「国際平和拠点ひろしま構想」に掲げる「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた多国間協議の場として,「ひろしまラウンドテーブル」を開催した。(平成25年度に第1回を開催し,今回で8回目の開催となる。)
1.日時
令和3(2021)年12月22日(水)
9:30~12:45(会議) 16:00~17:30(公開ウェビナー)
2.場所
広島県庁(オンライン)
3.実施主体
へいわ創造機構ひろしま(略称HOPe)
(構成 広島県,広島県市長会,広島経済同友会,広島大学ほか 計20団体)
4.参加者(22名)
国名 | 氏名 | 所属等 | |
1 | 日本 | 阿部 信泰 | 元国連事務次長(軍縮問題担当) |
2 | 日本 | 秋山 信将 | 一橋大学大学院法学研究科 教授 |
3 | 日本 | 藤原 帰一(議長) | 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 |
4 | 日本 | 石井 良実 | 外務省軍備管理軍縮課 課長 |
5 | 日本 | 栗崎 周平 | 早稲田大学政治経済学術院 准教授 |
6 | 日本 | 水本 和実 | 広島市立大学広島平和研究所 教授 |
7 | 日本 | 向 和歌奈 | 亜細亜大学国際関係学部 准教授 |
8 | 日本 | 髙見澤 將林 | 前軍縮会議日本政府代表部大使 |
9 | 日本 | 戸﨑 洋史 | 公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター 所長 |
10 | 日本 | 湯﨑 英彦 | 広島県知事 へいわ創造機構ひろしま(HOPe)代表 |
11 | 豪州 | ギャレス・エバンス Gareth EVANS |
オーストラリア国立大学 特別栄誉教授 元オーストラリア外務大臣 |
12 | 豪州 | ラメシュ・タクール Ramesh THAKUR |
オーストラリア国立大学 名誉教授 |
13 | 中国 | 沈 丁立 SHEN Dingli |
復旦大学 教授 |
14 | 中国 | 趙 通 ZHAO Tong |
清華カーネギーグローバル政策センター シニアフェロー |
15 | 韓国 | 田 奉根 JUN Bong-Geun |
韓国国立外交院外交安保研究所 教授 |
16 | 韓国 | 金 永峻 KIM Youngjun |
韓国国防大学校安全保障大学院 教授 韓国大統領府国家安全保障室政策諮問委員 |
17 | スウェーデン | ティティ・エラスト Tytti ERASTO |
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI) シニアリサーチャー |
18 | スイス | ウィルフレッド・ワン Wilfred WAN |
国連軍縮研究所(UNIDIR)大量破壊兵器プログラム リードリサーチャー |
19 | 米国 | ジョン・アイケンベリー G. John IKENBERRY |
プリンストン大学 教授 |
20 | 米国 | ジェフリー・ルイス Jeffrey LEWIS |
ミドルベリー国際大学モントレー校ジェームズ・マーティン不拡散研究センター東アジア不拡散プログラム ディレクター |
21 | 米国 | スコット・セーガン Scott D. SAGAN |
スタンフォード大学 教授 |
22 | 米国 | アンドリュー・ウェーバー Andrew C. WEBER |
戦略的危機評議会 シニアフェロー 元米国防次官補(核・化学・生物防衛計画担当) |
5.会議の内容
ア テーマ
核兵器に替わる選択について
イ 構成
○ 開会(湯﨑知事開会挨拶,岸田首相ビデオメッセージ,藤原議長による趣旨説明)
○ セッション1~グローバルな視点
○ セッション2~地域的な視点
ウ 首相ビデオメッセージの内容
エ 総括
核兵器のない世界の実現に向けて,テーマに沿って意見交換を行い,議長声明をとりまとめ,12月24日(金)に記者会見で発表した。
オ 議長声明概要
(核抑止への依存低減)
○ 核抑止への信頼は,核保有国及び拡大抑止に依存する非核保有国の戦略政策の中核であるが,核兵器に基づく抑止には全面核戦争のリスクがあるうえ,核兵器能力の近代化や新しい技術の登場により不安定性が増す恐れに直面している。
○ 核兵器の意図的かつ積極的な使用がなくとも,偶発的な使用リスク及び継続的な核兵器保有に伴うリスクの方が,考え得るいずれの見返りをも上回る。
(核兵器の役割低減)
○ 核抑止への依存を低減するため,すべての核兵器国は,核の先制不使用政策,または少なくとも,核兵器使用の「唯一の目的」は核攻撃を防ぎかつそれに報復することであるという宣言政策の採択を真剣に検討するべきである。また,すべての核の傘の下にある米国の同盟国がこれを支持すべきである。
○ 核態勢の見直し(NPR)を終えようとしている米国政府に対し,「唯一の目的」を宣言するよう強く求める。また,岸田首相に対しても,この政策の採用をバイデン大統領に提言することを強く求める。
○ 核兵器の使用を制限するもう1つの方法として,国際人道法の原則をすべての核保有国が厳格に適用することを求める。
(核保有国と非核保有国との橋渡し)
○ 核兵器禁止条約(TPNW)の原則と倫理を支持し,核保有国と核の傘の下にある国に対し,同条約に加盟している非核保有国と,真摯に対話することを強く求める。
○ 核保有国と非核保有国との橋渡しをするために,日本を含め,核の傘の下にある国には,核兵器に依存しない防衛と抑止の可能性を模索する特段の責任とチャンスがある。
○ TPNWに早期に署名できない国々に対し,締約国会議には少なくともオブザーバーとして出席するよう求める。
(核兵器数の削減)
○ 冷戦時代の軍備競争に逆戻りすることを避けるため,米中ロは,方針を転換し,実現可能な適切な方法で,核兵器の削減に向けて措置を講じなければならない。
○ 核弾頭の数だけに目を向けるべきではない。核・非核両用ミサイルの配備によって,小型,大型を問わず,核兵器の偶発的な使用のリスクは高まる傾向にある。
(地域紛争の解決)
○ 核のない世界を目指すためには,紛争のマネージメント,信頼醸成,地域レベルでの平和的で非強圧的な紛争解決に向けての精力的な取組が必要である。
○ 米中両国が,相互の脆弱性を認め,相互を尊重して対話と外交的関与を行い,競争のエスカレーションを防ぐためのガードレールを構築するよう求める。この対話は多層的なものでなければならない。
○ 安全保障に関するハイレベルの対話なくして,朝鮮半島の非核化は実現しない。短期的には紛争防止を目指し,長期的には強力な地域的安全保障取り決めに支えられた持続可能な長期的平和の実現を目指す新たな地域対話が再開されるべきである。
6.公開ウェビナーの内容
ア テーマ
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)との共同研究報告「新たな技術と核軍縮」
イ 構成
○ 開会(湯﨑知事ビデオメッセージ)
○ 発表(講演者:ティティ・エラスト SIPRI上級研究員)
○ ひろしまラウンドテーブル2021参加者とのディスカッション・一般視聴者からの質疑応答(モデレーター:藤原帰一 東京大学大学院法学政治学研究科教授)
ウ 発表の概要
近年の軍事技術の進歩が核抑止力や核軍縮に与える影響について,主にミサイル防衛と通常精密攻撃兵器に焦点を当てながら,米ロをはじめとする核保有国への政策提言を交えて報告した。
エ ディスカッション・質疑応答の概要
エラスト上級研究員とひろしまラウンドテーブル2021参加者は,藤原教授のコーディネートにより,ミサイル防衛における課題,核兵器不拡散条約(NPT)の役割とその限界等について,ディスカッションを行うとともに,一般視聴者からの質問に対応した。
その他
令和3(2021)年12月27日(月)に知事と藤原議長が首相官邸及び外務省を訪問し,岸田文雄内閣総理大臣及び小田原潔外務副大臣に議長声明を手交し,その実現に向けた協力を依頼した。
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