「宮島町商工会青年部」 SDGｓへの取り組み国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜

「宮島町商工会青年部」 SDGｓへの取り組み

写真提供：広島県

世界遺産のある島として多くの観光客でにぎわう宮島。その町の若手経営者が集まる「宮島町商工会青年部」がSDGsに関する活動に力を入れています。SDGsを理解するためのセミナーを開催し、2022年はSDGsをテーマにした視察旅行を実施。2023年6月にはそうした学びの集大成として「宮島SDGsマップ」の制作も行いました。宮島町商工会青年部のSDGs活動について佐々木健一（ささき・けんいち）さんと、岡田翔真（おかだ・しょうま）さんに話をうかがいました。

話の発端は佐々木さんが2016年、日本青年会議所の副会頭になったことでした。国際部門の担当になった佐々木さんは、当時国連サミットで採択されたばかりのSDGsに関心を持ちました。そこからSDGsファシリテーターの資格を取得し、町内外で講演を行うなど活動を開始。そして2022年、自身の青年部卒業に合わせてSDGsを学ぶ旅を企画しました。

SDGsファシリテーターの資格を取得した佐々木健一さん

「旅は町を挙げて『SDGsツーリズム』を推進している石川県金沢市を見学しました。不便な部分もある古い町並みをいかに残しながら生活していくかについて学びました。さらに企業活動の一環としてSDGsを推進している福井県の企業も訪問しました。ただ、SDGsってフィードバックが一番大事なんです。一発でOKなんてことはまずなくて、『これをやったからこうなった』『失敗したから次はこうやろう』といったトライアンドエラーを繰り返すことがSDGsの持続可能性につながります。そういう意味でやりっぱなしではなく、なにかしらの成果物を作りたいと思ったんです」（佐々木さん）

そして完成したのが「宮島SDGsマップ」。これは青年部に所属する店舗がSDGsに関するどんな取り組みを行っているか示したもの。佐々木さんの経営する観光センタ－「鳥居屋」は「目標12・つくる責任つかう責任」を挙げ「食べ残しゼロへ。無駄をなくして資源を守ろう」。現・青年部部長の岡田さんの食事処「清盛茶屋」は「目標3・すべての人に健康と福祉を」から「健康と地域を考え寄り添って生きる」ことを宣言しました。

完成した「宮島SDGsマップ」。宮島町商工会のホームページで公開中

（https://r.goope.jp/miyajima/info）

「言葉は悪いけど『SDGsってこの程度でいいんだ』って思ってもらえたらいいと思うんです。SDGsは無理してやるものではなく、実は普段行っていることと結びついています。それがわかるだけで自分の仕事に誇りを持てるようになるし、今後も頑張ろうという気持ちになりますよね」（佐々木さん）

興味深いのは、マップ制作と同時にへいわ創造機構ひろしま（HOPe）が主催する「へいわ創造プラットフォームひろしま」への登録も行ったことです。商工会青年部としての登録も初めてですが、各店舗単位でも登録を行い一挙12団体で加入。ここまでのスケールは前例がないそうです。

商工会青年部の岡田翔真さん

「ただマップを作っただけでは意味がないし、『へいわ創造プラットフォームひろしま』に参加しているという裏付けがあることでまわりに対する説得力が増すと思うんです。それでみんなで登録することに決めました」（佐々木さん）

「今後はこのマップにオーバーツーリズムなど新たな要素を加えて、さらに成長させていきたいです。それが平和につながる行動になればいいと思います」（岡田さん）

今だけの繁栄ではなく、この先も続く持続可能な観光の形を模索する宮島町商工会青年部。そこにはこれまで受け継いできたものを次世代に引き渡すという島の伝統が息づいています。

「私たちはSDGsの中でも『目標17・パートナーシップで目標を達成しよう』が一番大事だと思うんです。どこか1社だけよくても島の未来はよくならない。人口が減っていく中でこの町並みを守るには町内のパートナーシップが重要なんです」（佐々木さん）

「いま島は観光以前に高齢化と人口減少が深刻で、この先住人がいなくなるんじゃないかという危機感があります。私は宮島は島に住む人の笑顔があってこそ成り立つ島だと思っています。弊社では店舗での営業の他に、近所の高齢者など地域の方々にお弁当を配る活動もしたりして、少しでも宮島が住みよい町になればいいと思っています。今後も若手の事業者と協力しながら島の魅力を向上させていきたいです」（岡田さん）

長い歴史があるということは、先人たちが持続可能な社会を作ってきたからに他ならない。宮島という島の在り方はSDGsの好例として、いま新たな脚光を浴びています。