おりづるタワーから平和と未来を考える
もてなし、人と人とをつなぐ
カフェとして、広島や瀬戸内の素材をふんだんに使った豊富なメニューでたくさんの人をもてなしている
世界中から訪れる多くの観光客でにぎわうおりづるタワー。それは屋上展望台「ひろしまの丘」からの眺めが素晴らしいからだけではない。これまで平和記念公園は平和について考える一方で、訪れた人たちの一息つけるスペースが少ないことが指摘されていた。
おりづるタワー1階の「握手カフェ -PARK SIDE-」は原爆ドームのすぐそばにあり、平和記念公園と繁華街である紙屋町・本通りをつなぐ場所に位置している。広島平和記念資料館から原爆ドームまで歩いた後、ここでリフレッシュしてまた広島の街を楽しんでもらいたい――おりづるタワーの1階はそんな“おもてなし”の心で旅人たちに開かれているのである。
「握手カフェ -PARK SIDE-」の隣りには広島の銘品約1000点を集めた物産館「SOUVENIR SELECT 人と樹」がある。被爆前の原爆ドームは「広島県産業奨励館」という名称で、広島県産品の販路拡大を目的にしたショースペースだった。そう考えると、おりづるタワーは原爆ドームの“遺志”を継いでいるというべきか、かつて広島県産業奨励館が担っていた県産品の魅力を広く伝える役割を今、果たそうとしているのかもしれない。
(提供)広島市公文書館所蔵
おりづるタワーから見る広島の未来
おりづる広場では、広島の歴史が学べるデジタルコンテンツを常設。また、折り鶴の折り方を学び、折り鶴にメッセージを綴ることができる
タワーの12階には最新テクノロジーを駆使したコンテンツが楽しめる「おりづる広場」、自らの手でおりづるを折り、それを投下することで“平和への祈り”を具現化する「おりづるの壁」といった体験型アトラクションが用意されている。おりづるタワー専用の折り紙で自ら折ったおりづるを「おりづるの壁」に投入することで、世界中から集まる平和への想い、祈りが積み重なり、「おりづるの壁」が完成する。そして屋上展望台「ひろしまの丘」から眼下に原爆ドームを望み、広島が背負った過去、そして広がる街並みから、再生や復興の「今」を感じ、そして「未来」につながる想いをめぐらせる。
そういう意味で、おりづるタワーは未来志向の建物と言える。このタワーを作った松田哲也氏は自著『2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへ』の中で、「被爆100年目となる2045年。タワーの屋上から見える景観が、私たちが胸を張って次世代に伝えたいものになっているかどうか見届けよう」と呼びかけている。戦後の日本が一世紀かけて築いてきたものを検証する“通信簿”として、タワーを活用してほしいというのだ。
今年で被爆から75年が経過し、戦争の悲惨さや原爆のむごさを実際に体験した方の多くが鬼籍に入られた。そのなかで、広島の街はどのようにして後世に事実を伝えていくのか。未来を生きる子どもたちに何を引き継いでいけばいいのか。
「おりづるよ 空を翔け
時を超え 心に届け――」
松田氏がタワーに託した言葉の通り、おりづるタワーは過去を踏まえた上で未来に届く、そんな時空を超えたメッセージを孕んでいる。
おりづるタワー
住所:広島市中区大手町1-2-1
電話:082-569-6803
HP:https://www.orizurutower.jp/
(この記事の参考書籍)
「2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへ」
松田哲也 (2019年発刊)
価格:1400円+税
ISBN:978-4862506368
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