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国際平和拠点ひろしま

[インタビュー] 「積極的平和」と「SDGs」への取り組み 『東京海上日動火災保険』

 2020年に開催された「2020世界平和経済人会議ひろしま」。ビジネスと平和構築のあり方との関係を多面的に議論したこの会議の参加企業から、今回は東京海上日動火災保険株式会社の辻昌裕氏と岩松賢吾氏にご登場いただき、同社の取り組みについて語ってもらった。

●会社としての考え方
 「2020広島宣言」では、「私たちの具体的な行動」として、「企業活動を通じて、SDGsに取り組み、積極的平和の実現に積極的に貢献する」と謳っていますが、こうした活動は、私たちが営む損害保険事業と非常に親和性が高いものです。もともと損保は相互扶助の精神で経済的ダメージの回避を目的としたもの。近年は台風や集中豪雨など自然災害の急増で保険金のお支払いも増えています。

 一方で弊社は事故発生後の経済的負担を補うのみならず、事故や被害を未然に防ぐ“事前の安心”対策にも力を入れています。また事故が防ぎ切れなかったとしても、一刻も早く状況を復旧させ、被害を最小限に留める“事後の安心”にも取り組んでいます。

 これについて例を挙げれば、私たちは2017年からドライブレコーダー付きの自動車保険を販売しています。これは走行中のわき見運転を警告する機能や、危険地帯に近づくと警告音を発する機能などを装備する一方、万が一事故を起こした場合でもレコーダーの映像が自動発信されてAIなどで解析され、素早く正確に事故解決が図れる機能を有しています。つまり“事前の安心”と“事後の安心”を両立させることで、積極的平和の実現にも貢献しているのです。

 それ以外にも激甚化する自然災害に対してはデジタルを活用して社内システムの高度化を図り、遠隔地からの事故受け付けを可能とし、スムーズな支払い体制を構築しました。気候変動に関しては、グループ会社の「東京海上ディーアール」が河川氾濫や浸水、強風、土砂災害の危険度を地図上でリアルタイムに表示、企業の災害対応や危機管理のコンサルティングを行っています。

●SDGsへの取り組み
 私たちの経営理念は「お客様の信頼をあらゆる事業活動の原点におき、『安心と安全』の提供を通じて、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献します。」というものです。それはまさにSDGsの17項目すべてに深く関係しています。例えば前述したドライブレコーダー付き自動車保険はSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」に該当します。私たちはこうした事業をビジネスとしてだけではなく、社会貢献の一環として追求しています。

 さらに4月に策定した中期経営計画では、経営コンセプトを「成長への変革(“X”)と挑戦2023~『品質と想いで最も選ばれる会社』を目指して~」に定めました。弊社の存在意義は「お客様や地域社会の“いざ”をお守りする」というものですが、今後はそのパーパスを徹底し、社会課題の解決を推進しながら結果的に持続的な成長を目指すとしたのです。それはSDGsの姿勢とも合致しています。ちなみに私たちが考える社会課題は「地球規模の気候変動」「高齢化・医療技術の進化などに伴う介護や医療の負担増加」「デジタル化などの技術革新がもたらす環境変化」「共生社会作りと新型コロナウイルスへの対応」「経済成長・イノベーションを支える産業基盤の支援」の5つ。今後3年間はデジタル技術を最大限活用しながら、これらの課題に取り組んでいく予定です。

 SDGsに関しては「SDGsを知ろう」という動画を弊社ホームページで公開しました。これはSDGsが目指す世界とその実現に向けた取り組みを将来を担う子どもたちに知ってもらうためのもので、SDGsの重要性を多くの人に伝えることも弊社の使命だと考えています。子どもたちに関しては、全国の小学生向けに「みどりの授業」という環境啓発プログラムを展開しており、2020年末で累計873回を数えました。社内においては「東京海上グループサスティナビリティCEO賞」を設立し、グループ会社や各部店の優れた取り組みを表彰しています。

SDGsについて解説した子ども向け動画「SDGsを知ろう」シリーズ(全8回)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/sustainability/sdgs.html

●事業と社会貢献の両立
 保険は難しいところがある事業です。例えば弊社は東日本大震災時、加入者をお守りするため多くの保険金をお支払いしましたが、その結果、収益が落ち込み、補償能力が落ちてしまって保険料の値上げをせざるを得ない状況に追い込まれました。利益が出なければ契約者の方々に対する補償もできなくなるわけで、営利のバランスをどうとるかが重要になってきます。

 こうした事態に対応するため、会社として進めているのがグローバル化によるリスク分散です。リスクを国内だけで引き受けるのではなく、世界全体でバランスをとることで収益の平準化を目指しています。また、“事前の安心”に力を注ぐことも重要な施策だと考えています。災害時の心構えや対策法を知ってもらうことで被害を少しでも軽くし、それによって保険料を抑えることで持続可能な社会の構築と会社の存続が可能となります。

 時代の変革期には必ずリスクが発生し、私たちが必要とされる事態が生まれます。2020年に新型コロナウイルス感染症が流行したことで、多くの企業から「コロナリスクに対応してくれる保険はないんですか?」との問い合わせを多く頂戴し、2021年1月からは超ビジネス保険・感染症補償特約を新設しました。私たちは各時代に必要とされるそうしたニーズに素早く対応し、安心・安全が実感できる社会の構築に貢献していきたいと思っています。

●広島への想い
 広島は被爆の地であり、豪雨災害も数多く経験した地域。そうした重みを踏まえた上で積極的平和の発信を期待しています。その実現には産官学の連携が必要で、県内のスタートアップ企業を助成するのに私たちのリスク評価のパッケージを活用してもらったり、海外進出を考える企業に弊社のネットワークを提供したり、私たちも積極的に参加していきたいと考えています。

 また弊社は2016年に地方創生に取り組む部署を新設し、地方創生活動にも励んでいます。もちろん広島でも事業を行っていて、安佐地区の豪雨災害を機に広島県と防災・減災に関する覚書を締結。災害発生時の対応を学ぶ小学生向けの「ぼうさい授業」は5年間で128回開催しました。今後も広島の事情に合った形で連携を進めていければと思っています。

取締役社長・広瀬伸一氏による「ぼうさい授業・地震津波編(小学生向け出前授業・防災意識の醸成)」の実施風景

防災・減災情報サイト「あしたの笑顔のために」
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/egao/

東京海上日動火災保険株式会社
常務執行役員 辻 昌裕

東京海上日動火災保険株式会社
理事広島支店長 岩松 賢吾

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