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国際平和拠点ひろしま

(12) 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携

軍縮・不拡散における市民社会との連携は、TPNW 策定過程に象徴されるように一層深化してきた。前年に続いて2021 年も、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、国連総会第一委員会のサイドイベントを含め、軍縮・不拡散問題に関する多くの会合がオンラインで開催された。そうした多くの会議に、政府関係者、専門家及びNGO など市民社会が参加し、活発な議論が行われた。他方で、対面での会議が開催できないことで、市民社会と政府の間の交流に少なからぬ制約が生じていることは否めない。
この間、日本は、2017〜19 年に行われた「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」のフォローアップとして、第2 回「核軍縮の実質的な進展のための1.5 トラック会合」を2021 年3 月にオンライン形式で開催した。この会合には、スラウビネン(Gustavo Zlauvinen)NPT 運用検討会議議長候補、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表、5 核兵器国及び非核兵器国(豪州、日本、クウェート、マレーシア、メキシコ及びオランダ)の政府関係者、並びに国内外15 名の民間有識者が参加し、核兵器のない世界の実現に向けた各国間の信頼醸成及び共通の基盤の形成に貢献することを目指し、NPT 運用検討会議において意義ある成果を達成するための方策について議論が行われた229。
日本は12 月にも第3 回会合をオンライン形式で開催し、スラウビネンNPT 運用検討会議議長候補、中満国連事務次長・軍縮担当上級代表、5 核兵器国及び10 の非核兵器国(豪州、オーストリア、ドイツ、日本、クウェート、マレーシア、メキシコ、オランダ、ポーランド、南アフリカ)の政府関係者、並びに国内外13 名の民間有識者が参加した。会合では、岸田総理大臣の冒頭挨拶の後、2022 年1 月のNPT 運用検討会議のありうべき成果、特にNPT の三本柱(軍縮・不拡散・平和的利用)のバランスの取れた成果の在り方と、NPT 第6 条に基づく核軍縮分野における前進のあり方などについて、議論が行われた230。
また、韓国は6 月に国連軍縮部(UNODA)と共催で、軍縮・不拡散のためのユース・フォーラムを共催した。22 カ国の25 名の若者が、国際的な軍縮・不拡散を強化する方法や、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、新しいテクノロジー、ジェンダー問題などとの相乗効果について議論した231。
2021 年の国連総会では、国連加盟国や国連などに対して、対話プラットフォーム、メンタリング、インターンシップ、フェローシップ、奨学金、モデルイベント及び青年団活動などを通じて、軍縮・不拡散分野の議論への若者の有意義かつ包括的な参加を引き続き促進するよう奨励すること、並びに軍縮・不拡散分野における若者の建設的関与を増大・促進するための政策及びプログラムの策定・実施を検討するよう要請することなどを盛り込んだ決議「若者、軍縮・不拡散」232が無投票で採択された。また、日本及びNAC 提案の核軍縮に関するそれぞれの国連総会決議でも、軍縮・不拡散教育の重要性が言及された。「市民社会との連携」に関しては、各国政府が核軍縮・不拡散に関する情報をどれだけ国内外の市民に向けて提供しているかも判断材料となる。調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、英国、米国といった国々のホームページ(英語版)では、(核)軍縮・不拡散に関するセクションが設けられ、程度の差はあるものの他国と比べて充実した情報が掲載されている。
近年の動きとして、核兵器の開発・製造などに携わる組織や企業などへの融資の禁止や引揚げ(divestment)が提案され、実際にこれを定める国が出始めている。ICAN などが2021 年11 月に公表した報告書によれば、2019 年以降、主要な核兵器製造企業25 社に対して、338 の金融機関が6,850 億ドル以上を投資した233。


229 外務省「第2 回『核軍縮の実質的な進展のための1.5 トラック会合』の開催(結果)」2021 年3 月10 日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000451.html。
230 外務省「第3 回『核軍縮の実質的な進展のための1.5 トラック会合』の開催(結果)」2021 年12 月10 日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/ac_d/page4_005470.html。
231 “Youth Forum on Disarmament and Non-Proliferation Takes Place,” Ministry of Foreign Affairs of ROK, July 1, 2021, https://www.mofa.go.kr/eng/brd/m_5676/view.do?seq=321738.
232 A/RES/76/45, December 6, 2021.
233 ICAN and PAX, Perilous Profiteering: The Companies Building Nuclear Arsenals and Their Financial Backers, November 2021. ICAN などが2017〜2018 年の動向をまとめた以前の報告書(ICAN and PAX, Shorting Our Security-Financing the Companies that Make Nuclear Weapons, June 2019.)では、325 の金融機関が7,480 億ドル以上を投資したとされており、金融機関数及び投資額ともに減少した。2021 年11 月には、ノルウェー最大の年金基金が、核兵器と関係しているとしてレイセオンやロールスロイスなど14 社への投資を停止したことが報じられた。Victoria Klesty, “Nordic Fund KLP Excludes 14 Weapons Companies on Ethical Grounds,” Reuters, November 4, 2021, https://www.reuters.com/business/nordic-fund-klp-excludes-14-weapons-companies-ethical-grounds-2021-11-04/.

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