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国際平和拠点ひろしま

おわりに

これまで見てきた広島の復興経験は,今,私たちに何を語りかけているだろうか。
第1に指摘できるのは,破壊は決して終わりではない,ということである。広島の復興の第一歩は,すべてが失われたように見える被爆の瞬間から始まった。
第2に,復興とは,新しいものを創造すると同時に,過去から引き継ぎながら失いかけたものを復活させる営みでもある,ということだ。広島の復興には,すべてを新しく創造したのではなく,被爆以前に広島のコミュニティに存在していた社会機能や文化,伝統を生かし,あるいはそれらを取り戻すという側面もあった。
第3に,悲惨な体験をくぐり抜けてきた当事者の,平和を希求する姿勢の重要性である。広島の戦後復興においては,被爆者の存在と彼らの思想,態度が平和都市の形成に大きな役割を果たした。
第4に,復興の道は決して単線的なものではなく,その途上ではしばしば摩擦や対立,衝突が起こった。しかし,こうした困難を克服する中で復興が促進され,より強固なものになっていくのではないか。
第5に,復興を実現に導くのは,特別な組織や指導者,制度もさることながら,市民一人ひとりの主体的な意識だ,ということである。確かに,戦災復興院や知事,市長などのリーダーシップ,広島県や広島市などの担当者,あるいは広島平和記念都市建設法などの制度は復興過程で重要な役割を果たした。しかしながら,最後に復興を実現させ,根付かせていくのは,「平和都市広島の一員」という自覚を持って行動する市民一人ひとりによる,日常的な努力の積み重ねだと思われるのである。

 

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