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国際平和拠点ひろしま

(2) 核セキュリティ・原子力安全にかか る諸条約などへの加入、参加、国内体制への反映

A) 核セキュリティ関連の条約への加入状況

2001年9月11日の米国同時多発テロ以来、原子力発電施設へのテロリストの攻撃が現実的な脅威となるなか、核セキュリティのみならず、原発での事故を防止する観点に立つ原子力安全も含めて、それぞれのオーバーラップする領域(セーフティとセキュリティのインターフェース)に焦点を当てた取組が進められている45。そうした取組の1つとして、IAEAはインターフェースの良好事例に関する知見の提供を目的とした技術報告書である「原子力安全と核セキュリティのインターフェース:アプローチと国の経験」を2021年3月に発行した46。本技術報告書では、安全とセキュリティのインターフェースの調整において重要となる法規制枠組、原子力施設、放射線源、文化醸成及び緊急事案への準備・対応に関する各国の事例及び分野横断的な課題の6つの項目が取り扱われている47。
核セキュリティ及び原子力安全に関する条約としては、核物質の防護に関する条約(核物質防護条約、CPPNM)とその改正(CPPNM/A)、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロ防止条約)に加えて、原子力の安全に関する条約(原子力安全条約)、原子力事故の早期通報に関する条約(原子力事故早期通報条約)、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(放射性廃棄物等安全条約)、及び原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(原子力事故援助条約)などが成立してきた。原子力安全条約以降の条約では、安全上の防護措置を課すことが定められている。こうした防護措置は核セキュリティ上の防護措置にも援用できることから、本報告書において核セキュリティに関連する国際条約とみなしている。調査対象国のこれらの条約への加入状況は、表3-4のとおりである。
これらの条約に関する2021年9月時点における新たな署名・批准は以下のとおりである。

CPPNM48(1987年発効):締約国数164カ国。コンゴ共和国及びジンバブエが新たに加入。2016年以降の新たな加入国数は2017年を例外として毎年2〜3カ国であり、継続的な増加が維持
されている。
CPPNM/A49(2016年発効):批准国数127カ国。フィリピン及びルワンダが新たに批准。近年の新規批准国数は、2016年が15カ国、2017年が7カ国、2018年が3カ国、2019年が5カ国、2020年が2カ国であり、継続的に増加しているものの2021年も前年に続いて最も少ない結果となった。
核テロ防止条約50(2007年発効):2021年11月時点の締約国数118カ国。ボツワナが新たに批准。近年の新規締約国数は、2017年が6カ国、2018年が1カ国、2019年が2カ国、2020年が1カ国となっている。
原子力安全条約51(1996年発効):2021年3月時点の締約国数91カ国。コンゴ共和国及びカタールが新たに批准。2020年の批准国数は2カ国。
原子力事故早期通報条約52(1986年発効):締約国数130カ国。コンゴ共和国、ルワンダ及びジンバブエが新たに批准。2020年の批准国数は2カ国。
原子力事故援助条約53 (1987年発効):締約国数124カ国。ルワンダ及びジンバブエが新たに批准。2020年の批准国数は3カ国。
放射性廃棄物等安全条約54(2001年発効):2021年3月時点の締約国数86カ国。コンゴ共和国、ルワンダ及びジンバブエが新たに批准。2020年の批准国数は1カ国。

このように、2020年と同様に2021年についてもすべての条約について締約国数の漸増が見られた。また、1つの国が複数の条約に新たに加入しているほか、今回の新たな条約加入国は大半がアフリカ地域の国々であったことから、特定の地域を対象としたこれらの条約の普遍化促進の重点的な取組が成果につながっていることが窺える。
調査対象国の核セキュリティ関連条約の署名・批准にかかる動向については、2021年9月のIAEA総会においてフィリピンがCPPNM/Aを批准し、同年6月16日に本条約が同国に対して発効したと発表したほか55、南アフリカがCPPNM/A批准のための国内手続の最終段階にあると発表した56。これら2カ国以外に調査対象国における核セキュリティ関連条約への加入を巡る進展に動きは見られなかった。
核セキュリティ関連条約の国内体制への反映について調査対象国による具体的な情報発信は確認できなかったが、IAEA総会でアラブ首長国連邦(UAE)がCPPNM及びCPPNM/Aの重要性並びに核物質の物理的防護を確実にするためのグローバルなメカニズム構築とこれらの条約との関連性に留意したうえで、CPPNM/Aを完全に遵守していると述べた57。

核セキュリティ関連条約の普遍化及び普遍的な条約の履行は国際社会にとって重要な課題となっており、IAEAや国連薬物犯罪事務所(UNODC)を中心に活発な取組がなされてきている。
IAEAについては、2020年に事務局長がCPPNM未締約国及びCPPNM/A未批准国に対して条約の締結または批准を奨励する公式書簡を発出したが、そのフォローアップとして新たな書簡を2021年3月に発出し、同様の奨励を行った58。IAEAは5月にも、ロシア語圏、西アジア及び中東のCPPNM未締約国及びCPPNM/A未批准国を対象に、条約の締結または批准を奨励する国際セミナーをオンラインで開催した59。UNODCは、2021年9月に核テロ防止条約の普遍化を目的としたイベントをオンラインで開催し、22カ国及び9つの国際機関と非政府組織から90名以上が参加した60。さらに、IAEAとUNODCは、初めて共同でCPPNM/A及び核テロ防止条約の普遍化の促進を目的としたイベントを11月に開催し、20カ国から約40名が参加した61。なお、カナダ、米国及び欧州連合(EU)がこのイベントに財政的な貢献を行った62。
調査対象国による核セキュリティ関連条約の普遍化促進のための2021年の取組としては、韓国外務省が、原子力安全セキュリティ委員会及び韓国核不拡散核物質管理院(KINAC)とともに、2022年に開催予定のCPPNM/A運用検討会議(後述)に向けて、アジア諸国の本条約に関する理解促進を目的とした「アジアの核セキュリティの検討に関する地域ワークショップ」を3月に開催した63。
2021年は2016年のCPPNM/A発効から5年目にあたり、条約第16条1の規定に基づき、最初となる締約国会議(運用検討会議)が開催されることになっていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、会議は2022年3月に延期された64。会議開催に向け、IAEAは2021年2月に準備委員会合をオンラインで開催し、90を超えるCPPNM/A批准国及びCPPNM締約国から240名以上が参加した。会合では手続き規則案、議題案の作成を含む会議に向けた準備が行われた65。
以下に、2021年9月のIAEA総会の国別声明で調査対象国がCPPNM/A運用検討会議に関連して行った発言をまとめる。

➢ 日本66:「1 カ国ではグローバルな核セキュリティの確保はできないため、日本はCPPNM/A や核テロ防止条約などの法的枠組みの重要な役割を重視している。2022年CPPNM運用検討会議への貢献を通じた取組を含め、これらの条約の普遍化の努力を引き続き行っていく。」
➢ スイス67:「この会議は核セキュリティのための国際的な法的枠組を強化するうえで重要な節目となるほかCPPNM及びCPPNM/Aのさらなる普遍化や、条約のより効果的な実施を促進するための機会にもなる。」
➢ トルコ68 : 「原子力安全条約及びCPPNM/A運用検討プロセスに積極的に関与する用意ができている。」
➢ 米国69:「すべての締約国が『状況に照らして』条約の妥当性に関する国別声明を行うことを含め、会議に完全に参加することを奨励するとともに、本件に関する締約国の結論を反映した最終文書が得られることを期待している。CPPNM/Aのみならず核テロ防止条約についても締約国となっていないすべての国に対して締約国となるよう求め続ける。」

CPPNM/A発効後初となるこの運用検討会議は、今後の条約の運用検討プロセスのあり方を形作る重要な会議となる。各締約国による条約履行の取組に関する声明に加えて、CPPNM/A履行における経験や最良慣行(ベストプラクティス)の共有、新興技術が核セキュリティにもたらしうる影響、進化しつつある脅威、核セキュリティをさらに進展させるための措置などについて積極的な議論が行われることが期待される70。
条約の完全な履行との関連では、CPPNM第14条は、締約国に対し条約履行のための国内法令を条約の寄託者であるIAEAに通報することを義務付けており、近年では各国の核セキュリティに関する措置の透明性や情報共有の観点からもかかる通報が重視されてきている。IAEAの『2021年版核セキュリティ報告』によれば、2020年7月から2021年6月までの期間に新たに13カ国が第14条に基づき情報を提出した71。

 

B)「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」改訂5版(INFCIRC/225/Rev.5)

IAEAは2011年に「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」改訂5版(INFCIRC/225/Rev.5)をIAEA核セキュリティシリーズ文書第13号として刊行した。これが2021年時点で最新の「勧告文書」である。INFCIRC/225/Rev.5の勧告措置に準拠した物理的防護措置を導入・履行するとともに課題を炙り出し、個別の対応策をいかに打ち出すかはすべて国家の責任であり、各国の規制当局と事業者の取組に委ねられている。したがってINFCIRC/225/Rev.5で勧告された措置について、各国がその導入や適用状況にかかる情報発信を行うことは重要であるが、2016年の核セキュリティサミット・プロセスの終了後、そうした情報発信の量は減少している。表3-5は調査対象各国によるINFCIRC/225/Rev.5の勧告措置の適用・取組状況を示したものである。

 

INFCIRC/225/Rev.5は刊行から10年以上が経過し、IAEAでは核セキュリティシリーズ文書の「基本文書」及びINFCIRC/225/Rev.5を含む3つの「勧告文書」72について、近い将来にこれらを改訂する必要があるか否かを見極めるための検討が行われてきたが、2020年12月にその作業が完了したとされる73。この検討プロセスの一環として、INFCIRC/225/Rev.5については、第2回法律・技術専門家のオープンエンド会合の開催に向けた会合や情報交換がオンラインで進められ、60カ国から100名以上が参加した74。
以下に、INFCIRC/225/Rev.5に示された核物質及び原子力施設にかかる国の物理的防護体制の主な要素に関し、2021年に行われた主な国際的取組及び調査対象国による情報発信や取組について記述する。

 

国内法令整備

各国の国内法令整備を支援するための国際的な取組として、IAEAが「最初の原子力施設を運転するための規制監視の管理における手法と国の経験を共有するための技術会合」を6月に開催した。この会合は、原子力施設のライフサイクルの様々な段階における規制監視活動の策定や実施に関する最良慣行(ベストプラクティス)や直面する課題を加盟国間で共有するための場を提供した75。
調査対象国による取組については、ポーランドがIAEA総会で、原子力安全及び核セキュリティの枠組の改善を継続おり、また、新規に建設される原子炉の安全及びセキュリティを監督するための規制上の準備態勢を確保することが原子力計画実施上の優先課題であると理解していると述べたほか、原子力安全及び放射線防護のための政策及び戦略を作成し2021年中に政府が承認予定であると発表した76。

 

妨害破壊行為

妨害破壊行為に関連した調査対象国によるIAEA総会での発言は以下のとおりである。

➢ イスラエル77:「2021年5月に数千のミサイルやロケットがイスラエルの都市に向けて発射された。過去の対立のエスカレーション、周辺諸国が長年にわたってもたらしてきた安全保障上の脅威によって原子力施設の防護やセキュリティを継続的に更新する必要性が増している。これらの施設は、いかなる攻撃にも耐えうるようにIAEAの安全及びセキュリティ指針に合致する形で定期的に整備されており、イスラエルは最も厳格な原子力安全及び核セキュリティ指針に完全にコミットし遵守している」。
➢ イラン78:「IAEAの保障措置下にある我が国の施設が何度も妨害破壊行為やテロ行為に晒された。あらゆる可能な手段と方法で自らを守らねばならないことは自明であるが、国際社会はIAEAの保障措置下にある施設に対するテロ行為を明確かつ強く非難し、立場を明確にする必要がある」。

加えて、公開情報から得られた調査対象国による取組として、NNSAが6月にオンラインで開催した「アジア地域技術交換:無人航空システム(UAS)とUASへの対抗措置」と題する会合があり、これには豪州、インド、日本、韓国及びタイが参加した79。なお、米国テネシー州にある軍事用HEUが貯蔵されているY-12国家安全保障複合施設では、6月に無許可のUAS(ドローン)に対抗するためのシステムが配備された80。

 

脅威の同定及び評価(内部脅威対策を含む)

核セキュリティ上の脅威を考慮した措置を講じるにあたって、内部脅威に注意を払い対策を行うことも重要な課題の1つとなっている81。この点に関し、日本では、2020年9月に東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、運転員が他人のIDカードを利用して原子力発電所内の建屋に入っていたことが2021年1月に明るみになった82。この運転員は、社員見張人や委託見張人の人定確認に対して、身分を偽って生体認証の再登録を行わせ、中央制御室に入域していた83。この事案を巡っては、社員見張人や委託見張人の間に社員は内部脅威になりえないとの思い込みがあったことが指摘され、内部脅威は重大なリスクであると十分に理解がされていなかったことが背景にあったとの分析がなされた84。
内部脅威については、新型コロナウイルスの感染拡大の最中では、対策の一層の強化が重要となることが指摘されている。多くの社会において甚大な経済的及び社会的圧力が生じ、大きな精神的ストレスへとつながりうるが、こうしたことは原子力施設の人員にも直接的あるいは間接的に影響を及ぼし、潜在的な内部脅威につながるとの警鐘が鳴らされている85。
この分野における国際的な取組としては、IAEAが5月に「国の核セキュリティ脅威評価、設計基礎脅威及び代表的な脅威提示に関する実施手引」86を核セキュリティシリーズNo.10-Gの改定第1版として発行した。IAEAはまた、脅威の特性化や評価、DBTの策定、使用及び維持、または代表的な脅威提示(threat statement)、脆弱性評価並びに物理的防護システムの性能評価手法の開発について、加盟国への助言を引き続き行った87。加えて、IAEAは4月にバルカン地域の加盟国を対象とした「脅威評価及びDBTに関する地域ワークショップ」をオンラインで開催した88。
調査対象国が内部脅威に関連して2021年に行った取組には以下がある。

➢ ナイジェリア89:10月に「核セキュリティ及び施設の物理的防護に関する国内ワークショップ」を実施した。昨今の安全保障上の変化におけるあらゆる影響を考慮し、内部脅威を緩和するための方法についても議論した。
➢ ロシア90:11月にIAEAの「核物質にかかる内部脅威に対する予防及び防護措置に関する地域訓練コース」を開催した。

 

サイバー脅威

サイバー脅威に対する国際的な取組としては、IAEAが「核セキュリティのためのコンピュータ・セキュリティ実施指針No.42-G」を7月に発行した91。これは、コンピュータ・セキュリティについて包括的に対応するための初の実施指針文書である。IAEAはまた、9月に「原子力施設のためのコンピュータ・セキュリティ手法技術指針No.17-T(Rev.1)」を発行したほか92、さらに、1月から4月にかけて、原子力施設におけるコンピュータ・セキュリティ事案分析の向上に関する4つのオンラインセミナーを開催した93。加えて、「原子力施設におけるコンピュータ・セキュリティ事案分析の向上」と題する調整研究プロジェクト(CRP)を1月に完了し、その成果として仮想の原子力施設の技術的なシミュレーターが作成された94。これにより、コンピュータ・セキュリティ措置の適用を模索したり、パフォーマンスを評価したり、現実的な脅威シナリオの作成に新たなアプローチを模索したりすることが可能となった95。
調査対象国によるサイバー脅威に対する取組としては、韓国が2月に物理的防護及びサイバーセキュリティ関連の国内機関を対象とした年次ワークシップを開催し、約70名が参加した96。

 

核セキュリティ文化

サイバーセキュリティや内部脅威対策を含む核セキュリティ措置の実効性を継続的に確保していくうえで、核セキュリティ文化の醸成・維持が極めて重要との認識が近年高まっている。規制機関、事業者など、原子力に関連するすべての組織において、核テロの脅威が存在することや核セキュリティの重要性を認識し、各人が核セキュリティにおける自身の役割を自覚し責任を果たすことが求められる。
この点に関し日本では、上述の柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用事案に加えて、同発電所で2020年3月から2021年2月の間に外部からの侵入を検知する装置が16カ所で故障し、核物質防護機能が喪失した状態が長期間にわたって続いていたことが明らかになった97。これは、16カ所のうち10カ所で代替措置が不十分であったことが原因であり、これらの事実は2021年2月から3月にかけて行われた原子力規制庁による検査で発覚した。原子力規制庁はこの2件の事案に関し、4段階で評価される核物質防護活動の劣化についてその度合いが最も大きい「赤」と評価した98。その後、これら2件の事案を受けて「核物質防護に関する独立検証委員会」が設置され、事案発生の原因分析や核セキュリティ文化要素の劣化兆候にかかる検証が行われた。その結果、東京電力では社長をはじめとする幹部が、核セキュリティが原子力安全と同程度に重要であることを職員に十分に伝えることができなかったことや核セキュリティ担当部署の業務が尊重されていなかったことなど、核セキュリティ文化上の問題点が多数指摘された99。また、原子力規制庁についてもIDカード不正使用事案に関する当初の評価が甘く、担当部署から原子力規制委員会への情報共有がなされていなかったことから、核セキュリティ文化の醸成・維持は引き続き重要な課題となっている100。
核セキュリティ文化に関する国際的な取組については、IAEAが3月に「核及びその他の放射性物質に関連した組織における核セキュリティ文化の向上38-T」と題する技術指針文書を発行した101。この文書には、2018〜2020年に実施された核セキュリティ文化向上のための実践的なツールや効果的な解決策を開発するためのCRPから得られた良好慣行(グッドプラクティス)が含まれている。調査対象国のうちブラジル、日本、ポーランド及び米国がこのCRPに参加した102。なお、2020年のIAEA総会で採択された核セキュリティ決議は核セキュリティ文化に関する国際ワークショップの開催を求めていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により2021年中の開催は実現しなかった103。
この分野における調査対象国の取組に関する情報発信は確認できなかったが、学会や研究者を中心にオンラインセミナーを含む会議の開催や出版物の刊行などを通じて活発な議論が行われている104。

 


45 International Nuclear Safety Group, “INSAG-24: The Interface Between Safety and Security at Nuclear Power Plants,” IAEA, 2010.
46 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 15.
47 IAEA, “The Nuclear Safety and Nuclear Security Interface: Approaches and National Experiences,” Technical Report Series No. 1000, March 2021. なお、分野横断的な課題の項目では、インターフェースに関連する技術進化やリスク変化に伴う影響といった将来の展開に関し、これらに適切に対応した指針の更新が必要となりうる項目として、コンピュータ・セキュリティ、小型モジュール炉や中型原子炉をはじめとする新たな原子炉技術、内部脅威及び文書改ざんの4 点が挙げられている。
48 権限のない核物質の受領、所持、使用、移転、変更、処分または散布により人的・財産的被害を引き起こすことや、核物質の盗取などの行為を犯罪化することを義務付けており、核プログラムを保有していない国々を含めた条約の普遍化の取組が引き続き重要である。
49 平和利用目的の核物質及び原子力施設の防護に関して法的拘束力を有する唯一の国際約束である。普遍化については、CPPNM 未締約国はCPPNM/A も合わせて批准することが望ましく、その点での働きかけの強化、またCPPNM にしか加入していない国によるCPPNM/A 批准に向けた取組及びそれらの国々に対する批准の働きかけや支援などの外交努力が重要である。
50 悪意をもって放射性物質または核爆発装置などを所持・使用する行為や、放射性物質の発散につながる方法による原子力施設の使用、または損壊行為を犯罪化することなどを締約国に義務付けている。
51 原子力発電所の安全性の確保や安全性向上を目的としており、締約国は、原子力発電所の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、本条約に基づき設置される検討会で報告し、また他の締約国の評価を受けることなどが義務付けられている。
52 原子力事故が発生した際、IAEA に対し事故の発生事実や種類、発生の時刻や場所を速やかに通報し、情報提供することを締約国に義務付けている。
53 締約国に対し、使用済燃料及び放射性廃棄物の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、本条約に基づいて設置される検討会に報告し、また他の締約国の評価を受けることなどを義務付けている。
54 原子力事故や放射線緊急事態に際して、その拡大を防止し、またその影響を最小限にとどめるべく、専門家の派遣や資機材提供などの援助を容易にするための国際的枠組みを定めている。
55 “Statement of the Philippines,” IAEA General Conference, September 2021.
56 “Statement of South Africa,” IAEA General Conference, September 2021.
57 “Statement of the United Arab Emirates,” IAEA General Conference, September 2021, pp. 2-3.
58 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 4.
59 Ibid., p. 25. CPPNM の未加入国には核物質を保有しておらず、条約加入のメリットや必要性を感じていない国もあるため、条約加入によるメリットについての理解向上を通じても条約普遍化の促進が図られている。
60 “UNODC Launches New Website on the International Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism (ICSANT),” UNODC, 2021, https://www.unodc.org/unodc/en/terrorism/latest-news/2021_unodc-launches-newwebsite-on-the-international-convention-for-the-suppression-of-acts-of-nuclear-terrorism-icsant.html.
61 “UNODC and IAEA Joint Forces to Promote Key International Legal Instruments Against Nuclear Terrorism,” UNODC, https://www.unodc.org/unodc/en/terrorism/latest-news/2021_unodc-and-iaea-join-forces-to-promote-key-international-legal-instruments-against-nuclear-terrorism.html.
62 Ibid.
63 Ministry of Foreign Affairs of Republic of Korea, “Regional Workshop on Asia’s Consideration of Nuclear Security,” Press Releases, March 25, 2021. なお、本ワークショップはIAEA 及び米国核安全保障庁(NNSA)との協議を通じて開催準備が行われた。
64 IAEA, “Conference of the Parties to the Amendment to the Convection on the Physical Protection of Nuclear Material 2022,” https://www.iaea.org/events/acppnm2022.
65 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 25.
66 “Statement of Japan,” IAEA General Conference, September 2021, p. 7.
67 “Statement of Switzerland,” IAEA General Conference, September 2021.
68 “Statement of Turkey,” IAEA General Conference, September 2021.
69 The U.S. Mission to International Organizations in Vienna, “Statement of the United States of America at 65th General Conference, Agenda Item 16: Nuclear Security,” September 22, 2021, https://vienna.usmission.gov/iaea-gc-2021-nuclear-security/.
70 Samantha Neakrase, “Strengthening Nuclear Security with A Sustainable CPPNM Regime,” paper prepared for the 2020 IAEA International Conference on Nuclear Security, January 2020 を参照。
71 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 25. なお、2019 年7 月から2020 年6 月までの期間の新規提出国数は8 カ国であった。IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 2020, p. 23.
72 他の2 つの勧告文書は、「放射性物質及び関連施設に関する核セキュリティ勧告」(核セキュリティシリーズ第14 号)及び「規制上の管理を外れた核物質及び他の放射性物質に関する核セキュリティ勧告」(同第15 号)である。なお、3つの勧告文書は、核セキュリティ基本文書を適用しようとするIAEA 加盟国が採用すべき最良慣行を示したものである。
73 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 30. なお、INFCIRC/225/Rev.5 の改定の必要性については、Matthew Bunn, Laura Holgate, Dmitry Kovchegin, Nickolas Roth and William Tobey, “IAEA Nuclear Security Recommendations (INFCIRC/225): The Next Generation,” Stimson Center, July 2020, https://www.stimson.org/wp-content/uploads/ 2020/07/IAEA-225-Recommendations.pdf を参照。
74 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 30.
75 Ibid., p. 15.
76 “Statement of Poland,” IAEA General Conference, September 2021.
77 “Statement of Israel,” IAEA General Conference, September 2021.
78 “Statement of Iran,” IAEA General Conference, September 2021, p. 6.
79 “Asia Regional Technical Exchange: Unmanned Aircraft System (UAS) & Counter-UAS (CUAS),” National Nuclear Security Administration, June 16-17, 2021.
80 “NNSA Release: Y-12 Deploys System to Counter Unauthorized Unmanned Aircraft Systems,” Y12 National Security Complex, June 8, 2021. このシステムは、潜在的な悪意のあるUAS の脅威を検知し、特定し、追跡することを意図したものであるとされる。
81 内部脅威に関連する事案としては、たとえば2014 年にベルギーのドゥール(Doel)原子力発電所において、同所に対して不満を持つ内部者がタービン潤滑油を不当に排出した結果、原子炉が運転停止に追い込まれた事案など、いくつかの深刻な既知の事例がある。“The Enduring Need to Protect Nuclear Material from Insider Threats,” CRDF Global, April 26, 2017, https://www.crdfglobal.org/insights/enduring-need-protect-nuclear-material-insiderthreats.
82 「東電社員、他人のID カードで原発内建屋に 柏崎刈羽」『朝日新聞デジタル』2021 年1 月23 日、https://www.asahi.com/articles/ASP1R3GRLP1RUOHB003.html。
83 核物質防護に関する独立検証委員会『検証報告書』2021年9月22日、30頁。
84 Ibid., 64 頁。
85 Rajeswari Pillai Rajagopalan, “Insider Threats and Nuclear Security During a Pandemic,” The Diplomat, April 23, 2021.
86 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 9.
87 Ibid.
88 Ibid.
89 “3-Day National Workshop on Nuclear Security and Physical Protection of Facilities,” Nigeria Atomic Energy Commission, https://www.nigatom.org.ng/nuclear-security-workshop/.
90 IAEA, “Regional Training Course on Preventive and Protective Measures against Insider Threats to Nuclear Material,” https://www.iaea.org/events/evt1906346.
91 Eni Lamce and Sarah Henry Bolt, “Now Available: IAEA Guidance on Computer Security for Nuclear Security,” October 21, 2021, https://www.iaea.org/newscenter/news/now-available-iaea-guidance-on-computer-security-fornuclear-security. このガイダンスは、統合された国の戦略、規制手法の確立、並びにセキュリティ侵害によって、核セキュリティまたは原子力安全に負の影響が生じうるコンピュータ基盤システムを防護することを目的として設計されるコンピュータ・セキュリティプログラムの開発や実施を支援するものである。
92 “Computer Security Techniques for Nuclear Facilities,” IAEA, https://www.iaea.org/publications/14729/computer-security-techniques-for-nuclear-facilities.
93 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 12.
94 Ibid., p. 13.
95 Ibid. さらに、このシミュレーターは、サイバー攻撃の防止、検知及び対応をサポートするための補完的なコンピュータ・セキュリティ措置の開発や技術の手段を提供するものとなるとされている。
96 “Annual Workshop for Physical Protection and Cyber Security Held by KINAC,” KINAC News, February 8, 2021.
97 核物質防護に関する独立検証委員会『検証報告書』30 頁。なお、東京電力が設置した第三者委員会の報告では、検知設備の故障から復旧までに30 日以上を要した事例が2018 年度以降111 件あったことが判明した。「侵入検知111 件長期故障 柏崎刈羽原発ID 不正さらに12 件」『新潟日報』2021 年9 月24 日、https://www.niigatanippo.co.jp/news/national/ 20210924643714.html。
98 原子力規制委員会「令和2 年度原子力規制検査(核物質防護)における検査指摘事項の重要度暫定評価について(核物質防護設備の機能の一部喪失について)(通知)」2021 年3 月16 日。
99 核物質防護に関する独立検証委員会『検証報告書』。
100 原子力規制委員会「更田委員長職員訓示(東京電力・福島第一原子力発電所の事故から10 年にあたって)」2021 年3 月11 日、https://www.nsr.go.jp/nra/kaiken/20210311_01.html。
101 “Enhancing Nuclear Security Culture in Organizations Associated with Nuclear and Other Radioactive Material,” IAEA, https://www.iaea.org/publications/13405/enhancing-nuclear-security-culture-in-organizations-associated-with-nuclear-and-other-radioactive-material.
102 Yo Nakamura and Muhammad Khaliq, “CRP Success Story: Development of Nuclear Security Culture Enhancement Solutions (Jo2007),” May 25, 2021, https://www.iaea.org/newscenter/news/crp-success-storydevelopment-of-nuclear-security-culture-enhancement-solutions-j02007.
103 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 15.
104 たとえば、以下を参照。“Nuclear Security Culture Programme Webinars,” King’s College London, https://www.kcl.ac.uk/events/series/nuclear-security-culture-programme-webinars; Tahir Mahmood Azad, “Pakistan’s Evolving Nuclear Security Culture,” South Asia Voices, November 15, 2021. 日本では、9月に開催された日本原子力学会で、安全と核セキュリティと組織文化の問題が取り上げられた。「日本原子力学会2021 年秋の大会」https://confit.atlas.jp/guide/event/aesj2021f/subject/1J_PL03/detail。また、上述の東京電力の核物質防護事案を踏まえ、電気事業連合会は2021 年6 月に業界大の取組を発表した。核物質防護業務にかかる事業者間の相互レビュー、サイバーセキュリティ対策の推進、安全文化醸成活動の継続的な改善などの取組が進められている。『東京電力HD の核物質防護事案を踏まえた業界大の取り組み』電気事業連合会、2021 年6 月18 日、https://www.fepc.or.jp/about_us/pr/pdf/kaiken_s1_20210618.pdf。

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