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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024コラム6 次世代を担う若者から見たG7広島サミットについて

サウザー 一左

私は広島G7サミットジュニア会議に日本の若者代表とし参加した。G7各国の若者と共に、世界に直面する課題、環境、政治、社会の問題について議論し、私たちはアイディアと考えをまとめた成果文書を作成した。この文書には、日本が核兵器禁止条約(TPNW)締約国会議に、オブザーバーとしてでも参加することを望むことや、課題の対処にむけて、若者が果たすべき役割、及び政府がとるべき行動について私たちの意見が含まれていた。4月5日、私は岸田文雄首相に直接、成果文書を手渡した。その後行われるG7サミットで生かされることを期待し、少しばかり達成感を感じた。

1カ月後、G7サミットが開催された。私は失望し、裏切られたとさえ感じた。私たちが成果文書を通して指摘したほとんどの課題は取り上げられもしなかった。今、社会で起きている早急に解決が必要な問題に対して、何の進展もなかったと感じた。それだけではなく、このサミットで採択された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」には核兵器、核抑止を肯定的に書いた文言が入っていた。多くの被爆者たちも落胆した。さらに、平和を促進するための会合であるべきにも関わらず、現在もまだ続いているロシア・ウクライナ戦争の停戦の議論は行われず、ウクライナ軍への武器供与の場として使われてしまった。被爆地である広島で行われた歴史的なG7サミットはただ反ロシア・中国の会合になってしまったのだろうか。本当に平和を望んでいるのか、すでに分断された世界の中でそれを悪化させたのではないか。これでは「ノーモアヒロシマ」の誓い、そして被爆者達の思いや願いが完全に無視されている。私は、世界の首脳達が広島を訪れ、広島の歴史を目の前にすると、核兵器がどれほど非人道的であるか知り、誰であれ他者に広島や長崎が経験したような破壊をもたらす力を持ってはならないと気付くだろうと考えていた。今振り返ってみると、私がこのような希望を持つのは甘かったのかもしれない。

このG7サミットで、私が期待していた政府レベルでの変化は見られなかった。しかし、より明確になったことがある。変化は私たち、人々、コミュニティにかかっていることだ。G7サミットから得られなかった成果とは対照的に、私はジュニア会議で仲間達とのつながりを築くことができた。様々な国から集まった同じ思いを持つ若者達との出会いは私に大きな刺激を与え、自分ひとりが動いたところでどうなるのかと思っていた以前の自分は今、より明るい未来を築いていくという単純な目標を共有する人々のコミュニティの輪の中に入れた気がする。ひとりでは大きな変化をもたらすことはできないが、「コミュニティ」こそが必要なものだと私は確信できた。アイディアを共有し、行動を起こし、小さな変化を生み出していくのは人々のコミュニティなのだ。世界の大きな変革を見てみると、多くがコミュニティ運動に基づいている。核兵器廃絶の課題も仲間とともに繋がって訴え続けていくことで明るい未来があると信じたい。

さうざー・いっさ:武田高等学校3年

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