1 全体概要
【訪問場所】 ニューヨーク(米国)
【取組】
2 主な内容
「第10回NPT運用検討会議」での働きかけ
NPT運用検討会議の場で,2つのサイドイベントを実施しました。1つ目は長崎県と共催で,「核軍縮と私たちの持続可能な未来」をテーマに,核兵器と持続可能性のつながりについて議論し,2つ目は「核抑止から核軍縮へ」をテーマに,前進のための課題と方法について議論しました。また,NPT運用検討会議の主要な関係者に直接面会し,本県の取組への賛同を得るための働きかけを行ったほか,会場で,広島県/HOPeの取組を紹介するバナー展示を行いました。
サイドイベント①の開催【8月1日(月)】
2045年までのできるだけ早い時期に核兵器廃絶を達成するためには,今,何をしなければならないのか,というバックキャストの観点から,様々な団体のビジョンや活動について紹介がありました。併せて核兵器と持続可能性にはどのようなつながりがあるのかについて議論しました。
主な議論
○ ホライズン2045からは,今後の技術的,政治的,経済的,社会的な変化を捉え,規範的,法的枠組を考え,そのつながりを物語化することを通じて,核兵器のない未来を人々が信じ,社会を変え,システム変革に取り組むための新しいアプローチの紹介があった。
○ グローバル・ゼロでは,核兵器の存在が,いかに非白人の人々に,不公平な形で大きな被害を与え,経済や投資に損失をもたらしているかを理解した上で,まずは米露による核削減を実行しながら,法的拘束力のある先制不使用政策を導入する,といった具体的なアプローチの紹介があった。
○ 原子力科学者会報からは,核保有国のうちの一か国,二か国による取組によって,あるいは市民社会が立ち上がることによって,他の兵器や社会運動で見られたような大きな変化を生み出すことができる,との意見があった。
○ リバース・ザ・トレンドでは,気候変動と核兵器問題に関する各国の若者の取組紹介があった。持続可能性という点で気候変動と核兵器問題の2つは深く結びついているという意見のほか,核兵器や核実験によるコストの問題やヒバクシャのトラウマ問題等に取り組んでいるとの紹介があった。
○ 持続可能な未来を作るには,核兵器廃絶は通らなければいけない道だということを参加者と共有し, 最後に,広島県知事と長崎県知事より,核兵器廃絶を求める共同メッセージを発出した。
第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議 広島県知事・長崎県知事共同メッセージ
サイドイベント②の開催【8月2日(火)】
2021年度のSIPRIとの共同研究レポート「最小核抑止 への再訪」をベースに,今後の核軍縮に向けた課題等について,専門家が議論しました。
主な議論
○ 核依存が継続したり高まったりしても,核抑止はもっと少ない核兵器数で可能であり,核軍縮は同時に取り組むことはできる。米露は抑止力を損ねることなく,保有数を現状より大幅に下げることができる。
○ 米露の最小核抑止は,完全な核軍縮に向けた中間ゴールであり,多国間の軍備管理や核軍縮を進めるためには,米露の突出した核保有数を下げ,他の核保有国との均衡を作ることが必要である。
○ 核兵器と通常兵器との区別をしっかりつけることが大切である。特に,核・非核,両者に関わる危険なタイプの核兵器,低出力核を制限することが大事になる。
○ 核兵器は政治的問題を解決するためのツールだったが,現在は大きな認識の違いがあり,この目的にもはや資さないことをきちんと理解するべき。国家間に不信感がはびこっているため,専門家の交流や最小核抑止の議論をもっと自由に行える雰囲気作りが重要だ。
NPT運用検討会議の運営に関わる主要人物等への働きかけ【8月2日(火)~3日(水)】
滞在期間中,NPT運用検討会議の運営に携わる幹部等と個別に面会し,ひろしまラウンドテーブル議長声明や長崎県との共同メッセージを手交するとともに,今会議において,しっかりと核軍縮の取組を進めてもらうよう,直接,働きかけを行いました。
(ア)クメント大使(核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会議議長)との協議
核軍縮が厳しい環境にあるからこそ,これをバネに,世界が核抑止の利用ではなく,核軍縮のビジョンや目標達成に向けた道筋を考えていくことの重要性について,共通認識を得ました。持続可能性と核軍縮の取組やグローバル・アライアンスの紹介を行いました。
(イ)グロッシIAEA事務局長との協議
ウクライナ情勢をめぐる懸念を共有し,この軍縮と逆行する動きの中で,核抑止ではなく,核兵器国の軍縮へどのようにつなげていくか,各国の知恵をどのように集めていくか等について話しありました。また持続可能性の観点から,核兵器問題を提起している旨を伝えました。
(ウ) スラウビネンNPT運用検討会議議長
県から,核抑止に替わる安全保障システムづくりに取り組んでいる旨の紹介を行いました。議長からは,厳しい国際情勢の中でも,NPT加盟各国の共通点を見出し,合意文書の採択に最善を尽くす旨の話がありました。
(エ) カザフスタン共和国国連代表部イリャソフ大使
県から,持続可能性と核兵器問題の提起とともに,核抑止に替わる安全保障システムづくりについて取組を紹介し,賛同を得た。国連総会第1委員会委員長に内定しているイリャソフ国連大使から,核兵器問題は気候変動よりもさらに差し迫った人類共通の課題であること,また同国は,核軍縮分野でリーダーになる用意があること等が話されました。
NPT運用検討会議会場でのバナー展示
○ 期間中,会場に集まった多くの方が通る通路で,県/HOPeの取組を紹介するバナーの展示を行いました。
○ バナーの前で,岸田首相に面会し,直接,県/HOPeの取組を説明するとともに,外務省を通じて,ひろしまラウンドテーブル議長声明及びNPT運用
検討会議に向けた要望書を届けました。
JETROニューヨーク事務所長との面会
JETROニューヨーク事務所にて,県議会団とともに,所長及び関係者から最近の米国経済の動向や日本との関係について,説明を受けました。
3 成果
【NPT運用検討会議への貢献】
NPT運用検討会議の成功に向けては厳しい状況にある,との見方が多くある中,サイドイベントでの専門家の議論を通して,持続可能性と安全保障の2つの観点から,多面的に核兵器廃絶と核軍縮の重要性を訴えることができました。
【賛同者の拡大】
グローバル・アライアンスが推進する,持続可能性の観点から核兵器問題を提起する新しいアプローチについて,サイドイベント参加者や会議関係者等から賛同を得ることができ,今後,ポストSDGsに核兵器廃絶を位置づけていくための大きな弾みとなりました。
【政策づくり】
核抑止に替わる安全保障システムづくりについて,大使等と直接意見交換し,方向性について賛同を得ることができました。
【被爆地からの発信力強化】
被爆県である本県と長崎県が,初めて一緒にサイドイベントを開催し,会議関係者に対し,核兵器廃絶の重要性を共同メッセージとして発信できました。
また,県議会団の派遣は,本県が進める,核兵器のない平和な世界の実現に向けた取組について,自治体を挙げて取り組んでいる姿勢を発信することができ,大きな意義がありました。
【ユース大使の活動】
同行したHOPeユース大使が,サイドイベントに同席して,自分たちの言葉でグローバル・アライアンスへの参加呼びかけを行ったほか,NPT運用検討会議での議論を傍聴するなどの経験をし,次世代の育成につながりました。
4 日程
月 日 | 項 目 | 場 所 |
7/31 (日) |
日本発/現地着
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ニューヨーク |
8/1 (月) |
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ニューヨーク |
8/2 (火) |
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ニューヨーク
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8/3 (水) |
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ニューヨーク |
8/4 (木) |
日本着 |
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※日付表示は現地時間
※組織名称は一部略称使用