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培われた技術に支えられたものとこれから
寺田鉄工所は創業100年以上の歴史がある会社です。蒸気機関車の給水タンクなどの鉄工業から始まり、のちに石油化学プラント向け搭槽類を製造しビジネス面で日本の高度成長を支えました。しかし、その一方で、地球環境にも負荷を与えてきました。そこで、酸性雨対策に必要な石炭火力発電所向けの排煙脱硫装置の製造を開始し、今でも続く主力製品となっています。さらに長年培った技術は新しい取り組みの後押しをしています。
また、かつて環境事業を模索していた際に開発した技術で、太陽熱利用システムの製造・販売も始めました。当初は、家庭向け商品に力を入れており、また日本での太陽熱事業の市場が縮小していたこともあり、事業は低調でした。しかし業務用市場に転換した後は、病院などの給湯利用やオフィスビルなどの空調利用にも採用され、現在では業界でも知名度を上げ、また太陽熱利用システムの注目度も年々増しています。
この追い風を味方に、将来的に排煙脱硫装置等のプラント機器と太陽熱利用システムの売上を同等にしてカーボンニュートラルを目指します。
人々の暮らしに合わせた商品開発
人々のライフスタイルは時代によって変化します。例えば屋根の軽量化です。地震に強い住宅にするため、瓦屋根といった重い屋根に代わり軽い屋根の住宅が増加しました。寺田鉄工所株式会社が製造している太陽熱温水器は、もともと屋根の上にのせる落水式が一般的でした。しかし、こうした住宅の変化により、約300㎏もある太陽熱温水器をのせることが困難になりました。そこで新たに開発されたのが地上に設置できる水道直結式太陽熱温水器(サントップ)でした。
住宅の変化に合わせ、持続可能な社会に貢献する商品を開発し、人々に提供する。こういった取り組みが、目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」ということに繋がっていくのではないのでしょうか。
特許取得しないことによる社会貢献
商品のエコ作(太陽熱集熱調理器具)について質問をした際、「太陽さえあればどこでも300℃近い温度で調理が出来るため、先進国から発展途上国まで世界中に売ることが出来ます。また、蒸発蒸留すれば殺菌もできるので安心な水も作れます。調理のレシピ本まで出版されていますが、特許取得をしなかったため他国でも類似商品を作られてしまいました。でも社会に貢献できたので問題ありません。」と答えられました。これは私の中で最も印象に残った言葉でした。なぜなら、コピーに対しての怒りや自社の利益だけを追い求めるのではなく、もっと広い視野を持って社会貢献を捉えていることに感銘を受けたからです。またこれもある種のSDGs(8・9・10)であるのではないかと考える貴重な機会となりました。
取材者
友井 憂香 (安田女子大学3年)
横山 美月 (安田女子大学2年)
山中 千加 (安田女子大学1年)
株式会社寺田鉄工所
福山市新浜町2丁目4-16
084-953-0556