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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024第1章  核軍縮 (1) 核兵器保有数

第1章 核軍縮1
(1) 核兵器保有数

2023年末時点で、8カ国が核兵器の保有を公表している。このうち、中国、フランス、ロシア、英国及び米国は、核兵器不拡散条約(NPT)第9条3項で「1967年1月1日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」と定義される「核兵器国(nuclear-weapon states)」である。これら5核兵器国の他に、NPT非締約国のインド及びパキスタン、並びにNPTからの脱退を1993年及び2003年に宣言した北朝鮮が、これまでに核爆発実験を実施し、核兵器の保有を公表した。NPT非締約国のイスラエルは、核兵器の保有を肯定も否定もしない「曖昧政策」を維持しているが、核兵器を保有していると広く考えられている(イスラエルによる核爆発実験の実施は、これまでのところ確認されていない)2。本報告書では、NPT上の核兵器国以外に、核兵器の保有を公表しているか、あるいは核兵器を保有していると見られる上記の4カ国を「他の核保有国(other nuclear-armed states)」と称する。また、核兵器国と他の核保有国を合わせて表記する場合は、「核保有国」とする。

冷戦期のピーク時に70,000発に達した核兵器は、1980年代末以降は大幅に減少してきたが、そのペースは鈍化している。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、2023年1月時点で世界に存在する核兵器の総数(配備、非配備、廃棄待ちなどを含む)は依然として12,512発にのぼり、このうち90%程度を米露が保有している。他方、退役したものを除く核弾頭数(軍事的ストックパイル)は前年の9,440発から9,576発に、また作戦部隊に配備されている核弾頭数についても前年の3,732発から3,844発に、それぞれ増加した3。さらに、核保有国はいずれも核戦力の近代化を積極的に推進し、また安全保障戦略における核兵器の役割を重視している。

核保有国のうち、保有数の上限を公表しているのはフランス及び英国だけである。フランスは2015年に、核兵器保有数の上限が300発で、非配備の核兵器を保有せず、すべての核兵器は配備され運用状態にあると公表した4。英国は、2021年3月に公表した「安全保障・防衛・開発・外交政策統合見直し」で、核兵器の総保有量をそれまでの180発以下から260発以下に増加することを明らかにした5。これらの声明以来、両国とも核兵器の備蓄についてさらなる詳細を明らかにしていない。

近年、中国の核弾頭数増加のペースが加速化しており、SIPRIは前年から60発増加したとの推計を示した。インド及びパキスタンの核弾頭数も、ここ数年にわたって、それぞれ年10発程度のペースで漸増してきたと見積もられている。北朝鮮も核戦力を質的・量的に強化している。


1 第1章「核軍縮」は、戸﨑洋史により執筆された。
2 イスラエルの極右閣僚であるエリヤフ(Amichai Eliyahu)遺産相はインタビューで、ガザ地区への核攻撃の可能性について「それも選択肢の一つだ」と発言し、これに対してネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相が、「エリヤフ氏の発言は現実とかけ離れている」との声明を発表した。 “Netanyahu Rushes for Damage Control, Suspends Minister for Gaza Nuclear Bombing Remark,” Wion, November 5, 2023, https://www.wionews.com/world/netanyahu-rushes-for-damage-control-bans-minister-over-nuclear-bombing-remark-on-gaza-655362.

3 Stockholm International Peace Research Institute, SIPRI Yearbook 2023: Armaments, Disarmament and International Security (Oxford: Oxford University Press, 2023), chapter 10.
4 NPT/CONF.2015/10, March 12, 2015.
5 United Kingdom,Global Britain in a Competitive Age: The Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy, March 2021, p. 76.

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