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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023第1章  核軍縮 (1) 核兵器保有数

第1章 核軍縮1
(1) 核兵器保有数

2022年末時点で、8カ国が核兵器の保有を公表している。このうち、中国、フランス、ロシア、英国及び米国は、核兵器不拡散条約(NPT)第9条3項で「1967年1月1日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」と定義される「核兵器国(nuclear-weapon states)」である。これら5核兵器国の他に、NPT非締約国のインド及びパキスタン、並びにNPTからの脱退を1993年及び2003年に宣言した北朝鮮が、これまでに核爆発実験を実施し、核兵器の保有を公表した。NPT非締約国のイスラエルは、核兵器の保有を肯定も否定もしない「曖昧政策」を維持しているが、核兵器を保有していると広く考えられている(イスラエルによる核爆発実験の実施は、これまでのところ確認されていない)2。本報告書では、NPT上の核兵器国以外に、核兵器の保有を公表しているか、あるいは核兵器を保有していると見られる上記の4カ国を「他の核保有国(other nuclear-armed states)」と称する。また、核兵器国と他の核保有国を合わせて表記する場合は、「核保有国」とする。

冷戦期のピーク時に70,000発に達した核兵器は、1980年代末以降は大幅に減少してきたが、そのペースは鈍化傾向にある。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、2022年1月時点で世界に存在する核兵器の総数(配備、非配備、廃棄待ちなどを含む)は依然として12,705発にのぼり、このうちの90%程度を米露が保有している。その総数には退役した核弾頭も含まれており、それらを除いた核弾頭数(軍事的ストックパイル)は前年の9,620発から9,440発に、また作戦部隊に配備されている核弾頭数についても前年の3,825発から3,732発に、それぞれ減少した。他方で、SIPRIは、運用中の核弾頭数の削減が停滞しており、再び増加する可能性があるとも言及した3。さらに、核保有国はいずれも核戦力の近代化を積極的に推進し、また安全保障戦略における核兵器の役割を(再び)重視している。

 

核保有国のうち、保有数の上限を公表しているのはフランス及び英国だけである。フランスは2015年に、核兵器保有数の上限が300発で、非配備の核兵器を保有せず、すべての核兵器は配備され運用状況にあると公表した4。他方、英国は2021年3月に公表した「安全保障・防衛・開発・外交政策統合見直し」で、核兵器の総保有量をそれまでの180発以下から260発以下に増加することを明らかにした5。
中国、インド及びパキスタンの核弾頭数は、ここ数年にわたって、それぞれ年10発程度のペースで漸増してきたと見積もられている。また、北朝鮮も核戦力を質的・量的に強化している。
米国は2021年10月に、2020年までの各年の核弾頭保有数を公表した。これによれば、2020年末時点の核弾頭数(配備中・保管中を含むが、退役・解体待ちは含まない)は3,750発で、前年から55発の減少であった。また、これとは別に約2,000発が退役・解体待ちの状態にあり、2020年には184発が解体された6。


1 第1章「核軍縮」は、戸﨑洋史により執筆された。
2 イスラエルのラピド(Yair Lapid)首相は8月1日の演説で、「我々の上空にある見えないドームの作戦領域は、防衛能力と攻撃能力、及び外国メディアが『他の能力』と称するものの上に築かれている。これらの他の能力は我々を生かし続け、今後も我々や子どもたちがここにいる限り、我々を生かし続ける」と述べ、「他の能力」は核兵器を示唆したものと受け止められた。「イスラエル首相、核保有ほのめかす異例の発言」『CNN』2022年8月3日、https://www.cnn. co.jp/world/35191363.html。

3 Stockholm International Peace Research Institute, SIPRI Yearbook 2022: Armaments, Disarmament and International Security (Oxford: Oxford University Press, 2022), chapter 10.
4 NPT/CONF.2015/10, March 12, 2015.
5 United Kingdom, Global Britain in a Competitive Age: The Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy, March 2021, p. 76.
6 National Nuclear Security Administration (NNSA), “Transparency in the U.S. Nuclear Weapons Stockpile,” October 6, 2021, https://www.energy.gov/sites/default/files/2021-10/20211006%20-%20U.S.%20Nuclear%20Stockpile% 20Fact%20Sheet.pdf.

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