2022年4月14日,核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」の発表会見がありました。
会見日
2022年4月14日(木曜日)
登壇者
- 湯﨑英彦(広島県知事,へいわ創造機構ひろしま(HOPe)代表)
- 阿部信泰(国際平和拠点ひろしま構想推進委員会副座長,元国連軍縮担当事務次長,前内閣府原子力委員会委員)
- 戸﨑洋史(公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター所長)
記者会見の概要
冒頭,登壇者3名から説明がありました。まず,湯﨑知事から発刊の趣旨や概要説明,広島県及びHOPeの取組等,続いて,阿部信泰氏から,核軍縮を巡る状況についての概況説明,最後に,実際に「ひろしまレポート」の編集を担当した戸﨑洋史氏から,2021年の核軍縮,核不拡散,核セキュリティを巡る動向,そして別冊コラム「ロシアのウクライナ侵略と核問題の動向」について,それぞれ発言がありました。
その後,ひろしまレポート作成開始から10年間の振り返りや,今後の国際会議への期待,ロシアのウクライナ侵略問題をはじめとする国際情勢の受けとめなどについて質疑がありました。
※発言及び質疑の詳細は,記者会見録をご覧ください。
「ひろしまレポート2022年版」の概要
「国際平和拠点ひろしま構想」の具体化のための取組の一つとして,(公財)日本国際問題研究所に委託して「ひろしまレポート2022年版」を取りまとめました。
平成24年度の開始から,2022年版で10回目(※)となる「ひろしまレポート」を,国内外に発信し,核軍縮等に向けた各国の取組状況を広く示すことで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスを着実に前に進めるための機運醸成を図ることとしています。
※今年度,県から「へいわ創造機構ひろしま(HOPe)」の発行に変更。
1 評価対象国及び評価項目
(1) 評価対象国
核兵器国,核保有国(核兵器不拡散条約(NPT)非締約国),非核兵器国等の36か国(昨年と同じ)
(2) 評価項目(各項目について2021年の状況を評価)
核軍縮,核不拡散,核セキュリティの計65項目(昨年と同じ)[内訳:核軍縮32項目,核不拡散17項目,核セキュリティ16項目]
2 分野ごとの主な傾向
【核軍縮分野】
2021年1月に核兵器禁止条約(TPNW)が発効し,2月には米露新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長が合意されたが,核保有国は核戦力の近代化を継続している。評点が上がった国には,新たにTPNWを批准したチリとフィリピンのほか,核軍縮に関する国連総会決議への投票行動が賛成に変わった国々などがある。一方で英国は,核弾頭保有数の上限の引き上げや核保有数などの透明性に一定の制約を課す内容の核政策見直しを公表し,大幅に評点を下げている。なお,ウクライナ情勢は大きく展開しているが,2022年の事象であり,今回の評価には反映していない。
【核不拡散分野】
北朝鮮は積極的な核・ミサイル開発を継続している。イランは,米国による包括的共同行動計画(JCPOA)離脱と対イラン制裁強化に反発し,義務の一時履行停止を拡大しているほか,2月にJCPOAに基づく検証・監視措置を停止したことで評点を下げた。JCPOA再建に向けた交渉も進展しなかった。最初の研究用原子炉が完成間近であるサウジアラビアは,国際原子力機関(IAEA)包括的保障措置協定を依然として締結しておらず減点評価となっている。豪州,英国及び米国は新たな3ヵ国合意(AUKUS)のもと豪州の原子力潜水艦導入の推進に合意したが,中露などからは批判や懸念が示されている。
【核セキュリティ分野】
原子力施設に対するドローンを用いた妨害破壊行為やサイバー攻撃の脅威が高まっており,2021年にも複数発生した。フィリピンの改正核物質防護条約(CPPNM/A)批准,スイスのIAEA核セキュリティ基金への拠出などの動きは加点対象となった。一方で,国際的な核セキュリティ強化のための取組の優先度はかつてほど高くなく,民生利用における高濃縮ウラン及びプルトニウム在庫量の最小限化や不法移転の防止において,さらなる強化のコミットメントがない国々は評点を下げている。
3 発信力向上のための取組
(1) 岸田総理による特別寄稿
核兵器のない世界の実現に向けた強い決意を示した岸田文雄日本国内閣総理大臣の特別寄稿を掲載。
(2) コラム・推薦文の掲載
核を巡る米中関係,TPNW発効,SDGsと核問題,豪州の原子力潜水艦取得問題など最近の情勢を反映したトピックについて,第一線で活躍する専門家・有識者及び若者の視点からのコラムを掲載。また,国際的に知名度のある専門家の推薦文を裏表紙に掲載。
掲載コラム
- 米中の軍備管理の見通し(秋山信将 一橋大学大学院教授)
- 核兵器禁止条約(川崎哲 ピースボート共同代表)
- 「SDGs」と核問題(樋川和子 大阪女学院大学教授)
- HOPeユース大使が考える「持続可能な未来」と「核兵器」のつながり(初代HOPeユース大使)
- 豪州の原潜取得問題(菊地昌廣 前核物質管理センター理事)
- サイバー問題と核セキュリティ(玉井広史 日本核物質管理学会会員)
推薦文
- モハメド・エルバラダイ 元国際原子力機関(IAEA)事務局長
- アーネスト・モニツ 元米国エネルギー長官・核脅威イニシアティブ(NTI)共同代表兼CEO
(3) 小冊子の見直し
主なターゲットである核兵器廃絶に関心を持つ一般の人々にとって,より分かりやすい小冊子となるよう見直しを実施。
見直しの内容
- 核兵器を巡る専門用語に馴染みがない人でも理解しやすいよう,核兵器国と核保有国の違い,核軍縮・核不拡散・核セキュリティの定義などを平易な言葉で追記。
- 親しみやすいよう文字情報をビジュアル化。(核兵器のない世界に向けたアプローチ(8頁)核軍縮措置の例)
- ひろしまレポート評点イメージ(10~12頁)に北朝鮮を追加。
(4) 別冊コラム「ロシアのウクライナ侵略と核問題の動向」の作成
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵略について,「ひろしまレポート2022年版」の対象期間外のため評価には反映していないが,注目が高い話題のため別冊コラムを作成し,ウェブサイトにて公開。
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