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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024コラム4 G7広島サミットからの今後を見据えて

隈元 美穂子

このコラムは筆者個人の考えを述べたものであり、筆者の勤務先である国連ユニタール全体の意見を反映したものではない。)

広島は被爆地そして平和の拠点として世界での知名度が高い。仕事がらアジア、中東、アフリカ、欧州、南米と様々な土地に出張に出かけるが、広島の事は本当によく皆知っている。国連加盟国193のうち、一番新しい国は南スーダンで2011年に国連加盟国となった。南スーダンの首都ジュバに出張に行き、様々な政府関係者と仕事を一緒にしたが、皆よく広島の事を知っていた。2023年は、G7サミット開催都市として広島が今まで以上に国際的に注目された年だった。G7の首脳が広島に集結するというシナリオは、その前から着実に布石が敷かれてきた。2022年にニューヨークの国連本部で開催された第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に日本の総理大臣として岸田総理が初めて出席をし、そこで5つの柱で形成されるヒロシマ・アクション・プランを提言した。その1つの柱である「各国指導者等による被爆地訪問の促進」は核軍縮不拡散を後押しする一つの要であり、それを大きく後押しする形でG7各国の首脳の広島訪問が実現した。これは1つの大きな一歩であったと思う。

課題は「今後」である。ここからどのようにして核兵器のない世界を生み出していくのか。核軍縮・不拡散を取り巻く今の世界情勢は非常に厳しい。ウクライナ、ガザ問題などを背景に、軍縮ではなく軍拡の風潮まで感じられる。そんな逆風にも負けず、着実に一歩一歩を積み重ねていくことが非常に大切だ。既に様々な取り組みが行われ、様々な議論が交わされており、それをしっかりと継続する事が重要だ。そして新しい視点をどんどん取り組んでいくこと。これまで核軍縮・不拡散に関わってきた専門家だけでなく、さらに幅広い人々を巻き込んでいき、核軍縮・不拡散の理解者や応援団を増やしていくことも効果的だ。たとえば女性や若者(ユース)。彼らを対象とした活動は着実に増えており、非常にポジティブなエネルギーを生み出している。それ以外にも環境、開発分野での専門家などとの協働により新しい視点を見出していくのもよいのではないだろうか。核・軍縮・平和・環境・開発・人道・保健衛生・ビジネス・情報通信技術(ICT)など、世の中は様々な分野があり、専門家が存在する。これら専門家はそれぞれの分野での知見を深めていくとともに、他の分野との協働をすることにより新しい道筋が見えてくる可能性がある。もともと、地球規模問題は深く繋がっていて、切り離すことは難しい。

2024年9月、ニューヨークの国連本部にて「未来の為のサミット(Summit of the Future)」が開催される。2030年までの達成を目標とした持続可能な開発目標(SDGs)の進捗を見直し、よりよい未来に向けてのガバナンスを考え、SDGsに向けての進捗を加速させるための注目の世界のハイレベル会合だ。ここで平和・軍縮問題がどのように議論されるのか、他の貧困撲滅、女性問題、気候変動を含む環境問題などとどのように繋げて議論がされるのか、そして未来に向けての路線がどのように描かれていくのか、1つの大きな布石であり大きなチャンスともなりえる。G7広島サミットのために世界のリーダーが広島に集結した。そこから一歩一歩核軍縮・不拡散に向けての前進を続けることが必須である。

くまもと・みほこ:国連訓練調査研究所(UNITAR)持続可能な繁栄局長

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