準について、「他の項目で評価される行動を除く」ことを新たに明記。

➢ 核兵器の非人道的結末

  • 「核兵器のない世界の達成に向けたコミットメント」の中項目として評価していたものを、TPNWでの取扱などを踏まえた評価項目の増加に伴い、独立した大項目に変更。
  • 新たな中項目として、「国際会議や共同声明への参加」、及び「被害者支援、環境回復」に関する取組の状況を設定。

➢ 核兵器禁止条約

  • 「TPNW署名・批准」:第1回締約国会議が開催されたことを受けて、評価基準にオブザーバー参加を追加。
  •  3つの国連総会決議への投票行動について、TPNWに関するものと、他の2つに関するものとに評価項目を分割(全体としては、評価基準に変更はなし)。

➢ 国家安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の低減

  • 「国家安全保障戦略・政策、軍事ドクトリンにおける核兵器の役割及び重要性の現状」:核恫喝の下での侵略行為が勃発したことも踏まえ、従来の核兵器への依存(核保有国に一律に減点)に加え、核恫喝などの行為への減点を評価基準に設定。当該評価項目のトータルの評点(減点)に変更はなし。
  • 「先行不使用」と「消極的安全保証」について、宣言政策と異なる行動などが生じたことを明らかにするため、それぞれ、コミットメントに反する行動や、コミットメントを疑わせるような言動について減点を設定。
  • 非核兵器国への安全の保証が重要な論点になったことを受け、評価項目として「法的拘束力のある非核兵器国への安全の保証に関する国連総会決議への投票行動」を新設。
  • 核リスク低減が重要な論点になったことを受け、評価項目として「核リスク低減」を新設。

➢ CTBT:CTBTを巡る状況や調査対象国の対応をより明確化すべく、「CTBTに関する国連総会決議への投票行動」を新設。

➢ FMCT:FMCTを巡る状況や調査対象国の対応をより明確化すべく、「FMCTに関する国連総会決議への投票行動」を新設。

➢ 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携:第10回NPT運用検討会議での議論を踏まえ、評価基準を「NPT運用検討プロセスなどでの言及、共同声明への参加;ジェンダー問題に関する言及、共同声明への参加;軍縮・不拡散教育の実施;市民社会との連携」に変更(トータルの評点に変更はなし)。

 

核不拡散

➢ 核不拡散義務の遵守:中項目「NPT第1条及び第2条、並びに関連安保理決議の遵守」の評価基準の1つとしていた「核不拡散に反する行動」を、独立した中項目として設定(評点に変更はなし)。

➢ IAEAとの協力:IAEA保障措置を妨げる行為が発生していることを踏まえ、評価項目に「IAEAの活動を阻害するような行動」への減点を追加。

 

核セキュリティ
➢ 兵器利用可能な核物質の保有量

  • 現時点での各国の保有量を踏まえた減点区分となるよう基準保有量を修正。
  •  プルトニウムに関する分類名称を「兵器級プルトニウム」から「軍事用分離プルトニウム」及び「原子炉級プルトニウム」から「非軍事用分離プルトニウム」に変更。変更前の分類名称でのデータ収集が困難なため、今日においてより一般的に使用され、安定したデータ入手が可能な分類名称に変更。
  • 深深刻な放射線影響をもたらしうる施設の保有」の評価項目を追加。核物質の盗取のリスクのみならず、原子力施設に対する妨害破壊行為のリスクも近年懸念されていることを受けた追加。実用炉、再処理施設以外にも妨害破壊行為がなされた場合に放射線影響が生じうる施設はあるが、深刻な影響が生じうる主たる代表的な施設として2つを選定。

➢ 国内実施のための法・制度の確立

  • IAEA核物質防護勧告」について、評点基準を明確化するため、また客観的評価の観点から、世界的に最も認知されているNTI(核脅威イニシアティブ)の核セキュリティ・インデックスのスコアを利用する評価方法に変更。
  • 「国内実施のための法・制度の確立」について、核セキュリティ関連条約の中で中心的な位置づけにある「核物質防護条約」を取り上げ、その国内実施のための法・制度の確立」を評価したことから、IAEA勧告文書ではなく一連の条約の最後の項目である「F)原子力事故援助条約」の直後に移動し、「2-G」に変更。
  • 「国内実施のための法・制度の確立」について、加点基準を明確化。

➢ 核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組

  • 「民生利用におけるHEU及び分離プルトニウム在庫の最小限化」から「分離プルトニウム在庫」を削除(民生用分離プルトニウム在庫については、「項目1」で「非軍事用分離プルトニウム」として評価され ており、重複するため)。また、この評価項目の評価基準を明確化。
  • 「不法移転の防止」について、客観的な評価が可能な各国のデータ入手が困難なため削除。
  • 「国際評価ミッションの受け入れ」について、評価基準を明確化。
  • 「技術開発-核鑑識」の評価基準を明確化。
  • 「人材育成・能力構築及び支援活動」について、評価基準を明確化。
  • 「IAEA核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金」について、評価基準を明確化。
  • 「国際的な取組への参加」について、対象となる国際的な取組を最新のものに修正し、評価基準を明確化。

➢ 「国家がもたらす核セキュリティ上の脅威への対応」の項目を新設(ロシアによるウクライナの原子力施設への攻撃を受けての対応)。

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