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国際平和拠点ひろしま

column 5 被爆者の「声」を聴く

大瀬戸正司・永井 均

はじめに
被爆者は,原爆によって壊滅した広島で,無数の遺体や傷つき,苦しむ人々の姿を目の当たりにした。彼らは,かろうじて命をとりとめたものの,助けを求める人々に手を差し伸べられなかった無念さ,家族や友人を失った悲しみ,傷ついた自身の身体の不調や将来への不安などを抱えながら,懸命に戦後を生きてきた。被爆者は,自分たちと同じ思いをさせてはならないという気持ちから,つらい過去を思い出し,語り,体験記に残すなどして,平和の尊さを訴え続けている。その思い,「声」に耳を傾ける機会は様々な形で開かれている。

 

1.「肉声」を聴く 
被爆者の平均年齢は平成26(2014)年現在で79歳になっており,直接話を聴くことが年々難しくなっている。そうした中で,被爆者の団体や被爆体験を証言するグループなどが,修学旅行などで広島を訪れた子供たちなどに,自らの体験を語る取り組みを行っている。広島平和記念資料館(昭和30[1955]年開館)でも被爆者による被爆体験講話を実施し,さらに被爆者の証言を映像に記録し,公開している。
平成14(2002)年,平和記念公園内に新設された国立広島原爆死没者追悼平和祈念館では,被爆体験を後代に継承するため,平和記念資料館と協力して,被爆者証言の収集と公開に努めている。祈念館はまた,被爆者証言を多言語で紹介する努力もしており,従来の英語や中国語,韓国・朝鮮語に加え,平成27(2015)年2月現在,フランス語やアラビア語など12言語に翻訳して,館内の端末で公開している(翻訳言語は今後も増える予定)。祈念館では,館内のみならず,被爆者証言・体験記を「平和情報ネットワーク」のホームページに掲載し(日本語,英語,中国語及び韓国・朝鮮語),公開するとともにその充実を図っている。
被爆者の「声」は,被爆者の日常を記録したルポルタージュやドキュメンタリーを通しても聴くことが可能だ。例えば,NHK広島放送局の「原爆の記憶ヒロシマ・ナガサキ」やRCC(中国放送)の「平和記念コンテンツ」など放送局のホームページでは映像や音声記録が公開されている。

NHK 広島放送局「原爆の記憶ヒロシマ・ナガサキ」
ウェブサイト https://www.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/no-more-hibakusha/
中国放送(RCC)「平和記念コンテンツ」ウェブサイト http://www.rcc.jp/peace/

 

2.手記を読む 
被爆者は,自身の被爆体験を手記にも残してきた。そこには,被爆直後の惨状だけでなく,被爆前の暮らしや戦時下の日々,戦後の生活,平和への思いなども綴られている。地域単位の被爆者団体が発行したものや自分史など,書店に流通しない私家版の図書が少なくないが,追悼平和祈念館は,あらゆる被爆体験記を収集し,その内容を読み込み,13万点を超える手記をデータベース化して公開している。同祈念館は被爆体験記を多言語に翻訳して紹介し,さらにいくつかの被爆体験記について,日本語と英語による朗読会も行っている。ボランティアの朗読を通して,参加者は様々な情景や作者の思いを耳で聴き,感じ取ることができるだろう。

国立広島・長崎原爆死没者追悼平和祈念館 平和情報ネットワーク ウェブサイト(被爆体験記,証言映像など) http://www.global-peace.go.jp/
国立広島原爆死没者追悼平和祈念館 多言語に翻訳した被爆体験記・証言映像
http://www.hiro-tsuitokinenkan.go.jp/notice/notice.php?ID=192&PageType=0&Language=0
http://www.hiro-tsuitokinenkan.go.jp/notice/notice.php?ID=193&PageType=0&Language=0

 

3.「原爆の絵」に学ぶ
 「市民が描いた原爆の絵」は,市民の手による原爆被災の記録であり,核兵器が人間に何をもたらすかを示す貴重な証言でもある。絵には,写真や映像に記録されていない被爆直後の光景や,断ち切られた家族とのきずなが生々しく描かれ,作者の言葉も添えられている。平和記念資料館は,被爆前の街並みや市民生活などを描いた絵も合わせて約5,000点の絵を所蔵しており,館の内外で展示を行い,ホームページでも公開している。

広島平和記念資料館「平和データベース」 http://www.pcf.city.hiroshima.jp/database/

 

おわりに
広島では,昭和20(1945)年12月末までに約14万人が死亡したと推計され,今日,原爆死没者名簿には約30万人の名前が刻まれている。被爆者一人ひとりに被爆前の暮らしがあり,それぞれに被爆後の歩みがある。その「声」に耳を澄ませ,人生経験を知ることで,原爆被害の甚大さや深刻さが見えてくる。

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