[インタビュー] 「積極的平和」と「SDGs」への取り組み 『三井住友銀行』
ビジネスと平和構築のあり方との関係を多面的に議論した「2020世界平和経済人会議ひろしま」参加企業の取り組みを紹介するシリーズ企画。今回は株式会社三井住友銀行(以下SMBC)の姿勢について、経営企画部サステナビリティ推進室長の竹田達哉(たけだたつや)氏にお話いただいた。
●会社としての考え方
弊社は2020年4月、持続可能な社会の実現を目指す上での基本姿勢を示すものとして「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を策定しました。この中でサステナビリティというものを「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定義しましたが、これは「2020世界平和経済人会議ひろしま」のテーマにもなった「積極的平和」の概念と重なるものです。積極的平和に関しては戦争や紛争がないことに加え、社会構造に起因する間接的な暴力がない状態が求められます。しかし世界に目をやると貧困・抑圧・排斥等の問題が後を絶たないのが現状です。
こうした問題解決のために私たちがはじめた取り組みが「GREEN×GLOBE Partners(以下GGP)」です。これはSMBCグループが運営する環境・社会課題解決のためのコミュニティです。GGPの目的は「環境・社会課題解決の『意識』と『機会』を流通させる」ことで、一社や一個人では解決できない大きな問題に対して、共に考え、アクションの起点となることを目指してスタートしました。異なる立場の事業者同士をつないでネットワークを作り、それを支援するという役割は、金融機関である私たちだからこそ果たせるものだと思います。まずは私たちのお客様からお声掛けして、現在は190社以上がパートナーに加わってくださっています。
GGPの活動はウェブサイト(https://ggpartners.jp/)を通じて広く公開しています。ここで発信しているのは金融の話に留まらず、「AIの倫理を考える」といった幅広いテーマも扱っています。中でもコミュニティに焦点を当てて持続可能性との関係性を探る「サステナビリティ×コミュニティ」シリーズは関心が高く、7月の配信イベントでは400名以上の申し込みがありました。多くの人に社会問題について考えてもらう機会を提供できたと感じています。
●SDGsに対する取り組み
私たちはSDGsという枠組みからアプローチするのではなく、企業として取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を定め、その解決に取り組むことで結果的にSDGs達成に寄与するというやり方を採っています。SMBCグループが取り組むべき重点課題として、2014年に「環境」「コミュニティ」「次世代」の3つを選定しました。SDGsの目標と照らし合わせると、環境が(7エネルギーをみんなにそしてクリーンに)と(13気候変動に具体的な対策を)、コミュニティが(1貧困をなくそう)と(11住み続けられるまちづくりを)、次世代が(4質の高い教育をみんなに)(8働きがいも経済成長も)(9産業と技術革新の基盤をつくろう)に相当します。また、サステナビリティ宣言発表と同時に、2030年までの10年間の長期計画を定めた「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定しました。現在はこの計画達成に向けて取り組みを進めているところです。
まず環境に関しては、「グリーンファイナンス」の提供に力を入れています。2020年4月の段階では10兆円だった目標金額を、政府のカーボンニュートラル宣言を受けてサステナビリティに資するファイナンスも含めた30兆円へと上方修正しました。自社の排出する温室効果ガスも2030年までに実質ゼロにする目標を掲げています。コミュニティについてはGGPのほか、農業経営の実証実験として秋田県で米や玉ねぎを作り、とれたお米で日本酒を作る事業も行っています。
次世代に関しては、グループ企業のSMBCコンシューマーファイナンスが高校生や大学生に対して金融経済教育を行う「PROMISE金融経済教育セミナー」の受講者が昨年2月までに累計100万人を突破しました。グループでは今後10年間で150万人に提供すると共に、提供プログラムを金融以外にも広げていきたいと考えています。
●気候変動問題への考え
現在注目されている問題のひとつに気候変動問題があり、これに対しては弊社も力を入れて取り組んでいます。どうして金融機関が脱炭素に取り組むのか疑問に思う方もおられると思いますが、弊社は石油やガスといったCO2を多く排出するセクターにも投融資しており、このまま社会構造の転換が進むと、私たち金融機関にも大きな影響を及ぼしかねません。そうした影響を最小限に抑えるためには、投融資先のCO2排出量を把握し、彼らの事業転換を一緒になって考えていくことが必要になってくるのです。
気候変動問題に関してはGGPでも幾度も取り上げ、国内の中小企業の方々にも自分事として考えてもらうよう訴求してきました。再生エネルギーへの転換を考えても、送電線の問題などを考慮すると、もっとも環境に優しいのは「地産地消」かもしれません。コロナ禍によってリモート勤務も一般化し、地域コミュニティ回帰の流れも加速していると感じます。今後はこれまでの中央集権的経済システムから小口分散した経済圏へのシフトが進み、自治体の果たす役割がいっそう大きくなるのではないでしょうか?
●広島への想い
積極的平和は広島だからこそ訴える資格がありますし、広島だからこそアピールしていかなければならないテーマだと感じます。何事も歴史は重要で、私たちがサステナビリティ宣言を策定する際も過去400年にわたる会社の歴史を振り返り、「自分たちにしか伝えられないものは何か?」ということを問い続けました。広島が抱えた歴史は不幸なものかもしれませんが、その一方で、広島特有のバックグラウンドをもとに世界に発信できるのは広島だけであり、発信するメッセージには他者にはない重みがあると感じます。将来的に地域コミュニティの重要性が増していく中、広島から他の自治体の参考になるモデルケースを生み出していただくことを期待しています。
株式会社三井住友銀行
経営企画部 サステナビリティ推進室
室長 竹田達哉
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