UN75 in HiroshimaUN75 in Hiroshimaに参加して
2020年8月6日に国際平和のための対話イベント「UN75 in Hiroshima」を開催しました。2020年は,被爆75年であるとともに,国際連合創設75年にあたる年であり,国連はこの年を記念して,世界の人々に対し,未来に関する対話を促しています。広島県は,この取組に呼応し,また,国連の開発目標であるSDGsやグテーレス国連事務総長が発表した「軍縮アジェンダ」の前進を目指し,公募によって選ばれた参加者と中満国連事務次長が議論を行う対話イベントを開催しました。参加者の1人であるメアリー・ポペオさん(広島県内のNPO法人Peace Culture Village事業部長((https://peaceculturevillage.org/))に今回の「UN75 in Hiroshima」に参加した経緯や対話内容などについて記載いただきました。
UN75 in Hiroshimaに参加する機会が得られて大変光栄に思います。日本に住む外国人,若者そして平和の教育者の私は,世界を変える刺激的な人々との会議で瞬時かつ永続的な影響を受けました。母国語である英語で私自身のアイデアをプレゼンし,仕事について議論することは稀であり,すばらしい経験でした。また,国際社会でより良い社会のために働くロールモデルの方々から直接フィードバックをもらえることは,非常に貴重な経験となりました。そして,“軍縮のためにかっこいい”仕事としか説明できないことをしている若者とつながれたことで刺激を受け,活気づけられました。
それ以来,仲間たちと日本中,世界中で取組のコラボレーションを始めています。例えば,シンガポール,香港,日本,オーストラリア,ニュージーランドの方々に広島の平和記念公園のオンラインツアーを実施しました。他にも,広島に訪れた学生に日本語と英語でフィールドツアーを行いました。現在,アメリカの学生と私たちにとって重要な問題についてオンラインで対話するための準備をしています。
UN75 in Hiroshimaでは,勤務先のNPO法人Peace Culture Villageが開発した新しい取組であるピースポータル(PEACE PORTAL)を中心に発表を行いました。PEACE PORTALは拡張現実(AR),仮想現実(VR),コンピューターグラフィックス(CG),Google Earthなどのデジタル技術を活用し,広島を訪れることができない人も含め,世界中の人々に広島を軸にした学習機会を提供するオンラインプログラムです。
UN75 in Hiroshimaで他の参加者が発表し,世界の核兵器開発や配備が痛烈に示しているとおり,技術革新は,人間と地球に破壊をもたらすために使用されてきました。しかし,私自身の経験から,技術は良い面でも活用できることを知っています。特に,ビデオゲームの技術において。
ビデオゲームは無関心さや暴力さえも引き起こすと言われています。しかし,ビデオゲームで得た経験やスキルは物理的,文化的障壁を超えて私たちを繋げ,世界を良くするために活用できると私は信じています。アクションやストーリーをコントロールする媒体として,安全でシミュレートされた環境で,チームワークを実践し,目標を達成していきます。更に,道徳的な決定に取り組み,複雑なキャラクターやストーリーに深く共感することを学べます。以下に,現在,没入型仮想世界が地球上の普遍的な幸福にどのように貢献しているか事例を紹介します。
- ディーパ・マン=クレ(Deepa Mann-Kler),ジェイン・マクゴニガル(Jane McGonigal)などのゲームデザイナーは慢性的な痛みを抱えている人や脳しんとうを克服しようとしている人を癒すVR, ARアプリを制作しています。
- Code to Inspireのアフガニスタンの女性プログラマーはオピオイド危機の意識を高めるためのゲームを開発しています。
- ゲームアカデミー(Game Academy)では卒業生がビデオゲームで学んだスキルを通じてキャリアを考え,準備する手助けをしてくれます。
- 赤十字国際委員会は,人気ゲーム「フォートナイト」とコラボし,戦闘ゾーンにおいて命の救い方を学べるゲームモードを発表しています。
- 南スーダンの難民 ルアル・マイエン(Lual Mayen)のゲーム サラーム(Salaam)では,戦争で破壊された故郷から逃れる人々をプレーヤーが疑似体験することができます。
広島において私たちが直面している最大のジレンマは恐らく,核兵器廃絶運動の中心であり顔である被爆者の重大な役割をどのように継承していくかということだと思います。被爆者の平均年齢は83歳を超え,私たちは被爆証言を直接聞くことのできる最後の世代となるかもしれません。被爆者の方々による直接の被爆証言なしに,核の世界の現実と危険を継承し続けることができるのでしょうか?特に,広島に直接訪問できない今の時代においてどのように伝えることができるのでしょうか?没入型の仮想シミュレーションや経験が被爆者と若い世代をつなぐ鍵となる時代がくると信じています。
これがPEACE PORTALの目的です。私たちは,ニューヨークを拠点とするAR/VR会社 TimeLooperや広島県立福山工業高等学校のVRを制作する生徒と共に,人々が被爆者とつながり,広島のレジリエンスと希望のメッセージからインスピレーションを導き出すことを可能とするデジタル空間を創る活動をしています。
VRで路面電車に乗り,被爆前の地元の人々に会う。オンラインのシミュレーションゲームで,核戦争の危機に瀕している国をより平和な未来に導くためにチームで取り組む。ARスマートフォンアプリを活用して被爆者の体験を被爆者のホログラムを通じて聞きながら平和記念公園をツアーするなどといった無限の可能性について空想してしまいます。
PEACE PORTALはまだ開発中で,長い道のりになります。しかし,広島の魂を世界そして未来に継承し拡げていくムーブメントの一端を担うと信じています。
PEACE PORTALをダウンロードする(英語) (App Store)開催結果のレポートはこちら
参加者のレポート(上別府さん)を見る。
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国際平和のための対話イベント「UN75 in Hiroshima」
国連の開発目標であるSDGsやグテーレス事務総長が発表した「軍縮アジェンダ」の前進を目指し,公募によって選ばれた方々と中満国連事務次長が議論を行う国際平和のための対話イベント「UN75 in Hiroshima」の目的などについて掲載しています。
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